ー皆川幸人の場合その7ー
「あー、今年の部費の事ね、それはあるものを買うのに使っちゃったのよね」
そうして香澄先輩はこの部を見回すかのように視線を動かした。
あるものか……まあ、あれだよな。
「別になんかスゲー機材とかねーだろ?」
確かにこの部には高そうな機材は無いのだが、俺の目にはある物が映っていた。
「ちょっと、幸人―、どこ見てるのよ? 私のパンツが見たいならそう言いなさいよ」
別に俺は香澄先輩のパンツを見るためにそれを見ていたのではない。だがそれを見ているということは必然的に香澄先輩も見ることになったしまった。これは一種の不可抗力という奴だ。
「それ、今年の部費で買ったんですか?」
「……はい、買っちゃったんです……」
香澄先輩の変わりに鈴先輩が俺の指摘に答えてくれたのだが他の一年二人は何かわからない様で未だに俺が指摘したものを探している。
「それいくらしたんですか?」
「確か、十万円ほどだったと思います……」
十万って高校生が簡単に使える金じゃねーだろ。きっと買ったのは香澄先輩だと思うし、どうなってんだよ自生部部長!
「ちょっと、さっきから何二人でわけわからない事言ってるのよ! 答え分かったなら教えなさいよ」
「あー、ちょっと俺も頭の整理が追い付かない感じなんだけど、まあ買ったものだけいうとそれはな……」
「この最高級の座り心地、いえ、寝心地のソファーよ!」
この人はなんでも最後は自分が決めたいみたいだ。やっぱり頭おかしいんだな。
ちなみにさっきの部屋を見渡す仕草は完全なフェイクだったのだろう。
「えっ、そのソファーって十万円もするんですか!」
「そうよ、みなとちゃん! いつかあなたも寝てみればわかるけど、よく眠れていいのよね」
さも自分の手柄みたいに言うのはおかしいと思うが俺も一度だけ座ったことがある。本当に最高のソファーだった。
そして、俺は以前座っていたからこそわかった。
「鈴先輩が家から持ってきたとかじゃなかったんですね……」
「はい、私もここまでの物を部活の為に両親を説得して持ってくることは出来ませんよ、私のお小遣いからで良ければ買えたのですけどね」
「さすがに鈴ちゃんのお小遣いから私の物を買ってもらうのは忍びないから部費で買った私ってさすがよね」
褒める点が一つも見当たらないのだけどこれは俺に落ち度があるのだろうな、俺が馬鹿だからいけないのだろう。
「オー、サスガネエチャンダナー」
「宗司はやっぱり分かってるわね、姉として誇りに思うわよ」
この二人の関係って怖いんだけどもはやこれは王と家来? いや、主人と奴隷か?
「おい、ここは姉ちゃんを褒めておけ」
宗司は後ろにいる俺とみなとの方を向き、他の部員には聞こえないように話しかけてきた。
「これを褒めるのは俺のプライドが……」
それから宗司は俺の方によって来たかと思うと、俺の制服の裾を引っ張りささやいた。
「ここでへそ曲げられたら話の続きが聞けねーだろ、早く褒めるんだよ!」
これは俺にも奴隷になれという勧誘であろうか?
「……やばい、俺は香澄先輩を褒めたくないんだけど」
「ちょっとー、何男子二人でこそこそ話してるのよー」
「いや、姉ちゃんはさすがだろって俺の自慢の姉ちゃんの話をしていたんだよ」
宗司がいくらここでフォローを入れようが俺の気持ちは変わらなかった。
「香澄先輩、まだ間に合います。返品しましょうよ」
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瑞樹一です。
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