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元〇〇と呼ばないで!  作者: じりゅー
元七章 幼馴染(外国産)来訪
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元六十一話 ふざけ過ぎたと思ったらむしゃくしゃしてた

前話を書いていて基矢が友達の勧めでロリヒロインのラノベを買ってたとか言ってたような気がして読み返したら、やっぱりそうなってました。

鴨木さんに薦められるまではラノベ読んだことないとか言ってたのに…

こんな感じの矛盾、他にも誤字脱字を発見したら予告無しに訂正します。

小説を書いている読者様も誤字脱字や矛盾の有無に注意しましょう。読み返してみると意外とあったりなかったりしますよ。

 

「またね、モトヤ。」


「ああ、今度はクリスマス前後だな。」


 翌日の朝、レイティの両親が迎えに来た。

 外見が変貌した俺を見て驚いていたが、事情は父さんと母さんに聞いていたらしく問い詰めてくるようなことはしなかった。

 今日が学校ということを配慮してか、迎えは朝7時頃に来ていた。

 その為に早起きしてくれたレイティの両親には頭が上がらない。上げようにも身長が足りないけど。


「モトヤ、いつもの。」


「分かった。」


 恒例の別れのハグ。

 一昨日は意識できる状況じゃなかったが、身長差が変わっていることで大きな違和感のようなものを覚えた。

 前まではレイティより高かったのに…少し悲しくなった。

 お互い惜しむようにゆっくりと体を離す。一時とはいえ俺もレイティとの別れは寂しい。


「モトヤ、ありがと。」


 完全に離す直前、レイティは俺の頬に一瞬唇を付けた。

 俺も驚いたが、レイティの父親も驚いている。母親の方はあらあら、とか言いそうな微笑ましい笑みを浮かべていた。


「じゃあね!」


 返事を返す前に扉をくぐり、閉めて行った。

 その頬は少し赤みがかっていたような気がした。







『生きて会えたら、答えを教えてやる!』


 テレビの中で姿を消す主人公。

 その前でコントローラーを握る彼は、涙を流してしていた。俺も、すっかり治った右腕でうっすらと浮かんだ涙を拭っている。


「うっ、うう…」


「…俺も、このシーンを最初に見た時は泣いてたな。」


 土曜日。日もすっかり沈んでいる中、俺と守は俺の部屋でゲームをしていた。

 初代のプレイターミナル。通称PT1のゲームだが、PT3でダウンロード版の物がある為それをプレイしていた。やってるゲームは二十世紀最高のシナリオと評されたステルスゲームだ。


「…名前だけは聞いてたし、段ボールのネタだけは知ってたけど…ここまで神ゲーだとは思ってなかった。

 確かに、今まで人生損してたかもな。ありがとう。」


「まだエンディングじゃないぞ。」


「そうだけどさ…ちょっと、このゲームをどうしても今クリアしたくなってさ。」


「泊りか?」


「ああ、もしマナが良ければだけどな。

 俺も親に訊かないといけないし…」


「俺は良いぞ、親に訊いてみな。」


「ありがとう、ちょっと電話するぞ。」


 守はスマホを操作し、耳に当てる。


「…分かってる!そんなことするか!」


 守が何か叫んで電話を切る。


「良いってさ。そういうことだから、宜しく頼む。」


「さっきのはなんだ?」


「マナちゃんを襲わないようにね~だってさ。

 彼女も居るのにそんなことするかよ。」


「は、はは……」


 乾いた笑いしか出ない。

 もし守がそんなことをしようとしたら、人外の守を止められないだろう。

 ……まあ、一時は命を預け合った戦友だったし、気心も知れた友達だ。そんなことはしないことくらいわかる。


「それに、俺はそういう人種大っ嫌いだからな…ナンパはそれ目的の奴も居るし。」


「みたいだな。」


 それに、彼はナンパ嫌いだ。

 本人曰く、この顔だとナンパされることも多く、その度に男であるという個性というか事実というか、そういう何かを否定されているみたいで嫌だとか。

 分からなくもない。俺だって、野郎どもにそんな視線を向けられる度に似たような気持ちにはなってるからな。体はともかく、心は男のままだから。


「…こんな話は止めだ!

 さ~て、続き続き。」


 守はコントローラーを握り直し、プレイを再開する。


「失礼しまーす!

 基矢さん!そろそろ晩御飯の用意お願いしまーす!

 …おや、守さん。」


「…リリナか。悪いけど今日は守をこの部屋に泊めさせてくれないか?

 って、ジーナリウスにも言わないといけないんだったな…」


 守はリリナとジーナがこの家に同居している事は知っている。

 先週のジーナ救出の後、説明していたのだ。


「私は良いですよ!

 ジーナさんも多分オーケーだと思いますが……」


「…なんだ?」


「その、我々を襲うようなことはしないでくださいね?特に、同室のマナさんとか。」


「するか!俺は彼女持ちだぞ!」


「自慢ですか人外リア充!」


「自慢じゃねーよ!あと今人外って言わなかったかお前!

 とにかく、俺はそんなこと絶対しない!ナンパ共と同じことなんてしてたまるか!」


「……ナンパから始まる出会いもあるんですし、そう否定しなくてもいいのでは?」


「知ってるよそんくらい!

 でも、明らかに下心丸出しな奴にされると鳥肌が立つんだよ!同性にナンパされる苦しみがお前に分かるのか!?」


 守の目には少し涙が浮かんでいた。

 ちょっと可愛そうに見える。俺も似たような経験があるのでもらい泣きしそうになった。


「異性でも好きでもなんでもない相手に下心丸出しで話しかけられるのは嫌ですよ!」


「種類が違うだろって言いたいんだ!」


「種類は同じでも苦しみは同じです!」


「リリナぁ!」


「守さん!」


 抱き合う守とリリナ。

 ……チープな恋愛ドラマでも見せられた気分になってきた。

 あと、なんかちょっとむしゃくしゃする。漫才の相手を取られたからだろうか。


「…守、彼女さんにはどう言い訳するんだ?」


 スマホのカメラを向けながら守に言う。


「あ!ちょっとリリナ放せ!マナに撮られる前に!」


「今ですマナさん!私に構わず撮ってください!」


「あいよー」


「止めろおおおおおおおお!!」


 スマホがパシャリと音を立てる。


「マナああああああああああああ!!」


「ほらよ!」


「いってぇ!?」


 音を聞くなりリリナの束縛から逃れた守にスマホを投げつける。

 パシっとかっこよく取ってくれるかと思ったが、流石に過ぎた望みだったようだ。


「早く消しな、そもそも本気で撮る気はなかった。」


 実際に撮れば手っ取り早くリリナから守を解放させられるだろうと思ったからシャッターボタンを押したが、別に彼女さんに送り付けるぞーなんて脅すつもりも守と彼女さんの仲を引き裂くつもりも無かった。

 でも、撮った直後に操作してたら変な細工をしてると怪しまれそうだったので、守に投げ渡して消してもらうことにした。そうすれば本人も納得するだろうと思ったからだ。

 まあ、いうて撮れた写真もリリナの抱擁から抜け出そうと必死になってる守の姿しか写ってないから脅しにも使えそうになかったが。


「……なんだ?なんの罠を張ったんだ?

 もうすでにバックアップが取られてたりしないよな?」


「取ってねーよ。

 ほら、リリナに奪われる前に早く消せ。」


「今です!」


「おわっ!?」


 俺のスマホに伸びるリリナの手をかろうじて躱す守。

 彼らの激闘は俺が2人の隣を抜け出して夕食を作り終えた頃には終わっていた。守の満足そうな笑みを見るに、守は無事に写真のデータを消去できたのだろう。

 リリナの表情も悔しそうながら晴れ晴れとしているような気がした。多分リリナもその写真をどうこうする気は無かったのだろう…多分。






「お休み、守。」


「ああ、お休み。」


 守の申し出により、守は自身の能力とか言うので創った障壁布団(守命名)を床に敷いて眠り、俺はいつも通りベッドで寝ることになった。


「……なあ、マナ。」


「なんだ?」


 照明は消しているため、部屋は闇に包まれている。

 そんな中、守の声が聞こえてきた。


「リリナって、何者なんだ?」


「え?」


 一見抽象的に聞こえるその質問に、核心を突かれるような感覚がした。


「先週、ジーナリウスを助けに行った時…リリナはメタルマナを、神の力を流し込んで止めたって言ってた。

 お前もそんなことしたら消えるとか言ってたし、事情を知ってるみたいだった。

 なあ、マナ。リリナはもしかして…神なのか?」


「……」


 言って良いのか悪いのか、俺には分からなかった。

 しかし、彼はあらゆる魑魅魍魎と出会っている。そんな奴になら言っても良いとは思うのだが――

 ――うまく言えないが、それは同時にリリナを売るような感じがした。


「……」


「言えないか?

 まあ、無理に言えとは言わない。」


「いや…ちょっと待ってくれ。」


 だが、黙っているのも守を裏切るような気がした。


「……」


「例えリリナが神でも、別にそのことを広めるつもりは無い。

 俺としてはどっちでもいい、所詮興味本位の質問だ。マナに答える義務は無いし、俺に答えさせる権利は無い。」


「……」


 言うか言うまいか、黙りこんで悩んでいると部屋のドアの隙間から光が溢れ出した後、ドアが開かれた。


「マナさん、そこから先は私が言います。

 私は、あの時までは神でした。でも、今は神ではありません。」


 その先に居たのはリリナだった。


「リリナ?どうして…」


 突然のリリナの登場に驚いたのは守ものようだった。


「マナさんにもしものことがあったらまずいので、聞き耳を立てさせてもらってました。

 廊下も真っ暗にして、ドアをちょっと開ければ真っ暗な部屋に居る貴方達にはバレないかと。」


「気配も消せるみたいだな。」


「ええ、人間時代にちょっと。」


「人間時代?」


「元々人間だったんですよ。ちょっと前までは神だったんですが、辞めて人間に戻りました。」


「そうか…だから神の力を使えたのか。

 ……で、お前はその力をどう使ってたんだ?」


「別に悪いことには使ってませんし、もう使えませんよ。

 これからは普通の人間として、人生を楽しもうかと。」


 俺の人生滅茶苦茶にしてくれとるがな。何が悪いことに使ってないだ。


「…そうか、悪意が無いなら良い。あったら俺がなんとかしないといけなかったからな。」


「気配ですか。」


「読ませたんだろ?」


「そうですね。それが一番潔白を証明しやすいと思いまして。」


「くえない奴だな。」


「それほどでもありません。

 貴方達の様子を見てると、大丈夫みたいですね。私は退散します。」


 リリナは立ち去り、ドアを閉める。

 部屋には静寂が広がった。


「…あと、さっきリリナが言ってた基矢ってなんだ?」


「……実は俺……いや、なんでもない。」


 言っても良いような気はしたが、言えなかった。

 達治の時と同じだ。俺を見る目が変わったらどうしようと。

 詞亜と達治や両親は俺と長い間過ごしていたが、守は二か月前に会ったばかりだ。

 そんな相手に打ち明けられる内容かと踏みとどまってしまった。俺はあの時から変われていないのだろうか。


「別に、言いたくないなら良い。

 俺も仲間に言えなかったからな。」


「え?」


「……いや、なんでもない。」


 また静寂が訪れる。


「……前も言ったけど。」


 静寂を破ったのはまたしても守だった。


「なんだ?」


「マナは…男になりたいと思ったことはあるか?」


「……まあ、あったな。」


 性別が変わった直後はそう思った。

 けど、同じ質問をされたあの時、俺は答えるのをためらって……


「もし、例えばの話だ。

 もし、お前が一日だけ男になることが出来るなら…お前は男になるか?」


「…多分、なると思う。」


 ずっとだと変更されたままの戸籍のこともあるし、ためらってしまうだろう。

 けど、一日…ごく短い間だけなら、即答するかまでは分からないが戻ろうとすると思う。


「そうか。

 お休み、俺はもう寝る。」


 守の寝息が聞こえてきた。

 どうやら本当に眠ってしまったらしい。

 …することも無いので、俺も眠りについた。

 眠りに着く直前、ごそりと物音が立ったような気がした。

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