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ふふふ、ロウさんから頂いちゃいました

「あ、これなんていかがです?」

「なんだよこれ……趣味悪すぎるだろ」


 アーシアが見つけてきた服は装飾がごてごてとついた派手な服だった。

 無駄に毛皮とか付いてるし、きらきらしてる。

 それにこんなのは着なくてもわかる。絶対に動きにくい。


「そうかしら? 似合うと思いましたのに」


 一体どういう感覚してるんだか……。


「あ、それでしたらこっちはどうです?

 流行りを取り入れた素敵な仕立てですわ!」

「いや、こんなの動きにくいだろ……」


 アーシアは色々すすめてくるが、どれも動きにくそうだ。

 それに素材もいまいち戦闘に向いてなさそうだな。


「なかなか決まりませんわね。ロウさんはどういうのが好みなんですか?」

「好み? うーん。考えたこともなかったな」


 服なんて動きやすくて戦いやすければ何でもいいと思ってたからな。

 それこそ下だって姉さんがうるさいから着けるようにしてるだけだし。


 ちなみにいま身につけている装備は全て魔物素材で仕立てあげた特別製だ。

 仙術が使いやすいように外気と親和性が高くなっている。

 動きも阻害しないし自作ながらなかなかよい出来だと思っている。


「でしたらその下衣と合わせたほうがいいですわね」

「ん、そうだな。組み合わせとかはよくわからんけどな」


「うーん、このあたりでしょうか」


 これか……。変に派手じゃないし悪くはないが……。


「どうにも動きにくそうなんだよな。まずこの袖の部分か? 

 腕は特に大事な部位だから少しでも動きを阻害するのは勘弁したいな」

「袖があったところでほとんど動きやすさなんて変わらないと思うのですけれど……」

「いやいや、少しでも無駄になるところは徹底的に排除したいんだ」

「随分こだわるんですのね……」


 結局そのあともあれやこれやと相談して、一から仕立てて貰うことになった。

 素材もこだわりたかったし、袖をなくして、なるべくひらひらしないように、胴となるべく密着するように、などなど要望をあげていったら、そんなのは一から作るしかない、と言われてしまったからだ。

 まあ急ぐものでもないし、多少高くなっても不満が残らないものにしたかったから丁度いいだろう。


「さて、買い物もおわったしどうするか」

「小さな商店も見てみたいですわね。ギムレー商会はやはり少し特別だと思うので、もう少し市井に近い場所もみたいですわ」


 それなら昨日ちょっと見てまわった商店街にいけばいいか。


「これはまた大盛況ですわね……!!」

「そうだな」


 商店街は相変わらずの賑わいだった。

 俺は特に見たいものはないが、アーシアがとても目を輝かせているので好きにまわらせるのがいいだろう。


「このあたりは専門店が多いんですわね。

 どのお店も活気があって見て回るだけでも楽しいですわ!」

「それはよかったな」


 そういえば前の街――リグルーで初めて商店街を周ったときのマオもこんな感じだったな。

 いや、でもアーシアの様子はマオとは少し違うな。

 マオは半分くらいは打算的というか、純粋さがあまりないんだよな。

 知らないものに対する興味もあるだろうけど、そこから別のものを読み取ろうとしているような。俺が戦場で相手の様子を探るのに近い雰囲気を感じるんだよな。


 それに対してアーシアは無邪気さの塊だ。

 本当に見るもの全てが新鮮で、心の底から楽しんでる。

 アーシアが異世界人なんてことはないだろうし、やっぱりどこぞの箱入り娘ってやつなんだろうな。


「ロウさんロウさん、これどうかしら?」

「ん、どうって?」


 ぼんやり考え事をしていたらアーシアに手招きされた。

 この店は……昨日も見た金属細工の店だな。

 気に入ったのでもあったのか?


「似合ってるかどうか聞いてるに決まっていますわ!

 どうです? 似合います?」

「そういうことか。まあいいんじゃないか」

「もう、適当ですのね。そんなんじゃ女の子のお相手は務まりませんわよ」


 いやそんなのは務まらなくていいんだが……。

 けどまあそうだな。

 なんとなく並んでいる品を見渡す。

 アーシアならその桃色の花よりはこっちのほうが良さそうに見える。


「なあ、アーシア」

「なんです? もしかして買っていただけますの?」

「いや、そういうわけじゃないんだが。アーシアならこっちの葉っぱを模したやつのほうが似合いそうだと思ってな」


 そう言って、端の方にあった風になびく葉を連想するような形の髪飾りを選んでやった。

 それを見たアーシアは、それまでのちょっとだけわざとらしい不機嫌な顔を驚いたような表情に変化させ、かと思ったらみるみる顔を輝かせていき、


「これを……ロウさんが……!! 素敵ですわ!!」


 なんてとても喜びをあらわにした。


「せっかく選んでくださったのですし記念に欲しいですわ! ロウさん、買ってくださいますか?」

「自分で買えばいいじゃないか」

「それはダメですよ、こういうものは殿方から贈っていただくのが一番うれしいんです。私達が出会って仲良くなった記念だと思って、ここは一つ買っていただけませんか?」


 仲良くなったつもりはなかったんだが、ここで渋っても結局最後には押し切られるんだろうなと思って素直に買ってやることにした。

 値段もそんなに高くないし、金には特に困ってないしな。


「ふふふ、ロウさんから頂いちゃいました」


 アーシアはといえば早速髪飾りを着けて、嬉しそうにその髪飾りを触っている。

 ま、喜んでもらえたなら悪い気はしないな。


 ◆ ◆ ◆


「これでこの商店街は一通りみたな」


 買い物をしたのは髪飾りくらいだったが、その後も色々と店をまわった。

 途中怪しげな雰囲気の木彫りの像を売る店で捕まり、無駄に長い売り文句を聞かされ続けたのにはさすがにうんざりしたが、そんな店でもアーシアは楽しそうにしていた。

 マオだったら詐欺だね、とかいって一刀両断にしていただろうに、やっぱりこういうところでアーシアは素直なところがあると思う。


「あちらの路地の先には何があるんでしょうね?」

「ん? あっちは知らないな。あんまり人はいなそうだが」


 アーシアが指さしていたのはあまり人が入らなそうな裏路地の方向だった。

 生体感知の反応から言っても、人の数がだいぶ少ないというのは明らかだ。

 ああいうところにはあまり行かないほうがいいとは聞いているが、このお嬢さんはどうするのやら。

 まあ何かあっても守ってやればいいだろう。


「ちょっといってみましょう!

 ふふふ、冒険者の探検みたいでわくわくしますわね」


 裏路地に入り、どんどん進んでいく。

 やはりあまり人が入らないみたいで、すすめば進むほどに明らかに薄汚れていっているのがわかる。

 王都でも人があまり寄り付かないところってのはあるんだな。


 道は途中から曲がりくねるようになっていたが、アーシアは楽しそうに右へ左へと進んでいく。

 これ、ちゃんと道把握してるのか?

 帰る段階になって迷ったとか言い始めなきゃいいが。


 とある路地に入ったところで、視線を感じた。

 探るような視線、これはよそ者に対する強い警戒心だろうか。

 いや、どちらかといえばもうちょっと後ろ暗いものを感じるな。

 こういう視線は山を降りてから時々感じることがあったので、よくわかる。


「よう、嬢ちゃん。こんなところになにかようかい?」


 ふらりと、胡散臭い男が目の前に歩み出てきた。

 やはり小悪党の類がでてきたようだ。

 彼の言葉を皮切りに四方八方からぞろぞろと出てくる。

 それぞれ思い思いの獲物をもっているようだが、どれも質はよくなさそうだ。


「あら、ちょっと散歩していただけですわよ。あなた方こそ何か御用ですの?」

「そうかい、散歩するほど暇ならちょいと俺たちと遊んでくれやしないかねぇ? その連れの兄ちゃんなんてほっておいてさ」

「うーん、それはちょっと出来ない相談ですわね。私と一緒に過ごしていいのは彼みたいに誠実な方でないと」

「そうかい。ならあっちの兄ちゃんをまずやっちまってからお話しようかねぇ」


 男がそう言うと、アーシアを3人で囲いつつ、他の連中はこちらにやってきた。

 この人数、この位置関係なら特に問題はなさそうだ。


「あー、一応俺はミスリル級の冒険者ってことになってるんだが、それでもやるつもりか?」

「おいおい、ミスリルがこんなところにくるわけ無いだろう。どうせそれはよく似せて作った飾りだろ」


 どうやらこのへんは彼らの縄張りのようで、まともな冒険者はくるはずがないと思っているみたいだ。

 まあ俺一人なら絶対こんな何もないところにはこないな。

 今はアーシアについてきただけだし。


「そうか。まあ信じないなら好きにかかってくればいいさ。街の中だ、殺しはしないでおくよ」

「はんッ! 女連れてるからって調子に乗りやがって!!

 野郎どもかかるぞぉっ!!」


 声とともに雄叫びを挙げて男たちが襲いかかってくる。

 正面から一人、そのあと左右から交互に、また正面からきてその後背後から。

 誰も彼も動きが単調で、目を閉じていても動きが読める。

 できる限り加減をして、命を取らないよう最小限気絶する程度の衝撃だけを的確に当てていく。

 一人襲いかかってくればその一人を戦闘不能にし、ただの一撃も受けることなく次々と制圧していく。


 程なくして男たちはみな地べたに横たわり、あとはアーシアの周りにいる3人だけだ。


「くっ、こいつ化物か!? おい、男! この女がどうなってもいいのか!?」


 そのうち一人が怯えたように、だが人質がいるということで強気に叫んでいる。

 短剣を突きつけられたアーシアはといえば、思いの外冷静だ。

 どうやら肝はかなり座っているらしい。


「まあ、あんまり傷つけられるのはいい気分はしないな」

「なら大人しく両手を上げて地面に這いつくばれ!」

「うーん、それは出来ない相談だな」

「なっ!?」


 別にこんな連中に付き合ってやる必要はない。

 彼我の距離は5メートルばかり。

 この距離なら一瞬で詰めることもできるが、念の為遠距離攻撃にしておいたほうがいいだろう。


空指弾(クウシダン)】――三連。


 その技を繰り出した瞬間、残りの3人は不可視の攻撃を受けて綺麗に崩れ落ちた。

 手元で小さく圧縮した空気の弾を指弾の容量で弾き飛ばす。それが空指弾(クウシダン)だ。射程はそれほど長くないが、無音でかつ不可視の高速遠距離攻撃なので並のものには咄嗟に反撃することが出来ない。

 今回みたいに安全に制圧したいときにはうってつけの技だ。


「素晴らしい腕前ですわ、ロウさん。信じていましたわ」

「そいつはどーも」


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