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間話 呆けるロウとサーシャの誘い

尺が足りなかったので本編からカットされたシーンをちょいちょいと編集して短編にしたものです。

全く重要ではないので気楽にお読みください。

「あー」


 愚者の行路への訪問を終えたロウとマオの二人は屋敷に帰り、疲れた身体を癒すため早々に休むことにした。


 サーシャによってかけられた言霊縛りが解けてからというもの、ロウはずっと頭がぼんやりするような感覚に悩まされていた。

 これはあの魔法の影響だろうか。

 もしくは溜まった疲労がどっと出ているだけなんだろうか。

 あるいは……。


 初めての感覚にもやもやしながら、自室の寝具に寝転がり、天井を見つめるロウ。

 見る人が見れば原因なんて一発で分かりそうなものなのだが……生憎ここにはそういうことに鈍い者しかいないようだった。


「寝る前に湯浴みでもするか……」


 ぼんやりとした頭をすっきりさせるため、浴場に向かうロウ。

 いつものロウなら向かう先に()()()()()ことくらいすぐに気が付きそうなものだが、どうやら今の彼はそれすら気づけないほど抜けているらしい。


 脱衣所で着衣をすべて脱ぎ、既に誰かが利用している脱衣かごを無意識のうちに避けて別の脱衣かごを利用し、浴場の扉を開ける。

 するとそこには――。


「あ」

「あ、ロウ君」


 機嫌良さそうに鼻歌交じりで身体を洗っているマオがいた。

 当然、全裸だ。


 ロウはそのとき何故か、やばい、どうしよう、などと動揺してしまっていた。

 昨日までの彼ならマオと一緒の風呂になろうが何とも思わず、平然と隣で身体を洗い始めるはずなのだが。


「どしたの? ロウ君、はやくこっちきなよー」


 マオの方はといえば、ロウに全裸を見られることはもう慣れたもので、恥ずかしさのかけらも感じていなそうだ。

 入り口に突っ立ってないで早く身体を洗いに来いと、実に男らしい発言である。


「あ、ああ」


 明らかにうろたえているロウだが……結局自分でもどうしてこんなドギマギしているのかわからず、風呂に来たのだからとにかく身体を洗わないとなと必死に思い込み、中にはいっていった。


 その後も身体洗ってあげようか? だとか、そういえば今日の戦いは危なかったね―などとマオがいつもどおり話しかけるものの……全ての言葉はロウの耳を右から左へと突き抜けていくだけだった。




 ◆ ◆ ◆




「はあ、今日はやっぱ調子悪いな」


 風呂も上がり、自室に戻る道すがらぼやくロウ。


 さっさと寝てしまおうと部屋に戻ると……何故かそこには半裸の女がいた。


「は? なんでお前がここに……」


 その女の名前はサーシャ。

 ほんの半日ほど前、その部下たちを倒し尽くしたブリゲイトの長だ。

 一瞬幻覚でも見せられているのかと思ったロウだったが……感知を働かせて本物であることを確認したようだ。


「言ったであろう? すぐに会うことになるだろうと」

「そんなこと言ってたか? いやそれにしたって人の家に勝手に入ってくるなよ」

「勝手とは随分ないいようだのお。

 我はお主の配下の者にきちんと許しをもろうたぞ。

()()()()()()()』とな。

 其の者は随分快く招き入れてくれたのお」

「おい、それ俺に使った術と同じのかけただろ」

「はてどうであったかの?」


 とぼけるサーシャだが、本当に騙すつもりは特になさそうな様子だ。

 それよりも、なぜあのサーシャがわざわざ単身やってきて、しかもなぜ半裸でロウの部屋のベッドでしなだれかかっているのか、それが問題だ。


「それで何のようなんだ? 悪いけど疲れてるんだ。

 寝込みを襲いに来たのならまた別の日にしてくれ」

「ふうむ。

 その通り寝込みを()()()きたのだがの……」


 そう言って更に着衣を着崩すサーシャ。

 その姿はとても妖艶で、まともな男であればすぐにでも食いついてしまいそうなほどだ。

 大きな乳房はとても柔らかそうで、その頂点にそびえる桃色の突起は小さく可愛らしい。

 これほどまでに完璧な母性の象徴はそうお目にかかれないだろう。

 もちろん彼女の武器は胸だけじゃない。

 絶妙な塩梅でさらけ出された太もも、すべすべで柔らかそうな、それでいてほっそりとした腰にある小さなおへそ、そしてその二箇所の間に存在するはずの、見えそうで見えない秘密の花園。


 男を誘惑するために計算しつくされた姿勢が、どうして興奮をそそらないことがあるだろうか。


「その割に戦意があるようには思えないんだが」


 しかしどうしたことか、先程まで随分とうぶな反応を見せ続けていたロウが、この美しすぎる女性の前ではピクリとも反応しない。

 ただただ疲れたと、興味がなさそうにしている。


 ロウ自身もこの感覚と先程までの感覚の違いに気がついたのか、まるでこいつは昨日までのマオみたいな感じだな、などと思い始めていた。

 けれど、どうして今日のマオがあんなにも綺麗で、可愛らしく、胸を熱くさせるのかまでは残念ながら気づけないようだ。


「はあ、そなたは退屈な男よの。

 我がわざわざ誘いに来てやったのに、ぴくりとも反応せぬとは。

 これほどまでにコケにされると流石に腹が立つというものよ。

 我の肉体を欲する男なんぞこの国に数百万はおろうに……」


 もうよい、とだけ言い残し、サーシャは着衣を整え直すと、何もせず帰っていってしまった。

 扉を締めるときの勢いが随分と激しかったのはきっと気のせいではないだろう。

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