じゃあ脱ぐね
ロダンさんの話は非情に長かった。
正直ね、概要だけわかればいいなって思ってたんですよ。
でもあのおじさん話だしたら止まらないの。
苦労話とか、細かい部分のこだわりとか、挙句の果てに今構想してる新しい魔道具のこととか。
まあそれでも色々と勉強になったのは違いないから、お礼代わりに日本で使われてる機械の仕組みをちょこちょこ教えてあげたりもしたけどね。
なまじ魔術が便利なばっかりに生まれない発想とかあるんだろうなって思ったな。
さて、工房見学も終わって現在は14時過ぎ。
遅い昼食を屋台で済ませたらギムレー商会に行こうっと。
「いらっしゃいませ! ……あら? マオさんですね。本日はお一人ですか?」
店で迎えてくれたのは昨日と同じ揺れる立派なお胸様をお持ちのお姉さんだ。
下着を見に来たことと、ちょっと恥ずかしい相談事があることを伝える。
すると彼女はそういうことでしたら、と案内を申し出てくれた。
ちなみに名前はレーナさんというそうだ。
まずは下着を見に行く。
あんまり期待してないけど、一応この世界の最先端のものがあるはずだ。
「うぅーん、やっぱり王都でもこんな感じかあ」
「あまりお気に召さないですか?」
案の定、最先端を取り扱っている大商会でも下着のデザインは微妙だった。
上はまあいい。
この世界の女性用の下着は上半身はコルセットタイプ。
ブラに比べたらつけるのがやや面倒なのとちょっと圧迫感があるのはいただけないけど、それなりに刺繍などで綺麗に見せようとしているから許せる。
でも下はだめだ。絶対許せない。
ドロワーズといえば伝わるだろうか。
比較的ゆるめのフィット感で、丈が長い。
はっきり言って可愛くない。はきごこちもスースーしててとても気になる。
こいつはだめだ。
「レーナさんってこの下着、どう思う?」
「そうですね……あまり考えたこともなかったです。
人に見せるものでもないので……」
「私はね、これ可愛くないと思ってるんだ。
可愛い下着と可愛くない下着、レーナさんならどっちがいいと思う!?」
「そ、それはまあ可愛いほうがいいと思いますけど……でも下着ですよね?」
うーん、この世界の下着は人に見せないものとして重要視されてないのかな。
「いやいやいや、女の子なら見えない部分までおしゃれしなくっちゃ!
それに全く見せないなんてこともないでしょ? レーナさんって恋人いる?」
「恋人はいませんが……やっぱりマオさんはロウさんと……それに見えない部分までおしゃれ……うーんうーん」
「あっ、私はロウ君とは別になんともないよ?
でも気持ち的に脱いでも可愛いのと脱いだら芋っぽいの、どっちがいい?」
「たったしかに……でも可愛い下着って一体……」
よしよし、だんだんこっち側に傾いてきたぞ。
ここで最終兵器を出せば絶対に……落ちるっ!!
「実はここだけの話なんだけどね、レーナさんに見てほしいものがあるの」
「見てほしいものですか?」
「うん、どこか人目につかないところないかな?」
「それでしたら更衣室を使いましょう」
案内されたのは昨日ギムレーさんと話した小屋の一室だ。
どうやらここが更衣室として使われているらしい。
「ここなら女性の職員しか使いませんし、昼間は人はほとんどきません」
「よし、ならちょうどいいね。じゃあ脱ぐね」
「脱ぐ!?
わ、私にはそういった趣味はないですし、いくらマオさんが可愛くてもその……」
何を勘違いしてるんだこの人は。
「違うって! 私が見せたかったのはこれ! 私の下着!」
「下着……? こ、これはっ!!」
そう、私はこのときのためにこの世界の下着ではなく、日本製の下着――つまりブラとショーツ――を着用してきたのだ!
「すごい……かわいいです……」
「ふふっ、そうでしょ?
どうせ着るなら下着といえどもこれくらい可愛いほうがいいと思わない?」
「そうですね……正直びっくりしました。
可愛いだけじゃなく、同性の私でもドキッとしてしまう色気があります。
それにとても身体に密着していて着心地も良さそうです。
一体これはどこで……?」
どこで、か。
さすがに異世界なんてこと正直に言っても信じてもらえないだろうな。
ここは誤魔化す方向でいこう。
「うーん、どこでっていわれると難しいんだよね。
すごく遠くの国で作られたものとしか言いようがないかな」
「遠くの国というと帝国でしょうか。
しかしそのような話は聞いたことがありませんし……」
「帝国よりもずーっとずーっと遠く、かな?
まあ細かいことは気にしないでほしいな。
大事なのはこれをこの商会で再現できないかってこと!」
「この商会で再現!」
レーナさんがはっとしたように顔をあげる。
目が物凄いキラキラしている。
「マオさん!!」
「は、はい!」
「これ、作りましょう!!
売れますよこれ絶対!
近年稀に見る大発明になります!!」
よし、食いついた!!
「ええ、作りましょう! そして王都中の女の子たちの希望になりましょう!」
「では早速会長に許可とってきます!」
レーナさんは善は急げと言わんばかりに下着の私を置き去りにして出ていった。
うん、とりあえず服を着直してまってよっと。
少しするとギムレーさんに会ってほしいと言われたので、昨日と同じ応接室に向かった。
入ると興奮気味のギムレーさんが待っていた。
「聞きましたよ、マオさん。
なにやらすごい商売の種を持ってきてくださったそうですね」
「ええ、そうですね。
私自身がほしかったものなので、是非ギムレーさんの商会で作っていただけるとすごく嬉しいです」
「レーナくんはうちの商会の中でも特に優秀でね、私が気づかないような女性ならではの着想にいつも助けられておるのです。なのでレーナ君が売れると言っているからには間違いなく売れるのでしょうな」
「それはもう、革命が起きちゃいますよ」
「はっはっは、革命ですか。それは楽しみだ。さて、それでこの件についてしっかりと商会から謝礼を出さなければならないのですが」
まあそうなるよね。
王都じゃ魔物狩りで稼ぐのは難しいから、頭脳労働で稼げるのはとてもありがたい。
「正直なところ値段を付けるのが難しくてですな、開発が完了してある程度儲けの見込みが立ち次第お支払いさせていただくということでよろしいですかな?」
「なるほど、こちらはお金にそれほど困っていませんしそれでいいですよ」
「ありがとうございます。ではその時改めてご連絡させていただきますよ」
あ、そうだ。魔術学校のこときかなきゃ。
「そうだ、ギムレーさんにお願いしたいことがあるんですがいいですか?」
「おお、それはもちろんですよ」
「実は魔道具工房に行ったときに魔術について軽く教えてもらいまして、ある程度本格的に勉強できたらいいなと思ったんです。なんでも魔術学校があるとか」
「ふむ、魔術の勉強ですか。たしかに魔術学校はありますが、普通は3年ほどかけて学ぶものですね。でもマオさんは旅をしてらっしゃるからあまり日数はかけられないでしょう?」
「うーん、たしかにそうですね。一週間くらい体験でさわりだけでも勉強できればいいなという感じなんですけど」
「なるほど。それでしたらなんとかしてみましょう。
都合がつき次第お声かけしますね」
「おお、ありがとうございます!
お礼と言ってはなんですけど儲け話がありまして……」
お礼に精霊石=宝石のカットについて教えてあげたらギムレーさんはとても喜んでくれた。
こちらもたっぷり謝礼が貰えそうなので知識チートさまさまだなって思ったよ。
明日からは下着開発だな。
あっ、恥ずかしい相談のほうをすっかり忘れてた。
まあ下着開発と一緒にすればいっか。




