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ロウとマオ 〜最強仙術使いと最弱JDの異世界放浪譚〜  作者: にしだ、やと。
第6話 二人の距離と新たなる選択肢
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帰ったら自慢してやるか

 サクサク進みすぎたかも知れない。

 予定では一日につき一階層進み、四日目に最深部である第四階層を踏破するはずだったんだが……今、俺は第四階層の最奥部にいる。

 それも、二日目の昼過ぎにだ。


 やはり管理事務所でもらった冊子の落書きのほうが間違っていたのか?

 冊子の元の文には最短距離で3−4時間くらいで踏破できるってあるし、確かに大体それくらいで進んでるんだよな。

 ただあの落書きが嘘を書いているとは思えないが……あのうるさいエルフも嘘をわざわざ書いたりはしない気がするんだよなあ。


 このときのロウは知る由もないが、実際ロウの進行速度は異常である。

 普通は魔物と遭遇した場合、その都度それなりの交戦時間が発生するし、連戦が起これば疲労で休憩を余儀なくされるから本当に倍程度の時間はかかってしまう。

 ロウの場合は魔物を倒すのに時間がかからないし、疲れ知らずで休憩も一切取らないから本当に最短距離を最速で進むことになり……結果的にあっというまに最奥部についてしまった、というわけである。


「ま、どっちでもいいか。ここまでの分の魔物素材で依頼のほうは十分達成したことになるだろ。

 あとはせっかくだしこの階層を適当に見て回るか」


 そういえばここがこの異界の一番奥ってわりにはなにもなかったな。

 ただの行き止まりだったし、なんでここが一番奥って扱いなんだろうな?

 しいていうなら少し広いから野営しやすそうってくらいか……。

 っていうか森なのに一番奥ってなんなんだろうな。

 別に壁があるわけじゃないんだし……。


 ああ、冊子に書いてあるのか。

 なになに?


『どの道を辿っても最終的にこの広場に行き着くようだ。

 他の行き止まりを全て確認したが、このように広場の形になっている場所は存在しなかった。

 また距離的にも第四階層入り口から最も遠い位置にあるため、ここを最奥部として問題ないだろう』


 なるほど、そんな理由で最奥部ってことにしたのか。

 なんだか適当な気がするが……まあそんなもんか。


 けどなんか気になるんだよな。

 異界ってのがなんのためにあるのかは知らんが、何の意味もなく道しかなかった場所に広場なんてできるもんなのか?

 わざわざここまで来た人に親切心でここが終着点だって伝えるためなのか?


 うーん、考えても分からんな。

 こういうのはやっぱ俺には向いてないみたいだ。

 とりあえず時間もあるしこの階層をぐるっと回ってくるかな。




「あ、ここは行き止まりみたいだな。気の流れもこれ以上感じ取れないみたいだ」


 襲いかかってくる魔物を適当に蹴散らしながらしばらく歩いてると、行き止まりに到着した。

 たしかにそこは急に道が途切れていて、奥とは違って広場にはなってみたいだ。

 こういうところにはたまに魔法の道具が落ちてるとか書いてあったけど、残念ながら落ちていない。

 拾えたらいい金になるらしいしせっかくここまで来たんだし一個くらいは見つかってほしいもんだな。


 また行き止まりについた。

 意外と行き止まりになってるところは多いらしい。

 もちろんそこにも魔法の道具は落ちてないし、気の流れがそこで止まってるところを見てもそれ以上進めるはずがなさそうだった。


 ぐるっと一周したところで日が暮れ始めたので探索は中断。

 広場に戻って野営することにした。


「結局収穫はなしか。

 魔物も大したことないしこれ以上いる理由はもうなさそうだな」


 魔法の道具も拾えず、怪しい場所も見つからず、ただのんびり散歩をしただけ。


 実際、第四階層は『季節巡りの森』の中で春の季節になっているおかげで、花々がきれいに咲き誇り、風景だけ見ればとても美しい場所なのだ。

 ここがもっと浅い階層で、もっと魔物が弱ければきっと観光名所になっていたのだろう。





 翌朝、まだ日が昇る前だったが森の奥の方から魔物の反応を感じ取り、ロウは目を覚ました。

 野営用に簡易結界を張っているからおそらく発見はされないだろうが、念の為様子を探っておく。

 食事の時間を邪魔されるのは嫌いだからだ。


 この辺りは魔物もいないのかと思ってたけど、そうでもなかったのか。

 この距離でこの動き……たまたま餌を探して森の中を這い回ってるところを感知圏内にはいったって感じか。

 それなら気にするまでもないか。

 もうすぐ日が昇るしこのまま起きて飯でも準備するかな――。


 そう考えて森の奥から気をそらした時、ふと違和感を覚えた。


 ん? 森の奥?


 魔物はこの奥にいるのか?

 ()()()()()()()()()()


 何かが引っかかっている。

 なにか大事なことを見落としているような……。


『この遊びってさ、結局相手にどれくらい間違った情報を掴ませるかってところにかかってると思うんだよね』


 その違和感の元を探ろうとしていると、何故かあのときのマオの言葉が思い出された。

 船の中で札遊びをしていたときの自信満々な一言だ。

 たしかあの時はおっさんがマオはもう強い札を持ってないと勘違いして、結局負けたんだっけな。

 後で聞いたら、出し方に癖がある風に見せてそれを見抜かせることで、その裏の本当の意図を読み取らせないようにする……なんてことを言ってたな。

 あのときは戦いでも似たような戦法取るやついそうだなとか思った記憶があるが、今はこんなこと思い出してる場合じゃないよな。


 ……いや、待てよ?


 たしかここが最奥部って言われてるのはどの経路を辿ってもこの広場にたどり着くからだったよな。

 他の階層は正しい道順じゃないと次の階層に行けないようになってたし、そんな風に違ってるならたしかに次の階層が無いように思うよな。

 実際ほかには完全な行き止まりしか無いんだし。


 そう、()()()()()()()()だ。

 違和感の正体はこれだ。

 確か昨日歩きまわってた時俺はこう感じてたはずだ。

 気の流れがそこで止まってる、と。


 じゃあこの森の奥はどうなんだ?

 広場から先……道はないように見えるが、俺は普通にその先を感じ取っている。

 そもそもなんで道が途切れてるからそれ以上いけないんなんて思い込んでたんだ?

 いや、思い込まされていた?


 つまり……。


「ここが最奥部だと見せかけて本当の最奥部への道を隠している……?」


 よし、行ってみるか。

 別に道なき道をいったところで迷うわけでもない。

 時間だってかなり余裕がある。

 それに、この国に来た理由を考えればここでこの先を見に行ってみないというのはありえない選択だ。


 マオがよく言ってるじゃないか、楽しそうなもの、ワクワクするものを探しに行きたいとかなんとか。

 あいつが今それができないなら、俺が代わりにやってやるのが筋ってもんだろう。

 それで帰ったら自慢してやるか。

 面白いもんを見つけたってな。




 ◆ ◆ ◆




「まさか本当にあるなんてな」


 道なき道を進んでいくと、この異界で何度も見たそれを見つけてしまった。

 樹木が複雑に絡み合い、弧を描いてつくりだした門。

 異界の出入り口のように、この場所とその先が隔絶された場所であることを示している。


 覚悟を決めてその門をくぐった俺は、未踏領域、『季節巡りの森』第5層に到達した。

 その目に写ったのは、一面の銀世界。

 つまり冬の季節だ。


 これだけだと単に第3階層に戻ってきたんじゃと思ってしまいそうだが……ここが第3階層ではないというのはすぐにわかった。


 魔物が襲いかかってきたからだ。

 それもまだ見たことのない、冊子にも乗っていなかった新種。

 いや、正確には似たような奴は知っている。


 ハティフローズン。

 第3階層で現れた魔物の名前だが……目の前のこいつはまさにそのハティフローズンの亜種と呼べそうな存在だった。

 全身が氷で覆われた狼のような姿はそのままに。

 ハティフローズンにはなかった巨大な角が生え、体躯も倍の4Mほどに巨大化している。

 それにどことなく、発する冷気も強烈になっていそうだ。


「こいつは腕試しに良さそうだな」


 ここまでの魔物は雑魚ばかりだったが……こいつはどうかな?

 まずはいつものように敵の実力を探る。

 といっても3階層でハティフローズンを相手取っているから、大体どんな攻め方をしてくるかは予想がつく。

 今回は単純にどれくらい攻撃力が増えているか、調べるだけだ。


 ハティフローズン亜種が勢いよく飛びかかってくる。

 この攻撃は動きをよく見ておかないと噛みつき攻撃なのか、爪でのなぎ払いなのかわかりにくいが……今回は爪みたいだ!

 ハティフローズンに比べて圧倒的に速く、重そうな一撃をぎりぎりまで観察する。そしてその強烈な一撃を受ける直前にその軌道を見切り、潜り抜けるように回避。


 よし、これくらいなら冷静に対処すれば問題ないな。


 そう思った直後、全身から何かがすうっと抜けていくような感覚が走った。

 力が抜けているわけじゃない。

 魔力も、気の流れも特に変わった感じはない。


 何をされたのかわからないまま、とりあえず様子を見るために距離を取る。

 一気に飛び退り、警戒しながら着地をすると、その時初めて違和感に気づいた。


 なにか、いつもと違う。

 そう、重心がわずかばかり後ろにずれているような……いつもなら頭に感じるわずかばかりの浮遊感がなかったような……。

 そして気になって何気なく後ろを確認しようとすると、気づいてしまった。


 面倒臭がってずっと切っていなかった長髪が、凍っていた。

 こんなこと、弱い方のハティフローズンじゃなかった。

 つまり、この亜種の攻撃は触れずに周囲から熱を奪って凍らせることもできるということか?


 幸い身体は今の所なんともないが、あんまり何度も喰らうとまずそうだ。

 それにあの角。なんとなく嫌な感じがする。


 一発見て大体の実力は測れたんだ。

 面倒なことになる前に、ここはさっさと倒してしまおう。


 再びハティフローズン亜種が飛びかかってこようとしたので、これを回避する。

 こんどはぎりぎりまで引きつけるなんてことはしない。

 むしろ相手が飛び出すより早く、やつが俺を見失うほどの早さで。


 仙術によって強化された肉体は超高速での移動を可能にする。

 この瞬間移動を肉眼で追うことは事実上不可能なはずだが――ハティフローズン亜種はそれでも、そんなことはお構いなしと言わんばかりに飛びかかっていった。


 そしてその鋭い一撃は見事にロウの姿を捉え、無残にも切り裂いてしまった。





「悪いな、残像だ」


 ()()姿()()()()()を切り裂いて満足そうに隙だらけの体を晒している亜種の横に立ち、静かに腕を振り下ろす。


「奥義――【旋一閃(センイッセン)】」


 一本の鋭い刃と見立てた手によって、あらゆる物を切断する奥義。

 それがこの【旋一閃】だ。

 ちなみに振り下ろしたときに発生する風圧を圧縮しているからほんとうの意味で手刀って言うわけではない。


 亜種の首がぽろりと落ち、数拍遅れて、巨体も倒れ込んだ。

 結局、この階層でもロウの技を持ってすれば魔物も対して活躍できないようだ。


「うーん、久しぶりに残影使ったけど案外効果ありそうだな」


 先程亜種が切り裂いた影、あれは移動術【残影(ザンエイ)】によって生み出された残像だ。

 単純に高速移動するだけなら【縮地】を使ったほうが圧倒的に便利なのでほとんど使いみちがないと思っていた。


 ただ今回【旋一閃】で倒すにあたって、多少隙を作ったほうが綺麗に切断しやすいと思ったのでふと存在を思い出し使ってみたというわけだ。

 ちなみになぜ首を落とそうと思ったかと言うと……打撃系の攻撃だと全身の氷が砕けすぎて素材としてイマイチになってしまうからである。


「それにしても新しい階層か。

 このまま進んでみてもいいけど、どれくらい時間かかるかもわからんしな。

 一度帰って報告しよう」


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