ー天河鈴の場合その2ー
天川先輩の続きの話でーす。
「はー、はー、あのー、この子―、の知り合いのー、方ですか?」
走ってきたため、息を切らせながらも疑問をまず、お巡りさんに口にします。
「あっ、すいません……、同じ高校のー、方が困っていたので、どうにか力にあれないかと……」
息が上がり何も考えられなかった私にしては良い言い訳だと思います。
「あー、そういう訳ですか」
お巡りさんは視線を交番の中で小さな子と遊んでいる私と同じ制服を着ている彼にむけました。
そして、お巡りさんと私の視線に気が付いたのか彼はこっちを向きました。
「俺ですか? あっ、確かに同じ制服着てますね」
彼は今までの子供をあやすような優し気な視線のまま人懐っこい笑顔をこちらに向けてくれました。
先ほどの彼と子供の様子を見る限り、彼が何か悪いことをしてここに連れて来られた感じではありません。
それではどうして彼はここにいるのでしょう?
「あのー、学校は良いのですか?」
「いいわけじゃないんですけど、それよりも大事なことが出来たんで今はいいんですよ」
彼はそう話すと交番の中で遊んでいる子供の方に視線を向けます。
「あの子がどうかしたんですか?」
私も彼と同じように視線を子供の方に向けると彼は学校にいけない理由を話してくれました。
「あの子はやすゆきくんっていうみたいなんですけどやすゆきくんも俺と同じように今日入学式みたいなんですよ」
入学式ということはやすゆきくんは五歳ぐらいなんでしょう?
外見で子供の年齢を分かる程小さい子と接したことの無い私にはやすゆきくんの年齢は分かりません。
「いや、入学式と言っても小学校ではなく、幼稚園なんですけどね」
「あっ、幼稚園でしたか」
なんでしょう彼には私の考えがわかるのでしょうか?
「すいません、俺の説明不足ですよね。そう、やすゆきくんは今年幼稚園に入園する幼稚園生なんですけど、その入園式に行く途中の道でお母さんとはぐれちゃったみたいなんですよね」
それは迷子ということですかね? 私の送り迎えは常に付き添いの方がいてくれましたし、そういうことはありませんでしたけど、世間ではよくあることと聞きます。
でも、それだと彼がやすゆきくんと一緒にいる理由とはなりません……
「その迷子のやすゆきくんを俺が見つけてこの近くの交番まで一緒に来たんですけどね」
「あー、そういうことでしたか、あれ、それならもうあなたの役目は終わってますし、あなたも早く自分の入学式に行った方がいいんではないですか?」
あっ、でもまだ彼が一年生かどうかわかりませんし、もしかしたら同い年か一つ上の先輩の可能性もあるわけでまだ、そうした方がいいというわけでは無いんですよね。
「それはそうなんですけど俺は少し気になってしまってこのままでは入学式もきちんと迎えられそうになかったんでここにいるんですよね」
「ほら、やすゆきくん、こっちこっち」
なんだ、やっぱり新入生みたいですね。
彼はさっきまで一人で遊んでいたやすゆきくんを自分の元に呼ぶとやすゆきくんはすぐさま彼の元へ走ってきました。
まだ、数分しか一緒にいないはずなのにどうしてここまで打ち解けることが出来るのでしょう?
「えーっと、すいません、名前教えて貰ってもいいですか?」
「忘れてました、そうですよね、初めて会った人には最初に自己紹介ですよね」
そうすると私は彼と彼の膝の上にすわるやすゆきくんにできる限りの笑顔を向けて語りかけます。
「こんにちは、私の名前は天河鈴です。菫ヶ丘高校に通う二年生です。よろしくね、やすゆきくんと……」
「すいません、俺の自己紹介を忘れてましたね。俺の名前は皆川幸人です。今年から菫ヶ丘高校の一年なんで後輩ですね、よろしくお願いします。天河先輩」
天河先輩なんて面と向かって呼ばれたのは初めてですし、すごい新鮮な気持ちです。
中学生の頃は部活動禁止と言い渡されていたので後輩は初めてです。
「天河先輩って呼ばない方がいいですかね?」
「いや、後輩というものが今までいた経験がなかったもので少し新鮮な気持ちだっただけです。大丈夫ですよ」
私の顔に疑問符でも浮かんでたのでしょうか皆川君は聞き直してきました。
「じゃあ、天河先輩って呼ばせてもらいますね。天河先輩」
「よろしくお願いしますね、皆川君」
はじめにお読みいただきありがとうございます。
瑞樹一です。
一応毎日投稿していこうと思っているので日課にしていただけるように精進します。
つまんなくても毎日の三分ぐらいならって気持ちでこの作品に時間を割いてもらえると幸いです。