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元〇〇と呼ばないで!  作者: じりゅー
元一章 夏休みの終わりの大事件
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元七話 おかし過ぎる言い訳をしたらお菓子を貰えることになった

 帰っても2人は居なかった。

 どこかへ出かけているのか、俺を探し回っているのか。

 いずれにせよ助かった。家に入って鍵を閉める。

 後は変な洗脳しなければ入れるとか言えば良いだろう。これで俺の生き様は守られた。


「……暇だな。」


 2人が居なくなり、安心したが暇だ。

 バイトは無くなり、達治の誘いを断った俺にはすることが……あ、ゲーム。

 昨日は途中で終わったんだったな。早速続きを…


 カンコーン!


 メールだ。

 俺の姉のモアからだ。

 家の血筋なのか身長は小さめだがしっかり者で、顔は可愛い系の美人だ。

 その身長と顔立ちから元の俺と歩いた時はよく妹と間違えられていたものだ。

 今は多分俺の方が小さいけど。


 [遊びに行く]


 いつだよ!

 …さすがに夕方だし、今日は来ないよな…多分明日だろう。だとしても入れられないけど。

 あ、バイトの面接あるんだった。それを理由に断っておこう。


 [今のバイト辞めて新しいバイトをやる事にした。

 その面接で明日は無理だ。またいつかな。]


 文面を作成してメールを送る。


 カンコーン!


 数秒で返信が来た。早いレスポンスだ。


 [問題無い。]


 返信する。


 [なんで?]


 [私モア、今あなたの家の前に居るの。]


 は?


 [メリーさんごっこか?]


 [突入します]


 かみ合わない。

 ってか突入って…


 ガチャガチャガチャ


 本当に来た!?


 [鍵開けて]


 [なんでこんなとこに居んの!?]


 [良いから早く]


 開けられないんですけど。開けても銀髪少女しかいないんですけど。


 [待ってろ、掃除するから。すげー散らかってるから。

 というか片付けられないから帰ってくれ。]


 [手伝うから開けて]


 ……そうは言われても…うーん…

 帰らせることが出来そうな言い訳……


 [やばいから、排泄物とか落ちてるから。]


 流石にアレ過ぎた。


 [題:汚物の主へ

 部屋でなにやってんの]


 お、汚物の主って…


 [言い過ぎってレベルじゃねーぞ!?

 排泄物云々は嘘ですごめんなさい。]


 [早く開けないとドア破る]


 [俺家に居ないんだよ!]


 [じゃあさっきから鳴ってる着信音は何?]


 またか!また着信音か!

 なんかいいごまかし方……


 [気のせいだ!]


 思いつかなかった。


 [部屋の電気が点いてるのは知ってる。

 中にいるのは分かってる。開けて]


 [電気消し忘れてて…]


 [人影も見えた]


 ごまかせない。

 少なくとも誰かいるというのはバレている。

 しかし、俺が出ていったところで詞亜のように誘拐だなんだと騒ぐだけだろう。

 なら逆に考えるんだ…玄関を開け、なおかつその騒ぎを起こさせない方法を!

 まず、玄関の鍵を開ければその瞬間にモア姉が入ってくる。

 その時俺の姿が見られるのは避けられない。だから俺の姿を見ても騒がれない方法を考える。

 今の俺は宇露基矢とは思われないだろう。ならば友達ってことにすれば良い。つまり…


 [訳あって女友達が今俺の友達が家に居るんだ。その人影って言うのは多分そいつのことだ。]


 こうする。

 そして、クローゼットの中にあった学生服(いつの間にか女子用の制服になっていた。これも神の力だろうか)の中から学生証を取り出して名前を見る。そして制服を戻す。


 [女友達?]


 [ああ、今開けさせる。]


 メールを送信するとドアを開ける。


「初めまして。貴女がモアね…モアさんですね?」


「そう。貴女が基矢のお友達?」


 もうボロが出かけた。

 妹と間違え始めたあたりからモア姉と呼べと強要されていたせいだ。

 妹と呼ばれるのは彼女にとって物凄くプライドが傷つけられることらしい。


「はい。私はマナと言います。」


 確認した生徒手帳に書いてあった俺の名前は宇露マナだった。

 ご丁寧に名前は片仮名にしてあった。どうせなら苗字も変えてほしかった。ごまかしやすいし。


「基矢は?」


「買い物に行ってくるそうです。さっき出て行ったばかりなのですぐには戻ってこないかと…」


 出て行ってないしここにいるが。


「そう…なら、待たせてもらっていい?相談したい事もあったし。」


「相談ですか?」


 まさか、その相談の為にわざわざここまで来たのだろうか。


「ええ。

 私、ちょっと家出しててね。」


「家出!?」


 思いがけない単語に驚く。

 しっかり者の姉が家出とは考えられなかった。


「ちょっとしたことで喧嘩になって、そのまま勢いで、ね。

 それで、夏休みの間だけでもここに泊めてもらえないかと思って。」


「そうだったのか…」


「…?」


 おっと素が。


「じ、じゃあ私基矢にモアさんの事話してくる!」


「どこ行くの?」


「コンビニ!ついでに買い物に行く!」


 長居してるとボロが出る気がしたため、外に出て連絡したことにする。ついでに夕食も買ってくることにしよう。

 ……財布忘れた。取りに…


「基矢…お姉ちゃん、なんでこんなことしちゃったんだろう…」


 ……外でテキトーに時間潰すか。夕食は朝食べ損ねたカロリーフレンドにしておこう。

 姉の嗚咽を聞きながら部屋から出て、アパートから少し離れた公園に向かった。

 それから沈みかけている日と赤く染まる町の空を、ぼんやりと眺めた。







「………起きて下さい、基矢さん。」


「……んー?」


 体を揺さぶられて起こされる。

 目を開けると紙袋を持ったリリナがいた。どうやらいつの間にか眠っていたらしい。

 スマホを取り出して見ると時間は19時を指していた。

 不在着信の通知にモア姉の名前があった。何度かかけていたらしい。


「いつまで寝てるんですか?帰りますよ。」


「あー…あ!」


 寝ぼけ頭に浮かんだ記憶に詞亜とリリナが良い笑顔で迫ってくる様子があった。

 まずい…!そう言えば2人で俺を洗脳しようとしてたんだった!


「お、俺は変わる気は無いぞ!

 いくら洗脳しようと無駄だからこっち来んな止めろ!」


「何言ってるんですか?

 ほら、早く帰りますよ?」


 ……洗脳のことを忘れたのか?

 それはそれで都合が良いので深く詮索するのは止めて一緒に帰った。

 …もしかしてジョークか何かだったのか?


「あ、そうだ。

 さっき俺の姉…モア姉が来たんだけど、正体は隠してるから口裏合わせてくれ。

 名前は生徒手帳に書いてあったやつを名乗ってる。」


「分かりました。

 私の設定はどうしますか?

 部屋を借りたものの大家さんがその部屋に基矢さんが住んでることを忘れて仕方なくルームシェアすることになったJKにしますか?」


「もうそれでいいよ。」


 やっぱり変なところで用意周到だなコイツ。






「基矢!」


「おわっ!?モア姉!?」


 玄関のドアを開けると、若干のタイムラグの後モア姉に抱き着かれた。


「……マナ?」


「モアさん?どうしたの?」


「…なんでもない。

 それより、その人は?」


「ああ、私はリリナと言います。

 この部屋をお借りしたものの、大家さんがここに基矢さんが住んでいたことを忘れていたようで…

 それが発覚したのが荷物を送った後だったので、ルームシェアと言う形で住んでいるんですよ。」


 本当はJKになってガールズトークしたかったからだけどな。


「そうなの?

 ねぇ、基矢に何かされてない?大丈夫?」


「大丈夫ですよ。

 今日来たんですが、朝からお出かけされているみたいですし。

 される暇すらなかったという感じですかね。」


 おい、その言い方だと確実に俺が何かするみたいじゃないか。止めろ。

 と言いたくても第三者(モア姉)の目がある手前言えない。後で覚えてろ元女神。


「なら良かった…

 年頃の男女なんだからガードはしっかりね。」


「分かってます。」


 どれだけガードしても間違えようが無いんだよな…

 性別が変わってるし、そのせいか性格のせいかは分からないがリリナを恋愛対象に見れないし。

 糠に釘どころか赤ん坊相手に盾構えてるようなもんだ。


「さっきから気になってたんだけど、その紙袋何?」


 俺が猫被って尋ねるとさっと顔を逸らすリリナ。

 何かやましい物でも入っているのだろうか。


「………似合わない…」


 おい聞こえてるぞ聞かせたんだろ後で腕極めてやるから覚悟しとけよ。


「これはケータイ電話です。スマホです。新機種です。

 詞亜さんと一緒に選んできました。」


「え?スマホ買いに行ってたの?」


「どこかの誰かさんに逃げられましたからね。

 それに、JKと言えばケータイ、いや、スマホでしょう!」


「まるでなりきってるみたいな言い方ね…」


 おや鋭いですね姉御。

 そうですそうです、このお方は元女神、さぞかし人間とは思ないほどのご高齢でしょう。そんなお方がJK気取りなんです痛いでしょう?


「……コロス。」


 俺、とうとう地獄の底からの声が聞こえるようになったのか。

 背筋が凍ったかと思った。


「イエース!アイアムJK!花の女子こーせー!」


 リリナ様のテンションが酔っぱらいみたくなってきておられる。


「そう…」


 流石姉御、クールだな。

 くぅーと誰かの腹が鳴る。

 …俺だ。


「あー、朝からアイスくらいしか食べてないからかな。カロフレでも食べるね。」


「いけませんそんなんじゃ!

 私が異世界料理を御馳走してあげましょう!しばらくお待ちください!」


「…異世界料理?」


「あーほら!異次元みたいな意味じゃないかなー!?

 すごいことを異次元とか言ったりするじゃん!?あれだよ!」


「ああ、なるほど。」


「貸し一つな。」


「後で菓子をあげましょう。」


 駄洒落かよ。

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