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元〇〇と呼ばないで!  作者: じりゅー
元三章 じょうちゃんの秘密
23/112

元二十三話 猫と戯れてたらガキンチョが群がってきた

なんかお昼に予約投稿。

じりゅーは猫より気まぐれです。多分。

 

「可愛いね~!」


「可愛いな。」


 朝の夢のことはとうに弾け飛んでいる放課後、昨日と同じようにじょうちゃんと一緒に猫と戯れていた。

 今日も猫は昨日と全く同じベンチで寝ていたおかげで険悪不可避のおままごとを避けることが出来た。猫ありがとう。


「あ、そうだ。」


「どうしたの?」


 公園に行く前に買ってきた物を取り出す。


「それって…」


「猫じゃらしだ。」


 昔友人が言っていた。猫じゃらしは猫だけじゃなく人にも楽しみを与えてくれる素晴らしいアイテムだと。


「ほーれほーれ。」


 目の前で猫じゃらしを揺らしてやると猫が首を上げ、細かった目を見開いて必死に猫じゃらしを追っている。

 やがて前足を出し、猫じゃらしに左フックを繰り出し始める。


「こっちだ。」


 猫じゃらしをベンチの下に持ってくると、猫もベンチを降りる。

 必死に猫じゃらしを捕まえようとするその姿に、俺の心は癒されていく。


「次!次私!」


「いいぞ~。」


 じょうちゃんに猫じゃらしを渡すと、俺がやっていたようにさささと左右に振り始める。

 癒される。ダブルで。


「お~う、ここにいたのか、昨日は気付かなかったぞ。」


 後ろから嫌な感じのジャリボーイの声が聞こえた。


「来示!?」


「じょうちゃんの知り合いかい?」


「じょうちゃん?

 って、誰だテメー!」


 立ち上がって振り返ると、いかにも生意気そうなガキンチョ達が3人いた。

 じょうちゃんの同級生だろうか。目線が………もういいよ。


「………」


 なんだその沈黙は。

 お前らの視線が顔と顔の下を反復横跳びしてるのはバレバレなんだからな。堂々と見るんじゃないよガキ共、小学生か…小学生だ。


「アイツは来示、嫌がらせばっかりしてくる嫌な奴!

 何しに来たの!?また嫌がらせ!?」


「…あ、ああそーだよ!悪いか!」


「お前のリアクション可愛いかんな~」


「うひひひよーじょよーぐぁ!!」


 最後のやつは寒気がしたのでCQCの投げを決める。

 思わず全力でやってしまったが、血一滴流れてない。意外と頑丈らしい。気絶してるけど。

 将来有望、むしろ無謀なことをやってしまいそうだ。出来る事ならここで摘んでおきたいが殺人は罪なのだ。ガッデム。


「それより横のそいつは誰だよ!」


「マナ!私の友達だよ、悪い!?」


 なんで抱き着くんですかね。コイツに取られたくないのか?

 取られてたまるか。


「悪くない、むしろ良い…!

 やっぱり百合ってさいこゴハッ!」


 本日二度目のCQC。

 今度は手加減してやったので気絶こそすれ血は流してない。

 百合は…苦手だな。

 ちょっと誘拐されたときの事を思い出すんで…


「マナ、どうしたの?顔真っ青だけど…」


「なんでもない…」


「しっかりして!私とにゃんにゃんがついてるから!」


 にゃんにゃんってなんだ?

 あ、猫猫にゃんにゃんか~…もうちょっと別の名前思いつかなかったんですかね?ニャン太ーとかトラジローとか。三毛猫だけど。


「なんでそんなに仲良さそうなんだよ!」


「友達だから!」


「おや?妬いてるのかい若いの。」


「若いのってなんだ…バカにしてるのか!?」


「やーいやーい!」


「バカにしやがって…!

 羽田はねた勇利ゆうり、やっちま…あえ!?」


 結構でかい音してたのに気付かなかったのか来示君。君は将来難聴系主人公になれる素質があると思うぞ。


「アンタ見てなかったの?あっという間にマナちゃんがやっちゃったんだから!」


「フハハハ!貴様の仲間は手遅れだぁ!」


「くっそ~!」


 仲間が2人やられたのに一人で戦おうとする来示。

 彼にはやはり主人公の素質があるのかもしれない。


「甘いな!」


「ぐぇ!?」


 今度はCQC拘束編。右腕で首をホールドする。


「…今後はじょうちゃんに手を出さないでもらおうか。」


「………」


 あ、やばい。コイツ顔赤くなってきてる。

 弱めのホールドのつもりだったが、強すぎたらしい。急いで放してついでに距離を取る。


「………柔らかかっだぁ!?」


 小さな呟きを聞いてしまった俺は気付けばグーで来示を殴っていた。

 コイツ、窒息してたんじゃなくて人の胸の感触を楽しんでやがったのか…!

 やっぱコイツ主人公の素質あるよ!爆発しやがれ!!


「今後はじょうちゃんに手を出すなよ!

 なんかやったら、もっと強くぶん殴るからな!」


「ひ、ひいぃ~!」


 情けない声を出しながら仲間をほっぽり出して逃げていく来示を見届ける。脅威は去った。

 あと、さっきのゴタゴタの間に猫は逃げてしまったらしい。猫も去った。


「………」


 じょうちゃんの顔が赤い。


「大丈夫か?」


「……」


「おーい、おーい…しっかりしろって。」


「へぇ!?

 ま、マナちゃん近い…」


「あ、悪いな。」


 肩を揺さぶってようやく復活したじょうちゃん。

 顔は赤いままだ。


「熱でもあるのか?」


「だ、大丈夫大丈夫!

 だから…えっと、その…ありがとう。

 それと、巻き込んでごめん…迷惑だったよね…」


「気にすんな、俺の友達の迷惑に比べれば可愛い方だ。」


 性別や戸籍変える友達とか、友達を人質にとる友達に比べればなんてことない。子猫並みの可愛さだ。


「…ありがとう!

 また明日!」


 とびっきりの笑顔を向けた後、じょうちゃんは走って行った。

 やっぱり顔は赤いままだった。







「基矢さん、無理にとは言わないんですがお願いが…」


「なんだ?」


 カレーを作っている最中にリリナがおずおずとキッチンを訪ねてきた。

 ルーは投入済みなので完成間近だ。


「良ければなんですが…奈菜美さんと仲直りしてくれませんか?」


 奈菜美さん?

 …ああ、鴨木さんの事か。そういや奈菜美って名前だったな。

 ……待て、いつの間に名前で呼ぶ仲になったんだ?リリナのコミュ力の為せる業なのか?


「……難しいな。」


「そうですよね…流石に、簡単にはいきませんよね…」


「…鴨木さんを見ると思い出すんだよ、あの時鴨木さんに言われた言葉を…

 冷え冷えとしたあの声を…」


「流石に、人質に取られた後ですからね…」


「「んん?」」


 リリナと声が重なる。


「え?基矢さんは人質に取られたことを気にしてるんじゃないんですか?」


「そっちも気にしてるけど、あんなに避けるほどじゃない。

 俺が卒倒する直前に言われた言葉が心を底までえぐってくるんだよ…」


「卒倒する直前…あ、ロリや」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」


「何でもないです!気にしないでください!」


 やばい、体が震える。

 持ってるお玉が手をすり抜けてお鍋にボッシュートする。


「基矢さん!基矢さん!しっかりしてください!!」


「あ…あああああ、あ…」


「ああ!カレーが焦げる!基矢さん!火を消してください!!」


「あ……あ、ああああ…」


「しっかりしてください、基矢さん!

 基矢さああああああああん!!」


 カレーまみれのお玉を持ってうへぇと言うのは数分後だった。

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