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「ひまりーーーー!!」

時間は過ぎ、人が少なくなり、夏祭りは終わろうとしている。

もう帰ろう、ということで再び合流することになり、集合場所に現れた真琴はひまりに抱きついてきた。

「私、成瀬と付き合うことになったよ」

「ほんと!?やったね真琴・・・!!」

「天宮、市ヶ谷は俺がもらったぜっ」

「成瀬くん・・・真琴を泣かせたら私が許さないからね!!」

「任せとけ」

「蓮・・・お前も彼女もちかよ、ムカつく」

「奏斗だって作ればいいじゃん」

「・・・そう簡単に出来ないって」

(・・・私まだ、染谷くんに好きって伝えられてない。伝えなきゃ。伝えたい・・・!)

「そういうことで、帰りは市ヶ谷を送って行きたいんだけど・・・いい?」

「あぁいいよ。俺は天宮を送ってくから」

サラッとそういう奏斗に、ひまりの心臓は大きく跳ねる。

(えっ!?・・・これはチャンスだよね。今言わなきゃ、もう言えない気がする)

「じゃ、天宮帰ろっか」

「うん。真琴、成瀬くん、またね!おめでとう!」


(いつ、言えばいいんだろう・・・)

「今日は楽しかった。ありがと」

奏斗がそう言った。

「私も、すごくすごく楽しくて・・・今日が終わらなければいいのにって思ってたよ」

「・・・そっか。俺もだよ」

そう言って微笑む奏斗を見て、ひまりは胸が苦しくなる。この笑顔をずっと見ていたくて・・・。

(伝えるなら今。今しかないんだ)

「染谷くん」

ひまりは立ち止まり、奏斗の名前を呼んだ。

心臓が大きな音を立てて、ひまりの決意を邪魔しようとする。けれど、ここで自分に負けてしまうわけにはいかないのだ。

「どうした?」

振り返り、ひまりを見つめる奏斗。ひまりの呼吸は苦しくなり、酸素が足りていない気がするけど、決心をして、ずっと伝えたかった言葉を声に出した。


「好きです」


その瞬間、奏斗は驚いたようにひまりを見つめた。

(やっぱり・・・ダメなのかな)

この瞬間がとても長く感じられる。まるで、本当に時間が止まっているように。

「・・・ありがとう。でも、なんで・・・?」

奏斗がかすれた声でひまりに尋ねた。

「私、入学式の時に染谷くんに一目ぼれして・・・それで・・・・」

その瞬間、奏斗は冷たい声で言った。


「そっか、天宮も他のやつと一緒なんだ。きっかけは俺の顔ってことでしょ?」


一瞬、ひまりは奏斗の言葉が信じられず、身動きが出来なくなってしまった。

(違う。私は___)

入学式のあの日。ひまりは確かに奏斗に一目ぼれをした。

目が合っただけなのに、まるで時間が止まったような。体に電流が走ったような。不安で憂鬱な気持ちまで吹き飛ばしてくれるような。

(私はきっと、あの一瞬で染谷くんのすべてに・・・言葉では表せないけど、絶対『この人だ』って感じて・・・)

「もういいよ、帰ろ」

奏斗は傷ついたように笑い、歩き出した。


「・・・染谷くんの、バカ!」

「・・・えっ?」

ひまりは考える間もなく、叫んでしまった。

「私は、確かに染谷くんに一目ぼれしたけど、それは顔に対してじゃない。一瞬目が合っただけで・・・私の気持ちを明るくしてくれるような、そんな人だったから一目ぼれしたんだと思う。言葉じゃ伝えられないけど・・・染谷くんだけは他の人と違った」

溢れてくる涙を拭い、ひまりは告げた。

「・・・ごめんね。今日はありがとう。もう帰るね。・・・じゃあね」

そう言うと、ひまりは駆け出した。このモヤモヤした苦しい気持ちはどうしたら消えるのだろうか。

(さっきまで、あんなに楽しかったのにな)

数十分前まで、数分前までは距離が縮まっていくのを感じたのに。


それなのに、今はこんなにも遠くなってしまった。


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