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元〇〇と呼ばないで!  作者: じりゅー
元七章 幼馴染(外国産)来訪
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元六十話 遊んでたらアルバム渡された

 

「今から戻るのか?」


 レイティの願望は全て叶った。

 俺には会えたし、ニアーちゃんと仲直りする算段がついたので帰りたくない理由も無くなったはずだ。むしろ、早く帰って仲直りしたいと考えているかもしれない。


「それなんデスガ…

 ジツは、ここにクるまでにおカネをツカいキってしまったので、モドれないんデス。」


「…そうか。

 父さんに言ってレイティの親に迎えに来てもらおう。」


「スみません。」


 無事連絡を終えると、レイティの親が迎えに来るまで預かってほしいとのことだった。

 もとよりそのつもりだったので了承する。


「迎えに来るまでこっちに居ろってさ。」


「そうデスか…

 それまで、いっぱいアソびましょう!」


「良いぞ!」


 この時、俺は完全に忘れていた。

 翌日もテストがあることを。わが校のテストは二日がかりで行うのだ。

 次の日のテストも地獄を見る事になるのだが、この時の俺はそんなこともつゆしらず、レイティと遊び惚けるのだった。






「マナさ~ん!入りますよ~!」


 レイティとゲームして遊んでいると、入ってから断る系女子のリリナが何かを抱えながら部屋に入ってきた。


「お帰り。その手に持ってるのはなんだ?

 あと、レイティにはバレたから基矢って呼んでいいぞ。」


「ただいま!これは基矢さん宛ての荷物です。送り先は貴方の親でしょうか、宇露って書いてあります。

 …もうバレたんですか。」


「ああ。」


 荷物を見ると、箱に貼ってある送り状にはリリナが言っていた通り宇露の文字があった。

 名前は…俺の母さんじゃないか。


「母さんからみたいだ。」


「基矢さんのお母さまからですか?」


「ああ、なんなんだろうな…」


 疑問に思いながらテープをやや苦戦しながら剥がし、箱を開ける。


「そんなに綺麗に剥がそうとしなくても、別にテープを切って開けても良いんじゃないですか?」


「なんとなく癖でな。

 …アルバム?」


 箱を開けると、出てきたのは三冊の本。

 俺の個人のアルバムと、小、中学校の卒アルだった。


「……どうしてアルバム(album)が?」


「分からない。」


 個人のアルバムを開く。

 …もう送られてきた理由が分かってしまった。


「なあリリナ。

 お前はまだ俺の歴史を変えてなかったんだよな?」


「ええ。」


「じゃあ、なんで生まれた時の俺の写真の髪の毛が白いんだ?」


 アルバムの写真に写っている俺は、基矢()ではなくマナ(女の子)だった。

 更にページを進める。


「アルバムの写真は平行世界の物を使わせて頂いて、写真に写っている画だけ変えたんですよ。

 あ!これは幼稚園の写真みたいですね!可愛い~!」


「モトヤカワイい!」


「……そりゃどうも。」


 銀髪の三歳くらいの幼女が笑顔で友達と遊んでいる写真を見ながらぶっきらぼうに返す。

 確かに俺も可愛いとは思うが、俺のことを言われていると思うと妙に不機嫌になるのは何故だろうか。

 ページをめくる。


「ミないで!」


 何故かレイティに目を塞がれた。


「お風呂の時の写真みたいですね。

 でもレイティさん。基矢さんは体を洗う時も、トイレに入った時も今の体を見ていますよ?

 昔の写真を見せないようにしても手遅れでは?」


「あ…そうデスネ。」


 覆っていた手を離す。

 が、俺はアルバムから目を逸らした。いくら昔の自分の姿と言えど後付け。見るのに抵抗も罪悪感もある。


「…基矢さん、意外と紳士なんですね。全裸の幼女の生写真ですよ?」


「お前は俺をロリコンだとでも思ってたのか?」


「ロリだと思ってました。」


「てめぇ…」


「ケンカはいただけないデスヨ!」


「…いただけない、ですか?」


「良くないってことだ。

 そうだな、ちょっと熱くなりかけた。悪い。」


「あ、いえ。私もからかってすいません…

 ……う~ん、少しなにか違う様な…調子が狂いますね。」


 俺もそう思う。

 リリナと俺はお互いに引き下がるような関係ではない。

 ぶつかり合って、疲れて有耶無耶になって、また別の事でぶつかって…みたいな関係だ。

 レイティが居るので自重したが、なんか違う感じがする。


「コンドはショウガクセイデスネ!」


「笑顔が眩しいです…今の基矢さんの笑顔がくすんで見えます。」


「おい。」


 流石にイラっと来る。リリナは俺に憎まれ口をたたかないと死んでしまう病とかなのだろうか。

 でもまあ…可愛いんじゃないかな。ロリコンに目覚めてしまいそうだ。


「リリナ!」


「……すいません。」


 叱られてやんの。ざまぁ。


「…七五三の写真ですか。

 まだ小さいんですね。」


「うるせーやい。」


 子供の頃からそんなに身長伸びにくかったのか…

 他の写真にある周りの物と比較すると、当時の俺(と言っていいのか?)の身長の小ささが伺える。


「あ、身長じゃなくて胸ですよ。おっぱい。」


「そっちかい。」


 更にページをめくる。


「でも、このシャシンではオオきくなってきてるデス。」


 日付を見ると9歳ごろの時期だ。確かに少し大きくなっている。胸が。


「…なんで私達は女児のアルバムの胸なんて注視してるんでしょうね。基矢さん以外はロリコンじゃないのに。」


「俺もロリコンじゃねーよ。」


 更にページをめくっていくと、アルバムの時間が一年進む。


「この頃が一番ちょうどいいですね。胸の大きさと容姿のバランスが。

 なんでそんなにおっきくなっちゃったんですか?」


「俺だって大きくしたくてしたわけじゃないんだよ。

 むしろ無い方が良いとすら思ってる。でもあるんだから仕方ないんだよ。削る訳にもいかないし。」


「神の力が残ってれば削れたんですけどね。」


「後の祭りだな。だから言ったんだ、ロリにはひんぬーだって。」


「そうですね、この写真を見てその通りだと思いました。

 大きくても、将来を期待させるくらいの大きさが良いみたいですね…」


「……なんでワタシタチはアルバム(album)をミてムネのハナシをしてるんデスカ?」


 御尤も。

 個人のアルバムを見終えた後小中学校の卒アルも見てみたが、やはり俺は銀髪美少女の姿をしていた。


「やっぱり小学生の基矢さんは良いですね~。」


 小学生の卒アルを見ながら言うリリナ。

 バランスが取れているからなのだろうか。


「ショタコン。」


「ロリコンでは?」


 うるさい。

 リリナがやたらじっくりと見ているので、パタリと閉じて中学の卒アルを開いた。

 抗議の視線は全て受け流して壁にぶつけてやった。

 そんなやり取りをしている間にレイティがページを進める。俺とリリナはやや慌てたようにそれを見る。やっぱり俺も見たいのだ。

 …平行世界の俺(マナ)がどう過ごしていたのかが気になってであって、別にロリの生写真が見たい訳じゃない。俺、ロリコンじゃないもん。


「この写真見てくださいよ。男子がエロい目で基矢さんの胸を凝視してますよ?」


 中学の運動会で俺が走っているところの写真だった。

 写真で見ても分かるくらい揺れてるしな…多分俺も目を奪われるだろう。すぐに目を逸らすだろうけど。

 我ながらヘタレだと―――ヘタレとか思うんじゃない俺。俺は紳士なんだ。


「ダンシってそんなのばっかりデスヨネ~。」


「悪かったな!」


 俺も男子だ。心が。

 …コイツ、ロリがヒロインの漫画ばっかり薦めてきた蔵来くらこじゃねーか。ロリ巨乳は許容範囲内だったのか。

 卒アルに女子にエロい視線を送ってる写真が載るとは…同情するぜ。

 許すかどうかは別問題だけど。


「修学旅行みたいですね。基矢さんモテモテですね。」


「モテモテって言うかモミモミされてるけどな。」


 写真の中では寝室で同室の女子から胸はもちろん全身をモミモミされている俺が居る。その隣には抱き枕にされてる写真もあった。なんでこの写真選んだの?

 確か中学の修学旅行では各班にカメラを渡されて、その中から卒アルに載せる写真をその班の生徒が選ぶんだっけ…なんでこの写真選んだの?

 なんで平行世界の俺も反対しなかったの?黙って載せられたの?そっか、ごめん。


「めぼしい写真はこれくらいですかね。

 でも、良いものを見られました。この後ちょっと借りて行って良いですか?」


「なんかやな予感がするからやだ。」


「別に良いじゃないですか。減るものでもないですし。」


「モトヤ、リリナにカしてあげてもイいんじゃない?」


「……分かったよ。」


 レイティにまで言われてしまっては仕方がない。

 渋々リリナにアルバムを手渡す。


「ありがとうございます!」


 まるで表彰を受けたように丁寧に受け取るリリナ。凄く嬉しそうだ。

 悪用されなければ良いが…写真が抜き取られていたらリリナの部屋を漁ってでも取り返そう。脅しにでも使われたら厄介だ。


「では早速、ジーナさんにも見せてきますね!」


「それくらいなら良いぞ。」


 ジーナには仲間外れにしているようだったので後で見せる気だった為、特に反対はしない。

 過去の俺と言えど平行世界の物。別人のアルバムを見せるようなものなので精神が磨り減る訳ではない。


「……俺の写真、もう無いんだよな…」


 多分本当の歴史、というかこの世界の俺の写真は残ってないだろう。それはちょっと寂しいし悲しい。

 まるで、基矢()が本当に居なくなったみたいで……


「基矢さん。

 貴方は記録に残ってなくても、記憶には残ってますよ。」


「…そうか。」


 リリナの言葉が心に染みる。

 少しだけ、心が温かくなった気がした。

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