元五十六話 変な二択出したら比べられた
完全復活!パーフェクトじりゅー様だぜぇ!
インフルも治って今日から仕事に復帰です。その為、更新速度が元に戻ります。
りゅー回避…
「サップウケイなヘヤデスネ~!」
「うるせぇ。」
レイティは俺の部屋を見て一言物申す。
俺はメールでリリナにレイティが泊まることを伝え、ジーナにも伝えるようにしてもらう。
「寝床はそのベッドでも使ってくれ。俺は布団敷いて床で寝る。」
「ヤヌシがヨケイなシンパイしなくてもよろし!
ワタシもフトンでネますデス!」
「え?」
流石外国人と言うべきか、体の発育がよろしいレイティと寝ると狭くなってしまう。
モア姉はまだ小柄だったし、俺も縮んだのでそこまでくっつくことには―――向こうからくっついてきてたわ。
「っていうか、お前も布団かよ!ベッド空くじゃねーか!」
「そのツッコミ、モトヤそっくりデス。」
「気のせいデース、レイティガール。」
「その喋り方、ちょっとイラっとするデス!」
「とにかく、寝床はお前がベッド、俺が布団だ。反対は受け付けない。」
「Oh…マナを抱き枕にしたいんデス。ダメデスカ?」
「駄目だ。俺は抱き枕でも人形でもない。」
人形はあるけどそんなこと言わない。
美少女の添い寝なんていいじゃんとか考えたか!?あれ滅茶苦茶気まずいんだからな!俺みたいにちょっとでも理性的な人間だったら心臓によろしくないんだからな!!
…誰に言ってるんだろう俺。
「も…といマナさーん!」
おいちょっと基矢って呼ぶなって言っただろ!?言ったよな!?
とはおくびに出さず部屋に入ってきたリリナを見る。笑みに凄みがあっても知らない。
「すごい笑みですね…じゃない。大丈夫なんですか?料理当番今日私ですよ?」
あ、それはやばいな。
リリナが作るこっちの世界の料理はなんか変な味になる。
とは言え、向こうの世界になると素晴らしい色彩となる。
ちなみにジーナは料理当番に入ってません。アイツは料理下手らしい。
俺?腕怪我してるから無理。
「変な見た目の料理と変な味の料理、どっちがいい?」
「なんデスカそのニタク…それよりも、そのヒトダレデスカ?」
「アイツは同居人のリリナ。ジーナって奴も一緒に暮らしてる。」
「ドウキョ!?つまりドウサイデスカ!?」
「that’s right.
で、どっちがいい?」
「…じゃあ、ヘンなミたメのリョウリで。」
多少なら大丈夫だと思っている目だが、あそこまで色彩豊かとは思わないだろう。
心の中で合掌しながらちょっとでも見た目がマシな料理が出るように祈る。
リリナが退室すると、少しの間が生まれる。何だ急に黙り込んで人を見て…
「……ところで、そのミギウデは…」
妙な間はそれを訊くためか。
まあ、確かに訊き辛い案件ではあるな。
「ああ、これは…ちょっと怪我しちゃってな。
もうちょっとで直るから、あんまり気にするな。」
まあ、ギプスとか三角巾つけて首からぶら下げてたら気にもなるだろうな。
折れていたのは腕だったので、手は自由にしている。なので筆記も食事も問題無しだ。
…まだ魔力切れの影響が残ってるから超だるいけど。
「ダイジョウブ?」
「オーケーオーケー大丈夫!
無理しなきゃ今週で直るらしいからな!」
「……やっぱり、モトヤみたいデス。」
妙に比べるな…
もしかして、もう勘付かれてるのか?母さんには一目でバレたし…
「あー、そんなことよりなんかゲームでもしないか?お前、ゲーム得意だっただろ?」
そう言って棚からFPSのゲームを取り出す。
レイティはFPS系のゲームが得意だった。俺といい勝負をして俺が黒星を飾るくらいには上手い。
俺も結構強い方だと自負しているが、彼女はそんな俺を一歩上回るか下回る程度の実力とセンスを持っている。
「イいデスガ…なんでアナタがワタシのトクイなゲームをシっているのデスカ?」
「あー!そうだったのか!今知った!マジで!ホントに!」
「……シリメツレツ、というヤツデスカ?」
「ちっちゃいことは気にするな!ほら、やるぞ!」
「…ワかったデス。」
しばらく会っていなかったが、レイティは腕を上げていた。
俺ももちろん腕を上げたつもりだったが、やっぱりレイティには適わなかった。いい勝負はできるんだけどな…
「……やっぱり、クセもニてるデス。」
やべぇ、疑惑深めちった。
「なんデスカこれは!?ホントウにニッポンのリョウリなんデスカ!?」
リリナの異世界料理を見て目を剥くレイティ。
それもそのはず、テーブルの上でぐつぐつ煮込まれているのは青い肉と赤い白菜モドキ、そして黄色いキノコを紫色のだし汁で煮込んだ鍋モドキだからだ。
「日本の料理を元に我が故郷の料理を作ってみました!」
キノコ、肉、白菜。
形だけはそれらに似ているので、かえって下手な異世界料理より不気味だ。
「見た目は気にするな、口に入れたら極上の料理なんだから。」
菜箸を使って鍋から取り出した肉、白菜モドキ、キノコを取り出した皿から肉を取り出し、頬張る。
やっぱりうまい。
異世界の卵は昨日リリナが言っていたように拳で粉砕する必要があるので、無い。あれ何?卵なの?カッチカチなんだけど。
「なんでタべられるんデスカ!?」
「慣れだ。」
「Oh…ナれオソロしや…」
「うまーい!見た目あれだけど。」
ジーナは適応が早く、もうリリナの料理の見た目に慣れつつある。
「あのコのカミのイロもキになるデス…」
「気にすんな。」
ジーナの髪の色について、レイティはツッコみたがっていたが止めさせる。親戚と言えどそうぽんぽんジーナが宇宙人であることを言ってしまうのはまずそうだからだ。
まだレイティは純粋な人間であってほしい。出来る事なら宇宙人も異世界人も神も実在するなんて世界の真実に触れさせたくない。
クラスメイトとか一定の距離を置いている人間を除き、俺の周りには居ないのだ。そういう事に全く触れていない常識人が。
まともなのは僕だけか!?と言える人間が。
『リリナ、マナ、ちょっと私の部屋に来て。』
『あ、私もマナさんに渡したいものがあるんですよ。集まった時に渡しても良いですか?』
夕食中にジーナとリリナが言っていた言葉を思い返してジーナの部屋に入る。
もちろんノックはしたし入室の許可は得ている。それをしない人間のうっとおしさを身に染みて知っているからだ。
「やっと来ましたか。」
「ああ、ちょっとレイティを置いて行くのに手間取って…で、何の用だ?」
レイティを待たせると部屋を必要以上に漁られる気がするので早めに退出したい。
なので俺はジーナに本題を話すように促した。
「…昨日のことだけど。
本当に、ありがとう。迷惑かけてごめんね。」
「昨日のお礼もお詫びももう聞きましたよ。」
誘拐事件の礼と詫びに関しては今日映画に出かける前に済ませたはずだ。
なのに、なんで今更…
「だって、そのせいでリリナが神じゃなくなったみたいだから…」
「……」
「…リリナ。」
日頃から元女神元女神言っていたが、本当に神でなくなってしまったことに思うところがあるのだろうか。
鴨木さんも神を止めたくないからリリナから力を奪い取ってたし…なにより、
『とにかく、私は貴女に力を渡す気はありません。今人間になる気も。』
鴨木さんと対峙した時にリリナはそう言っていた。
リリナはなんらかの事情があって神を辞めていなかったのだ。消滅のリスクを背負いながら。
その事情が何かは分からないが――リリナの反応を見るに、その一件は解決していなかったようだ。
「……そのことなら、私じゃなくて基矢さんに謝ってください。」
「え?俺に?」
「…知らなかったみたいね。
リリナが神であることにこだわったのは、貴方の為だったの。」
俺の為?
「ええ…そうです。
私が神であり続けようとしたのは――いつの日か、基矢さんの性別を戻すためだったんです。」
「―――――え?」
青天の霹靂、と言う言葉はこのような時の為にあるのだろう。
俺を女にしたリリナが男に戻す為に神で居続けようとした?
一体なんで?どうしてそんなことを?
「私は、いつの日か基矢さんと別れる日が来ると漠然と考えていました。出会いがあれば別れもあるのがこの世の中ですから。
その時、もし基矢さんが男であることを望んだら―――その時は、貴方を男に戻したいと考えていたんです。
まあ、結局貴方を助けるために力を使い果たして、人間になって…それも出来なくなってしまいましたが。」
「……俺の性転換って、一時的なものとかじゃなかったのか?」
「いえ、貴方の体を完全に作り変えていました。
“性別を変える事”ではなく“体を作り変える事”に神の力を使っていたので、時間制限も何もないんです。
なので、貴方はもう………基矢さんには、戻れ、ないんです。」
リリナは涙を流しながらそう言った。
自身の無力さをかみしめるように。
俺のことを憐れむように。
自身の行いを後悔するように。
涙の中に様々な思いがあることを感じ取った。
「責めるなら、いくらでも責めてください。
出て行けというなら、今すぐここから出て行きます。
一生不幸に生きろというなら、全ての幸せを拒絶します。
許さなくて良いです。一生憎まれても受け入れます。
だから……私に償わせてください。貴方の人生を壊してしまったことを。」
リリナの想いを、決意を聞いた俺は、口を開いて―――――




