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言われてみれば確かに……

「あァ? 誰だァあんたァ? ――っとォ、そっちはロウじゃねェか!!」

「うん? ああ、あんたか。こんなところで会うなんて偶然だな」


 その店員の名はヴァララローグ。以前リグルー付近の街道でロウ君が撃退した、あの妖魔だ。

 どうやら公務員ではなくてただのアルバイターらしい。


「ってそうじゃなくて! なんであなたがこんなところで働いてるわけ!?

 あなたそういうキャラだった!?」

「ったくよォ、誰だかしらねェがもうちっと静かに頼むぜェ。

 今は仕事中なんだからよォ。

 ……あときゃらってどういう意味だァ?」

「私はマオよ! なんでロウ君覚えてて私のこと覚えてないわけ!?」

「いやマオ、あの時あんた端の方にいただけの背景だったろ。

 覚えてるわけないって。

 ……あときゃらってどういう意味だ?」

「くっ、言われてみれば確かに……!! ちなみにキャラっていうのはその人の性格とか性質とか、そういう人物かどうかって意味だよ!」

「まァ俺は仕事があるから話はまたあとでなァ」


 な、なんてマイペースな人なんだろう。

 いやでも仕事中なら仕事優先する……か……?


「おゥ、またせたなァ。それで、ロウは何しにこの街にきたんだァ?」


 食事を済ませてしばらく休憩していると、仕事が片付いたのかヴァララローグが私達の席にやってきた。

 わざわざ声をかけてくる辺り、本当に律儀な男だ。

 とても人様に迷惑をかけるような人物とは思えない。


「ん、ああ、そりゃ船に乗るためだよ。行き先は……アスクエムブラだったか?」

「へェ! そいつは奇遇だなァ。オレも船に乗りたくてよォ」

「え、じゃあなんでこんなところで働いているの?」

「あァ? そンなん金稼ぐために決まッてるだろゥが。

 街に着いたのはいいが港に行ったら金を払えッつわれてなァ。

 こうして毎日働いてるってわけよォ」


 え? なんで?

 この人かなり強いよね?

 海の家なんかで働くより冒険者として難易度の高い依頼を受けたほうが稼ぎいいと思うんだけど……。


「ま、そンなわけだからよォ、悪ィがロウと戦うのはしばらくお預けなんだわ」

「そうか、せっかく会えたのに手合わせできないのは少し残念だが、金を稼ぐのも大事だもんな」

「おゥよ!」

「いやいやいや、あなた戦えるんだから魔物狩りとかすればもっと手早く稼げるんじゃないの!? なんでこんなところで真面目に料理なんてしちゃってるの!? っていうか料理できたの!?」


 二人があまりにもマイペースすぎて突っ込みが追いついていない。

 いつもは人を振り回す側のマオでも、この二人にかかれば逆に振り回される側になってしまうようだ。


「あン? 料理くらい戦士なら誰でもできるだろォが。戦士と料理ってのはァ切ッても切り離せない関係ってェそれ昔からずッと言われてるぞ?」

「確かに、俺が知ってる強いやつはみんな料理がうまいな。

 俺も料理は覚えるつもりだし、うん、料理はできないとだめだな」

「だろォ?

 ッてかロウは料理できないのかァ?

 だらしねェなァ」

「まあ、生まれてからずっと修行しかしてこなかったからな。

 最低限の調理はできるが、本格的な料理となるとまだ手を付けてないな」

「そーかァ。

 まあヒューマンってのは寿命が短いもんなァ。

 俺もロウくらいの歳のころはなんもできなかッたような気もするわ」

「へえ、あんたもか。

 妖魔っていうのは寿命あるのか?

 あんたはどれくらい生きてるんだ?」

「かれこれ500年は生きてるだろゥなァ」


 うーん、なるほど。

 私はこの二人の間に入るのは無理だな。

 大人しくモブAになろう。

 ってか戦士と料理が切り離せないってそれどこのライ○ックさんですか……。


「ねえねえ、お二人とも盛り上がってるところ悪いんだけど、結局の所ヴァララローグは真面目に働いてるだけで、特になにか悪さをしようってわけじゃないんだよね?」


 すっかり盛り上がっている二人を放っておくといつまでも聞きたいことが聞けなそうなので、頃合いを見計らって切り込んでいく。


「あン? 悪さだァ? オレがそんなことするわけねェだろォ?

 ヒューマン同士のあれこれになんぞ興味はねェからな」

「でもこの前リグルーで街道封鎖してたじゃん」

「ありゃァ強い奴探すのが面倒だッただけだ。あれくらい大したことねェだろ?」


 あ、この男完全に自分が興味あること以外に目もくれない人だ。

 妖魔族っていう種族性がそうさせるのかなあ。

 自分が害される心配がないから、他者に興味がなくなる?

 まあでも少なくとも悪意は感じられないし信じて大丈夫そうかな……。


「ヒューマンにとっては結構一大事だったんだけど……。

 まあ悪意はなさそうだしいいや。

 私からの質問はそれだけだから、二人とも気が済むまで喋り続けていいよ」


「あァ、そういやお前ェらはすぐ船に乗りたいのかァ?」

「うん? そうだよ。この街でしたいことはそんなにないしね」

「客が話してたんだけどよォ、船はいま動いてないらしいぜェ。

 詳しい話は知らんけどなァ」


 なん……だと……。

 ここまできて運航休止中?

 これは早めに港に行ってどういうことか聞きに行かないとだなあ。


 ◆ ◆ ◆


 翌日。ヴァララローグに聞いた話の真偽を確かめるため、港にきていた。


「悪いね、アスクエムブラ行きの船はしばらく出せないんだ」

「ええ、それはどうしてですか?」


 早速乗り場らしき場所にいって、退屈そうにしていた職員に話を聞いてみた。


「いやそれがね、少し前にあった嵐で船の重要な部品が壊れてしまってね。

 幸い船体は無事でここまでは戻ってこれたんだが、その部品を取り替えないことには安全に航行できそうもないんだよ」

「その修理ってどれくらいかかるんですか?」

「うーん、そうだねえ。材料が貴重だからそれが手に入り次第ってところだね。

 一応冒険者組合にも依頼は出しているんだけど、難易度の高い依頼になってしまうから今日明日で手に入るとは言えないだろうね」

「予備とかは作ってなかったんですか?

「滅多なことじゃ壊れない上に材料が貴重だからね。お偉いさんがケチって予備を用意してなかったのさ。

 ま、こんなことお嬢ちゃんに言ったって仕方ないけどね……。

 ああでも、聞いた話じゃこの街にミスリル級の冒険者が来てるらしいから、その人が依頼を受けてくれれば案外早く修理が終わるかも知れないよ」


 なるほどね。

 これはもう、イベント発生確定ですよ。

 港町のど定番イベント、運航休止の原因を解決するやつ!

 あのおじさんもミスリル級冒険者に期待してるみたいだしね。

 ここは主人公らしくさくっと解決してあげましょう!


「そんなわけでロウ君、早速冒険者組合にいくよ!」

「はいはい」


 冒険者組合に行くと、確かにその依頼が目立つところに貼ってあった。

 依頼の等級は金級。

 依頼内容は、南にある洞窟の最深部で採取できる希少鉱石『ヴェラカルカ鉱石』の採取。

 洞窟内部には水が浸入しているため水棲の魔物が生息しており、危険度が高い。

 また、鉱脈付近には亜竜が生息しているという報告もあるという。


 どうやらこの亜竜が生息しているかもという情報が、依頼の等級を上げ、なかなか依頼を受けたがる人がでない理由みたいだ。

 現に、


「え、こちらを受けてくれるんですか!!

 ……あの、事前情報とかきちんと確認しましたか……?」


 などと、受付のお姉さんにすごく喜ばれつつも心配されるくらいだ。


「ええ、大丈夫ですよ。私は戦闘力無いですけど、こっちのロウ君がミスリルですので。それなら安心ですよね?」

「!! それならきっと大丈夫だと思います!

 亜竜の報告はあくまで噂ですからね。

 真偽が確かめられているわけでもないんです。

 ただ、組合としても変に等級を下げたり情報を隠したりして冒険者を危険な目に合わせるわけにはいきませんので、こうして確認をとっているのです」

「なるほど、まあ本当に亜竜がでても大丈夫だと思いますよ。

 ……ね、そうだよね?」

「うん? 亜竜なら大丈夫じゃないか? ただの魔物だろ」

「亜竜をただの魔物扱い……ミスリル級とは本当にすごいんですね。わかりました。では採取場所についての詳細情報がこちらになります」


 ふむふむ、洞窟はこの街から南に2日ほど歩いたところにあるのか。

 生息している魔物は、うん、よくわからない。

 とりあえず危険な毒を使ってくるような魔物はいないみたいだし事前に準備することはないということがわかったのでいいか。


 洞窟の深さは……片道で2日くらい潜る必要があるんだ。

 結構深いなあ。


 ってことは旅程は移動時間で4日、洞窟で4日の計8日か。

 うーん、思ったよりもかかるな。

 今日はとりあえず必要なものを揃えて、明日向かうことにしよう。


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