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元〇〇と呼ばないで!  作者: じりゅー
元四章 告白
33/112

元三十三話 失恋したら止まらなくなった

 

「―――というわけで、これが得られた情報の全てだ。」


 翌日のカフェウェスト。今日もバイトではない為客として来ている。

 正面に向かいますは田倉。今日も恋愛相談ということで2人で来ていた。


「んー…随分と抽象的というかおおざっぱというか…」


 “一緒に居て楽しい”では狙うべき方向も何もあったもんじゃないだろう。

 愉快な奴に限定はされるかもしれないが、愉快さにもいろいろあるのだ。


「まあ、リリナは神生(人生)を謳歌するために女子高生やってるからな。」


「え?」


「あー…アイツはちょっと変わったやつってことだ。」


「へー、意外だ。」


 学校でのリリナだが、俺や詞亜以外の生徒は優等生、というか完璧超人みたいな印象が強いらしい。

 明るくて友達が多くて成績も良い。テストはまだ受けていなかったが、授業中に当てられた問題は全て正答だった。体育の授業でも目覚ましい活躍を見せ、チーム戦ではワンマンプレイではなくちゃんと味方を頼りながらチームを勝利に導いていた。

 生徒会長になっちゃいなよユーみたいなことを言われているのを見たことがある。やんわりお断りしていたが、推薦とかで挙がって当選してしまいそうだ。


「…ところで、マナさんのタイプは?」


「銀髪黒目ロリ巨乳俺っ子タイプ。」


「そうじゃなくて…好きな異性のこと。

 っていうか、マナさん属性多いな…属性の大食いチャレンジなの?」


 何だよ属性の大食いチャレンジって…俺は食べ物でも宝石箱でもないぞ。確かに属性は特盛かもしれないけど。

 それにしても、好きなタイプか…


「んー…髪はロングかな~…

 可愛い系より綺麗系で、身長は…高過ぎず、低すぎずな威圧感を感じない程度の高さが良い。」


「……ん?」


「何か変か?」


「だって、女の子みたいな人が好きなんだなって…そんな人本当に居るの?」


 そう言えば俺女になってたんだった。異性って言ったら男になるじゃないか。

 そんな男居る訳……


『そう。

 顔が女っぽくても男らしく居ようってな。』


 …居たわー。男の娘()が全部に当てはまってたわー。

 でも、アイツは男だから恋愛対象には入っていない。瑠間ならともかく…

 …瑠間完璧じゃねーか。でも同じ顔の弟()のせいでなんか…う~ん…


「えっと…もしだけど、もし僕が髪を伸ばしたら」

「それは無いな。」


 なんか妙なことを口走りそうになっていたので被せ気味に否定する。


「…どうして?顔?」


「顔もあるけど、俺はそういう意味で男を好きになれない。」


「……同性愛者ってこと?」


「惜しい。

 同性愛者じゃなくて性同一性障害、トランスジェンダーって奴だ。

 俺にとっては男との恋愛が同性愛に当たるな…まあ、俺にそっちの気は無いけど。」


 本当は望まぬ性転換(TS)だけど。


「……そうか。」


「俺の意見が聞けなかったのがそんなに残念か?

 お前が好きなのはリリナなんだろ?」


「…そうだね。」


 なんで残念そうなんですかねぇ…


「………お前、リリナの事どう思ってるんだ?本当に好きなのか?」


「す、好きに決まってるじゃないか!

 明るいし、きれいだし、仕草の一つ一つが可愛いし…あの人の事なら全部好きだって言えるんだよ!」


「よく言った。

 …そこで聞き耳立ててないで、出てきたらどうだ?」


「…え?」


「バレてましたか。」


 仕切りの向こうに居たリリナに声を掛ける。

 移動しているのがちらっと見え、厨房に戻っていなかったのでそこで聞いていたのは分かっていた。リリナも俺の方をちらっと見てたからな。


「そういうことだ、リリナとしてはどうだ?こんなストレートな告白を盗み聞きして。」


「聞こえてしまっただけですよ。

 …そうですね、では、私の評価と答えを言いましょう。

 まず、顔はそれほど悪くありませんね。女装が似合いそうです。」


「…ありがとうございます?」


 どんな評価だよ。田倉も反応に困ってるじゃねーか。


「性格ですが、う~ん…

 少し腹黒いところがありますね。」


「腹黒い!?」


 面と向かって腹黒いとか言いやがった。ちょっとしか知らないくせに。

 …俺もちょっとしか知らないけど。

 っていうかどこが腹黒いんだよ。純朴な少年じゃないか。


「それと、どうも私への好意というより……止めておきましょう。」


 というよりなんだ?そこで止めるなよ。


「総合評価、貴方は彼氏にできません。」


「………」


 …想い人に振られる気持ちは痛いほどわかる。だから、今はそっとしておこう。


「…田倉、今日はもう帰って心の傷を癒して来い。俺が支払っとくから。」


「………」


 田倉はトボトボと歩きながら店を出て行った。


「…マナさん。」


「なんだ?」


「貴方、朴念仁って言われませんか?」


「は?」


「まあいいです。

 それより、田倉さん…でしたか。彼には気を付けた方が良いですよ。

 さっきも言いましたが、彼は腹黒い一面があるようですから。」


「振った挙句陰口叩くのはどうかと思うんだが…」


 控えめに言えば鬼畜だ。


「彼よりもマナさんを心配してるから言うんですよ。

 だって田倉さん、ショックを受けたわけじゃないみたいでしたから。」


「え?

 いやいや、どこからどう見てもショックを受けてたじゃないか。リリナの目は節穴だったのか?」


「…節穴なのは貴方の目ですよ。朴念仁。

 明日の彼の格好を見てくれば、多分確証が持てるかと。」


「格好?」







 翌日。

 今日はバイトのシフトが入っているため、学校からカフェウェストに直行した。

 バイトを始めてしばらく。1人の女性客が入ってきた。


「いらっしゃいませー!」


「こんにちは、マナさん。」


 …あれ?なんでコイツ俺の名前知ってるんだ?

 コイツとは会ったことも無いはず………でも、声は聞き覚えがあるんだよな…


「…もしかして、気付いてない?」


 気付くも何も…


「…僕だよ、田倉だよ。」


「田倉ぁ!?」


 この自称田倉は田倉に比べて髪は長いし、スカートこそ履いていないものの可愛らしい服装をしてるしで田倉の要素が無い。あるのは細い体格とどことなく面影がある顔だけ……


「まさか、性別が変わったのか?」


「いやいや、マナさんの好みに合わせた格好をしてきただけ。

 性別を変えるまではしてないから。っていうか、出来ないから。」


 はい、出来ちゃった人です。

 というか、されちゃった人だな。


「どう思う?」


「どう、か…」


 非常に反応に困る。

 似合ってるとでも言えば良いのだろうか?

 少なくとも、筋肉まみれの男がやるような感じの絶望的に似合わない感じはないが…


「…似合わないことも無い。」


「そう?

 ちょっと目覚めちゃいそうだな…」


「少年、そっちに行ってはいけない、今すぐ引き返すんだ…!

 Because,you are boy! you are not girl!」


 英語圏に住む親戚仕込みの無駄に発音の良い英語も用いて止める。


「止めないで、新しい人生の楽しみが出来そうなんだ…!」


「Nooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!」


 失恋しておかしくなってしまったのだろうか。

 彼が止まることはなさそうだった。

〇〇〇「だからよぉ…止まるんじゃねえぞ…」


なお、この話の時系列は去年の10月ごろなのでまだ上のネタは無かった模様。

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