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ロウとマオ 〜最強仙術使いと最弱JDの異世界放浪譚〜  作者: にしだ、やと。
第9話 世界渡りと異界、そして私のこれから
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組合本部に行きますか

「さてと、そろそろこっちを済ませなきゃなあ」


 愚者の行路への訪問を終えてから数日、私達は休暇をとっていた。

 理由は単純で、ロウ君が()()になってたからだ。

 どうにもそわそわしていると言うか、浮ついていると言うか。

 とにかくもう一人の招待主がどんな人かもわからない以上、この状態のロウ君を連れて行くわけにはいかなかった。


 なので少しの間のんびりさせてみたんだけど、結果はいまいち。

 少しずつマシになってきて、いつもどおりの鍛錬をするようにはなっているんだけど、ふとした瞬間にまた落ち着きがなくなるんだよね。

 遠くから見てたら集中していい感じだったから頃合いを見計らってお茶に誘ったりするんだけど、そういうときに限ってまた発作が起きる感じ。

 サーシャさんも厄介な後遺症を残してくれたもんだ。


 一応ライラにも心当たりはないかと聞いてみたんだけど、


「うん? ああ、よくあるやつじゃろ。

 放っておけばそのうち落ち着くじゃろて」


 こんな感じの適当な返事しか返ってこない。

 ライラがそういうなら深刻なものじゃないんだろうけど。

 タイミングが悪いよなあ。


 仕方ないし、しばらくは私も精霊術を練習しよう。

 この前の戦いで少し課題も見えたし、応用して出来そうなことも掴めたし。

 たまには物語の主人公らしく成長していかないとね。





 一週間が過ぎた。

 ライラに収納魔法を教えてもらおうとして断られたり、元素精霊以外の概念精霊を呼び出そうとしてうまくいかなかったり、失敗を重ねながらも課題の克服に向けていろいろと試してみた。

 結果的には……とりあえず元素精霊の種を持ち運ぶ方法はなんとか作ることができた。

 これはすごく単純な話で、魔道具を用意することにしただけだ。


 魔道具の内容は、対応する精霊石からその要素を具現化するというだけの単純なもの。

 火を生み、水を出し、風を吹かせ、土を生む。

 まさか魔術で生み出したものでもきちんと媒体として機能するなんてね。

 魔力で構成されてるものは無理かと思ったけど、生み出した直後に魔術的な繋がりを切り離せばそこに残ってるのは単なる物質や物理現象でしかないから問題ないみたい。


 これで咄嗟に精霊術を使おうとして何も召喚できない! なんて事態に陥ることはなくなった。

 魔石の消費が魔道具の分増えるけど……お金はたっぷりあるから誤差だ。


 精霊術を応用することについては、まだうまくいってない。

 ま、急いでないしこれは後々機会を見つけることにしよう。


 で、肝心のロウ君のほうですけど、ライラに言われたとおり放っておいたらなんとかなった。

 一昨日くらいだったかな?

 突然私のもとにやってきて、「マオは特に変わらないんだよな?」とかよくわからないことを聞いてきたからとりあえず肯定しておいたんだけど、そしたらその次の日にはほぼ元通りになってた。


 結局なんだったのかイマイチ分からないけど……まあ平常運転に戻ったならよしとしますか!


「それじゃ、明日にでも組合本部に行きますか」


 その日の夕食の場で、ロウ君とついでにライラにも伝える。

 ついに招待状に応じるってわけだ。

 ここまで待たせても何も言ってこないあたりいっその事ずっと無視しても問題ないのかも知れないけど、そこまで私は無礼になりたくないからね。

 それに、なんだか面白いことになりそうな気もするし。


 ◆ ◆ ◆


「すみません、この紙札を組合本部の受付で提示しろって言われているんですが……なにかわかりますか?」

「はい? ええと……」


 翌日組合本部にいくと、受付を担当していたのは私達が初めてここに来たときに受付をしていたお姉さんだった。

 彼女の方も私のことは覚えていたみたいで、声をかけたら若干不機嫌そうに睨まれた。

 一応仕事だからきちんと見てくれるみたいだけどね。


「これは……、すみません、少々お待ちいただけますか?

 よろしければ奥の個室にてお待ち下さい」


 札に書かれた紋章を見た瞬間、お姉さんは目を見開いて驚いていた。

 そしてなんとも驚くべきことに私に対してとても丁寧な対応をしてきた!

 これって、そんなに大物が絡んでるってことなのかな……?


 とりあえず言われたとおり個室に向かって待つ。

 別の職員さんがお茶とお茶菓子を持ってきてくれた。

 至れり尽くせりだなあ。

 ああ、逆に不安になってくる。


 一体誰と会うことになるんだろう。

 鬼が出るか蛇が出るか……。

 落ち着くためにお茶を飲もう。

 あ、なんだかホッとする味。おいしい。


「お待たせしました。マオ様、ロウ様。

 確認が取れましたのでこれからご案内させていただきます。


 案内されるままについていく。

 また二階の応接室かな? となんとなく思っていたんだけど、その部屋の前についてもそのまま素通りし、さらに奥に進んでいってしまう。

 やがてたどり着いたのは、錠のかけられた扉。

 受付のお姉さんはその錠を外すと扉を開け、私達にこういった。


「これより先にてお二人をお待ちしている方がいらっしゃいます。

 私はこれ以上立ち入ることを許可されていないので案内はここまでとなります。

 扉の先は下り階段となっていますので足元にご注意ください」


 そして、私達に入るよう促す。

 扉の先は確かに下り階段になっていた。

 足元が分かる程度の小さな灯りだけが灯っていて、また妙にひんやりとした空気が漂っているのが感じ取れる。


 どう考えても普通の応接室に案内されてるとは思えないけど……進むしかないよね。

 ロウ君に目配せして頷き、一緒に降りていく。

 何段か階段を降りたところで――不意に背後からパタンという軽い音がした。

 扉を閉じられてしまった。

 まるで閉じ込められるような対応だけど、元々錠のかかってた扉だし、保安上の理由だと思いたい。信じたい。


 大体二階分くらいだろうか、階段を降りると目の前に扉が現れた。

 とても質素な扉だけど、なんだか近寄りがたい雰囲気が出ている。

 けれど他にはもう行く場所がなさそうだから、心を決めて扉を開く。


 あ、ノック忘れた。

 まいっか。


 その部屋の中は、書斎と表現するのが正しそうだった。

 奥にまだ部屋が続いていそうではあるけど、一面に書棚が飾られていて、正面には誰かが執務するのにふさわしそうな大きく、また作りの良い机。

 そしてそこに座りこちらを眺めている人物。


 仕事のよくできそうな、渋くて素敵なおじさまだ。

 彫りの深い顔、やや薄いがしっかりと整えられた灰色の髪、攻撃性よりも思慮深さを感じさせる鋭い目つき、何より私でも感じ取れるほどの圧倒的なオーラ。

 間違いなく、この人が私達を呼び出した大物だ。


「きたか」


 彼は静かにそう発すると、ゆっくりと手を上げ、指差すような動きを見せた。

 本当に静かで不気味なくらい落ち着いたその動きは、なぜだかとても恐ろしく思えて……まさかいきなり攻撃!?


 咄嗟に身構えたけど、どうやら杞憂だった。


「そこに来客用の椅子を用意してある。座って話そうか」


 単に入り口で突っ立っている私達に応接席への案内をしたかっただけみたいだ。

 促されるままに座ると、彼も執務席からこちらへ移動してきて目の前に座った。


「さて、まずは招待に応じてくれたことを感謝しよう。

 儂の名はグラード。

 この国では冒険者組合の()()()であり、今でも総長を務めている」




 ……はい?


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