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選ばれた6人の凄腕冒険者がどうとかこうとか

「申し訳ありませんが特定のブリゲイドに関する情報の公開はこちらでは一切行っておりません。

 個人的に調査をされることをおすすめします」


『愚者の行路』について調べるため、とりあえず組合に問い合わせてみた結果、こんな答えが帰ってきた。

 完璧なお役所仕事ってやつだね。

 いや、それが悪いとかそういう意味じゃなくて、この国の情報管理は結構しっかりしてるんだなあって思っただけ。

 個人的な調査を勧める辺り、聞き込みをすればすぐに分かるっていうことなんだろうけど、組合としては有名かそうでないかで対応を変えちゃったら不公平になるから一律で断っているんだろうね。


 それはそれとして。

 他にどこに聞き込みに行こうか。

 まだ真っ昼間だから酒場もあいてないしなあ。

 あの手紙の感じからするとそれなりに力のあるブリゲイドだと思うし……、こそこそ嗅ぎ回ってるとかって下手に勘ぐられて面倒事に巻き込まれるのもいやだしな。


「うーん、どうしようかな」

「何かお困りでしょうか?」


 ぽつりと呟いてしまったところを、誰かに聞かれてしまったみたいだ。

 後ろのほうから女性の声が聞こえる。


「あ、いえ特にお困りってほどではないですけど……」


 親切な人もいるもんだなあと思ってとりあえず返事をしながら振り返る。


 そこにいたのは何ともまあ優しそうな女性だった。

 外見的に目立つ特徴はなくて、取り立てて綺麗なわけでもすごく可愛いって言うほどでもないんだけど、なんだかとても安心感のある笑みをたたえている。

 服装も質素なもので、とても冒険者には見えないからきっとこの辺に住んでいる若い奥さんってところかな。

 この粗野な国にもこんな聖母のような女性がいるなんて……少し感動してしまった。


「そうでしたか?

 小さなお悩みでもよろしければ話し相手になりますよ。

 きっと一人で考えるよりも話してみたほうがうまくいくことがありますから」


 確かにそうかも。

 別に聞かれて困ることでもないし、もしかしたらこの人が何か知ってるかも知れないしね。

 これもなにかの縁だ、ちょっと相談してみよう。


「ではお言葉に甘えて……。

 実は私は最近この国に来たばかりなんですけど、この国って冒険者が大きな力を持っているじゃないですか?

 なのでどんなブリゲイドがあるのかなって思ってちょっと調べてみようと思ったんですけど……組合のほうじゃ一切情報を公開してないみたいで。

 何かいい調べ方はないかなあと考えていたところなんです」


 一応、『愚者の行路』っていう特定の団だけ調べてるとは言わないでおいた。

 この人なら多分大丈夫だけど、どこに誰の耳があるかわからないからね。

 それにこの国の勢力関係なんかを知るちょうどいい機会だし。


「そういうことでしたか。

 確かにこの国で暮らしていくならブリゲイド同士の勢力関係なんかは知っておいて損はないですからね。

 では私が知っていることをお教えしますね。

 えーっと、あら? そういえば名前をまだ聞いていませんでしたね」

「あ、そういえばそうですね。

 私はマオって言います。よろしくお願いしますね」

「マオ……さん……?」


 おや、どうしたんだろう。

 私の名前がなにか変だったのかな?


「ああ、失礼しました。

 知っている方の名前と一緒だったので、ちょっとびっくりしてしまっただけです。

 私の名前はフィーナです。

 こちらこそよろしくおねがいしますね」


 ああ、知り合いの名前と一緒だったのね。

 確かにこの世界じゃあんまりない名前だから、驚くのも無理はないか。


「それで、マオさんにお伺いしますがこの国では冒険者が実質的な統治を行っていることはご存知ですか?」

「あ、はい、それは知ってます。

 確か選ばれた6人の凄腕冒険者がどうとかこうとか」

「ええ、その通りです。

 そして、彼らが代表を努めているブリゲイドはこの国でとても強大な権力を持っています。

 それぞれお互いに名目上は不可侵を約束しているそうですが……実際にはそれぞれの目的や方針の違いなどありますから、完全な不可侵とはいっていないみたいです」


 なるほど、なんか政党政治みたいな感じになってるんだなあ。


「まず一つ目は序列第六位、『黒の戦車団』。

 こちらは力こそ全てと謳っており、他の5つに対して常に好戦的な意見を出しているとか。

 構成人数が最も多いため国内でもかなり偉そうにしていて……正直なところあまり良い評判は聞かないですね。

 マオさんも彼らにはあまり目をつけられないように気をつけたほうがいいですよ」


 ああ、戦車ね。

 もう既に目をつけられてるんだよなあ。

 あれから全然ちょっかいかけられてないけど、そのうち館を襲ってくるんじゃないかって気がしてる。

 でも人数は一番多いのか。

 6位だから微妙な立ち位置なのかと思ったけど、質よりも量で勝負してるってことなのかな。


「次に序列第五位、『相反する節制』。

 こちらは金こそが全てと謳っており、条件次第ではどんな汚れ仕事でも請け負うとかなんとか。

 この国では珍しいことに彼らが支配する区域では商人が力を持っているんですよね。

 その分いい品物も手に入りやすいですし、この国でいいものを買おうと思ったら彼らの区域にいくといいですよ」


 へえ、地獄の沙汰もなんとやらってやつか。

 これはなかなかいい情報かも。

 お金さえ出せばどんな情報でも仕入れてくれそう。

 うん、覚えておこう。


「次は序列第四位、『法王の杖』ですね。

 彼らは……そうですね、味方をとても大事にしているという話はよく聞きます。

 他者に対してもとても穏やかな対応をするとのことで、六つのブリゲイドの中では一番平和主義なのかも知れません。

 自分から他に対して敵対することはないですが……味方を傷つけたときの怒りようが恐ろしいという話もまた聞きます」


 ふうん、これはなんか面白みがないな。

 まあでも仲良くするならここが一番早そうっていうことかな?


「次は序列第三位、『審判の光』ですが……。

 彼らの目的や方針は不明です。

 第三位に位置している以上かなりの実力があるとは思うのですが、あまり大々的に活動していないみたいなので」


 不明、か。

 少し気になるけど、そういうこともあるのかな?

 フィーナさんだって何でも知ってるわけじゃないだろうしね。


「そして序列第二位、『愚者の行路』」


 おおぉ!?

 まさか知りたかった情報がここで出てくるんだ?


「彼らは、実質的にこの国で最も力を持っているブリゲイドです。

『女帝』と呼ばれる人物が支配者として君臨していて、この国にいて彼ら……、いえ、彼女に逆らうことができるのは唯一序列第一位のみでしょう。

『愚者の行路』、ひいてはその支配区域は『女帝』を喜ばせるためだけにあると言われています。

 とはいえこの一帯は愚者の支配区域ではないので、マオさんが変に心配する必要はないと思いますよ。

 彼女は一般人に興味は示しませんし、興味が無いものに対して何かをするほどお暇な方でもないですから」


 はい、興味を示されているのが私達でーす。

 むむむ、これはなかなか厄介そうな人に目をつけられちゃいましたな。

 もうこれは絶対拒否できないし、会いに行っても失礼なことをしないように細心の注意を払わなくちゃ。


 あ、でもなんで第二位なのに最も力を持っているんだろう?

 第一位は一体……?


「最後になりますが、序列第一位、『未完世界』。

 こちらは唯一、構成員が()()()という特殊なブリゲイドです。

 これがどういう意味かと言うと、実は上位6名を決めるにあたって使われる貢献度というのは、個人単位ではなく、ブリゲイド単位で集計されているのです。

 ですから普通はブリゲイドの総力を上げて貢献度を稼ぎ、その代表者が統治者として立つ、という感じになるのですが……」


 ん?

 それっておかしくない?

 構成員がトップの人だけってことはつまり貢献度を稼いでるのもそのトップの人だけなんだよね。

 で、他の5つは構成員がそれなりに居るからトップも頑張ってるだろうけど数の力でかなり有利に稼いでいるはずだと。

 それを抑えて一位に立ってるって……、やばくない?


「そうです、彼は単独でこの国に頂点に立っているのです。

 それも序列第二位に圧倒的な差をつけて。

 ちなみに第二位と第三位も格差がかなりありますので、この国の力関係は非情に分かりやすいかと思います」


 この国で暮らしていて知っておくべきことはこのくらいでしょうか、といってフィーナさんは話を終えた。

 愚者の行路の情報だけ調べるつもりが、思った以上の収穫があったな。

 っていうかこれだけの情報をわかり易くまとめて教えてくれるって……フィーナさんは女神かなにかなのかな?


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