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元〇〇と呼ばないで!  作者: じりゅー
元十章 メタルマナ ロリータ2 ~twin metal~
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元七十二話 危険だと思ってたらヌルゲーだった

 一時間後、俺はスマホのアラームで目を覚ました。

 ジーナに起こさせるのもなんか悪い気がして、結局自分で起きることにしたのだ。

 寝起き特有のけだるさを押しのけて起き上がり、部屋を出る。


「あ。」


 玄関には既にジーナが居た。

 何やらカモフラージュ率が高そうな真っ黒い格好をして。


「……出かける前に起こしてけって言わなかったか?」


「ご、ごめんね!忘れてたんだ!」


 本当に忘れていただけなのだろうか。

 それにしては妙に動揺しているように見える。


「そんな恰好でお泊り会なのか?」


「ちょっと仮装の続きを…ほら、スパイみたいな!」


「スパイはお化けじゃないぞ。」


「居ないようで居る、みたいな意味ではお化けっぽいよね!」


 そんなトンチを効かせる必要があるのだろうか。

 普通になんかのお化けの格好していった方が盛り上がるだろうに。


「……まあ、分かった。

 戸締りは任せろ。それで、お前は行ってこい。」


「ありがとう…じゃあ、行ってくるね!」


 玄関を出たジーナは去り際にチラリと俺を見る。

 その顔を見た俺は―――







(やっぱり、ここに来ることになっちゃったな。)


 古びた研究所に見える建物を見据え、私は少しぼんやりと考え事をしていた。

 誘拐されて救出されたあの日、ここにはまた訪れることになるだろうとは思っていた。

 メタルマナ(ザープ星の技術)が手中にあったからとはいえ、地球(この星)の人間が単独(他星人の力無し)でこんなに早く魔力の研究が出来る訳が無い。

 その原因は――大体察しが付くけど、調査は必要になる。

 その調査に私が抜擢ばってきされるのも分かっていた。だから――


「行くのか?」


「!」


 聞こえるはずのない声。

 彼女はまだ家に残っていたはず。


「様子がおかしいみたいだったから付けさせてもらった。

 どうやら気付いてなかったみたいだな。」


「…流石、一回忍び込んだだけのことはあるね。マナ。」


「まあな。

 …それで、どうしてこんなところに?」


「……」


 ここで理由を言おうがいうまいが、マナは多分黙って付いて来るだろう。

 彼女がこういうところでは強情だということは知っている。でなければ前回の潜入も行わなかっただろう。


「言っても良いけど、私の邪魔はしないで。」


「さあな、目的次第ってところか。

 間違ってるようなら止めるぞ。」


「例え、それがザープ星の総意だとしても?」


「…ああ。」


 私の言葉ではマナの意思は揺らがないようだった。


「………そう身構えなくても良いよ、別に悪い事をするわけじゃないから。

 この研究所の調査を依頼されただけ。」


「調査?」


「うん。

 前回の事件…というか、この研究所の研究に他星人が関わってる可能性があるんだ。」


「他星人が…?」


「そう。

 メタルマナ(研究対象)があるとはいえ、本来地球人が魔力の概念に気付くのはもっと先で、それまではメタルマナをオーパーツとかその類のものと思われているはずだった。

 けど、ああしてメタルマナを動かせるまでの技術を得た。」


「それが他星人の仕業かもしれないってことか。」


「そうだよ。

 それで、私がその関係している他星人の有無とどこの他星人なのか、その調査を行うことになった。

 だから今ここにいる。

 目的は言ったよ。

 …マナは帰って。」


「別に、俺は目的を言ったら帰るなんて一言も言ってないぞ?」


「だって、危険じゃん。」


 マナを巻き込む必要は無い。

 彼女には魔力銃を渡したけど、それ以外に自衛の手段が無いし、撃てる回数にも限りがある。


「それを言うならお前も危ないだろ。前に誘拐されたばっかりじゃないか。」


「それは油断してたからだよ。本当なら魔法でも魔導機械でも使って撃退か無力化は簡単にできてたはずなんだから。

 マナも知ってるでしょ?魔力銃だけでもあんなに使えるんだよ?」


「…そうかもしれないけど、俺はお前が心配だ。」


「私がマナを心配する程じゃないと思うよ。

 だって、マナには魔力銃しか無いし。」


「ジーナが俺を心配する理由がそれだけなら、俺のジーナに対する心配の方が上だ。」


「…友達だから?それは私も同じだよ。」


「そうだ。

 だからお前に付いて行く。また尾行してでもな。」


「……男の時だったらストーカーとか言えるんだけどな…」


「それでも付いて行っただろうな。」


「……分かった。

 これ以上時間を無駄にするのも嫌だし、マナも付いて来ると良いよ…どうせマナは何もしないで終わるだろうけど。」


「案外俺も役に立つかもしれないぞ?」


「その時が来ないことを祈るよ。」


 私は亜空間に手を突っ込み、魔導機械を二つ取り出す。

 そのうちの一つをマナに手渡し、壁の穴から研究所の敷地内に入っていった。


「あ、ありがとう…

 あ、そうだった、正面の入り口には監視カメラが仕掛けられてるから、そっちから入らない方が良いぞ。」


「それがあれば関係無いよ、カメラなんて。」


「え?」







 …潜入は変わった。

 人目を気にして、物陰にコソコソ隠れながら侵入していく時代は終わったのだ。

 いや、まだ続いているのかもしれない。

 “これ”が無ければ。


「ジーナ、本当に見えてないんだよな?」


『うん。誰からもね。』


 俺は巡回中と思わしき見張りのすぐ横を通る。

 通常なら侵入者だと言って騒ぎ始めるのだろうが、今はそんな素振りは無い。

 むしろ、俺が見えていないようでもあった。その先に居るジーナも。

 …ジーナがここに入る直前に渡してくれた魔導機械。それは持っている者を透明化し、足音や声も遮断する上にトランシーバー機能で他の魔導機械を持っている者と通信も出来るという優れた潜入道具。

 その名も“パーフェクトステルスMk-3”…だとか。1と2もあんの?

 とにかく、俺たちはその異文明の利器により潜入をヌルゲーにして駆け抜けていると言う訳だ。

 …本当に俺要らなかったんじゃないだろうか。寝てればよかったとちょっと後悔しつつある。


『階段は上に行くよ。』


「了解。」


 前回は階段を下に下って行ったんだったな…

 上には行かなかったので上の様子は分からない。ジーナのガイドに従うことになりそうだ。

 階段にも職員みたいな人が歩いていたが、見えていないのでスルーだ。


「…そう言えば、前のメタルマナはどうなったんだ?

 置きっぱなしになってるなら、また研究されてるんじゃないか?」


『ああ、それなら大丈夫だよ。アレは―――』


 ザ、ザザ…


 階段を昇り始めた時、パーフェクトステルスMk-3からノイズが流れ始める。


「どうしたジーナ?」


『……気付かれ――った、かも。』


 気付かれた…?

 ノイズ音は大きくなっていき、ジーナの声も小さくなっていく。


「ジーナ?どうしたんだジーナ!?おい!!」


『…ごきげんよう、侵入者さん。』


 ジーナの声の代わりに聞こえてきたのは聞き覚えの無い声だった。

 ジャミング…いや、割り込みでもされたのだろうか。

 声は加工されているので、性別すら分からない。


「お前は誰だ!?」


『分かっているだろう?

 我はお前たちの言う宇宙人(エイリアン)。微力ながらこの研究所の研究に助力している者だ。』


 …いきなりボスのお出ましって訳か。

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