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ロウとマオ 〜最強仙術使いと最弱JDの異世界放浪譚〜  作者: にしだ、やと。
第1話 冒険のはじまりは伝説のはじまり? はじまりの街、リグルー
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そんな世間話するためにわざわざ私たちを呼んだわけじゃないでしょう?

 それから何日かの間、毎日狩りをしてお金稼ぎに励んだ。

 というのも次の目的地である王都周辺ではあまり強い魔物が生息しておらず、短期間で冒険者が稼ぐにはあまり向いていないからだ。


 今はようやく金貨1枚ちょっとくらい稼いだところ。

 ほんとはもう1枚分くらいは稼ぎたいけど、移動にかかる日数を考えるとちょっと難しいかなあ。

 せっかくロウ君がミスリルなんだから割のいい依頼があればいいんだけど、なかなかそう都合よくいかないね。


 なんてことを思いながら冒険者組合に向かって歩いていると、なんだか街が騒がしい。

 普段から賑やかな街並みなんだけど、不安とか焦りとか、そういうものが感じられる騒がしさだ。


「んー、なんかあったのかな?」


 ロウ君にそんなことわかるはずないけど、なんとなく聞いてみる。


「さあな、街の中じゃ人が多すぎてなんかあっても感知しにくいからわからん」


 へー、チートっぽいロウ君でもそういう欠点があるんだ。

 ま、物語じゃあるまいし弱点もない万能レーダーなんてあるわけないか。


 歩きながらもしばらく人々の様子を観察していると、特に店をやってる人ほど焦ってる様子が見られることがわかってきた。

 流通になにか問題でも起きたかな?

 昨日まではそんな様子なかったと思うけど、たった一日の間に一体何があったんだろう。


「すみませーん、串焼き二つください」

「なんだ? さっき朝飯食ったのにもう腹減ったのか?」


 ロウ君がなんか言ってきたので買った串焼きを渡して放置しておく。

 ついでに私も一口。うん、おいしい。

 食べたところで串焼き屋のおっちゃんに話しかけてどういうことか聞いてみる。


「なんだか街の様子がいつもと違う気がするんですけど、なんかありました?」

「うん? 嬢ちゃん見た目によらずいい眼をしてるんだな。そうだなあ……俺も詳しくは知らないんだが、どうも商隊の馬車が足止め食らってるみたいでな」


 この世界は情報網があまり整備されていなくて、大抵は口伝えだ。

 だから情報はあんまり集めにくいのかと思うけど、そういうわけでもない。

 娯楽が少ない世界だから、うわさ話が大衆娯楽として根付いている。

 そうすると当然噂に詳しい人っていうのも出てくるわけで。

 その一人が街の中の客と街の外を歩く商人、どちらとも話す機会の多い屋台の店主ってわけだ。


「昨日から街道のど真ん中に変なやつが居座ってるらしくて、そいつが誰一人通してくれないそうだ」

「へえー、それは困りますね。仕入れとか大丈夫なんですか?」

「うちの店は肉が中心だからそれほど困らんけどな、組合の他の連中はだいぶ困ってるみたいだ」


 おっちゃんが言ってる組合っていうのは商人組合のことかな。

 冒険者組合に並んで、権力を持ってる組合。

 全ての流通を牛耳ってるようなものだからある意味国家権力より怖いかも。

 しかしいいことを聞いたなあ。

 これもし解決したら、結構報酬もらえるんじゃないかな?

 商人組合にとって流通経路の確保は最重要事項。

 金貨何枚積んででも解決したいに違いないぞ……ふふふ。


 おっと、悪い顔になりそうだった。危ない危ない。

 ちょうど串焼きも食べ終わったので店主にお礼を言って立ち去る。

 冒険者組合の方に緊急依頼が来てるかもしれないし、ちょっと急ごうか。


 ◆ ◆ ◆


 冒険者組合に入ると中は騒然と……しているわけではなかった。

 平常運転だ。

 まだこっちまで情報がきていないのかな、と思っていつもどおり依頼票一覧を確認する。


 うん、噂の街道通せんぼ問題に関係ありそうな依頼はないっぽい。

 常時依頼の方も昨日から特に変わりはないなあ。

 念の為受付の人に聞いてみようかな?


「すみません、ちょっと聞きたいことがあるんですけど」

「はい、なんでしょう――あっ!」


 受付の人(結構美人でおっぱいも大きいけど悔しくはないよ)が私の顔を見るなり、小さく叫んだ。

 人の顔みて「あっ!」って結構失礼だと思うんだよね。

 ま、どうでもいいんだけど。


「あの――『転倒姫』マオさんですよね?」


 ちょっ、その二つ名受付の人にまで浸透してるの!?

 やめてほしいんだけど……。

 ちょっとむかつくのでイタズラしてあげよう。


「いえ、そのような二つ名の人は知りませんね」

「えっ、いやっ、でも聞いてる特徴通りだし……後ろの人なんてどう見ても『ニの拳要らず』のロウさんだし……うーん?」


 ふっふっふ、混乱してる混乱してる。

 おもしろいなあ。

 っていうか今さりげなーくロウ君の二つ名出てきてたよね。

 なんか示現流みたいてかっこいいんだけど……。ぐぬぬ。


 さて、お姉さんいじって満足したしちゃんと本当の事を言ってあげよう。


「確かにそのような二つ名の人は知らないけど、ロウ君のパートナーのマオといえば私のことですよ」

「えっ、ああ! やっぱり! そうですよね、すみません……」


 謝るくらいなら最初から『転倒姫』なんて呼ばなきゃいいのに……。


「それで、私になにか御用でもありましたか?」

「あっ、そうですそうです。マオさんが今日きたら呼ぶようにってヴォークハルトさんに頼まれていたんです。申し訳ありませんが少々お待ちいただけますか?」


 ヴォークハルトさんって確か試験官だったよね?

 一体何の用だろう。

 まあ急ぎの予定もないし話を聞いてみよう。


「お待たせしました、二階の応接室に案内しますのでついてきてください」

「あ、ロウ君も一緒で大丈夫ですよね?」

「もちろんですよ、お二人をご指名ですので」


 二階は一階とは違って小部屋がいくつかあるみたいだった。

 会議をしたり今日みたいに個別の相談とかをするときに使われるんだろうな。


「失礼します、マオさんとロウさんをお連れしました」

「おう、入ってくれ」


 応接室は革張りのソファが向かい合わせに置かれていて、その間にローテーブルが設置されているだけ、という非情にシンプルなつくりになっていた。

 勧められるままにソファに座る。

 ロウ君は立ってるほうが落ち着くらしく、私の後ろの壁際にもたれかかって立っている。

 どこぞの殺し屋よろしく背中に立たれたくないのかもしれない。


「今日はわざわざきてもらってすまないな。

 最近調子はどうだ?

 聞くところによれば毎日大物を持ってきてくれているそうじゃないか。

 おかげでうちも大助かりだよ。感謝する」

「そりゃ大物のほうが実入りがいいですからね。うちにはロウ君がいますし楽に稼げるならそりゃそっちにしますよ!」

「ははは、普通は苦戦するような大物相手に楽とは、こりゃ頼もしい限りだ」

「それで、そんな世間話するためにわざわざ私たちを呼んだわけじゃないでしょう?」

「ああ、そうだったな」


 そういうとそれまでの和やかな雰囲気が一転、真剣なものになった。


「実はいまちょっとした問題が起きててな」

「問題、ですか」


 はいきました。

 これ例の噂関連の話だ。


「ああ、もしかしたらどこかで聞いてるかもしれんが、いま街道が通行止めになっている。原因は――妖魔の男だ」


 妖魔族。たしか自然とともに何にもとらわれず自由に悠久を生きる種族だっけ。

 仙人たちはこれしか教えてくれなかったけど、実物に会えるチャンスがきたってことか。

 どんな種族なんだろう。楽しみだなあ。


「妖魔の男はヴァララローグと名乗っている。

 その男は突然街道に現れたかと思うと辺りを火の海にして、通れなくしやがった。

 幸い人に危害を加えるつもりはないみたいで、死人はでていないんだが、なんせ街道だ。

 流通が止まれば色々と問題が出てくるのは……まあ分かるだろう?」

「ええ、そりゃもちろん。

 でもだからといってただ手をこまねいて見ているだけっていう訳にはいかないですよね?

 領主様は手を打たないんですか?」

「もちろんこの領の騎士様は自身も含めて兵団を今日中にだすそうだ。

 だが奴の要求を考えるとうまくいかないだろうな」

「要求?」

「ああ、奴――ヴァララローグはこういった。

『このへんで一番強いやつを連れてこい。そうしたらここをどいてやる』と」


 ははーん、話がみえてきたぞ。


「なるほど、つまりロウ君をぶつけろ、というわけですね」

「そういうことだ、話が早くて助かる。商人組合の連中は騎士様じゃ相手にならないと判断して、早々にうちに依頼を出してきた。

 組合で一番強い人物への指名依頼だとさ」

「でも、本当にロウ君でいいんですか? 他に強い人いないんです?」


 これは正直な疑問だ。

 いくらロウ君が強いとはいえ、たかが試験官を倒しただけに過ぎない。

 もっと強い人がいてもおかしくない。


「いやいや、この俺を倒したんだ。この街で一番強いのは間違いなくロウだよ」

「え? ヴォークハルトさんってそんな強いんですか?」

「おいおい……さすがにマオにだけは言われたくないんだが……。

 俺は腕前を買われてここの組合長になった男だぞ?

 この街じゃ一番強かったに決まってる」


 ここで衝撃の事実。

 ただの試験官だと思ってたら組合長だった。めっちゃ偉いおじさんだった。


「ま、そんなわけだからロウに指名依頼だ。

 依頼内容はヴァララローグの撃退。

 街道が通れるようになればいいからな。

 報酬は金貨100枚だ」

「金貨100枚!? たったそれだけで!?」

「おいおい、たったそれだけって言ってもおそらく俺でも倒せないような強敵を撃退するんだぞ?

 下手すりゃアダマンタイト級の難易度だ。

 これでも割に合わねえ可能性だってある。

 それに商人組合の連中は自分らが困ったときに支払いを渋るような奴らじゃないからな」


 金貨100枚。

 私達がいま一日に使ってるのは大体銀貨2枚だ。

 その5000倍。無駄遣いを多少したって10年は働かずに暮らしていける金額だ。

 いままで地道に働いてきた日々はなんだったんだろう。

 これが冒険者で大成するっていうことなのか。

 異世界ドリーム、すごすぎる。


「失敗したら報酬は払えないし多少の減点は発生しちまうが、どうだ?

 引き受けてくれるか?」


 そんなのは迷う必要もない。


「もちろん、引き受けます!!」


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