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元〇〇と呼ばないで!  作者: じりゅー
元一章 夏休みの終わりの大事件
12/112

元十二話 自覚はあるが我慢は必要だった

とうとう間隔が出来てしまいましたね…

 

『ぐわあああああ!』


『ファーストおおおおおお!!』


『ファースト・キースが…やられた…』


『アイツ…彼女ができるまでやられねえって、いつも言ってたのに!』


『そんな、兄貴が…

 次は俺の番なんだ…もう戦いたくねぇ!帰らせてくれ!』


『馬鹿野郎!お前はまだやられちゃいねぇ!

 まだ戦える、ファーストの分まで戦って見せろ!』


『!

 …ああ、そうだな。

 見てろよ兄貴、俺は兄貴と違って恋人ができるまでにやられたりはしねぇ!

 だから…だからきっと見ていてくれ!』


 …なんだこの夢。






 誘拐の翌日。

 夏休みもあと三日になってしまった。

 監禁されて自由な時間が一日も潰されてしまったからだ。残り少ない夏休みだというのに。

 今日は店長からバイトを休めと言われたので、一日中家でゆっくりするつもりだ。

 別に誘拐の事なんて気にしなくていいのに…と言えるほど強がれないのも事実。断る選択肢は無かった。


「……」


 朝食を摂っているとリリナが妙に視線を送ってくることに気付いた。


「どうしたリリナ?」


「…ちょっと釈然としないなと。」


「何が?」


「なんであの後モアさんには泣きついたのに私には何も無かったんですか?」


「ブフォッ!」


 解放された俺はモア姉を見て安心し、抱き着いて泣いてしまった。

 状況が状況なだけに仕方なかったかもしれないが、今思い出してもちょっと恥ずかしい。


「ちょっと、食べてる時に噴出さないで。」


「ごめんごめん…

 …リリナ、俺に泣きつかれたかったのか?」


「そう言う訳ではないんですが…そうと言うか…」


「煮え切らないな。」


「だって、普通は助けた人に泣きつくものでしょう?

 なのに私には何も無くて、一緒に来たモアさんに…ちょっと不条理じゃないですか。」


「……リリナ、ちょっと俺を助けた時のことを思い出して見ろ。

 そんな暇あるか?」


「暇もなにも時間なんて」

「そうじゃない。

 急展開過ぎてついていけなくなったんだ。」


 突入、無力化、救出、点滅。どれも移り変わりが早く、泣きつくどころじゃなかった。

 ちょっと間があれば泣きついてたのはモア姉ではなくリリナだったかもしれないが…俺はむしろこれで良かったと思う。

 家族であるモア姉よりも赤の他人のリリナに泣きつく方がよっぽど恥ずかしい。

 これでいいのだ。


「そうですか…

 あ、いえ。別に基矢さんの髪をなでてみたかっ…たとかそういうわけではなく、ちょっと納得いかなかったから言っただけですから。」


 前者が本心っぽい。バレバレである。


「……別に、なでても良いぞ。」


「え?」


「一応、助けてくれたわけだからな…

 それくらい良い。」


 照れくさくなってリリナから顔を背ける。


「…照れちゃって、可愛いですね!」


「うるせーよ。」


 頭をなでるリリナの手になされるままにする。


「……抱きしめながらでも良いですか?」


「そこまでしていいとは言ってない!」


「駄目なんですか?」


「…そんな残念そうに言うな。

 分かった分かった、お礼だからな。お前の好きにすればいい。」


「はい!」


 俺が許可を出すとすぐにリリナの腕が背中に回ってきた。

 抱き寄せると顔が柔い感触に包まれ、またなで始めた。


「……もしかして、それが狙いだったの?」


「断じて違う!」


「説得力無い。」


 ……自覚はしてる。

 リリナも一応美人だ。精神が男の俺がリリナに抱き着くことを企んでいたと思われても仕方ないだろう。

 そんな気は微塵も無いが。だってコイツ中身がアレだし。


「喋らないでください。」


「あ、悪い。くすぐったかったか?」


「黙ってれば美少女なんですから。」


 テメェ人の事言えねーだろ…!

 これだからリリナは…!

 口に出かけた文句は呑み込む。一応コイツは恩人なんだ、今だけは良い気分にさせてやるんだ、我慢我慢…


「……」


「分かってるみたいですね、よしよし。」


 ………まあ、自覚はあるからな…


「ふふふ、黙ってる貴方は本当に可愛いですね。」


 褒めてるのか馬鹿にしてるのか。


「……リリナ、次私も。」


「モアさんは昨日やったじゃないですか。

 私が満足した後、基矢さんに言ってください。」


「分かった。」


 そんなにいい物なのだろうか、俺の髪…


「美少女を愛でるのに男も女も関係ありませんからね。」


 そういうものなのだろうか。

 …なんか今さらっと心を読まれた気がする。


「あ、今のは私の頭脳で貴方の思考をシミュレートしただけです。神の力は使ってませんよ。」


 …もしかして頭良いのか?


「今失礼な事考えませんでしたか?」


 分かんだろ。


「……リリナ、さっきから何独り言言ってるの?」


「独り言じゃありませんよ。よーしよしよしよし。」


 再度なでるのに集中するリリナ。


「基矢ー居るー?」


 玄関先から詞亜の声が聞こえる。

 ……ん?今の状況見られたらやばくね?


「モア姉、立ち入らせないでくれ。」


「了解。

 詞亜、久しぶりー」


 モア姉に対応させる。

 ゲストに対応させるのもどうかと思うが、状況が状況なので勘弁してほしい。


「あ、モアさん。お久しぶりです。」


「久しぶり、詞亜。」


 2人の中は良好だ。詞亜が俺の家に遊びに来た時に会い、仲が良くなったとか。


「…そこを通してもらえませんか?」


「基矢はお楽し…ちょっと立て込んでて今会えないから。」


 今なんて言いかけた。

 お楽しみどころか怒りを抑えてるんだが。


「せめて後数分は待ってくれる?

 ちょっと散らかってて…」


「手伝いますよ?」


「……排泄物もあるし…」


「部屋で何やってるのアイツ!!」


 ちょっと俺の言い訳パクんないでくださいよ姉貴。


「ほら、排泄物って言ってもアレだから。

 ……そら、その…いわゆる処理の結果出るものと言うか…」


「あ、ああ!そ、そうですか!

 じゃあ私外で待ってますから!」


 その続きも勘弁してもらいたい。お漏らしから逸らしたのは悪くないのだが…

 …それって排泄物なのか?

 玄関のドアが開き、閉まる音がした。どうあれ、姉貴の方が一枚上手だったらしい。


「リリナ、そろそろ…」


「分かりましたよ…ちょっと名残惜しいですね。」


 ようやく解放してくれた。

 若干の名残惜しさを殺して詞亜を迎えに行く。


「詞亜、待たせたな。」


「……ねえ、基矢。」


「なんだ?」


「その…性別が変わってからもそんなことして」

「してない。」


「そう…」


 なんでホッとしてるんだコイツ。


「そういうことをしたら男に戻れなくなるかもしれないだろ。精神的に…」


「…なんか、アンタって頑固よね。」


「……そうかもな。」







 一日家でゆっくりして、それから二日。

 バイトをこなし、心の傷も癒した俺は無事始業式を迎えることになる。


「……ここまで学校に来たくないと思ったことは無かったな。」


「学校の前で言うセリフですか?」


 とうとう夏休みが終わってしまった。

 先生や名簿上では俺は最初から女と言うことになっているが、クラスメイトだけ認識が男のままという中途半端な状況になっているため、クラスメイトに俺の正体を教えず、先生には不自然に映らない作戦は考えている。が、バレるのが怖いのでできれば来たくはなかった。

 校門前ではかなり注目を浴びている。目立つ髪色なのは分かるがちょっとはあっち向けと思いたくなる。

 居心地が良くないのでリリナを連れて職員室まで退散する。


「君が例の転校生、リリナ・ルース君かな?」


 職員室で俺たちの担任である生木なまき先生に声を掛ける。


「はい。」


「宇露、案内ご苦労だった。後は教室に戻ってて良いぞ。」


 ここだ。


「いえ、俺はリリナと一緒に居ます。

 外国から来たばかりで不安もあるでしょうから、付いていてあげたいんです。」


 俺たちの作戦は、こうだ。

 転校生として後から教室に入るリリナに俺が付いて行き、ついでに自己紹介することでクラスメイトを俺も転校生だと誤解させる。

 それなら俺が宇露基矢だと思われることは無いだろう。

 その危険性がある、最初から何も無かったかのように宇露基矢の席に居座るという作戦は却下となった。


「そうは言っても、久々に皆に会いたくは無いのか?」


「会いたいですが、それよりもリリナのことが心配です。

 外国から来て間もないのに、たった一人でいさせるのも…」


「1人という訳でもない。

 実は」

生木なまき先生、そろそろ始業式が始まりますよ。」


 先生の一人が生木先生に声を掛けた。


「そんな時間ですか…では向かいましょう。」


 生木先生の話は有耶無耶になった。

 その時先生が何を言いたかったのかは始業式の後、教室の前で判明することになった。

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