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元〇〇と呼ばないで!  作者: じりゅー
元六章 メタルマナ ロリータ ~Zyna escape~
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元四十五話 探索しようとしたら入れない部屋ばっかりだった

体調が良くなってきたので執筆。

インフルの時に何書いてんだろ。

 部屋の中は真っ暗だった。

 手探りで照明を付けると、二つの二段ベッドとその間にある小さなテーブルが目に入る。仮眠室だろうか。

 はずれか…いや、でもここに救出の役に立つ物があるかもしれない。ここにいる間だけ借りるという形をとらせてもらおう。

 借りると言っても、返す時は本人に直接という形ではなく、研究所を出る時に置いて行くという形になるが―――まあ、少なくとも盗みには入らないと思いたい。

 というわけで、物色開始。

 どのベッドにも誰も入っていない。ただ、必ずと言っていいほど娯楽用品がある。

 ゲーム機はあるし、トランプとかのカードも車のラジコンもあった。

 ここの研究員は何しに来てるんだ?見つかったら没収されないか?

 …でも、ラジコンは借りとこうかな。陽動には使えそうだし。

 ガラスのコップは…流石に無いか。ここ蛇口も無いし。

 ベッドの下とかはどうだ?

 ……うん、やっぱりそこに隠すよな。

 予想通りの物を見つけてしまった…ラジコンともどもバッグパックに入れた。

 別に持ち帰ろうとか思ってないからな。借りるだけだからな。陽動用として。

 一通り物色させてもらったし、この部屋からずらかるとするか。


「あーやっと寝れるわー…つっかれたわー…」


 部屋から出ようとしたところで廊下から独り言が聞こえてきた。

 寝る…ベッド…この部屋に来るのか?

 他の部屋はまだ見てないが、この部屋である可能性は高い。

 隠れられる場所は……テーブルの下は難しそうだし、ベッドの下には潜り込めそうにない。でっかい付き物のせいで。

 布団の中…めくられたらバレるが、それしかなさそうだ。

 あ、そうだ。ここで秘密兵器二号も使ってみよう。






 研究員が仮眠室の扉を開けると、照明が点いていることに気付いた。

 別の誰かが休憩しているのだろうか、それとも点けっぱなしで出て行ってしまったのだろうか。

 そんな小さな疑問が浮かんだが、それより今優先するべきは疲弊しきった脳と体を休めることだと思い直して照明を消し、近くのベッドにもぐりこんだ。誰も起きていないようだったので問題ないだろう。

 ベッドに入ると何かにぶつかった。

 人の肉のような感触だった。よく部屋を確かめずにベッドに入ってしまったが、誰か寝てたのか―――

 ―――それにしては少しおかしい。

 ここは男子用の仮眠室。男にしては筋肉が無さすぎるというか、柔らかすぎる。

 太った研究員が頭をよぎったが、それだったらもっとベッドのスペースを占拠していても良いはずだ。

 研究員は慌ててベッドを飛び出し、照明を点けて気付いた。

 見慣れない銀髪の美少女が目を閉じて眠っていたのだ。

 見惚れるように数秒固まっていたが、意識が戻るとその少女に声を掛けた。


「…君、どこから来た?」


 返事は無い。

 それも仕方のないことだ、目の前の少女は寝息を――――

 ―――息をしていない?

 研究員は焦り、肩を揺さぶり始めた。


「しっかりしろ!目を覚ませ!おい!」


 いくら呼び掛けても、肩を揺さぶっても少女が目を覚ますことは無い。


「呼吸が無いなら…」


 疲弊した脳が導き出した短絡的な答えなのか、深層意識にあった欲望なのか。

 少女への人工呼吸を思いついた研究員は少女に顔を近づける。

 その瞬間、ドン!と何かが落下した音が聞こえた研究員は音がした方向を見ると、迫りくる足が視界いっぱいに広がっていた。


「ぐわっ!?」


 頭から床に突っ込んだ研究員は、一瞬の後全身が痺れ、動けなくなった。


「人の人形に何しようとしてんだ変態!」


 寝不足の頭はその言葉をおぼろげながらとらえていた。






 何とか寝室からの脱出には成功したが、俺の気力が著しくダウンすることになってしまった。

 下の段にジーナからもらっていたマナちゃん人形、反対のベッドの上の段に俺を配置し、布団でくるみノータッチなら良し、下段の人形に気付かれてもそっちに気を取られてる間に上の俺が隙を見て撃てばいいと思っていたが、ちょっと予想外な事が起こってしまった。

 あろうことか、入ってきた研究員は人形の俺(?)に迫ってチューしようとしたのだ。

 確かに、あの人形は俺の体の感触を気持ち悪いくらい再現しているし、そのくせ息や脈拍等の動きが無いせいで死体に見えなくもない。

 だから、もしかしたら善意で人工呼吸でもしようとしていたのかもしれないが、だとしても自分と同じ姿をした人形がズキュウウンされるところなんて見たくない。だからベッドから飛び降りてキック、魔力弾をプレゼントしてやった。

 額を押して収縮させて回収。そして部屋を脱して今に至る。

 さて…次はその向かいの部屋に行こうと思ったのだが。


「なんだコイツは!?うわぁ!!」


矢武智やむち

 無茶しやがって…くそっ、よくも矢武智を!ただじゃ済まさないぞ!おぁ…が…」


句倫くりんーーー!!」


 扉の向こうでなんか起きてる。

 俺としては関わりたくない。他にもドアはあるし、後で良いか…


「貴方もそこの男の隣に並ぶと良いわ!」


 なんか今の声に聞き覚えがあるような…まあいいか。


「そこの男だと…

 句倫のことかああああああああああああああ!!」







「私の友はどこだ?」


「お、お前のお友達なんて知るかよ!や、止めろぉ!」


 うん、この扉もパスだ。

 次の扉は…開かない。鍵がかかってるのか?


「入ってまーす。」


 なんだ、トイレか。

 他の扉も調べたが、どの部屋も騒がしかった。人が居るのだ。迂闊に入る訳にはいかない。

 今のところ全くガラスのコップなんて使わなくても様子が分かる。ガラスのコップなんていらない子だったんや…

 となると、先に進むしかないか。

 探索は基本だと思うんだが…まあ、これはゲームじゃなくて現実だ。無駄に危険を冒してまで物色する必要は無いだろう。

 廊下の先は曲がり角になっている。その先の様子は近付かなければ伺えない。

 あそこで一旦止まって、映画とかみたいに壁に張り付きながら顔だけ出して様子を見る。

 あれ一回やってみたかったんだよな。ワオンモールとかでやると不審者にしか見えないからやったことないけど。


 ガチャ


 後ろで扉が開く音がした。

 ほぼ反射的に振り向くと、持っていた魔力銃を構える。


「そんな物騒な物向けないでくれない?」


 聞こえたのはさっきの聞き覚えがある声。

 出てきたのは青いロングヘアーの美少女。昼間にジーナと遊びに行った守の知り合い…ギーナだ。

 それを確認すると構えを解いた。


「なんだ、お前か…」


「貴女、ジーナや守と一緒に居た子でしょ?

 …やっぱ可愛い。」


「そうだ。そういうお前は守の友達で、ジーナと一緒に遊びに行ったギーナだろ?

 あと、最後なんて言った?」


「そう。ごめんね、友達を奪っちゃって。」


「別に良い。奪われたつもりは無いし。

 …スルーかよ。」


「見かけによらずクールみたいね。

 貴女の名前は?」


「今本名は言えないが、ロリータって呼んでくれ。」


「そう。

 じゃあ、ここから出たら本当の名前を教えてね。ロリータちゃん。」


「ああ、その時はもちろん教える。こっちだけ知ってるのも不公平だしな。

 …そうだ、さっき俺に電話しなかったか?」


 軽い約束を交わし、例の質問をする。


「電話?してないけど。

 そもそも、番号すら分からないし。」


 外れか…

 となると、あの電話は四人目の侵入者からなのだろうか。


「そうか。

 どうも、俺たち以外にも侵入者が居るらしいんだ。

 そいつが味方とは限らないから気を付けておけ。」


「了解。

 ところで、なんで貴女はここに居るの?

 見たところ荒事向きって訳じゃなさそうだけど。」


「俺が来たのは守を助けるためだ。身動きが取れないんだってさ。」


「私に言ってくれれば…できないのね。」


「アンタはスマホ持ってないんだろ?連絡手段が無いじゃないか。

 で、連絡が通じて知り合いの中でも一番荒事に向いてるのが俺だからここに来たって訳だ。」


「貴女が一番荒事向きって…貴女の交友関係同級生だけなの?」


「いや、適正の問題だ。

 これを使えるか、とかな。」


 魔力銃を構える。


「…撃つ気?」


「お前には撃たない。

 これは使用者の魔力を撃ち出して、当てた相手を痺れさせる非殺傷銃だ。正当防衛の時しか使えないけどな。

 俺の魔力は多いから、こういうのを使うのに打ってつけなんだと。」


「確かに、貴女の魔力は普通の地球人より多いわね…

 だから、貴女が適任ってこと?」


「ああ、他の皆は武術どころか護身術も習得してない連中だからな。

 それに、俺は結構機転が利くんだ。だから俺が助けに来た。守を助けたら裏方に徹するつもりだ。」


「なるほどね。貴女が来た理由は大体分かった。

 それで、どうする?私と来る?それとも別行動する?」


 …確かに、守にチートと言わしめたギーナが居てくれるなら心強い。


「確かに頼もしいけど、良いのか?

 さっきも言ったけど、俺は守を助けに来たんだ。守と合流することになるんじゃ、別行動をとってる意味がなくなるんじゃないか?」


「そうね。私もまだ調べてない部屋があるし…

 でも、貴女一人にするのは危ない気がする。」


「信用無いな。

 これでもコイツで三人は無力化してるんだぞ。」


「その銃、連発してたら貴女が危ないわ。

 まだまだ余裕とは言え、あんまり多用しないことをお勧めするけど?」


「なんでだ?」


「人間、というか生き物は魔力を失ったら良くても意識不明、悪ければそのまま死ぬということもあるの。

 それを何回か乗り越えてる人外は見てるけど…死の淵に立ちたくないなら止めておきなさい。」


 魔力を失ったら死ぬかもしれない?

 そんなこと、リリナもジーナも言ってなかったが……訊かれなかったから言わなかっただけなのか?

 とにかく、これを使うのに注意が必要らしい。あんまり鵜呑みにするのもどうかと思うが、使う回数が少ないほど良いのは確かだ。俺だって何度も人に銃口を向けたくない。


「魔力が少なくなってきたら倦怠感や疲労感が出てくるから、そこまできたら使うのをやめた方が良いわ。

 忠告は以上。じゃあ、後は頑張ってね。

 あ、そうだ。コレあげる。」


 ギーナが何かを投げる。


「うわ、おっ、とっ、とっ…」


 受け取り損ねてわたわたと手を動かし、なんとか床に落ちる前にキャッチする。

 見てみると、ガラスのコップだった。


「お探しのコップ。

 大丈夫、洗ってあるから綺麗よ。」


 さっきの電話を聞かれていたのだろうか。

 どうあれ、気が利く。


「ああ、ありがとう!上手くやれよ!」


 俺はギーナに手を振り、曲がり角へ向かった。

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