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元〇〇と呼ばないで!  作者: じりゅー
元六章 メタルマナ ロリータ ~Zyna escape~
53/112

元五十三話 報告してたけど終わってなかった

限界突破の三話目更新。まだ読んでなければ前話をどうぞ。

龍かいならぬりゅー回ってやつですかね。

 

「こちらロリータ。

 パツ・キン、守、ギーナ、そして、皆の活躍でジーナの救出に成功した。」


 メタルマナ、プロックの無力化に成功した俺は部屋の四人にミッションの成功を報告した。

 スピーカーモードなのでリリナにもジーナにも聞こえている。意識があればプロックにも。


『よくやったわロリータ!

 …え?パツ・キン?パツ・キンはここにいるけど…』


「『なぁ~んちゃって!

 そいつは私が作った分☆身☆ですよぉ!』」


『分身まで作れるのか…神はなんでもありみたいだな。』


『リリナ…ポンポン神の力使い過ぎ。』


「『あーいとぅいまてーん!』」


『とにかく、ミッションは帰るまでがミッションよ!

 無事帰って来たら一回寝て、皆で映画に行きましょう!今日はマナの家にお泊りよ!』


『私も!私も良いのか!?』


「『良いですけど、ロリコンは私の部屋にしてくださいね。』」


『何故だぁ~~!!』


『他の皆さんも、私の部屋かジーナさんの部屋にしてください。』


『それじゃ狭いんじゃない!?私はロリータの部屋で良いけど!!

 クロ少佐がパツ・キンの部屋で、ロリコンがジーナの部屋で、私がロリータの部屋ってことで!』


『ああ!だったら私がマナの部屋にする!』


『アンタは前科があるじゃない!』


『それを言われるともう出られないな…』


『私はロリータが襲ってきても返り討ちにするし、そもそもヘタレなロリータは私を襲うようなことは出来ないから!!』


「『あー、はいはい、分かりましたよ。

 もうマスターがロリータの部屋で良いです。でも、一晩の過ちは無いように…』」


『起こさないって言ってるでしょ!?』


「『おや、起こさないですか。起こさせないではないので?』」


『いちいち揚げ足を取るなー!』


 報告は賑やかに進んだ。

 時折寄り道をして、そのまま遠回りになってしまうが――

 ――それもまた、楽しかった。


「『――そして、2人が人ならざる動きでメタルマナとプロックをボコボコにして今に至ると言う訳です!』」


『その2人、本当に人間なの?

 あと、その二重音声そろそろ止めてくれない?』


「了解です。さらば分身!」

『了解です。さらば本体!』


『あ、本当に消えた!』


「それで、2人が人間なのかどうかについてですが、まずギーナさんはちょっと特殊かもしれませんが人間です。

 守さんはちょっと人間の枠から外れかけてますね。種族的にも、生き物の定義的にも。

 でも、完全に外れてはいません。ちょっときっかけがあれば外れてしまいそうではありますが――」


「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 リリナの解説を遮るように叫び、立ち上がったプロック。


 ギィ…イイイ…


 弱弱しくも三度立ち上がったメタルマナ。


「おまえさえいなければ…お前さえ、イナケレバァ!!」


 怨嗟の籠った目でリリナを見据えるプロック。

 魔力がわずかなはずのメタルマナを駆動させ、リリナを踏み潰さんと迫っていた。


『逃げてぇ!』


 電話から悲痛な叫びが上がる。

 リリナは立ち上がれないでいるジーナを抱え、俺に手を差し伸べた。


「早く!」


 横目でメタルマナを見る。

 俺が手を掴んだところで、リリナが飛びのいても間に合わない。


「……リリナ。」


 残った力を振り絞ってリリナを突き飛ばす。


「基矢さん!?」


 リリナの驚いた顔を見て、助けられたと思いふっ、と表情が緩んだ。

 ――次に見たのは歪んだ景色だった。

 蹴り飛ばされ、壁に叩きつけられて崩れ落ちる。

 メタルマナが勢いあまって壁に激突し、大きな音が響くのが聞こえた。

 後ろからやや長い振動が伝わってくる。天井が崩れたのだろうか。


「は…は…」


 遠くでどしゃりと倒れる音がした。プロックが力尽きたのだろう。

 メタルマナも完全に挙動が停止していた。これで、本当に終わったらしい――


「基矢さん!なんで手を!!」


「……俺は、あの時手を握ってもこうなってた。それも、リリナを巻き込んでな。

 どうせ吹き飛ぶなら、俺一人の方が良いと思ってさ…お前はジーナも抱えてたんだ。リリナはともかく、ジーナは無事だったか分からないだろ?」


「喋らなくて良いですから!言い訳も全部、後で聞きますから!」


「後は無い…お前も分かってるだろ?」


 視界に赤い液体が映る。口の中で血の味がする。


「結局、俺はあの時神様か、運命様かは分からないけど、もう助からないって言われてたんだよ…」


「知りませんよ!どこの馬の骨かも分からない神様や運命の言うことなんて!」


「そう言うなよ…

 人間、っていうか、生き物はみんな死ぬ。

 けど、死んだ人は生き返らないし、新しい命を人工的に創り出せたって話も聞かない。

 なんでそれができないか、分かるか?」


「……」


「死ぬ事も、生きる事も、どっちも平等に尊重されるべきだからなんだよ。

 死なない物が生きてるって言わないように、死が無ければ生きるって概念も無いんだ。

 そこらにある鉄や石は死なないだろ?それは生きてるって言うか?

 逆に、魂がある道具っていうのは、使えなくなったら死んだとか言うだろ?

 お前達神だって、神の力が無くなったら消える、つまり、死ぬ。

 物には限りがある。だから俺たちは限られた時間を大切に使って、そして最後は終わるんだ。

 そして、俺にその終わりが来た。ただ、それだけなんだよ…

 だからさ…そんなに泣くなよ。」


「…だって…だって…」


「分かるよ、別れは辛い。

 けどいずれ、どんな形かは分からないけど、出会ったら別れる。始まりと終わりがあるように。生まれたら死ぬように。

 けど、別れは終わりじゃない。別れた後も、片方の、お前の人生は続くんだ。」


「………」


「……悪いな、そろそろ限界だ。

 皆に、伝えてくれ。今の…言葉を…」


 意識が遠のいていく。

 意識が黒く染まる直前、左手が何かに包まれている感触に気付いた。

 その手は、温かかった。

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