へー、結構いろいろあるんだね
それから二言三言ほど言葉をかわすと、ギムレーさんたちは先を急ぐのかさっさと行ってしまった。
去っていく直前、冒険者たちに物凄い羨望の眼差しで(ロウ君が)見られていたのは気のせいじゃないだろう。
「それにしても驚きましたよ!
ちょっとした商会なんて言ってましたけど、物凄く大きいじゃないですか!」
「いやはや、私などまだまだですよ」
「この規模でまだまだだったら、もっとすごい商会はちょっとした都市か何かになってしまいますよ」
「はっはっは。そんなことよりお二方、先日のお礼をしたいのですが何か希望はありますかな?
この通り我が商会は王都内でもそれなりの力を持っておりますので、大抵のものはご用意できるかと思いますよ」
そうはいっても今の所欲しいものないしなあ。
うーん、どうするか。
「そうですねー、ちょっと考えさせてもらってもいいですか?
それより一度お店にどんなものがあるか見せてもらいたいですね」
「それはもちろん、ご案内しますよ」
店内には実に多くの商品があった。
食品、日用品、衣類、家具、武具。
揃えられないものは無いと思えるくらい、あらゆる品物が並んでいる。
その上どれも品質がいい。
これだけの品揃えだ、王都一と言っても過言ではないんじゃないかな。
しかしやっぱり衣服のデザインはどれもぱっとしないな。
無難ではあるけど、無難以上ではない。
日本の多彩なデザインに慣れちゃってる私としてはもうちょっと可愛いほうがいいけど、このへんは妥協するしか無いかな?
家具は旅人の私達には無用の長物だし、武具も必要ではないし。
思ったよりも見るところは少ないかな?
旅で便利そうなものがあれば買いたかったけど、買い換えるほどのものはないな。
うーん……。あっそうだ。
「ギムレーさん、魔導具は扱ってますか?」
「魔道具ですか、もちろん取り扱っていますよ。
ちょうどこの次の区画がそうですね」
そこには大小様々な道具が陳列されていた。
道具の簡単な説明書が置いてあって、実際に手にとって試せるようになってる。
まるで家電量販店みたいだな。
ふむふむ、このへんは明かりの魔道具か。
前方に光を照射できる懐中電灯型、持ち運びやすいランタン型、室内用の設置ライト型などなど。
おっ、こっちにあるのは冷蔵庫じゃないか。
冷却方式は……シンプルに氷を生成してその冷気で冷やす方式か。
気化熱による冷却は実用化されてないんだな。
やっぱり魔道具ってのはすごいなあ。
生活する上で欲しくなりそうなものは大抵が実現されてる。
ま、日本の家電ほど高機能ではないけどね。
これだけ色々実現できるんだからもっと複雑な概念を理解できれば大儲けできそうな商品を開発できるかも?
などなど考えながら見て回っていると、奥に机が置いてあって、何やら店員とお客さんが話し合っているのが見えた。
なんだろう?
「あの奥の机で接客しているのはなんですか?」
「ああ、あれは注文を受け付けているんですよ。
魔道具は受注生産が基本ですからな。
ああやってお客さんの希望を聞いているんです」
「へー、受注生産。既製品の販売っていうわけではないんですね」
「そうですね、よく売れる作りの簡単なもの――例えば先程みた照明の魔道具などですな。そのあたりは在庫を確保しておくようにはしておりますが、他の多くは作るのに手間がかかるのでどうしても注文を受けてからになってしまうのですよ」
「やっぱり魔道具って作るの大変なんですか?」
「新しい品を作るのであれば何度も試作を繰り返す必要がありますし、それなりに大変ではありますね」
ほうほう、ちょっと面白そうだな。
「マオさんは魔道具づくりに興味がおありで?」
「ええ、そうですね。やっぱり普段何気なく使ってるものがどのように作られているのかは興味をそそられます」
「ほう、お若いのに勉強熱心なんですね。
よければうちの工房を見学していきますか?」
「えっ、いいんですか? 工房なんて普通外部の人は入れないでしょう?」
「普通はそうですが、マオさんは命の恩人ですからね。
それに私の勘が告げているのですよ。
ここはそうしたほうがいいことがあるぞ、と」
いいこと、ねえ。
さすがこれだけの大商会をまとめる男というだけのことはある。
お礼といいつつちゃっかり自分の利益になりそうな種を私達がもっているんじゃないかと布石を打ってるわけだ。
うん、実に面白い。私好みだ。
「じゃあお言葉に甘えて是非見学させてもらいますよ」
「ええ、そうしてください。では早速工房に連絡しますので、しばらくはお二人で店内を見ていてください。
もちろん欲しいものがあればお安くしますので是非購入していってくださいね」
さて、待っている間どうしていようか。
「ロウ君は何か見たいものとかないの?」
「ん、俺か? 特にはないけど、マオはなにか見ないのか?」
「うーん、もうちょっとゆっくり見たいものはあるけどそれはあとで時間があるときに一人で見ようかなって」
流石に下着とか乙女の必需品は一人でみたいよね。
ロウ君だけなら最悪いいとしても、さっきはギムレーさんいたから見るに見れなかったし。
「ふーん、そうなのか。ああ、なら薬を見てもいいか?」
「薬? いいけど、どこか調子でも悪いの?」
「いや、怪我も病気もこの10年したことないよ。
人がどんな薬使ってるのかちょっと知りたいだけだ」
へえ、ロウ君そんなことに興味があるんだ。
自分の体鍛えること以外興味ないのかと思ってたから、びっくり。
というか私も自分のためにこの世界の医療水準知っておいたほうがいいな。
体力には自信あるけどこの世界水準じゃあ貧弱なのは間違いないしね。
「このあたりが薬みたいだね。
……へー、結構いろいろあるんだね。塗り薬が多いのかな?」
「そうみたいだな。
これは切り傷に塗る薬か。
ふうん、結構無駄な成分が入ってるな」
「えっ、そんなこと見ただけでわかるの!?」
「仙術技能の一つ【識】でな。
それに錬丹術で薬はよく扱うから、大体わかるんだ」
「はえー……相変わらずロウ君ってすごいね……。
じゃあ私が怪我とか病気とかしてもロウ君が治してくれるかな?」
「マオを守るって誓ったからな」
なんでもないように格好いいこと言ってくれて。
ちょいちょいドキッとさせられるんだよなあ。
普段はボケッとしてるのに。
「うん、頼りにしてるねっ!」
「ま、だからといってそう簡単に怪我されても困るからな。かすり傷くらいならすぐ治せるけど必要な薬草が都合よく手に入るとは限らないんだし」
「そうだね〜、あ、もし常備しておきたい薬草とかあったら言ってね。
買ってあげるから」
「はいよ」
そういえばこの世界にはポーション的なものって無いのかな。
ちょっと店の人に聞いてみるかな?
近くにお姉さんがいたので声をかけてみた。
「すいませーん」
「あ、はい、なんでしょう。お薬の説明ですか?」
「いえ、ちょっと気になったことがあって。
えーと、ポーション……魔法の薬みたいなのって無いんですかね?」
「魔法の薬ですか。もちろん当店でも取り扱っておりますが、薬効が自然に抜けてしまうので注文を受けてから精製して販売しておりますよ」
「あ、そうなんですね」
「高価なものですからあまり売れませんしね。
ご入用でしたら用意させていただきますが……」
お姉さんはそう言って若干胡乱げな目でこちらを見ている。
なんだろう……あ、服装があまりお金もってそうに見えないからか。
それに私実年齢よりだいぶ幼く見られるっぽいしなー。
「ああいえ、必要ってわけじゃないんです。
念の為取り扱ってるか確認したかっただけなので。
ちなみにどういう効能のものを用意できるんですか?」
「当店で平時からご用意できるのは治癒魔法薬であれば第5級から第3級まで。
魔力回復用であれば第5級から第4級まで。
その他特殊な効能のものは市場次第、といったところでしょうか」
へー、魔法薬にもいろいろあるのかあ。
ロウ君は作れたりしないのかな?
あとで聞いてみよう。
等級の違いはよくわからないけど……ま、今はいいか。
なーんて思ってたらお姉さんが魔法薬のカタログくれた。
気が利くね。
宿屋に戻ったらゆっくりみようっと。




