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元〇〇と呼ばないで!  作者: じりゅー
元十一章 こんにちはマナちゃん
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元八十六話 普通で意外だと思ってたら置いてかれてた

 

「こんにちはマナちゃん!」


「奇遇だな。あ、別にストーキングとかはしてないぞ。」


 買い物を終え、鴨木さん、マヤと一緒にワオンモールから出ようとしたところじょうちゃんと憂佳に会った。


「こんにちは。2人も買い物?」


「…?」


「マナちゃん…?」


 じょうちゃんと憂佳が話しかけたのはマヤだ。

 2人はマヤの事は知らなかったはずなので、いつもの俺と雰囲気が違うことに気付いたのだろう。


「別にストーキングは疑ってないぞ。」


「あれ!?マナちゃん!?」


「なんだ?まさかリリナに続いてマナまで分身が出来るようになったのか?一人くれ。」


 …そう言えば研究所に潜入した時、リリナの奴は分身してたな。


「俺はそんなこと出来ないぞ。あとお前らにはマナちゃん人形があるじゃねーか。」


「2人はまだ知らなかったよね。

 私はマヤ!マナのコ」

「双子の妹だ。」


 〈なんで嘘つくの?〉


 わざわざ言葉を遮ってまで嘘を言われた事に納得がいかないのだろう。マヤは小声で俺に問う。


 〈場所を考えろ場所を。ここがどこだか分かってて言おうとしてたのか?〉


 〈あ…〉


 ここはショッピングモールの入り口だ。

 大勢の前でコピーとか言わせたくないし、研究所の件も言う訳には行かない。


「双子?今までそんなこと言ってたか?」


「ああ、そう言えば言ってなかったっけなー…俺には双子の妹が居たんだよ。」


「ここまでそっくりとは…」


「何言ってんだ。守にも守そっくりな双子の姉が居るだろ?」


「む?」


「え?」


「……なんだその反応。」


 首を傾げた2人を見た俺も首を傾げる。

 守と瑠間はじょうちゃん達の親戚だったはずだよな…?


「守お兄ちゃんは一人っ子じゃないの?」


「え?」


「ああ、双子が居たなんて話は聞いたことが無い。

 守の母親は子供ができにくい体質だと聞いていたから、他の兄弟がいたという話も聞いたことがない。」


 …どういうことだ?


「瑠間って名前に聞き覚えは無いか?」


「瑠間?」


「誰それ?」


 本当に知らない?

 じゃあ、瑠間はなんなんだ?守の双子の姉じゃなければ、一体――


「―――バレたみたいだな。」


 その時、声が聞こえた。

 声がしたのはさっきまで俺たちが向かっていた入り口から。俺も他の皆もその方向を向く。


「噂をすればってやつか…

 聞かせてもらうぞ、守。瑠間が何者なのかを。」


「…ああ。

 まずは場所を変えよう。俺の家とかはどうだ?」


「いいぞ。」


 踵を返す守に付いて行く俺。


「憂佳姉ちゃん、行こう!」


「私達は買い物に来ていたんだが…」


「良いから行こうよ!」


「買い物…」


 他のメンバーも次々と付いて来る中、憂佳だけは名残惜しそうに付いて来ていた。







「ここだ。」


 守の案内の元で辿り着いたのは普通の一軒家だった。

 普通に意外性を感じる珍しい例。


「普通だな…」


「普通だね。」


「逆に予想外。」


 鴨木さんもか。


「お前ら…俺をなんだと思ってるんだ?」


「「人外。」」


「人でも神でも無い何か。」


「凄いお兄ちゃん!」


「ヤバい親戚。」


「お前ら……」


 憂佳までそんな印象持ってるのか。

 しょんぼりしながら自室に案内する守に付いて行く。

 言えも普通だったが、部屋も普通だった。

 …ベッドの下とか見てみようかな。よし、隙あらばやるか。


「…まあ、結論から言えば瑠間は俺の別の人格だ。」


「別の人格…」


 もう一人の僕的な奴か。


「人格って?」


「自由意志を持った意識のことだ。

 守にはそれが二つあるということだろう。」


 俺から聞いてもナニソレな説明を聞いたじょうちゃんは言わずもがなナニソレ顔だった。


「?」


「…1人に2つの心があるって感じだ。」


「え!?守お兄ちゃんそんな状態だったの!?」


「ああ、去年色々あってな…人格が増えたんだ。」


「…確かさっき、マナちゃんは姉って言ってたよね?」


「そうだ、俺のもう一つの人格…瑠間は女の人格なんだ。」


 …確かに、瑠間は女性だった。

 何故男の守に女性の人格が出来たのか、その理由を尋ねたいところだが――

 ――それ以上に気になることがある。


「守。

 俺は確かに瑠間と会ったことがある。

 でも、その時瑠間は女性の体だったし、守も一緒に居た時があったはずだ。

 あれはどういうことなんだ?」


「………少し前、リリナが分身してたときの事は覚えてるか?」


「ああ、研究所の時だろ?」


「え?分身?」


 守は話に置いてけぼりになってきているじょうちゃんを無視して話を進める。多分後で解説してくれるのだろう。


「実は俺も出来るんだ。

 ただ、俺が分身すると何故か分身が異性になるんだよ。これも二重人格の影響だと思うんだが…」


 …分身で別の性別になる、か…

 でも、俺に別の人格は無いし、そもそも分身が出せない。

 出せたとしても一時的とかそういうオチが待っていそうだ。この線は却下だな。


「…そう言えばマナ、それはお前の代わりをやってた人形だよな?」


「え?マヤちゃんがマナちゃんの代わり?」


「ああ、色々あって俺の家に住むことになったんだ。

 じょうちゃんと憂佳にはさっき嘘ついてゴメン、大勢の人の前だから言いづらかったんだ。」


「それは良いが…代わりとはなんだ?」


「実はあの後―――」


 マヤが俺の代わりを務めた経緯を話すため、二度目の研究所潜入の事を話した。

 すると、憂佳が俺に怒ったような表情を向ける。


「…何故、その時私に連絡しなかった?」


「憂佳だけじゃない、俺にも言わなかったよな。」


 守も似たような表情だった。


「俺も、まさかあんな大事になるとは思わなかったんだよ。

 ジーナと協力して、楽に目的を達成できると思って進んでたんだ。

 途中でヤバくなった時も、ジーナ以外の誰かに頼ろうなんて発想は出てこなかった。

 多分、一回目の潜入で変に自信が付いてたのかもしれないな。」


「そんなのは自信じゃない、慢心だ。」


「そうだな…心配かけてゴメン。」


「五体満足で帰って来たから許す。

 でも、あんまり無茶はするなよ。」


「私は…少し解せないが、従弟がそう言うなら仕方あるまい。」


「……」


 あ、じょうちゃんむくれてる。話に付いていけなくなって拗ねてしまったようだ。


「じょうちゃん、あっちで私と話そう?全部分かりやすく説明するから。」


「貴女にじょうちゃんなんて呼ばれる筋金は無いよ!」


「筋合いかな?」


「…そうだよバカ!」


 正しいことを言ってる方がバカと言われる不条理。

 拗ねたじょうちゃんは守の部屋を出て行ってしまい、それを俺が追いかけてなんとかなだめた。


「私…来なくてよかった?」


 …そう言えば鴨木さん居たんだった。






「ところでその…瑠間、と言ったか。その可愛い従妹に会わせてくれないだろうか。」


 じょうちゃんに説明し、鴨木さんをなだめた後、憂佳が守に頼む。

 憂佳はガチレズっぽいので、是非一目守似の美少女を拝みたいのだろう。パッと見胸生えただけだけど。

 …守にパッドを付ければあっという間に瑠間なのでは?


「良いぞ、出てこい瑠間。」


 守から守が出てきた。

 まるで元から重なり合っていたかのような、最初から後ろに居たような自然さで守の分身――瑠間が出てきた。


「初めまして、かな。憂佳姉さん、憂子。

 私が瑠間。守のもう一つの人格…双子の姉、みたいな感じかな。」


「俺が兄だと思うんだけど。」


「私が先、守が後付け。」


「何言ってんだ、どっちが長く」

「自分同士で喧嘩するのはやめたら?」


 同じ1人の人間なのに口喧嘩する守と瑠間。


「…マヤ、マナに成り代わろうとしてなかった?」


「な、なんのことかなー!?」


 鴨木さんの鋭い指摘にひるむマヤを見て思う。

 …自分同士ってこんな仲悪いもんなの?波長が合ったりで結構楽しそうだと思ってたんだが…

 い、いや、ここだけだよな。これは普通じゃないんだよな。そもそも自分同士が対面するっていう状況も普通じゃないんだけどな。何もかも普通じゃねーじゃねーか!


「喧嘩する程仲が良い…波長が合うからこそぶつかりあうこともある。多分。」


「そういうものだろうか…」


「この状況はそうでないと説明できない。」


「…波長が合わない部分のせいでぶつかり合っているのではないか?」


 また難しい話を始めおってからに…じょうちゃんまた置いてけぼりじゃねーか。


「じょうちゃん、瑠間を見てどう思う?」


「しっくりくるような、違和感があるような…」


 まあ分からなくもない。俺も瑠間を最初に見た時は驚いたものだ。

 例えるなら無乳キャラが突然胸生やすようなものだろうか。鴨木さんが

「死にたい?」

「生きたい。」


 …思考読まないでープライバシーの侵害よー


「突然どうした鴨木。」


「侮辱の気配を感じた。憂佳はあんまり気にしなくても良い。」


「はぁ…?それなら、話を続けよう。」


 憂佳との話に戻る鴨木さんを見てホッと一息。


「…俺も、第一印象はじょうちゃんと同じだったな。」


「そうなの!?」


 笑顔を輝かせるじょうちゃん。どうやらおそろが嬉しいお年頃らしい。多分俺限定だろうけど。


「ああ、そうだ。

 最初はなんで守胸生やしてんのかなーとか思ってた。」


「そうだよね!顔とかあんまり変わってないよね!」


「ああ、さっぱり変わってないよな。本当に胸とのどくらいでしか見分けられない。」


「憂子、マナ、それくらいにしておけ。」


「守が可哀想。」


 ……そう言えば本人目の前でしたね。

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