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元〇〇と呼ばないで!  作者: じりゅー
元八章 さよなら双丘、お帰り相棒!
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元六十三話 驚かそうとしたら嵌められた

 

「いらっしゃいませ。」


 詞亜の家に行ったが、外出中だったらしく鍵がかかっていた。インターホンを押しても誰も出ない。

 なので、カフェウェストに来て鴨木さんを驚かしにきた。達治の家は驚かせた後遊ぶので最後にすることにした。

 …あれ?今更だけど鴨木さんここでバイトなんてしてたっけ…

 …あ、そう言えば前に挨拶してたな。度忘れしちってた。


「1人で。」


「おひとりさまですか。では、席に案内します。」


 仕事中だからか、貼り付けた笑顔を絶やさず、あくまで機械的に席に案内する鴨木さん。

 こういう真面目な奴って、冷やかしに来ても普通に対応されるんだよな…おかげで気付いてるのかどうか全く分からない。


「コーヒーを一杯、ホットで。」


「かしこまりました。」


 注文すると客もまばらなのにそそくさと去っていく。

 数分スマホでネット小説を見て時間を潰すと、鴨木さんがコーヒーを持ってきた。


「お待たせしました。ホットコーヒーです。」


「鴨木さん。この顔に見覚えない?」


「……ナンパはご遠慮ください。仕事中です。」


「…気付いてるのか?」


「何にでしょうか。」


 …気付いてないらしい。

 性別が変わる瞬間を見たと聞いたことがあるので、てっきり基矢()の顔も知っているのかと思っていたが……

 教えて驚かしてやるか。


「俺だよ、基矢だよ。」


「業務中なので失礼」

「待って!アイワーズマナ!」


 鴨木さんは立ち去ってしまった。

 マナの名前も出したのに…ちょっとくらい相手してくれても良いじゃないか。


「ちょっとよろしいでしょうか?」


「あ、はい。なんで…」


 振り向いた俺は固まった。

 笑顔ではあるが、凄まじい威圧感を発している店長を見てしまったからだ。


「お客様がウチの店員にしつこく絡んでくると聞きましてね…」


「あ、いやその、違うんです!

 知り合いの顔を見たから声を掛けただけなんです!」


「見たことない男の人、だそうですが?」


 店長のはるか後方に鴨木さんが見えた。

 鴨木さんの口元は歪んでいた。

 嵌めやがったなアイツ!!


「し、失礼しました!会計してさっさと出て行きますのでお許しください!

 四百円ですよね!どうぞ!では!」


 財布から素早くお金を取り出し、店長に渡して走り去る。


「お待ちください。」


 ところで腕を掴まれて急停止。

 なんだ?やっぱり一発くらい殴られるのか?殺すならさっさとやれやチクショー!


「…ウチのコーヒー、飲んでから帰ってください。

 ただし、視線にはお気を付けを。」


 鴨木さんを絶対に見るなってことか。

 席に座ると、他の客の視線を集めていることに気付いた。まあ、あんな騒ぎがあったら見るよなそりゃ…

 居心地が悪い中、猫舌に苦戦しながらホットコーヒーを飲んで急いで店を出た。


「お客様、お会計を。」


「え?さっき払ってませんでした?」


 テーブルの上に置かれてました。







「はい、どちら様でしょうか?」


「おい。」


 チャイムを鳴らして出てきた達治が一言。丁寧に言っているが、要約するとお前誰?である。知ってるか。


「はぁ…戻っちまったのか?」


「なんだよ戻っちまったって。嬉しくないのかよ。」


「いや、だって考えてもみろよ。

 美少女が普通の男になってるんだぞ。テンションも落ちるに決まってるだろ。」


 ちょっと納得してしまった自分にムカつく。


「…せっかく驚かせてやろうと思ったのに。」


「いや、驚いてはいる。」


「どこが。」


「心の中で。」


 心の中で驚いてるとかそんな情報要らないんだよ…

 俺が欲しかったのはリアクションだ。


「はぁ…」


「ため息つくと幸運が逃げるぞ。」


「誰のせいだと思ってやがる。」


「…まあ、男に戻ったことは祝ってやるよ。

 おめでとう、基矢。」


「達治!」


 これまで冷たい態度を取られていたからか、少し感動してしまった。

 男のツンデレなんて可愛くないとか日頃思っているが、正直これは嬉しかった。ちょっととは言え共感してくれているから。


「あー、その顔美少女の時にやってくれ。」


「台無しにすんじゃねぇ。」


 感動を返せ。






「なるほど。

 要は守って奴のおかげで一日だけ男に戻れたってことか。

 あ、徳政令使ってくれ!」


「そうだ、お前にしては呑み込みが早いな。

 断る。」


 今俺たちがプレイしているのは通称友情破壊ゲームの一つで、電車で双六をするゲームだ。

 野郎2人だけというのもあれだが、たまにはこんなパーティーゲームもしたくなる。リリナとジーナも呼ぶんだったかな…


「一日だけか、良かった。」


「良かったじゃねーよ。

 俺としては一生が良かったけど…贅沢言ってられないよな。ちょっとでも機会をくれただけありがたい。守様様だ。」


「守って奴は何者なんだ?」


「ああ、アイツは一言で言えば人外――

 ――おい、その所持金ゼロ誰に使う気だ。カーソルを俺に持ってくるんじゃない!止めろ!あああああああああああああああああ!!」


「やったぜ。」


 ゲーム内の俺の所持金がやったぜされる中、会話は続く。


「人外って言われてもな…どれくらい酷いんだ?

 よし、良い目だ。」


「お前…借金あるなら自分に使えよ…

 …屋根から屋根に飛び移ったり、一瞬でワオンモールの二階まで移動したり…あと、三人のナンパを一瞬で気絶させたりしてたな。

 あ、赤マスかよ…」


「ナンパ?守って女なのか?

 あ~あ、お前も借金地獄だな。」


「男だ。見た目完全に美人だけど。

 道ずれにしやがって…」


「男の娘って奴か。

 文句あるならこっち来てみろよ、貴様に神をくれてやる…」


「ああ。彼女は居るらしいから狙っても意味無いぞ。守にソッチの気は無いし。

 ふざけんないらんわ厨二野郎。」


「彼女持ちかよ…っていうか、俺にもソッチの気は無いぞ。

 お、いいカードだ。」


「どうかな。実際に守を見たらお前も口説き始めそうだ。

 そのカード頂き。」


「へぇ、そこまで言うなら見てみたいな。

 お前人の希望を盗むな。」


「写真は無いぞ。昨日消されたから。

 希望を与えられ、それを奪われる…その時人は最も美しい顔をする。」


「残念だ。

 さっきお前そんな顔してたよな。」


「うるせーよ。

 あ、ゴールされた。」


 その後なんやかんやあって最下位でした。

 …セクハラが無いって良いな、無駄に気を張る必要も無いし。

 やっぱり男のままでいたい。






 その後も達治と遊んでいると、守から瑠間が俺の家に来るというメールを受けた。

 それを見た俺は達治の家を飛び出し、俺の家に戻る。お客さんを待たせる訳にはいかない。

 家に戻ると既に瑠間の物らしき靴があった。もう来ていたらしい。


「本当に守さんそっくりですね…胸以外。」


「流石分し」

「分子運動がどうしたって!?」


 部屋に戻ると瑠間がリリナとジーナと一緒に話していた。

 俺の部屋なんだけど。


「誰も分子運動なんて…あ、お帰り基矢!」


「おかえりなさい、基矢さん。もう少し外に居ても良いんですよ?」


「出て行けと?

 なんで男に戻った途端皆冷たくなるんだろう…」


 泣きそうです。


「男なんですし泣かないでくださいよ、みっともない。」


「俺の泣き顔を見たくないなら口を開くなお前…」


「やーいやーい泣き虫基矢!」


「お前も口を閉じろ!そしてリリナと出てけぇ!」


 あ、やべ、ちょっとこぼれた。

 急いでぬぐい取り、リリナとジーナを引っ張り出す。


「セクハラですよ基矢さん!」


「そーだそーだこの変態!」


「ジーナはともかくリリナは何回か俺の胸揉んでただろ!このセクハラ親父!

 あと変態言うの止めてくれ!不可抗力以外の反論ができない!」


 どうやら本気で抵抗しなかったらしく、なんとか部屋から追い出すことに成功する。俺は瑠間に用事があるんだ。

 それも、他の誰にも聞かれたくない大事な用事が…


「…守から聞いてたから会いに来たけど、どうしたの?急に会いたいなんて。」


「……瑠間。単刀直入に言う。

 今日一日だけでも良いです、俺と付き合ってください!」


「……え?」


「「「えええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」」」


「お前ら聞いてんじゃねえ!」


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