ー沢渡宗司の場合その10ー
「……うまいな」
思わず声が出てしまった。
うまいという言葉しか咄嗟に出ないオレのボキャブラリーの貧困さをどうにかしたいのだが一朝一夕でどうにかなるものではないんだろうな。
漫画ではこの料理を食べた王様は、今までの衰弱しきった感じ様子から食べ始めると徐々に精力がみなぎっていたがその気持ちもよくわかる。
「確かにおいしいわね」
「うん、いい感じに出来たな」
「さすが、私ね」
「おいしいですね」
オレに続くように芒原、皆川、姉ちゃん、天河先輩が声を挙げた。
良かった、感想は同じだな。
てか、姉ちゃんは自惚れが半端ないな。家で同じ料理作ったけど完成すらしなかったし、危うくオーブン壊すところだったじゃん。
「でも、私たちが作ったものとみなとちゃんたちが作ったものだと少し味が違うわね」
「いいところに目を付けましたね。香澄先輩、レシピにどうしてもわからないところがあったので二通りにしてみました」
「レシピ担当のみなとちゃんは抜かりが無いわね」
「いえ、これは幸人が最後に気づいたので抜かりが無いのは幸人なんですよね」
確かに食べ比べてみると、少しだけ味に違いがあった。
「ちょっとした隠し味を入れているのでそこに違いがあったんですかね」
「でも、どちらもおいしいですね。これはうちのシェフよりもおいしい気がします」
「鈴先輩の家と比べられるとちょっと苦しい気がしますけど喜んでもらえたなら良かったです」
シェフって……天河さんはお嬢様だな。
「まあこれは皆の力ね! 皆、よく頑張りました!」
何度も言うがお前はなんもやってないからな。
「んっ? なんか言った宗司?」
「また、ゾーン使ったのかよ」
「宗司は何を言ってるのよ。厨二病なんじゃないの?」
中二病とは知っての通り、中学二年生によくあるやばい言動の事なのだが、もう、高校生だしそんなものにはかかっていないと思う。
「それを言うなら姉ちゃんのほうが中二病くさいだろ」
「私、そんな変な言動したことありませんー」
この姉は学校では猫をかぶっていると話しているし、もしかしたらこの中では本当にオレ以外姉ちゃんのやばい言動を知らないのではないか?
「そこんところはどうなんですか? 天河先輩?」
「……?」
頭の上にはてなマークが出ているのが丸わかりなあいまいな笑顔を浮かべないでくださいよ。
これは天河先輩が男が苦手だから答えに困っているというより、中二病って言葉自体を知らないのだろう。
「香澄先輩は中二病だと思いますよ」
「ちょっと、幸人―」
「確かに先輩の言動って所々よくわからないところありますよね」
「なんで、みなとちゃんまで!」
やっぱり部室でもそうだったのか……
この姉はもう病気ではないだろうか?
いや、中二病ではなく、ガチの方ね。
まず初めにお読みいただきありがとうございます。
こんばんは、瑞樹一です。




