元八十一話 忘れてたけどそう言えばお似合いだった
あらすじ変えました。
あらすじの趣旨と本編の趣旨のギャップが詐欺感すら感じたので…バレないようにって言うかどう乗り切るのって感じですしね。
皆ジーナリウスの次の言葉を待っている。
その結果流れたのは僅かな沈黙。それほど話しづらい事情があるのだろうか。
「…やっぱり、分かっちゃった?」
「ああ。」
「……話すしかないか。」
意を決したらしい。
「明日、学校が終わったらまたここに来て。」
明日か。
「今話すのはダメなのか?」
「見てもらいたいものもあるからね。」
「分かった。
と言うことだが、皆は大丈夫か?」
俺は特に明日の予定は無いので大丈夫だ。
他四人の予定が気になる。
「私は大丈夫です。」
「…私も。」
「俺も大丈夫だな。」
「僕も大丈夫。」
全員行けるか。
「ジーナさん、詞亜さんも連れて行って良いですか?」
「良いけど…大丈夫なの?」
「あー…詞亜が来るなら俺、行かない方が良いか?なんなら後で聞かせてくれればいいし。」
「大丈夫だとは思いますが…念のため訊いておきます。」
「頼む。
じゃあ、今日は解散にするか?」
「それでも構いませんが…実は私、守さんとは一度色々と話したいと思っていたんですよ。」
「そうなのか?まあ、どうせ暇だから良いが…」
「話し込むのは良いけど、良いの?」
「何が?」
「その格好のままで。」
「あ。」
そう言えばギーナに女装させられたままだった。
「そう言えば男だったなお前。」
「そう言えばってお前…」
「お似合い。」
「鬼ぃ…」
「ぐぬぬ…」
「なんだその視線。恨めしいのか?羨ましいのか?」
「どうするんです?着替えてきますか?」
「…もういいや。」
ここから家に帰って戻ってくるまでの時間は待ってもらうのが少し申し訳ないくらい長い。
ギーナを追いかけて捕まえるのはもう無理だろうし、もういっそこのまま話した方が良い。
「で、話したいことってなんだ?」
「ええ…異世界に行ったことがあると聞きましたが、本当ですか?」
なんで知って―――ジーナと最初に会った時か。
「…本当だ。」
「そうですか。
では、そこの食事って色鮮やかだったりしませんでした?」
「色鮮やか?」
盛り付けの話だろうか。
「肉が青かったりとか」
「しねーよ!いくら異世界でもそんなもんねーよ!」
そんな着色料がふりかけられたみたいな肉は存在しない。
「……今度見てみます?」
「見たくも無いわ!」
「…俺達、この会話に付いて行けそうにないな。」
「僕は聞かない方が良い気がする。」
「邪魔者は退散。」
達治、田倉、鴨木の三人は会計を済ませて出て行く。
その後リリナと他愛のない話をしたりギーナが乱入してきたり津瑠に女子と居ることがバレて修羅場になりかけたりした。浮気とかじゃなくて普通に友達同士で話してただけだったのに…
翌日。
カフェウェストに集まった俺、リリナ、鴨木、達治、田倉、詞亜は早速移動するよと言って案内を始めたジーナに付いて行った。
そして辿り着いた場所は――
「酷い…」
――焼け焦げた地面、煤けている瓦礫が広がる場所だった。
「なあ、ここはもしかして…」
この場所には見覚えがあった。
「そう。ここは前に来た研究所…があった場所だよ。
リリナも見覚えあるでしょ?」
「ええ、間違いなくあの研究所ですね。」
「ここが…!?」
しかし、以前はこんな場所ではなかった。
古びてはいるが大きな建物があり、周囲には塀もあったはずだというのに…今やその跡形すら残っていない。
「えっと、あの研究所、とか言われても分からないんだけど…」
「俺も。」
……まあ、この2人はな。
映画を観に行った時に居なかったので、多分研究所の侵入作戦には参加していなかったのだろう。
「詳しいことは省くけど、ここは元々大きな研究所があったんだよ。
三日前までは。」
「三日前まで?
その日に何かあったのか?」
「……その日の事も全部話すよ。」
ジーナは話してくれた。
三日前、宇宙人の本部からの指令で皆に黙って研究所に忍び込み、調査していた事。
マナにはバレて、その調査に連れて行ってしまった事。
その末にここで大爆発が起き、マナとジーナ、そして、研究に携わっていたジーナの友人とプロックも巻き込まれたことを。
なんで誰にも言わなかったのか、とジーナに詰め寄るリリナ。
どうしてマナを連れて行ったのかと怒る田倉と達治。
悲し気な表情で俯く鴨木と詞亜。
俺も、ジーナに言いたいことはあるし、怒りたい。悲しみから泣きたくもなった。
だが――
「…ジーナ。それで、マナはどうなったんだ?」
本当に大事なのは今だ。
まだジーナはマナがどうなっているのかを言っていない。
「……」
誰もが気になっていたのであろう。俺の質問を聞くとせわしく口を動かしていたリリナも、田倉も、達治も、皆口を閉じた。
「マナは……生きては居るよ。」
全員の表情が一瞬だけ明るくなる。
「けど、かなり重傷で…今こっちの宇宙船で治療中なんだ。まだ目を覚まさない。
でも大丈夫、リリナのおかげでマナの再生能力は高いから死ぬことは無いし、そのうち完治して戻ってくるよ。」
「そう言えば、あの時自然治癒能力を上げてましたね…」
「じゃあ、どうして偽物のマナがいるの?」
「こんだけの爆発で、どうしてニュースにならないんだ?」
確かに、これまでの話からして別に偽物のマナを用意する必要も無いように見える。
それに、ニュースにならないのも不自然だ。これだけの惨状を生み出す程の大きな爆発だ。ニュースどころか立ち入り禁止にもなっていないのはどう考えてもおかしい。
「…それなんだけど。
ザープ星がこの事件の事を隠蔽したいからなんだよ。
地球では宇宙人の存在は眉唾物ってことになってるし、魔法も存在しないってことになってるから。
今回の事件はザープ星が大きくかかわってるし、爆発も魔導機械によるものだから…バレたらまずいんだよ。
だからこの研究所の周囲に結界を張って爆風と音と光を防いで、ここは最初からこうだった、っていう認識を周囲の住民に植え付けたんだ。
マナはその被害者だから、怪我をしたっていう事実を隠したかったんだよ。
1人とは言え綻びの一つであることには変わらないから。私がマナの性格をごまかそうとしたのも同じ理由だよ。」
「じゃあ、マナの性格がおかしいのは?」
「……こっちの科学者のミスだね。体はマナちゃん人形の前例があったから完璧に再現出来たんだけど、性格と思考パターンを完全に女の子にしちゃったんだよ。見た目のせいで。」
「だから、見た目相応の性格になったと?」
「そうだよ。
それで、その…皆。
今のマナに合わせてくれない?もちろん、本物のマナが帰ってきたら止めて良いから…」
「良いぞ。
とりあえず、マナは無事じゃないけど生きてるし、戻ってくるんだからな。
皆はどうだ?」
異を唱える者はいなかった。
こうして、少し変わったマナとの生活が始まったのだ――
――まあ、俺多分ほぼ顔出さないけど。




