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元〇〇と呼ばないで!  作者: じりゅー
元一章 夏休みの終わりの大事件
2/112

元二話 友が襲来したと思ったら誘拐犯扱いされた

 

「はー…はー…も、もうしわけありません…」


「はー…はー…許してなるものか…」


 お互い肩で息をする程に暴れたのに誰も来ないのは、単純に他の住人が出払っているからだ。

 ある人は帰省、ある人はバイト、ある人はお出かけ。理由は様々。

 今の俺たちにはありがたい状況であった。


 プルルン!プルルン!

 プルルン!プルルン!


 その時、突然スマホが鳴った。

 この潜入ミッションを彷彿とさせる着信音は…友人の達治たつじだ。


「……はー…事情は分かった。

 とりあえず、認識の変更とやらはどこまで終わってる?」


「戸籍の変更はできてます。

 学校では…職員と名簿、生徒手帳ですね。基矢では女性らしさが無く不自然なのでちょっと名前を変えさせて頂いてます。小中高、全て。」


「…クラスメイトは?」


「未完です。小中高、全てえええええええええええええええ!!痛いです!!」


「当たり前だ!痛くしてるんだからな!!」


 元女神サマの腕を強くつかみ、ひねる。

 とりあえず、この電話には出ないようにしよう。奴の認識では俺は男。性別が変わるにあたって声も当然変わっているので、出たら余計な混乱を生みかねない。


「悪いな、達治…

 おう、基矢だ。」


 ばっかやろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

 何が出ないようにしようだ!無意識に動く手を止めろよアホォ!!


『……どちら様ですか?』


 案の定混乱が生まれた!

 どうする、どうする…あ!


「わっかんねーかなー、俺だよ、基矢だよ!

 女声作ってんの!ドゥーユーノゥ声両生類?」


『え!?基矢!?

 すげーな、さっぱりわからんかったわー…』


「そうだろうそうだろう!」


 性別ごと変わってるからな。


『今日皆でカラオケ行こうって話になったんだけど、お前も来るか!?

 今のお前なら女性ボーカルも歌えるだろ!?』


 むしろそれしか歌えないです。


「今日バイトあるから止めとく。」


『それまでで良いから!』


「あー、その前にも用事あってさ。行けないんだ。悪い。」


『そうかー…ちょっと楽しみになったんだけどな…

 まあしゃーないか、今度行こうぜ!』


「時間があればな。ほんじゃ!」


 電話を切る。

 とっさの機転でなんとかなったが、かなりひやひやした。


「危なかったですね、見ててヒヤヒヤしましたたたたた!」


「黙れ元女神!そして全部元に戻しやがれ!」


 両腕を掴んでひねる。倍の痛みに苦しめ。


「元女神と呼ばないでください!私にもリリナという名前があるんです!」


「スはどうした!」


「女神を辞めた時に取れましたぁ!どうぞリリナと呼んでくださいぃ!」


「ああわかったよ元女神リリナぁ!」


「元女神とこの攻撃を止めてください!痛いです!」


 手を放す。

 怒りの炎も大分鎮火してきた。そろそろ暴力はおしまいだな。


「はぁ…助かったぁ…

 全く、もう少し手加減してくださいよ…元野郎。」


「テメェなんて言いやがったあああああああああああああああああ!!」


 再燃。

 彼女の腕は5分ほど俺によって痛めつけられた。







「…ところで、お前のセンスどうなってんの?」


「?

 何がですか?」


 鏡を見ながらリリナに問いかける。


「いや、俺だよ。

 銀髪で黒目、小学生レベルの身長にきょぬー…なんか全部中途半端じゃないか。」


「そうですか?

 私の世界ではそう言うことも普通でしたが…」


「いやいやいや、銀髪には碧眼、黒目には黒髪。

 ロリにはひんぬー、きょぬーにはおねーさんと相場が決まっているだろうに。

 これじゃ全部中途半端じゃないか。」


「貴方のこだわりなんて知りませんよ。

 あと、オッドアイだったら完璧でしたね。」


「止めろ。」


 中途半端さ(こんなところ)でも中途半端とは…

 邪道の塊だと思っていたが、実は中途半端の塊だった。


「でも顔はいいですよ?」


「まあ美少女顔付けてくれたことには少し感謝してはいるけどな…」


「性別以外ノータッチですが…」


「え?

 じゃあなに?人の手も触れずにこんな自然界に存在しなさそうな美少女になったの?」


「はい。

 もし貴方が女性に生まれていたらこうなっていたということです。

 その点では多少顔があれでも目を瞑ろうかと思ってましたが、杞憂だったみたいですね。」


 ……そう言えば、俺のばーちゃんハーフだったな。

 父方の家族は家族は皆小柄だったし、ばーちゃんも昔は銀髪だった気がする。


「…納得いかんのがこれだな…あ、やわい。」


 ポン、と胸に触れると程よい弾力が返ってくる。


「牛乳でも飲んでたんじゃないですか?」


「ああ、昔牛乳好きだったんだ。

 それで、男だった時は身長が普通くらいまで伸びて安心してたんだ…はぁ…」


 全部胸に持ってかれたけど。

 おかげで身長は縮み、ロリ巨乳属性を手にしてしまった。スレンダーで良いから身長が欲しい。

 と、雑談しているとピンポーン!とインターホンが鳴る。


「基矢ー!いるー?」


 聞こえてきたのは中学生からの腐れ縁、遠藤えんどう詞亜しあの声だ。

 中学時代の友達の彼女の友達というかなり離れた仲だったが、四人+達治達で共に過ごしてそれなりに仲良くなった。

 俺と高校は同じだが、ここよりも学校から少し離れたマンションで俺と同じように親元を離れて一人暮らしをしている。元女神そっちいけばいいのに。

 そんな彼女が今日ここに来ると言っていたのをすっかり忘れていた。


「ああ!今開け」

「誰!?」


 ……しまったー!

 また無意識に!


「開けて!何してるの基矢!」


 自分のドジっ子属性に怒号を散らしたくなるも、それを抑えて冷静に対策を考える。

 …………これでいこう。

 まずは玄関を開けます。


「あれ?りなちゃんは?」


 すっとぼけます。りなちゃんなんて実在しません。

 …全国のりな様ごめんなさい。

 とまあ、開けたらやや吊り目の黒髪美少女(自称)が居た。詞亜だ。


「あ、貴女誰?その格好は?」


「そういうあなたはだーれ?」


 幼い少女をロールプレイングします。

 格好は気にしない。俺はかっこ悪くても生き抜く…そういうことじゃないか。


「私は基矢の友達の詞亜。

 基矢はそこに居るの?」


「基矢?だれそれ?」


 俺です。


「え?でも、表札も部屋番号もあってるはずだけど…」


「そんなこと言われても…」


「基矢さーん!」


 元女神いいいいいいいいいいいいいい!!


「基矢?

 ねえ、今基矢って」

「あ、お母さん!」


 ドアを閉める。鍵も閉める。

 ドアが叩かれても知らない。


「ちょっとこっちきてお母さん!」


「えぇ?私は貴方の母親では…」


 四の五の言うリリナを部屋の奥まで引っ張る。


「バカ野郎!なんてことしてくれるんだ!」


「私は野郎じゃないです元野ろ痛い痛い痛い!ちょっと様子を伺いに行っただけじゃないですか!」


「俺の名を呼ぶな!せっかくごまかせそうなところだったのに…」


 ピコーン!

 デッデッデッデッデッデッデ…

 テテッテッテ!テッテーテテテ!


 見つかった!箱にでも隠れてれば…同じだよ。

 ケータイが鳴る。

 着信音から詞亜であることは分かった。

 今度は出ない。無視だ無視…


「基矢ああああああああああああ!!

 その着信音が証拠よ!出てきなさい!!」


 そういう罠だったか…!

 着信拒否するがもう手遅れだ。


 ピコーン!

 デッデッデ…


 切る。


 ピコーン!


 切る。着信忌避だ。

 ついでに電源を切ってターンエンド。

 鍵を開けなければいくらドアを叩いても部屋には入れない。

 無駄なんだよ無駄無駄…近所迷惑になるから止めてくれ。あ、誰も居ないんだった。


「あ!大家さん!」


「何いいいいいいいいいいいいい!?」


 バカな、もう帰ってきたというのか!?


「開けて下さい!ここの基矢が子供を誘拐してるみたいなんです!!」


「止めてください!俺は犯罪も誘拐もしてませんから!そいつの言葉を信じちゃ」

「チェックメイトよ。」


 この数秒で起きたことを説明しよう。

 誘拐のゆの字で詞亜が大家さんに何を言うかわかってしまった俺は玄関へ走り、急いで鍵を開けてドアを開け放った。

 必死に弁明しようとしたところ大家さんはおらず、詞亜が俺の頭を片手で掴んだ。

 そして王手。詰んだ。出れない。


「さ~て、理由を説明してもらおうかしら?お・じょ・う・ちゃ・ん?」


「え、え~と…

 テヘッ…ぎゃあああああああああああああああああああああ!!」


 頭に力が加えられた。







「拷問だ…拷問だこんなの…訴えてやる…」


「じゃあ、元に戻った時に基矢を幼女誘拐で訴えて」

「止めてください社会的に死んでしまいます。」


 リリナも加えて事情を説明した。

 初めになまじ隠してしまった為か、こんな嘘みたいな真実はなしを信じてくれた。


「それと、訴えるならその元女神にしてくれ…住居不法侵入だ。」


「リリナですよ!」


「そうね…基矢をこんな姿にしてくれた礼はたっぷりしてあげないとね…」


「無駄ですよ!大家さんの認識は変わってますから!

 他の人がなんて言っても、大家さんがオーケーならもーまんたいです!」


 くっ、こいつ…妙なところで抜かりない。


「う~ん…それは面倒ね…

 だったら直接的に罰しましょう!」


「「え?」」


 次の瞬間、修羅を見た。

蛇「俺の着信音パクんな」

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