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元〇〇と呼ばないで!  作者: じりゅー
元六章 メタルマナ ロリータ ~Zyna escape~
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元五十四話 無茶ぶりし出したと思ったら脱シリアスした

 

『基矢!?基矢!!どうしたの!?返事をして!!

 私、帰るまでがミッションだって…言ったよね!?』


『マナ…最初に皆で無事に帰ってくるのがミッションだって言ってたはず…

 変な悪ふざけは止めて、返事をして…!』


『マナ!まだ私はお前に何も償えてないんだ!!

 私の気が済むまで償いをさせてくれ!こんなところで……』


 マナの電話から三人の声が聞こえる。


「皆さん、静かにして、よく聞いてください。

 マナさんは…今、最後の力を振り絞ったメタルマナの攻撃を受けて瀕死状態になってしまいました。

 このままでは確実に死んでしまうでしょう。」


 私は、そんな中で勤めて冷静に事実だけを淡々と告げる。


『マナあああああああああ!!』


『そんな…!』


『リリナ…まさか貴女…』


 奈菜美さんは何かに気付いたみたいだけど、そこからじゃ何もできない。

 私を止める事は出来ないはずだ。


「でも、安心してください。

 基矢さんは…マナさんは必ず、私が助けます。

 瀕死といえど、まだ死んでしまったわけではありませんから。」


『待ってリリナ!

 そんなことしたら、貴女が…貴女が消える!』


『え?どういうこと?』


「神の力を使うということですよ。

 ええ、そうでしょうね。今の私が神の力を使えば確実に私の神の力は尽きる。

 ですが、私は決めてしまったんです。それでもマナさんを助けると。

 私の消滅と同時に、基矢さんはもう元の生活に戻れなくなってしまいます。

 唯一の心残りはそれでしょうかね。」


『リリナがあの時、人間になることを拒んだのって――』


「――ええ、そうです。

 基矢さんが“男に戻る”選択を取れるようにするためです。

 神の力無しでは元の性別――男には戻れませんし、戸籍も女性のままになってしまいます。

 なので、基矢さんが元の性別に戻る為には私が神であり続ける必要があったんですが…命には代えられませんね。」


『そんな……』


「ごめんなさい、詞亜さん。今回ばかりは他にどうしようもありません。

 マナさんが戻ったら伝えてください。

 男に戻せなくなって、ごめんなさい。映画に一緒に行けなくなって、ごめんなさいと。

 私は、ここで皆さんとお別れです。

 …私は本来ここに居るはずのない存在なんです。

 なので、私なんていない方が」

『良い訳無いじゃない!』


「…詞亜さん?」


『確かにアンタは、好きだった人を女の子にしちゃって、私が嫌なこともたまにしてきた!

 けど、ここに居る皆はあんたのおかげで会えたし、もっと楽しいこともあった!今まで分からなかった、基矢の知らない一面も見れた!もっと彼に近付けた!

 本来がどうとか知ったこっちゃないわよ!アンタは私達の…友達、なんだから…

 だから、アンタも消えないで!でも、基矢も助けて!』


「…無茶言わないでくださいよ。」


『…無茶でもやって。』


『そうだ!無茶でもやるんだ!!』


「全く…こんな消滅寸前みたいな状態でそんな無茶ぶりを言うなんて、最高の友達ですね!

 仕方ないので、頑張ってみますよ!」


 私は脈も小さくなってきた基矢さんに手をかざす。

 頭や口から血は出てるし、息ももう虫の息だ。

 けど、それでも私は絶対に助けて見せる。


「…どこにいるかも分からない、運命や神なんかに負けてたまりますか。

 今ここに居る神―――女神リリナスが、貴方を絶対に死なせたりしませんから。」


 基矢さんに神の力を注ぐ。

 私の手は点滅を繰り返し―――やがて消滅していった。

 消滅の直前、マナさんが微笑んだような気がした。







「うぅ……」


 小さくうめき声をあげる。

 目を開けると、いつも見慣れた俺の部屋の天井―――

 ―――全て夢だったのだろうか。

 あの研究所に潜入したのも、巨大な何かと戦ったのも、俺が死んだのも。


「いっつ…」


 体を動かすと痛みという名の悲鳴が聞こえる。

 頭はガンガンするし、右腕も痛い。もしかして、あの時折れていたのだろうか。

 全部夢じゃなかったらしい。

 けど、なんで生きてるんだ?俺…


「んー…基、矢…」


 左隣から寝言のような甘い舌足らずのような声が聞こえる。

 寝返りのようなかたちで振り向くと詞亜の顔のドアップが…


「し、詞亜!?」


 え、ちょっとなんで詞亜が横で寝てるの奥さん意味が分からないわよおーっほっほっえー!?

 あ、ちょっとやばい。なんか力入らない。起き上がれない。

 この不自然な倦怠感は魔力切れか?待って!待って!待ってって!


「起きたの?基矢…」


「お、おう……

 でも、なんでここに居るんだ?詞亜。」


「なんでって、聞いてなかったの?

 今日映画を観に行くために、皆でここに泊まることになってたの。

 それで、私はアンタと同じ部屋になったって…それ、だけ…」


 詞亜の顔が赤くなっていく。

 やばいと思った俺は布団から離れようとしたが、魔力切れの影響で動けなくなっている。


「きゃあああああああああああああああああ!!」


「うわ、いだっ!?」


 詞亜に突き飛ばされてベッドから落ちる。

 体が動かせないので受け身は取れず、頭を強くぶつけた俺は再び夢の世界に旅立った。


「わわ私はアンタの看病の為に居ただけだからね!消去法で仕方なく私が…聞いてるの!?基矢!

 …基矢?基矢!?死んじゃ嫌!基矢!!」


 消えゆく意識の中、詞亜の声が聞こえた。






 聞いた話によると、倒れた俺たちを守とギーナが外まで運んでくれたらしい。

 その後、研究所の外では迎えに来ていたロリコンもとい憂佳が車で皆を俺の家まで送ってくれたとか。

 それで夜も遅いので皆俺の家に泊まってこの大所帯になったそうだが…

 朝食のメンバーが多い。救出の直前にリリナの料理の練習の為に食材を大量購入しておいてよかった。


「お前ら布団どうしたの?」


 今俺の部屋に居るのは俺、リリナ、詞亜、憂佳、鴨木さん、ジーナ、守、ギーナの8人だ。

 元から居る俺、リリナ、ジーナはともかく、その他に5セットも布団なんて無かったと思うが…


「俺がなんとかした。」


「守が?」


 味噌汁をすすっていた守が答えた。


「ああ、俺の能力で布団を創った。色は黒一択しかなかったけどな。」


「…そんなもの見当たらないが…」


「見たかったのか?

 悪いな、もう消した。」


「消した?」


「……能力で。」


「その能力ってなんだ?」


「能力というのは、無限に使える魔法みたいなものですね。

 特定の事にしか使えませんが、持っていれば魔力も体力も関係なしに使い放題です。制約もありますけどね。

 能力持ちは数が少ないというのも特徴ですね。こっちの世界に至っては数人しかいないみたいです。」


「……あれ?リリナ?

 お前、消えたんじゃないの?」


 会話にごく自然に紛れてきたリリナに訊く。

 さっき聞いた話ではなんか神の力使いきって消えたみたいなこと言ってたけど。俺にしか見えてない幽霊みたいな状態とかじゃないよな?


「私が神になる前、人間だったんですよ。

 その影響か、神としての私が消えて人間としての私が残った…んでしょうか?」


「俺に訊かれても。」


 神様の仕組みなんて俺には分からない。


「とにかく、今の私はもう神ではありません。ただの人間です。

 力は神だった時と同じみたいですし、魔力も人間時代同様馬鹿みたいにたくさんありますが…」


「第二の守ってことね。」


 味噌汁をおかずに白米を頬張っていたギーナが口を挟む。


「あ、ちょっとそれ酷くないですか?人間に戻ったのに人間辞めてるなんて言われたら流石に傷つきますよ?」


「おい、2人してごく自然に俺を人外の代名詞みたいにするの止めてくれないか?俺だって傷つく。」


「だって守だし。」

「だって守さんですし。」


「……酷いなー、お前ら…」


 卵焼きにかじりつきながら涙を流す守。


「……なあ、さっきから見せつけるように食べるの止めてくれないか?俺魔力切れで動けないし食べられないんだけど。」


「あ、なんでさっきから寝てばっかりで食べてないのかと思ったら魔力切れでしたか。

 てっきり今日はナマケモノの気分なのかと。」


「…リリナ、魔力切れと怪我直ったら腕極め10回な。」


「一言余計でしたごめんなさい。

 でも、神の力で治癒した時、自然治癒能力を上げておいたので今日の昼頃にはかろうじて歩けるくらいにはなってると思いますよ。

 腕の方は…ある程度治癒したとはいえ、完全に折れてたので全治一週間くらいかと。それまではギプスを付けててください。変な方向にくっついたらまずいですからね。」


 完全に折れてて全治一週間か…

 …あれ?俺も化け物の仲間入りしてない?普通骨にヒビ入っただけでも一か月以上は引きずるよな?

 かすり傷程度ならついた瞬間に直ってそう。それは無いか、ある程度は神の力で治したらしいし。


「そうでなくても、魔力切れの後なのでちょっとは身体能力が向上してますよ。

 筋肉痛みたいに魔力が切れた後は強くなるんですよ。生き物はね。」


「代わりに死にかけるけど。

 でも、それを繰り返して人間辞めちゃった人が目の前に居るでしょ?」


「うるせーよ。」


 守、魔力切れ(こんな事)繰り返して人外になってたのか…

 俺もそのうち仲間入りするのかな、嫌だなぁ…


「それより基矢さん。もしかして“あ~ん”を御所望ですか?」


「は?いや、そんなこっぱずかしい事望んでも居ないんだが…」


「詞亜さ~ん!基矢さんが動けないからあ~んしてほしいそうですよ~!」


「おい止めろ元女神人間!人外!」


 その後、真に受けた詞亜にマジであ~んされた。

 憂佳とかジーナとかも参戦し始めて逃げたくなったが、体が動かせないため大人しく朝食を頂くことになった。

 …ご馳走様でしたぁ!

子供の頃、骨にヒビが入った時直るのに一か月以上かかった記憶があります。

まあ、そんな時期の記憶なんてもう曖昧ですし、一か月というのが正しいかどうかもわかりませんが。

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