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こりゃ楽な依頼だったね

 ニエールズを出て二日、海に面し切り立った岸壁にその洞窟はあった。

 洞窟の入り口に繋がる道はなく、舟で侵入するしか無い。

 そのため、近くの海岸に小さな舟が用意されていて、洞窟に用がある人は自由にこれを使っていいことになっているそうだ。


「というわけでロウ君、操舵よろしくね」


 もちろん私は舟を漕げるわけないので、ロウ君に丸投げした。

 これに関しては特に異議がないみたいだったから、ロウ君もだいぶわかってきてる感じだね。


 組合で貰った地図を元に進む方向を指示して少し漕いだら、目的地が視認できた。

 こんな洞窟よく見つけたなと思うし、さらにその最深部の鉱石なんてものを発見するなんて、昔の冒険者っていうのは本当に冒険してたんだなと感心した。


 間もなく洞窟に侵入するぞというところで、用意しておいたランタン型の照明魔道具を取り出しておく。

 私のこの洞窟での役割は荷物持ちと、照明担当だ。


 洞窟に入ってしばらく舟で進むと、やがて水路が狭くなっていき、逆に地面が露出してきた。

 その道幅が十分になったなと思うくらいのところに杭が刺さっていて、縄がつながっている。

 どうやらここに舟を留めておけということらしい。

 ロウ君にその旨を指示して、洞窟内部に降り立つ。


「よし、しばらくは道なりにすすめばいいみたいだからロウ君は前おねがいね。

 分かれ道についたらどっちに行くか私が指示するから」

「ああ、了解した。水の中に魔物がいるみたいだからマオは壁側に寄っておいたほうがいいだろうな」

「うん、そうするね」


 陸地にも魔物はいるが、ロウ君が通ったあとの壁際であれば絶対に安全だ。

 生体感知を掻い潜れる魔物がこんなところにいるわけないからね。


 案の定、少し進んだ頃にロウ君が唐突に壁を殴っていた。


「なにかいたのかな?」

「ああ、壁になんかいたな。何がいたのかはしらんけど」

「壁なら……ミミックかこのランドモレイってやつかなあ。

 壁が魔物だった? 壁の中にいた?」

「中だな」

「ならランドモレイのほうだね。うーん、取り出すのも面倒だし放置でいっか」


 ちなみにどうやって壁の中の魔物を倒したのか、気になったので聞いてみたら、


「いまのは仙術奥義の【雷鳴破碎(ライメイハサイ)】だな。

 物を貫通して好きな一点に衝撃を伝えて破壊することができるんだ」

「うわー、これまた随分えげつない技使えるんだね……」


 いわゆる裏当てとか鎧通しって呼ばれる技の部類かな。

 つまりロウ君相手にはどんなに硬い鎧を装備して向かっていっても無駄ってことだよね……絶対敵にしたくないなあ。

 味方でよかった。


 次に現れたのは水棲の魔物だった。

 ロウ君が立ち止まって水路の方を見たと思ったら、激しい水しぶきとともに大きな影が飛びかかってくるのが見えた。


 おおう、こいつはすごい。

 2メートル以上ある巨躯、なんでも貫きそうな鋭く大きな牙。

 大きくせり出した顎に何を考えているのかわからない眼。

 まさにモンスターって感じだ。


 水路から飛び出してきたその魚はまっすぐにロウに突撃していく。

 もちろんロウにその攻撃が通じるはずがないが、それでもその勢いの激しさは並の冒険者であれば大打撃を免れなかっただろう。

 ロウは落ち着いてその場から飛び退き、突撃を回避する。

 しかし魚も突撃だけでは終わらず、その勢いを利用して体をしならせ、噛みつき攻撃から尻尾での攻撃に切り替える。

 まさに隙を生じぬ二段構えだ。


「まあでも、相手が悪すぎたね、お魚さん」


 本来水中戦闘のほうが得意な魚型の魔物が、不得手な地上で格上相手に敵うはずもなく。

 結局、二段構えの攻撃によって生まれてしまった隙をつかれてあえなく轟沈した。


「これはバラクーズって魔物だったみたいだね。

 牙が素材として重宝してるんだって。

 荷物には余裕があるだろうし一応剥ぎ取っておこっか」

「了解。ところでこいつの肉は食えるのか?」

「肉? うーん、毒をもってることもあるって書いてあるね。

 これは多分生物濃縮だろうなあ。

 食べないほうがいいと思うよ」

「そうか……」


 その後も30分に一戦くらいの間隔で、魔物と遭遇していった。


 一番怖かったのはゲゲっていうでっかいムカデみたいな魔物かな……。

 あれのことは思い出したくないくらい怖い、っていうか気持ち悪かった。

 虫型の魔物って、大抵地球にいたようなやつをそのままでっかくした感じのだから、本当に気持ち悪いんだよね。

 妙にテカテカしてたり、足がうねうね動いてたり、目とかも……。

 ああ、あんまり考えたくない。


 あと少しだけロウ君が苦戦してたのはバッツァントっていう魔物。

 こいつはコウモリっぽい虫なんだけど、群れで活動していて、一度に大量に襲ってくるからさすがのロウ君も鬱陶しそうにしていた。

 仙術は基本的に一対一を想定しているみたいで、対多数になると本領を発揮できないんだそうな。

 特にバッツァントみたいに体長が50cmくらいの小さなやつだと、尚更だね。

 この時ばっかりは私も自衛くらいは出来たら良かったなって思ったかな。


 でも後から聞いた話だと、一応仙術の奥義に範囲攻撃の技があるらしくて、じゃあなんでそれ使わなかったの? って聞いたら、


「あれは敵味方関係なく攻撃しちまうから、マオにあたって多分マオが死ぬ」


 って言ってた。

 私を思って使わないでくれるなんて、ロウ君マジ優しい。


 そんなこんなで洞窟の中を歩き続けて、ようやく休憩地点にたどり着いた。

 休憩地点はいままでこの洞窟を探索してきた冒険者たちが用意してくれた、比較的安全な小部屋だ。

 魔物が入ってこないよう結界の魔道具が設置されている他、簡易かまどなどの野営に最低限必要なものが設置してある。


「よし、時間も夜だし今日はここで野営するよ。

 結界があるから大丈夫だと思うけど、念の為寝ている間も警戒よろしくね」


 ちなみにロウ君は寝ていても外敵の接近に気づけるらしく、これまでの旅路でも安心して寝ることが出来ていた。

 普通は寝ずの番を交代でやらなきゃいけないから、これは本当にありがたかった。


「この調子なら問題なく明日の昼には最深部につけそうだね。

 今日も特に危険な場面はなかったと思うし、こりゃ楽な依頼だったね」

「俺としてはもう少しくらい歯ごたえがあってくれたほうが嬉しいんだけどな」


 うーん、ロウ君が歯ごたえあるような依頼ってとても人の手におえないようなものな気がするんだけど。

 期待するならここに住んでるっていう亜竜を見てみたいけど、めったに出ないみたいだし無理だろうなあ。

 それに亜竜も楽に倒せるとか言ってたし。


 まあ、今日は早いけどすることもないしもう寝よう。


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