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ロウとマオ 〜最強仙術使いと最弱JDの異世界放浪譚〜  作者: にしだ、やと。
第5話 大波乱の始まり!? 冒険者の国アスクエムブラ
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ちょっと壁に声をかけられて将来について語り合っていただけ

「ねえロウ君知ってる? アスクエムブラには異界っていうのがあるんだって」

「いかい? 食えるのか?」

「食べ物じゃないよ……。

 異界っていうのは、特別な洞窟っていったらいいのかなあ。街の中にぽつんと入り口だけあってね、そこに入ると全く違う世界に出るんだって」

「へえ、それはマオが元々いたっていう異世界とは別モンなのか?」

「うん、多分違うだろうね。

 入り口は開きっぱなしで、出入りが自由にできるみたいだし。

 それに異界にもいろいろあるんだって。

 アスクエムブラの冒険者はみんな異界で素材狩りをしたり、お宝探しをして稼いでるみたいだよ」

「なるほどな。じゃあ俺たちもその異界ってやつを見に行くのか?」

「そうだね! 今の所そのつもりでいるよ!」


 異界はいわゆるダンジョンと同じものだと思う。

 今まで集めた情報によれば異界内部にはその異界のテーマに沿った魔物が出るだけじゃなく、ランダムで宝箱が出現するとか。

 妙にゲームっぽさがあるけど、なんでそんなものが出現するのかとかは未だにわかってないらしい。


 まあでも、そこで手に入る貴重な素材や宝物を狙って世界中から冒険者がやってくるから、いつのまにか国になっていたらしいなんてのはとても面白い話だなって思った。

 しかもアスクエムブラには王と呼べるような人はいないらしく、主に冒険者組合が統括しているとか。

 その冒険者組合も実務を担当するばっかりで、実際に政治的な方針を決めているのは国内で実力が認められた上位6人の冒険者だとか。

 自分の腕前一つでガッツリ稼げるだけじゃなく、国政を担うまでの地位を得られるなんて、まさに冒険者の国なんだなと感心した。


 アスクエムブラにつくのは二日後。

 はやく到着しないかなあ。


 ◆ ◆ ◆


「お、見えてきた!」


 長かった船旅もようやく終わり、まもなく港に入ろうかというところだった。

 朝食時に船員からの連絡があり、荷物はもうまとめ終わってるのであとは入港を待つだけだ。


 船上から陸の様子を眺めていると、巨大な壁が見えてきた。

 あれがアスクエムブラみたいだ。

 国としての歴史は他よりも浅いはずなのに、すごいしっかりとした壁だ。

 この国は他の国と接していない島国だから外敵なんてほとんどこなそうなのに、こんなに立派な防壁は必要なのかな。

 あ、それか逆なのかな。

 国内から人が勝手に出ないようにするとか、異界から魔物が溢れちゃったときのためとか。

 どちらにせよ、国力がかなりあるというのはよくわかった。


 港はどうやら壁の外にあるみたいだ。

 密入国とかの対策、なのかなあ。

 まあ地形的に有利な国だし外とやりとりする玄関が壁の外にあっても不思議じゃないか。


 汽笛が大きく鳴り響いた。

 どうやら入港するみたいだ。

 いよいよかあ。

 やっぱり新しい国に入る瞬間ってのは少しドキドキするね。


「身分証を見せてくれ」


 船から降りた私達は直ぐに入国のための手続きをすることにした。

 港もちょっとした町になっていて、食事をとったり宿をとって休むこともできるみたいだったけど、せっかくここまできたのにこんな他と変わり映えしないところで休んでたって仕方ない。

 というわけで脇目も振らず真っ直ぐ町を突っ切って、外壁まで来たというわけだ。


「はい、これです」


 門に詰めていた衛兵に身分証の提示を求められたので、首にかけていた組合員証を渡す。

 見せるのも恥ずかしい石の組合員証だ。

 今更ながらこの国で石ってどういう扱いなんだろう……。

 エーシル王国じゃちょっとかわいそうくらいにしか思われなかったけど、冒険者の国ともなると……なんか不安になってきた。


「ん? なんだ見習いか?

 よくこんなのでわざわざ外からうちに来る気になるな。

 まあここで追い払うわけにもいかないから入るのはいいけどな。

 この国にどんな夢を抱いてきたのかわからんが力のないやつは何もできんからな。

 せいぜい死なないようにな」


 お、おう。

 なんか呆れられちゃったよ。

 まあそれもそうかあ。

 田舎でちょっと草野球して面白かったからっていって、突然本場アメリカに渡って野球しにきました! って言ってるようなもんだもんね。


「おい、わかったら早く行ってくれ。

 あんたなんかに時間をかけるほど俺たちだって暇じゃないんだからな」


 わあ、なんて雑な対応。

 これが冒険者の国か……。

 ちょっとやばいかもしれない。


 そういえばロウ君の方は大丈夫かな?

 ここの入国審査は一人ずつだから自分で対応してもらわないといけないけど、大丈夫かなあ。

 端によってちょっと様子を見てみよう。


「身分証を見せてくれ」

「身分証ってこれでいいんだよな」


 互いに素っ気ない感じのやり取りで、入国審査を受けている。

 ロウ君はミスリルだから私みたいに雑に扱われることは無い気がするけど、さてどうなるかなあ。


「これは! 大変失礼しました。ミスリル級冒険者様でしたか!」


 組合員証を見た瞬間、敬意のかけらもなかった衛兵が途端に姿勢を正し、やや面倒臭そうだった顔が溢れんばかりの笑顔に変わってしまった。

 これがミスリル級冒険者のこの国での扱い……!!


「ん、なんかおかしいか?」

「いえいえ、とんでもございません。

 この度はアスクエムブラにお越しいただきありがとうございます。

 我々はあなた様の入国を心より歓迎いたします!」

「そうか、それはよかった」


 おお、すごい。歓迎されてる。

 そしてロウ君あんまりわかってないな。


「じゃあもう行っていいのか?」

「あっ、お待ち下さい。ええと、ロウ様ですね。

 入国後はまず国の中央にある、冒険者組合本部に必ず訪れてください。

 そちらでこの国についての説明や案内をさせていただきますので」

「ふうん、わかった。そうしよう」


 なん……だと……!?

 対応が丁寧なだけじゃなく本部に呼び出し!?

 本部って実質的にこの国の中枢だよね。

 そこまでミスリル級っていうのは重要視されているんだ……。

 うぅ、なんかすごい悔しい。


「またせたな、マオ。

 なんか中央にある本部に行けって言われたんだが、まずはそこに行くか?


 ――ってマオ大丈夫か? なんで壁と喋ってるんだ?」


 はっ!

 私とロウ君の扱いの格差という主役としての実力差を目の当たりにして、思わず現実逃避をしてしまっていた。

 危ない危ない。


「だ、大丈夫! ちょっと壁に声をかけられて将来について語り合っていただけだから!

 えっと本部に行けばいいんだよね?

 じゃ、とりあえず行ってみようか!」


 気を取り直して本部がある国の中央に向かっていく。

 この国のつくりはちょっと変わってるみたいだ。

 全体的にエーシル王国に比べて圧倒的に雑多な印象があって、特定の区画に同じ系統の店舗が集められている、というわけでもなさそう。

 武器屋があったと思ったら隣に食事処があったり、宿があるなあと思ったら向かいに工房があったり。

 建築様式も石造りだったり木造だったりがごっちゃになっていて、無計画に住人たちが好き放題作っていったような感じがよく見て取れる。


 それに道だって中央までいくなら真っ直ぐ大通りでも通しておけばいいのに、そんなことはなく、曲がりくねった道をぐるぐると回りながら進んでいかなきゃいけないらしい。

 まるでこの国全体が一つの迷宮なんじゃないかって錯覚するようなつくりだ。


 あと不思議なのは、しばらく歩いていたら唐突に街並みや住んでいる人の雰囲気がガラッと変わる瞬間があったこと。

 ある区画を境目にして、別の国にやってきたような印象を受けた。

 これはちょっと裏がありそうだからあとで調べてみることにしようと心のメモ帳に刻んでおいた。


 道順を覚えるのが大変な道のりを、案内板に従ったり聞き込みをしながら進んでいくとようやく国の中心部までたどり着くことが出来た。

 そこは大きな広場になっていて、ここだけは一切雑多な物が何一つない、整然とした空間になっていた。


 そして、その中央には立派な建物。

 王宮のような華やかさはないし、その様相はある意味では地味と言ってもいい。

 ただただ徹底的に機能性を重視した巨大で頑丈なつくり。


 国の中枢と呼ぶにふさわしい、存在感溢れるそれこそが冒険者組合本部だ。


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