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元〇〇と呼ばないで!  作者: じりゅー
元六章 メタルマナ ロリータ ~Zyna escape~
52/112

元五十二話 種明かしされたら急展開が発生した

 

「言いたいことは山ほどあるでしょうから、先に動けるようにしておきますね。」


 リリナは俺の額に手を置いた。

 すると痺れが取れ、体が動くようになった。


「…守、もう大丈夫だ。下ろしてくれ。」


「え?お前、本当に大丈夫なのか?」


「ああ。良いから下ろしてくれ。」


「分かった。」


 守は抱えていた俺をゆっくり下ろす。

 手を握って開いてを繰り返しても問題無い。声もしっかり出る。


「本当に大丈夫そうだな。」


「…リリナ、お前、なんでここにいるんだ?家に戻ったはずじゃないのか?」


「貴方を送ってきた時、一度だけ私が2人から離れるタイミングがあったはずです。

 そこで私一人で潜入したんですよ。私の分身を置いて。」


「分身?」


 離れたタイミングは分かる。リリナが一人で見に行くと言って、結局駄目だと言って戻ってきたときの事だ。

 あの後のリリナは全部分身だったのか?


「ええ。歌って踊れる超万能な分身をですね。」


「万能すぎるだろ…」


「…メタルマナには何をしたんだ?」


 守が話題を変える。


「ああ、ちょっと魔力があるところに神の力を流し込んだだけです。

 魔力と神の力は相反する物。ぶつかれば互いに消滅しますから。」


「神の力って…そんなあっさり使って大丈夫なのかよ!?

 お前、消えたりしないよな?」


「結構ギリギリでしたが、まだ消えませんよ。

 とにかく、心配は無いということで理解して頂ければ。」


「……そうなのか。」


 胸をなでおろす。


「とにかく、これでメタルマナはもう動かないんだな?」


「はい。燃料を消滅させたわけですしね。」


 停止しているメタルマナを見る。

 赤々と輝いていた目は完全に輝きを失い、ピクリとも動く気配を出さない。

 先程までに感じた力強い息吹は、もう完全に沈黙していた。


「一件落着ですね。

 後は、ギーナさんとジーナさんを解放して、首謀者を捕縛すれば――――」


 首謀者プロックが倒れていた場所を見る。

 しかし、そこには誰も居ない。奴は痺れて動けなくなっているはずなのに―――


「え?」


 腕を見ると、ジーナとギーナに付けられていたものと全く同じ腕輪が付けられていた。

 腕輪を掴む手の先にはプロックがいた。


「なんで―――」


 次の瞬間、右手から急激に力が無くなっていった。

 これが魔力切れの症状なのだろうか。意識すら薄れていく。


「止めろ!ぐっ…」


 守が力尽くで腕輪を外そうとするが、守も魔力を吸われるのか苦しげな表情を浮かべる。

 腕輪はしばらくして外されていたが、俺は立てなくなっていた。

 守からどう奪ったのか、プロックが腕輪を手にしてメタルマナに走っていくのが見える。


「まさか、あの腕輪で痺れの魔力を吸い取ったんでしょうか…?」


「もう一つ作っていて、持っていてよかった…!

 これだけあれば最低限動くことくらいできるはずだ…!」


「そうはいきませんよ!」


「リリナ!お前はもう神の力を使うな!

 限界なんだろ、体が透けてきてるぞ!!」


「でも、そうしないと皆アレにやられてしまいます!」


「今度こそ俺に任せろ!

 燃料が少なくてふらふらしてるガラクタなんかには負けない!」


「貴方もフラフラじゃないですか!」


「これくらいどうってこと無い!」


 ギィイイイイイイイイイイイイイイイイイ…!


 メタルマナが目を再び輝かせ、復活の雄たけびを上げる。

 その目は先程に比べるとどこか弱弱しいが、疲弊しきった俺たちを叩き潰すには充分の力を持っているはずだ。今のままでは勝ち目は無い。


「見てられないわね。」


 ふわふわしている意識の中で聞こえた声は、守の物でも、リリナの物でも、ましてやプロックの物でもなかった。


「ギーナ!?

 お前、やっぱり無事だったのか!?」


 拘束台から歩いて来た彼女の足取りはよどみ一つ無い確固たるものだった。

 脇にジーナを抱えている。


「やっぱりって…ちょっとは心配してくれても良いんじゃないの?」


「バーカ、魔力無限で魔法が使い放題のやつに魔力切れの心配なんてするかよ。」


 魔力無限?今結構えらい事言ってなかったか?


「…あれに魔法は使っちゃダメ…」


「ジーナ?」


 ジーナもかろうじて意識はあるらしく、絞り出すように声を出す。


「あれは私の国で昔使われていた対魔法人型稼働戦車…

 当たった魔法は自身を動かすための魔力に変換して、人からの魔力伝達だけでなく敵の攻撃をも燃料にするの…だから、魔法なんて使ったらアレの燃料にされちゃう。」


「じゃあ、どうやって?」


「さっきリリナがやってたみたいに神の力をぶつけて燃料を消滅させるのも手だけど…

 対抗できそうなのはさっき守が使ってた黒い塊…」


「障壁のことか。

 確かに、あれは魔力を媒介にしない創造物だから吸収はされないかもしれないが…」


「それか、操縦者を倒すこと。

 プロックとかいう人が持ってるあの黒い球体を奪えば、あの人はもうアレを動かすことは出来ない。」


「……なるほど。」


「守、アレの足止めお願い。

 守が駄目でも、私がアイツからあの黒い奴を奪えばいいんでしょ?」


「簡単に言ってくれるな。

 良いぞ、それで行こう。マナ、ジーナ、リリナ…だったか?三人は待機だ。」


「…俺はロリータだ。」


「私はパツ・キンです。」


「……そうだったな。

 ロリータ!パツ・キン!今までよくやってくれた!

 今はジーナと一緒に下がって休め!」


「ああ…ごめんな、最後に力になれなくて。」


「あとは頼みましたよ!

 ロリータ、ジーナさん、行きますよ!」


 リリナは消えかけの体で俺とジーナを担ぎ、ギーナと守、メタルマナから離れる。


「さあ、もう遠慮はいらないな!」


「自重無しでやっちゃいましょ!」


 守とギーナはメタルマナとプロックに向かっていく。


「おらああああああああああ!!」


 メタルマナの横から黒い壁がせり出し、それが消えると守がせり出す壁の力も利用してメタルマナに蹴りを浴びせる。


「よくも人の魔力を小一時間も奪ってくれたわね!」


「バカな…お前、どこにそんな魔力を?」


「簡単なのよ!あんな腕輪の抵抗なんてね!」


 ギーナは身体強化の魔法でも使ったのか、姿をかき消した。


「ぶは、ぐほ、がほ、ぐあ…」


 プロックの体が空中で一度止まり、少し上昇して止まり、また少し上昇し、止まり、上がり、止まり、上がりを繰り返す。

 くの字に折れ曲がったかと思えば顎を上にして伸び、のけぞったかと思えばまた顎が上になり…とまるで格闘ゲームで空中でコンボを決められた敵キャラのようだった。


「……彼ら、本当に人間ですよね?」


「俺にそれを断言できると思うか?」


 人外染みた、というかもう完全に人間を辞めている敵を圧倒する2人の動き。

 最早目でとらえられなくなってきたそれを見た俺は、この2人を敵に回したら死ぬなと戦慄しながら2人のお仕置きタイムを見ていた。







「やっと片付いたな。」


「ええ、これで本当に終わり。」


 メタルマナとプロックへの制裁が終わり、守とギーナは先に2人で地下室の廊下を歩いていた。

 リリナ、マナ、ジーナの三人は話を聞いてくれた仲間たちに報告をし、少し休んでから帰るのだという。


「まさか、こっちの世界でこんなに騒動に巻き込まれるとは…宇宙人を紹介されたばっかりだぞ?その日のうちにトラブルを持ち込まれるとは…」


「結構ザラなんじゃないの?」


「こんなことがザラにあってたまるか―――意外とザラだったな。」


 守が思い返したのは異世界を旅していた日々。

 あの頃は毎週のように異世界に行って、旅をして、行く先々で騒動に巻き込まれて…本当に大変だったが、仲間と一緒に、時にはほぼ1人で乗り越えたそれは今やいい思い出だ。


「また旅に行かない?」


「勘弁してくれ。またマナになんかあったら助けに行かないといけない。

 アイツもトラブルを引き寄せる体質みたいなんだよ。ちょっと前には誘拐されかけたりしたしな。他人事には思えないからほっとけないんだ。」


「へー……もしかして、好きだったり?」


「しねーよ。友達として、気の合う仲間としては好きだけど、恋愛対象にはちょっとな。

 アイツ心は男らしいし。」


「え?心が男?」


「ああ、そういう奴もいるんだよ、こっちの世界には。

 トランスジェンダーとか、性同一性障害とかって言うんだけ―――」


 ドォォ…ン


 守が解説に入りかけた時、彼らの後ろから大きな音がした。


「……急ぐわよ。」


「分かってる。」


 今度はなんだと戻ると、通路をがれきの山が通せんぼしていた。


「なんだこりゃ…!向こうは無事なのか!?」


「下がって!吹っ飛ばすから!」


「待て!気持ちは分かるが落ち着け!

 そんなことしたら、向こうに居るマナもリリナもジーナも危ない!」


「じゃあどうすれば良いの!?」


「……地道に掘り進めるんだ。素手でな。」


 そう言うと、守は巨大ながれきを引っ張り出して横に放り投げ始める。

 ギーナはそれを見てため息を吐くと、守の横でがれきを引っ張り始めた。

 嫌な予感による焦燥感が2人の心を焦がしていた。

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