元三話 服を買いに行こうと思ったら辱めを受けた
書き溜めをぶちまけたい衝動に駆られ始める。
さっき見た凄惨な何かの記憶に鍵をかける。
ナニガオキタンダッタカナー
「…で、バイトはどうするの?」
今日午後からあると言っていたバイトのことだろう。
それについては決めている。
「今日のバイトはメールか何かで断っとく…ついでに辞める。」
「バイトを?
大丈夫なの?」
「だって、この姿で俺は基矢です!なんて言っても普通信じてくれないだろ?
だったら、もう最初からこの姿で別のバイトでも捜した方が良いかなってさ。」
「一理あるわね…」
俺の食費や家賃、ついでに小遣いのことを考えると仕送りでは足りない。バイトは必須だ。
というか、向こうでバイトするから仕送り少なめで良いよーと言ったのは俺だ。今更増やせなんて言えない。
「そこのも養わないといけないし…」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」
哀れな元女神様は虚ろな目で何かに謝罪している。
大家さんの認識を変えてしまったならリリナもここに住むことになる。
つまり養わなければならないということだ。リリナもバイトに行かせるか…
バイトなんてJKっぽくて良いじゃないですかーとか言ってノリノリでやってくれるに違いない。
スマホの電源をつけ、店長にバイトを辞めるとメールを送る。
「…よし、後は求人を見るだけだな。」
この容姿だ、きっと喫茶店とかでバイトしてたら常連客を作りまくれるに違いない。
錆びれた喫茶店で働いて超満員にしてやるぜ。
…リリナが。
俺は多分、喫茶店の店長の子供だーお手伝いしててかわいいでちゅねーとか言われるのが関の山だろうから客寄せパンダにはなれない。
ん?
……ちょっと待った。俺この見た目でバイトできんの?
子ども扱いされて取り合わないんじゃないかコレ。
「あ、もしもし、私だけど…」
詞亜を見てみたらオレオレ詐欺をしていた。
「うん、うん…
じゃあお願い、明日向かわせるから。」
「詞亜、今のオレオレ詐欺はどこにかけた?」
「黙って誘拐犯。
私のお父さんの知り合いがこの辺で飲食店を出してたはずだから、ちょっとお願いしてアンタを雇ってもらえるように取り合って」
「すみませんでした詞亜様女神様!」
「…え?何?今、私のこと女神様って言った?」
「お前じゃねえ!」
リリナ復活。
元を付けられなかったことがそんなに嬉しかったのだろうか。
「そこの元女神様も連れてって。2人行くって言ったから。」
「詞亜様マジイケメン!惚れちゃう!」
「そ、そう?」
ちょっと嬉しそうだ。
「面接は明日やるそうだから、明日は予定を空けておきなさい。」
「と言っても、こうなっちゃ下手に遊びに行くことも出来ないけどな…」
自分の体を見ながら思う。
これでは達治達と遊ぶことも出来ない。
信じがたい話だし、下手を打てば頭おかしい奴みたいな反応をされてもおかしくない。
それと、話が広まっても多分ろくなことにならない。
それを考えるとバレたのが口が堅い詞亜で良かった。口が軽い達治だったらやばかっただろう。
「今日の予定なら埋まってるわ。」
「え?」
何があると?
「アンタの服。」
「あ。」
そう言えばずり落ちたパジャマを着ているんだった。
現実逃避やら茶番やらで忙しくて着替えていられなかった。
「着替えるから出て行ってくれ。今よりマシな服を探して着る。」
残念ながら俺にソッチの趣味は無いため女物の服は無い。
それでも探せばマシな物はあるはずだ。
「無いでしょ。」
「Yシャツくらいは」
「マシじゃないわよ!そんな格好で外に出られると思うの!?」
「駄目なのか?」
「変な人に誘拐されても良いの?誘拐犯さん。」
「俺は誘拐してねえ!
…でも、誘拐されるのはご遠慮願いたいな。」
「でしょうね。」
「私がアンタの服買ってくるから、ここで待ってなさい。」
ありがたい申し出だ。
「…と言うわけで、採寸するから脱いで。」
「え?」
「あ、面白そうですね!私も手伝います!」
なんか2人ともニヤニヤしている。
嫌な流れを感じた。
「おい、ちょっと待ってくれ。
頼む、お願いだ、お願いします、お助け下さいやあああああああああああ!!」
2人から辱めを受けた。
「行ってくるわ!」
「いってらっしゃーい…」
元気そうな詞亜と対照的に俺とリリナは元気が無い。
詞亜は俺を辱めた後、リリナを辱めた。
彼女の服も買うらしい。
まあ、彼女が着てきたのはよく昔の神様が身にまとっているようなバスローブ的なアレだから外に出たら目立つだろう。
俺も参加しようとしたら詞亜にすげー睨まれた。あまりの気迫にちびってしまいそうだった。
「あ、ちょっとトイレ。」
起きてから一度もトイレに行っていないことを思い出し、トイレに向かう。
アパートのトイレは一階に一つしかなく、住民は共同で使用している。
まだ誰も帰ってきた様子は無いので空いているだろう。ついでに誰にも見られない。
「あ、ちょっと待ってください。」
「……なんだ?」
嫌な予感再び。
「まだ何も言ってないのにそんなに嫌そうな顔しないでくださいよ…
実は私、ここに来る前にTS小説をたくさん読んで勉強しておいたんです!」
「そりゃご苦労だな、じゃあちょっとトイレ行ってくる。だから放せ。」
腕を掴まれて止められた。
「それによりますと、男女でトイレの仕方が違うそうじゃないですか。」
「へーそいつぁ知らなかった、早く放せ漏れそうなんだ…!」
「それに、お風呂の入り方とか、歩き方に至るまで…」
「お前の長話に付き合ってる暇は無いんだよ!早く放せ!!」
必死に掴まれた手を振るがリリナの手は離れない。
バカな、力は何故か元のままじゃなかったのか…?
「みっちり全部女を叩き込んであげますよ。
手取り足取り、ね?」
「止めろおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ゾゾゾと寒気が走る。
リリナは俺の手を掴んだまま部屋を飛び出し、階段を降りると俺ごとトイレに入った。
俺は再び辱めを受けた。