ー沢渡宗司の場合その1ー
ここからは新入部員君のお話です。
それは昨日の晩のことだった。
オレこと沢渡宗司は自分の部屋の机に向かって姿勢正しく座り、数日前に買って来た雑誌に何度目かの目を通していた。
「ちょっと、この続きってその雑誌に載ってる?」
そして、オレの姉はオレのベットで横になり、オレが今日買ってきた未読の漫画を読んでいた。
何でオレがまだ読んでない漫画を姉が読んでオレは既に読んだ雑誌を読んでいるのかだって? 何でオレが床で姉がベットで……
それがこの家の日常でオレと姉のルールだからだ。
それ以外に理由は無い、オレはこの姉、沢渡香澄には逆らえない。
姉ちゃんは常にオレの一歩上を行き、幼い頃から存在する上下関係はそんな簡単に覆ることはない。
「あー、載ってねーけど、その作者の別作品なら載ってるよ。けど、今読んでるから貸せねーわ」
「それなら、いいや早く貸してよ。読みたいからさ」
いい加減、オレはこの姉弟関係をどうにかするべきだよな?
「いや、今読んでるからさ……」
「あっ、やっぱりいいや、それより宗司に話すことあったんだよねー」
一度断ってもそれを曲げずに来るかと思いきや別の話……
こういう時の姉ちゃんの発言が一番怖いんだよな……
「……なんだよ」
「宗司って毎年私の誕生日になると『私の言うこと一つ聞く券』くれてたじゃん、それ使いたいんだよねー」
それってもしかして毎年姉ちゃんが俺に請求してきた『姉の言うこと聞く券』のことだよな?
まさか、今まで一度も使われたことの無いあれが使われることになるとは……
ちなみに俺は姉ちゃんから何か物をもらった経験など無く、誕生日にはおざなりなおめでとうの言葉を受け取っていた。
「何? そんなに読みたいんならいいよ、貸すよ」
「いや、そんなことならあんたから取ればいいじゃん、あんたの物は私の物なわけだしさ」
その名言久々に聞いたぞ、最近あのアニメみてねーし。
「……それならなんなんだよ?」
「今、私すごーく困ってるんだよね、だからさ、その問題を宗司に解決して欲しいんだ」
オレのベットでリラックスしながら漫画読んでそんな事言われても緊張感ゼロなんだよ。
でも、オレは知っている。こういう時に話されることは決まってめんどくさいことだということを、そ
して今まで使われたことのなかった『姉の言うこと聞く券』と来た。
これはめんどくさいぞ……
「そんなことは良いから早く教えろよ」
「じゃあ話す前に言っとくけど、私のこのお願いはあんたが今までくれたこの券全部使うつもりだから、
よろしく」
んっ? それってどういう意味だ?
「つまりはそれほどのお願いってことでいいのか?」
「そういうことかなー? でも難易度的にはそれほど難しいのじゃないから、安心して聞きなさい」
難しくないのか……何だろうどんどん怖くなってくるぞ……
「早く言えよ、めんどくさい」
「そんなせかされるとあんまり言いたくなくなるんだけどじゃあ、言うよー」
オレ的には是非発表しないで頂けるとありがたいんだけどなー
「宗司には自己生活部こと自生部に入って欲しいんだよね」
まず初めにお読みいただきありがとうございます。
はい、瑞樹一です。
前書きでも書いた通りここからは香澄さんの弟、沢渡宗司君のお話が始まります。
なんでしょう、姉に振り回される弟とか兄に振り回される妹とか出てくるとなんか読んでて親近感わいちゃうんですよね。
あの、いやいやながらも振り回される弟、妹って半ば甘んじてるんでしょうし、きっともはや下克上すら望まないしで姉とか兄になついてる感じがいいんですよ。
では、本日はこの辺であとがきまで付き合ってくれた方ありがとうございました。