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それで本日はどういったご用件で

「ねえロウ君、ほんっとうにアルネシア王女様がアーシアちゃんなの?

 見間違いとかじゃなくって?」

「だから何度も言ってるだろ」


 王女様の挨拶が終わり、祭が終わったのでロウとマオの二人は宿の部屋に戻ってきていた。

 どうやらマオは、ロウの言葉にまだ疑いを持っているようだ。


「いやいや、いくらなんでもそれは出来すぎてるって! ずるいよ!」

「ずるいってなんだよ……。

 あのな、俺は別に顔だけで人を区別してるわけじゃないんだよ。

 散々いままで説明してきたんだからマオも知ってるだろ、生体感知のこと。

 そりゃ普通は似たような波動の人が多いから区別しにくいとかあるけどな、アーシアは特別だよ。あんな分かりやすい波動を見間違える訳がない」

「うーん、そこまでロウ君がいうなら本当なのかあ……はあ」


 なんだろうなあ、この負けた感じ。

 普通は転移者である私がそういうお約束な立ち位置にいるはずなのに。

 これじゃ私がまるで噛ませ犬ポジションじゃん!


「まあでもさすがにアーシアが出てきた時はびっくりしたけどな」

「あれ? でもそうするとロウ君は王女様を助けたってことになるんだよね。これはひょっとしたら呼び出されるかもね」

「ああ、なんかそれっぽいことは最後に会ったときに言ってたけどな。

 俺たちもいつまで王都にいるかわからんからマオには言ってなかったが」

「そういう大事なことは早く言おうよ!!」


 そういうことならもう少しの間は王都にいてもいいかな?

 まだギムレーさんからお金も貰ってないし。

 それにもう少し情報収集して次の行き先決めないとな。


「あ、でも結局そのアーシアちゃん……いや、王女様かな? 彼女を狙ったのって誰なんだろうね。結構王都は平和そうに思ったんだけど、やっぱり権力争いとか、国家転覆を狙う裏の組織とかあるのかなあ」

「さあな。そういうのはアーシアが調べるって言ってたから俺たちが知る必要はないんじゃないか?」

「いやいや……こういう展開ならきっと私達がその黒幕を見つけ出して倒す流れになるんだよ!

 うんうん、そうだね。そのほうが面白いからそういう方向にしよう!」


 よし、そうと決まれば次の目的地を考えつつ、それとなく情報収集して呼び出しを待つことにしよう。

 ロウ君がものすごーく嫌そうな顔をしてるけど、無視だね。


 ◆ ◆ ◆


 翌朝、宿の食堂でご飯を食べていると来客があった。


「朝食中のところ失礼。ミスリル級冒険者のロウ殿で間違いないか?」

「ん? そうだけど、あんたは?」

「私はアルネシア王女親衛隊所属騎士、エリアルというものだ。

 ミスリル級冒険者であるロウ殿に王女様が是非お会いしたいとのことで、連れてくるよう仰せつかってきた。よろしいか?」


 エリアルと名乗る女性は派手ではないが仕立てのよい、立派な服装をしていた。

 騎士と名乗っている通り、腰には剣を帯びており、体の要所を守るように美しい白銀の防具を装備している。

 これだけで怪しい人物ではない、というのは一目瞭然だ。


「今日は予定ないし構いませんよ」

「私はロウ殿に聞いておるのだ。あなたがどなたかは存じ上げないが口を挟まないでくれるか」


 私が答えると、むっとしたようにエリアルが言った。

 うん、この人はなかなか堅物だね。

 あくまでロウ君を呼び出しにきただけで私は関係ないだろうってことなのかな。

 うーん、でも私も着いていきたいしなあ。


「いや、エリアルって言ったか?

 すまんが俺は基本的にマオに従って行動しているからな。

 俺を連れて行くっていうならマオも一緒だ。

 だからマオが行くって言うなら行くし、行かないって言わなきゃいかないよ」


 おぉ、ロウ君がなんかいい感じにフォローしてくれた!

 たまにはやるじゃん!


「む、そうなのか。王女様にはロウ殿の話しか聞いていなかったのでな。

 ふむ……どうするか。

 すまないが私には同行者を許可する決定権がないものでな」

「あ、それなら確認をとってきてくるまでここで待っていてもいいですよ。

 それほど時間もかからないでしょう?」

「そうだな……そうさせてもらおう。申し訳ない」


 朝食の続きを終えて、お茶を飲みながらしばらく待っているとエリアルが戻ってきた。

 ロウが信頼しているのなら問題ない、という話だったのでそれなら大丈夫だよね、といって一緒に王宮に向かう。


 案内された先は王宮の一角にある応接室だ。

 部屋につくまで歩きながら内装を観察していたけれど、全体的に華美ではあるが派手すぎない、とても趣味がいいつくりだと思った。

 変に贅沢をしているという印象はなく、かといって威厳を損なうわけでもない、実に調和の取れたよい内装だ。

 これだけでもこの国がよい為政者によって運営されていると予想できる。


「お待たせいたしましたわ」


 座り心地のいい椅子に腰掛けて寛いでいると、扉が開き、静かな声とともに若い女性と初老の男性が入ってきた。

 一応礼儀として立ち上がって二人を迎える。

 ロウ君が立ち上がろうとしなかったので小突いて催促した。


 女性の方はたぶん王女様かな。

 男性は誰だろう?

 まさか王様ってことはないよね……?

 いや、でも可能性としてはあるか……。なんかすごい立派な服着てるし。

 それにしても男性の方、すごい眼力だな。

 射抜かれるみたいな感覚がする。

 それにかなりこちらのことを観察しているみたいだ。


「ふふふ、そうかしこまらないでいいですわよ。

 ここは非公式な場になりますからね」

「あ、それは恐縮です。王女様にお会いできて光栄です」


 王女様と男性はとても優雅な動きで対面の椅子に座る。

 それを見て私達も椅子に座る。と思ったらロウ君はずっと座ったままだった。

 この野郎。


「改めまして、本日は突然の呼び出しに応じて頂いて感謝いたしますわ。

 もうご存知とは思いますが、わたくしが第一王女のアルネシアですわ。

 ロウさんとこの姿でお会いするのは初めてですわね。驚いてくれました?」

「ああ、少しな。まあでもいろいろと納得したよ」

「ちょっとロウ君! 王女様相手なんだから少しは口調気をつけてよ!」


 私が小声で注意すると、王女様は楽しそうに笑って、構わないですわと言ってくれた。

 めっちゃいい人だ!

 男性の方はずっと黙っているけど、私達の一挙一動を逃すまいとしているような様子もあるなあ。まるで品定めされてるみたい。


「ロウさんのそういうところ好きですもの。

 それで、あなたはマオさん、でよろしいですか?

 ロウさんのお連れの方ということですが」

「あ、はい。はじめまして。

 ウ君がお世話になったみたいでありがとうございます。マオって言います。

 ロウ君とは一緒に旅をしている、相方みたいなものです」

「旅の相方ですか。恋人……というわけではなさそうですわね。

 こちらこそロウさんにはとてもお世話になりましたわ。大変感謝しております」

「あの、それで本日はどういったご用件で呼び出されたのでしょうか?」


 用件なんてものは分かりきっていたけど、形としてきちんと聞いておく。


「そうですわね。その話をすぐにしてもよいのですがその前に」


 そう言って、王女様はとなりの男性に目を向けた。


「いかがです? わたくしは問題ないと思っておりますわ」

「……ふむ、大丈夫だろう」


 二人でなにか通じ合っている。

 何が大丈夫なんだろう。というかマジでこの人だれだろう。

 はっ! そうか! これはきっとあれだ、私達が信用に値するか判断して、もしそうなら極秘の依頼をする的なパターンだ!!

 きたぞきたぞ!


「それでは改めてお話をさせていただきますわ。

 まず今日お呼びしたのは他でもありません。先日の事件について、正式に感謝を述べさせていただくためですわ。

 状況的に考えてロウさんはわたくしを助ける義務があるわけではないのに、わざわざ危険を顧みず助けていただきましたわ。

 もしもロウさんが助けに来てくれなければわたくしは今ここにいることができなかったでしょう。

 本当にありがとうございます」


 そこで一度言葉を区切り、王女様が頭を下げる。

 おお、こんなに偉い人が頭を下げるなんてすごいな。


「さて、この件について国としてはきちんと謝礼を用意しなければなりませんわ。

 本来であれば領地を与えるに値する功績なのですが、ことはそう単純にはいかないのです。

 何しろ今回の事件は、わたくしがお忍びで街に出ていたときの出来事。

『ただのアーシア』がさらわれただけであって、『アルネシア』はさらわれていないのです」


 なるほど、そういう話になってくるのか。

 さっきここが非公式の場だって言ってたのも納得だな。


「なので申し訳ありませんが、領地を与えることは出来ません。

 とはいえ謝礼を用意しないというわけにもいかないので、代わりと言ってはなんですがこちらをご用意いたしましたわ」


 王女様が手を上げて合図をすると、控えていた使用人の一人が小袋と綺麗な箱を持ってきた。

 袋のほうはきっとお金だろうけど、箱の方は何かな。


「まず、角金貨で100枚、つまり金貨1000枚を用意しましたわ。

 少ないかも知れませんが、何分非公式なことになりますので、ご理解いただければと思いますわ」

「いえ、十分です。ありがとうございます」

「それと、こちらはエーシル家の紋章が刻まれた記章になりますわ。

 こちらはお二人分ご用意しましたのでどうぞお受取りください」

「記章……え、それってつまり」

「はい、この記章を持っている限りエーシル王国が後ろ盾になるということの証になりますわ。是非活用していただければ」


 おぉぉ、これはすごいぞ。

 まさかこんな物語序盤でもらえるなんて。

 エーシル王国編はじまったね!


「ありがたく頂戴いたします」

「はいですわ。

 さて、続いて今回の事件についてなのですが、お二人にお願いしたいことがありますわ」


 お、これはきたか!?


「今回の事件はどうやら継承権のある私を失脚させるために、対抗派閥となる兄上らと繋がりの強い貴族が仕組んだものであるということがわかりました。

 これは私が王族に代々受け継がれてきた固有魔法を特に強く継承しており、生まれた順に関わらず王位継承権第一位になってしまったことが原因のようですわ」

「なるほど。私が見た限りだとこの国はすごく平和だと思っていたんですけど、やはり派閥争いというものはあるんですね」

「ええ、残念なことに。以前から怪しい動きはあったのですが、なかなか尻尾を掴むことが出来ずに手をこまねいていたのです。

 しかし幸運なことに彼らの目論見は失敗に終わり、そのおかげで逆に彼らの手がかりを得ることが出来ましたわ」


 うんうん、だから私達に追い詰めるのを手伝ってほしいっていう話ね。

 おっけー。おっけー。


「このまま事が進めばそういった不穏な動きが表面に出ることなく、すべて解決できそうなのですわ。

 というわけでお二人には、今回の事件については絶対に口外しないことを約束してほしいのです。

 民にいらぬ不安の種を植え付けるわけにはいけませんしね。


 そして、変に怪しい動きを探るようなことをしないということもお願いしたいですわ。

 いま事件について詳しくお二人に伝えたのは、お二人が信頼に値すると私とお父様の二人が判断したからです。もちろん応じてくださいますわよね?」


 ん、それって……あれ?

 もう事件は解決できたから出る幕はないってこと?

 それどころか下手に口出ししたら許さんぞっていう脅しでもあるよね?

 あれ? あれ?

 なんか話が違うぞ……。


「もちろんだ。俺もマオも喋らないし、これ以上首を突っ込んだりはしないよ」


 少し混乱していると、ずっと黙っていたロウ君がやけにかっこよく断言した。

 そんな風に言われたら了承するしかないじゃないか……。


「はい、もちろんですよ。ロウ君の言う通り、誓います」

「そう言ってくれると思いましたわ」


 っていうかさらっとお父様って言ってたけどやっぱり王様だったのかよ!!


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