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元〇〇と呼ばないで!  作者: じりゅー
元??章 アウトオブ本編
112/112

元???話 心残りはあるけど選択した

チ ョ コ レ ー ト は 圧 政


こんな画像見たらバレンタイン短編の一つや二つ作りたくなっちまうわ。

 

「―――――♪」


 台所から聞こえてくる鼻歌。

 夜遅く、こんな時間に台所が使用されることはほぼ無い。リリナもジーナも夜食は太るからと嫌煙しているからだ。俺はたまにつまみ食いするけど。

 そんないつものつまみ食いをしようと、完全防音の部屋を出てみると鼻歌(それ)が聞こえてきたのだ。

 鼻歌(それ)は山姥が包丁を研ぐような、魔女が怪しげな薬を調合しているような、そんなホラーな雰囲気をこの廊下に漂わせている。

 肝を冷やしているはずなのに、好奇心はそれを見ろと行動を急がせる。

 足音を殺し、一歩一歩近づいて行く。忍び歩きは潜入の時に嫌というほど経験した。重心の取り方もばっちりだ。


「――――♪」


 台所に近付くと、鼻歌が良く聞こえる以外にも一つ、変化があった。

 匂う。

 これは甘い…まるでチョコレートのような匂いだ。

 まさか、体重の増量を覚悟してまで今食べたくなったのか…?

 っていうか、俺食べようとしてたのチョコじゃん。先に食われてるんじゃねーの?

 くそっ、残ってる分だけでも守って見せる…そして食う。

 ……まあ、別にちょっとくらい良いけど。俺そこまでケチじゃないし。

 分けてやるくらいやぶさかではない。全く、コソコソしないで堂々と食えばいいのに…


「…リリナだったか。」


 こっちがコソコソしてるのがバカらしくなり、堂々と台所に入るとリリナが居た。


「もっ!? 基矢さ熱いっ!?」


 声を掛けられたリリナは、何故か慌てて持っていた物を落とした。

 落ちたものを見てみると、内側が茶色に染まったボウルが床も茶色に……


「……あああああああ!! 床! 早く! 布巾は!?」


「これです!」


 床に零れたチョコを拭き、チョコがかかったリリナの手の無事を確認するまで俺たち2人の混乱は収まらなかった。








「…なんでお前、チョコなんて作ってたんだ?」


 溶かしたチョコを見ればあらかた用途は分かるだろう。

 クッキーか何かに着けるとか、型に流して固めるとか。

 真っ先に思いつくのは明後日のバレンタインだが…


「決まってるじゃないですか。バレンタインチョコを作ってたんですよ。」


 やや不服そうな様子のリリナの返答は予想通りだった。

 ただ、腑に落ちない点が二つあった。


「バレンタインってお前、今週の水曜日だろ?

 まだ今日はまだ日…月曜日だし、別に明日でも良いじゃないか。

 そもそも、お前なんでわざわざ夜に台所使ってんだ?」


「直前に作って、失敗したらまずいじゃないですか。

 色々試してみたいこともありましたし…」


「試すって、何をだ?

 チョコなんて型に流すとか何かに浸けるとか以外に工夫の使用が無いだろ? 変わりどころでケーキに使うとかそのくらいだ。」


「……まあ、別になんでも良いじゃないですか。

 それと…わざわざ夜中にチョコを作ってたのは、基矢さんとジーナさんに見られたくなかったからです。フライングなんてされたくないですからね。」


「………そりゃ、悪かったな。」


 そう言われるとバツが悪い。

 サプライズ…と言うと少し違うかもしれないが、それを邪魔するというのは本意ではない。前もって知っていれば見て見ぬふりの一つでも………いや、どうかなこれ。だってコイツ何しでかすかわからんし。コイツ着せ替え人形にしたり凧あげダッシュしたりなんだりしてくる奴だしな。案外割と必死で探るかもしれない。


「…それで、何を試そうとしたんだ?」


 それはそれとして。

 俺はその内容について見過ごすわけには行かない。なんか話を逸らされたが割とそう言うのをほっといたら痛い目に遭うってのこれまでの付き合いで分かってんだからな。


「い、色々ですよ!

 何かに浸けるのだって、その量とかも調べたいですし、型に流すのだって思った通りに固まるのかとかどれくらいで固まるのかとかも気になりますし…!」


「……」


 胡散臭い。

 コイツのことだ。チョコになんか混ぜるくらいはしそうだ。一部女子はバレンタインチョコに自身の体液を入れるなんて話を聞いたことがあるくらいだし…

 …さすがにそれはフィクションか。そういう情報を鵜呑みにするのは良くない。

 だから、男子諸君には気にせず頂いたチョコを食して頂きたい。

 ……その後に爆発しろ。


「…本当ですからね?」


「ああ、分かってる。」


 絶対何か隠してることは。

 とりあえず、仮にリリナが俺にチョコを渡してきたら食べないようにしよう。好意以上の何かを隠してるだろうからな。

 …でも、好意はあるはずなんだよな…多分、俺に渡すだろうし。

 二か月前のオーストラリアの夜。

 俺は、リリナの気持ちを知った。

 俺は、それに返事をした。

 明るい夜空の中、キスと言う形で。

 今でも、あの時のことを考えると顔が熱くなる。


「……なんですか、急に赤くなって。いやらしい事でも考えてたんですか?」


「い、いや、別にそんなことは無いぞ?」


「そんな乙女みたいな顔をしてですか?」


「乙女…!? 俺は男だ!」


「自分の胸に手を当てて言ってくださいよ! その無駄に豊満な胸に!」


「やかましい! って言うか無駄にってお前、実は嫉妬してたのか!?」


「してませんー! 別に元野郎のくせにとか思ってないですー!」


「嘘つけ! 本心駄々漏れじゃねーか!」


 ―――あの告白の後でも、こういう下らない口喧嘩が出来ている。

 それが何よりも楽しくて、面白くて、嬉しかった。






 バレンタイン当日。


「お邪魔しまーす!」


 ひときわ元気な声が聞こえてくる。

 この声は憂子(じょうちゃん)だ。やべー親戚を持っているやべー小学生だ。あの黒オーラなんでもう体得してるんスかね。


「早かったな、いらっしゃい。」


「邪魔するぞ。

 …もう皆来てたのか。」


 その姉の憂佳。初対面は被害者と誘拐犯という最悪な第一印象を持つ。

 今はもう気にしてないけど。本人も滅茶苦茶気遣ってるし…普通の友人関係を築けているだろう。時々やべーけど。


「憂佳? お前、社会人じゃなかったのか? 仕事は?」


「早退してきた。」


「…おい、まさかそれここに来るためとか言わないだろうな。」


「まさか。マナに会うために決まっているだろう。」


 …やべー。


「……なんだ、本気で引かなくても良いじゃないか。

 代休をこの日にしただけだ。先週、たまたま休日出勤があったからな。」


「なんだ、そう言うことだったのか…」


「本気でそうだと思ったのか…?」


「そりゃそうでしょうね。」


「こればかりは擁護できませんよ。」


「さすがの説得力だね! 真に迫ってたよ!」


 …この場に居るメンバーは今来たじょうちゃんと憂佳、俺に加え、同居人のリリナ、同居宇宙人のジーナ、別居腐れ縁の詞亜の六人だ。

 モア姉は純粋にここに来るのに時間が掛かるから、鴨木さんはとある理由で辞退された。野郎共は呼んでない。

 何故野郎共を呼んでいないのか、何故鴨木さんが来なかったのか、その理由は――


「全員揃いましたね!

 では始めましょうか! “バレンタイン女子会! 友チョコラブチョコチョッコチョコパーティー”を!!」


「「「「「イエーイ!」」」」」


 友チョコ、という物がある。

 それは女子が女子同士でチョコを送り合う物。その間に男子は居ない。

 だから今回は男子禁制。チョコ嫌いの鴨木さんは辞退したと言う訳だ。

 …このだっさださなネーミングはともかく、今回のパーティーの趣旨は各々チョコを持ち込み、皆で食べること。

 市販品はNG。一工夫したチョコを持ってくるのがルールだ。

 ちなみにマヤは先約があって居ない。向こうも友チョコパーティーだとか。どこも考えることは同じだったらしい。


「皆! チョコレートドリンクは持ったかー!?」


「「「「「イエーイ!」」」」」


「ダイエットの準備は出来てるか!?」


「「「「……イエーイ!」」」」


「じゃあ、カンパーイ!」


「「「「カンパーイ!」」」」


「イ、カンパーイ!」


 イエーイじゃねーのかよ!

 持ち寄ったマグカップを打ち鳴らし、カップに口をつける。

 甘い。美味い。甘味最高かよ。


「まずは私から行こう。」


「いきなり憂佳か…」


 最初からやべー奴(クライマックス)とは…飛ばしてきたな。

 突然脱ぎだして溶けたチョコを自分に塗ったりしなければいいのだが。

 …いや、いくらなんでもそんなことをするはずは無いか。常識は多少かけてるが結構常識人だからな(?)。リリナが神の力で悪い心をぶっ壊してくれたおかげだろうけど。


「私が用意したのは…これだ。」


 持って来ていた荷物から取り出したのは溶けたチョコではなく複数の透明な袋に入れられたチョコだった。

 チョコはそれぞれ丸や四角、ハートもあり、色も茶色だけでなく、ピンクや白もあった。どれもカラフルチョコなどによる装飾がなされている。


「こう見えても私は料理が結構得意でな。

 十八番のクッキーにチョコレートを塗り、ついでにデコレーションをしてきた。」


「まともね…」


「まともですね…普通に美味しそうです。」


「脱ぎださなくてよかった!」


「お、お前ら私のことをどう思っている!?」


 やべー奴。

 今、心の声は四重奏(カルテット)を奏でただろう。

 憂佳はため息をこぼしながら取り出したチョコを配る。

 俺のが全部ハート型なのはツッコまないでおこう。しかも心なしか他のより若干でかいし多いし…

 厚手の袋を開け、一つ口に放り込む。


「……美味い。」


 なんだこれ普通に美味なるぞ。

 サクサクのクッキーはチョコに合わせてか甘みをやや抑えている。チョコも程よい甘みだ。

 確実にそこいらの市販品を軽く凌駕している。パネェ。語彙力が突然無くなるくらいすげぇ。

 なんか感動した。あんな変態が、実はこんなすげー特技を持ってたなんて……


「……ま、マナ? いくらなんでも泣くことは無いだろ? そんなにうまかったのか?」


「ああ、ああ…

 良かった。お前なんか色々徹底的に残念な奴だなって思ってたけど、こんな特技があったんだな…」


「ま、マナ…私は、喜べばいいのか? それとも怒ればいいのか?」


「俺が知るかぁ!」


「お前が怒るのか!?」


 ちょっと情緒不安定になってしまった。

 気を取り直して次へ。


「次私!」


 …姉妹で速攻を仕掛けてきたか。

 憂佳! じょうちゃん! ジェットストリー△アタックだ! 一人足りねぇ!


「私はいろんな形にしてきたよ!」


 じょうちゃんが持って来ていたのは六つの箱。

 開けてみると一つ一つ形が違うらしい。俺に渡された物はハート型のチョコだった。

 …またか。っていうかお前もか。


「…一応聞くけど、なんで私猫なの?」


「泥棒猫だから!」


「………」


「…詞亜、相手は子供だ。抑えろ。」


 詞亜の奴、ギリギリで笑顔を保っているが…ものっそい黒い。真っ黒だ。

 なんか不完全燃焼してますよ。貴女の心です。

 で、味の方は…うん、チョコだな。普通の。


「マナ、安心しろ。憂子のチョコには何も入っていない。」


 ごく普通のチョコを味わっていると、憂佳が耳打ちしてきた。内容は謎の念押しだ。


「…なんでわざわざそんなこと言うんだ?

 もしかしてじょうちゃん、何か混ぜようとしてたのか?」


「………私が見張っておいたから大丈夫だ。」


 それだけ言うとスススと自分の席に戻って行く。

 ……一応、憂佳には感謝しといた方が良さそうだ。なんかお礼を考えておくか。

 俺の物なら老廃物でも喜びそうな気がしないでもないが、しっかり選ぶつもりだ。こういうのは気持ち、ひいては誠意が物を言うのだから。

 …それに、んなもん渡したらエスカレートしてそのうちえらいもん要求されそうだし。

 じょうちゃんの次は詞亜だ。


「変な物混ぜてないよね?」


「なんでそんなこと疑うの!?」


 じょうちゃん(自分)がやろうとしたからだろうなぁ…

 いやぁ、じょうちゃんも真っ黒になったもんだ。出会った頃はもっと眩しかったのに…どうしてこうなったのやら。

 これも一種の成長か。

 悲しいというか、虚しいというか、こうなってほしくなかったというか。


「変わった形のチョコだね?」


 直方体、扇型、立方体。

 憂佳、じょうちゃんの物に比べてZ軸方向に寸法があるものばかりだった。

 まさかこれが純粋なチョコの塊と言う訳ではあるまい。いくらなんでも多すぎる。


「食べてみてのお楽しみ。割って食べてみて。」


 詞亜が言った通り、皿に乗せられたチョコをフォークで割る。


「あ! バームクーヘン!」


「カステラですね!」


 外のチョコは薄く、簡単に割れて断面が見られた。

 ジーナはバームクーヘン、リリナはカステラ、じょうちゃんはフルーツケーキ、と小さく作ったケーキ類をチョコで覆っていたらしい。どうやったんだコレ?

 俺はというと……


「ティラミスか。」


 中身を言った瞬間に詞亜以外の全員がバッ、と俺を見た。


「え? 何?」


「……詞亜、もしかしてそれは…」


「あら? リリナは分かっちゃった?」


「あたしも分かるよ!」


「?」


「……」


 なに? なに? どういうこと?

 ティラミスになんかあんの? 花言葉みたくなんか意味あんの?


「基矢さぁん…モテモテですねぇ…?」


 そんな怖い耳打ちしないでくださいリリナさん。せめて声のトーン何段か上げて?

 っていうかモテモテ? 好きですみたいな意味でもあんの? 将来を誓い合おう的な?

 分かってないのはじょうちゃんと俺だけらしい。でも、それを堂々と訊いたらヤバい事になる気がするので訊くのは止めとく。ここは直感を信じて、あとで調べ(グルッ)とこう。

 ちなみにお味はよろしかった。詞亜曰くチョコの中身は全部市販品らしい。

 …にしてもチョコのコーティングどうやったんだろ。企業秘密って言ってたけど。


「次、リリナ?」


「いえいえ! 私は大トリを取らせていただきます!

 次はジーナさんかマナさんでお願いします!」


「じゃあ、マナ!」


「………仕方ねぇなあ!」


 ご指名を受けて取り出したのは厚切りタイプのポテチ(うすしお)。

 バレンタインになんて暴挙を、みたいな顔をしている五人を他所に手慣れた手つきでパーティー開きをして机に載せる。


「……マナ、なんの冗談?」


「冗談かどうかは、コイツを見てから言っても遅くはないんじゃないか!?」


 次に机に載せたのは事前に溶かしておいたチョコ。

 後は御察しの通りだ。


「……なんだ、飲むにしては少なくないか? しかも皆チョコドリンクがあるじゃないか。」


「No!

 これはポテチに浸けて食うんだよ、チョコフォンデュって奴だ。」


「ポテチにチョコって…ホントに美味しいの?」


「あ! そういうお菓子食べたことある! 結構おいしいよね!」


「コンビニとかにも売ってるだろうに…」


 リリナ、ジーナ、じょうちゃんの三人はチョコを取り出した時には納得していたが、それでも憂佳と詞亜はピンと来ていないようだった。


「まさか、憂佳も詞亜もコンビニには行かないのか?」


「私は元々あまり間食を取らないからな…菓子のコーナーにはあまり行かない。」


 憂佳は個人の習慣みたいなものか。

 そのくせ結構なプロポーショんっんー! あーあー心のテスト中。心理テストみたいだな。


「私はスーパーで済ませるから、コンビニ自体あんまり行かないし…

 脂っこいおやつとか、食べ始めたらどんどん太っちゃうから…」


 ああ…栄養が胸に行かない人し…

「……」


「……ど、どしたしあー? なにかあったのかー?」


「…別に。」


 声まで震える恐怖の視線。

 今絶対『ギン!』とか言った。間違いなく何かしらの効果音が出た。やばい。恐い。


「と、とにかく頂こう。早くしないとチョコが冷め」


 バキッ!


「……」


 もう固まってたよ。ポテチ折れたよ。

 いくらなんでも準備するのが早すぎたな…あっためてくるか。


「……ちょこっとチョコあっためてくる。ジーナ、繋いでてくれ。」


「寒いダジャレはともかく了解したよ! じゃあ、私はコレ!」


 しれっと吐かれる毒を軽くスルーして台所へ。

 パーティー会場と化している俺の部屋を出て、扉を閉めると喧騒がピタリと止んだ。

 部屋に施された完全防音は十二分に仕事をしてくれている事を確認すると、台所へ。

 台所の棚の上にはピカピカな電子レンジが鎮座している。

 今日の為にリリナが一億を超える(鴨木さん談…嘘だったけど)ポケットマネーから出して用意してくれたのだ。

 流石にチョコを作る為だけに買ったわけではないし、これからは冷めた料理を温めるのがメインになるだろうが。まあ、あくまで口実と言うか、きっかけみたいなものだろう。あったらなと思ったことが無いわけではなかったし。


「……よし、戻るか。」


 溶かし直したチョコを持って部屋に戻る。

 少し時間が掛かってしまった。さて、ジーナのチョコは…


「…い、どうするんだ?」


「し、仕方ないじゃない…食べちゃったものは食べちゃったんだし…」


「どうした?」


「あ…マナ、あのな。

 実はその…悪気は無かったんだが…」


「?」


 ……ん~…

 あ、もしかして俺の分のジーナのチョコを食べたとかか?

 確かに気になってはいたが、怒る程の事じゃない。間違えて食べてしまったくらい許すつもりだ。

 それくらいの寛容さは、俺にだってある。


「えっと…お前のポテチなのだが…

 甘いものを散々食べていたせいか、塩気が良くてな…」


「全部食べちゃった!」


 ……そっちだったか。

 え? じゃあこの溶かしたチョコどうすりゃいいんだ? 飲めって? この少ない液体チョコを?

 …無いな。温めたばっかりだから熱いし、そもそも飲み物は全部チョコドリンクだ。

 これから用意している時間は無い。型に流すにしても型が無い。

 しょうがないか…


「…そうか。

 じゃあ、俺からのバレンタインチョコは…無しってことで」

「ちょっとお待ちください!」


「……リリナ?」


「まだ残ってるじゃないですか…チョコなら、マナさんが持ってるじゃないですか!」


「確かにそうだけどさ…もしかしてお前、これ皆で飲む気か?

 今から固めようにも、型なんて買ってないし…」


「そうではありません。

 あるじゃないですか。最高のチョコをプレゼントする方法が!」


 …この状況で、それをやってのける方法があるのか?

 少なくとも俺には想像が出来なかった。

 しかし、リリナの自信は…それでも、信じて良いと思わせるだけの強さがあった。


「…そうか。

 なら、教えてくれ! その方法を!」


「はい!

 それではマナさん、脱いで下さ」

「やるか!」


 ああ全くリリナに頼ろうとした俺がバカだったよ!


「なんですか、まだ全部言ってないじゃないですか。」


「自分にチョコ塗るとか絶対そんな感じだろ! んなもんしたくないし特に憂佳が怖いしじょうちゃんには見せられないしスリーアウトでダメダメダメに決まってるだろ!」


「教えてほしいと言ったのはマナさんじゃないですか! 丁度溶けたチョコもありますしおあつらえ向きでしょうに!」


「お前はもっと常識を知れ! しかもこのチョコ溶かしたばっかだから熱々なんだよ! そんなの塗ったら火傷するわ!」


「まずしないだろうとは思ってたに決まってるじゃないですか! 言ってみただけで!」


「マナ! リリナ! 喧嘩は止めて!

 今日は喧嘩する為のパーティーじゃないはずよ! リリナはもっと自重して、マナはもっと抑えて!」


「「………」」


「…ゴメンな。」


「いえ、私こそスミマセン。」


 詞亜からの正論で鎮火した俺とリリナは、不承不承の色を隠さぬまま顔を見合わせて不器用に謝り合う。

 まだ漫才の範疇だった、なんて言い訳をするつもりは無い。空気を悪くしてしまった自覚はあるのだ。特に、幼いじょうちゃんに気まずい思いをさせてしまった事は。

 ……生々しいおままごとの一件に関しては今だけは忘れることとする。


「さて、気を取り直してリリナのチョコを…」


「待ってくれ、俺の分のジーナのチョコは?」


「あ、確かそこに置いてたはずだよ。無いけど。」


 ………


「…二個食べちゃった人、正直に申し出なさい。怒らないから。」


「はい! あまりにもおいしかったのでマナさんの分までいただだだだだだだだ!?」


 犯人はリリナだったので無防備な腕を極める。

 他のメンバーならともかく、リリナは日頃の行いのせいでちょっと許しづらい。分かる?


「怒らないんじゃないんですか!?」


「それとは別にしつけは必要だろ。怒ってはいないから。根には持たないから。さっきので終わりだから。」


「そのくせメチャクチャ念押ししてるじゃないですか!

 分かりました、分かりましたから! 次に渡す私のチョコ、私の分もあげますから! 絶品ですから!」


 今回のパーティー、“友チョコ”と言いつつ皆自分の分も用意している。俺もポテチが無くならなければ食べるつもりだった。

 友人同士で集まった時にお菓子を買ってきた奴が自分でもそのお菓子を食べる感覚に近いだろうか。まあ、パーティーだし細かいことは気にしないことにする。

 それを分けてくれるというのは悪くない申し出だ。リリナの事だから見た目が心配ではあるが、味だけは素晴らしい一品を用意しているに違いない。

 ジーナのチョコも気になるが、別に怒っても居ないのでそれで手打ちにしても良いだろう。我が度量に感謝するがいいわ元女神。


「皆さん、こちらをどうぞ!」


 大トリ、リリナが全員に配ったのは六つの箱。

 開けてみると仕切りが無く、中には球体のチョコがいくつか入っていた。どこかのアーモンドチョコがこんな包装形態だった気がする。


「数日前から練習して作った力作ですよ! 絶対、確実においしいです!」


 それは期待が出来るな。

 次々とチョコを口に放り込む皆に便乗し、俺も口に運ぶ。

 咀嚼した瞬間、チョコがあっさりと砕けて内部の液体が舌を濡らした。この味は…


「美味しい! これ、中に入ってるのってクッキー?」


「ん? 私はナッツだが…」


「人によって変えてみました! そういうのも面白いですよね!」


「あ、そう言えば一人一人大きさが違うわね…私はイチゴだったわ。」


「あたしはアーモンドだった! マナは?」


「………」


 黙々と、次々にチョコを口に運ぶ。

 甘美な味故に、というよりもこれは…







「……あ、無くなっちゃったなぁ…」


 マナ(彼女)の分が無くなり、続いてリリナの分も口に運ぶ。

 一口一口がとても幸せそうだ。しかし、周囲は同時に異変も感じ始める。


「……マナ?」


「顔赤くなってきてるけど、大丈夫?」


「熱でもあるのか?」


 マナの顔は徐々に赤みを帯びていった。

 暖房が効きすぎている、と考えるのはやや不自然だ。体調を崩したにしても唐突過ぎる。


「あ…」


 ついに2人分のチョコが無くなる。


「なぁ…もう無いのか? リリナ…」


 目はとろりと、蕩けたような表情でリリナに訊く。


「残念ながら、それで全部です。」


「そんなぁ…」


 がっくりとうなだれるマナは、次にリリナに近付く。


「なぁ…リリナ…もっとくれないか…?

 すげーうまいんだ…なんでもするからさぁ…あ、おねーちゃんって呼んだ方が良いかな?」


「……おい、リリナ。

 マナのチョコには何を入れた? 絶対に正常な状態じゃない。」


 リリナへの嫌疑は憂佳が代表して晴らしに行った。

 マナが正常ではないことを全員が理解している。

 それに対して、リリナはマナの頭を撫でながら笑みをこぼし、白状した。


「ちょっと強めのお酒ですよ。

 以前酒盛りをしていた時、マナさんも飲んだんですが…少し分けるつもりが、その場にあった全てのビールを飲んでしまったんですよ。

 その時なんですが…お酒が切れてしまってからのマナさんがものすごーく可愛かったんですよ。

 もっとちょーだいとおねだりして、甘えて、だだをこねるところなんかもう…

 翌日の二日酔いで懲りたのか、マナさんはもう飲まないって言ってましたからね…以降は言っても飲まないだろうと思って諦めてましたが。

 今回はいい機会でした。マナさんにお酒を摂取させるには、このタイミングしかないと思ったんですよ。


「……リリナ、アンタはもっとまともだと思ってたんだけどね。」


「私だって、二か月前まではこんな事しようなんて思ってませんでしたよ。

 でも、私は自分の気持ちに気付いてしまったんです。

 私は、マナさんのことが好きだって…」


「「「!!」」」


「…それでも、気付いた瞬間の私ならこんなことはしなかったでしょう。

 ですが、年末……具体的なことは言えませんが、あるきっかけからマナさんの全てが愛おしく感じるようになってしまいました。

 そして、思うようになってしまったんです。

 マナさんに思いっきり甘えてもらいたいと。

 でも、素の状態ではまずそんなことはしてくれません。2人きりの時でも断られてしまいました。

 だから、チョコにお酒を入れて酔わせれば、また甘えてくれるマナさんが見れると思いました。それも、本人の記憶にも残らない形で…」


 時折辛い表情をしながらも、恍惚とした笑みを表に出して全ての事情を語ったリリナ。

 独白染みた懺悔を聞いた三人は、それでも言葉をぶつける。


「リリナ、お前がやってるのは悪い事だ。

 マナを騙して、やりたいことをやる。やってることは法にかからないかもしれないが、その心の在り方は犯罪者と何ら変わらない。」


「……」


「普通にアルハラじゃないの? 気付かないで食べてるマナもマナだけど…

 とにかく、今回の暴走は目に余るものがあるわ。正直もうマナを任せたくない。

 …だから、これからマナには私のマンションに住んでもらうわ。」


「ちょっと何言ってるの泥棒猫!? 貴女には彼氏がいるじゃない!

 泊めるとしたら私の家にする!」


「ちょっと待て憂佳、いくらなんでも両親への言い訳が難しくなるだろう。ここは私が引き取ろう。」


「ちょっとちょっと! それこそ安心できないわ!

 マナ本人がそんなこと許すと思う!? アンタもガチ犯罪やらかしてるじゃない!」


「私はもう前の私とは違う! あんなことはしない!

 それを言うなら詞亜、お前だって怪しいものだ! お前だって好意という名の爆弾は抱えている! リリナは今それでこんなことをしたんじゃないか!」


「前科持ちのアンタに言われたくないわ!」


「なんですか皆さん! 勝手にマナさんを持って行かないでください!

 マナさんはここの居住者です! 絶対に渡しませんからね!」


 ヒートアップするキャットファイト。

 苛烈さを増していくそれは、ジーナと幼い憂子を残し、詞亜、憂佳、リリナの三人に。


「みんなぁ…止めようよぉ…こんなの、みたくないよぅ…」


 それを止めたのは他でもない、マナだった。

 声は涙声で、拙かったく小さい物だったが三人に届かせるには充分だった。

 弱弱しい叫びを聞いた三人は口を閉ざし、心を鎮めた。


「……そうでしたね。

 ごめんなさい、マナさん。こんなことをしてしまって…なんて、お詫びすれば良いのか…ごめんなさい…」


 罪悪感、後悔、冷静になってリリナは涙を流した。

 何故、胸を刺す痛みに気付かなかったのだろう。どうして、今になって思い出すのだろう。


「私も、ちょっと熱くなってたわ…」


「私もだ。この中では一番の年長者であるはずの私が、これとは…」


 詞亜も、憂佳も反省する。

 何があったと言っても、結局は好きな人を泣かせてしまったから。


「…えへへ、よかったぁ…

 みんな、なかなおりだね…」


「…はい、仲直りです。」


 マナが酒に精神を毒されていることに心を痛めながら、笑みを返したリリナ。

 幼さを感じる言動は全て酒精によるものだろう。それが自分の責任だと思うと、胸が痛くなった。


「…それでそれで、おねーちゃん。

 もうお酒、無いの?」


「もうありませんよ、チョコも、お酒も……」


 マナの目じりに涙が溜まる。

 やや遠目から見て何かを察した4人は耳を塞ぎ、気付くのに遅れてしまったリリナはノーガード、しかも至近距離で――


「うええええええええええええええええええええええええええええええええええええん!!!」


 ――マナの号泣をその耳に受けた。

 リリナはマナを巻き込んでひっくり返り、しばらく耳が遠くなった。







「おいしー!」


 チョコレートドリンクを片手に無垢な笑顔を振りまくマナ。

 年が離れた妹の経験が生きたからか、憂佳は泣きじゃくるマナをうまくあやしていた。

 相変わらず顔は赤いままだが、それ故に普段のような男臭さは無くなり、幼い少女のような純真さが全面に出ていた。


「はぁぁぁぁ…! 可愛い! マナちゃん可愛い!」


「……可愛いな。」


「そうだね。」


「不謹慎だけど、リリナの気持ちもちょっとわかるかも。」


「そうでしょうそうでしょう!」


「お前は反省しろ。」


「はい…」


 その童顔故か、その場に居た五人は一人残らず彼女の笑顔に癒されていた。

 全員ロリコンなのかもしれない、とジーナは心の奥底で小さく呟いたが、自分も含まれているような気がしたので声の代わりにため息を出した。


「はぁ、はぁ、でぅゅひふぇ~!」


「今なんと?」


「憂子はもう駄目だ…私ももう駄目になりそうだ…」


「しっかりしてよ変態姉妹! できなきゃ眠ってて!」


「眠れるか…! 目の前に桃源郷があるのだぞ!」


「リリナ、お願い!」


「はい!」


 リリナが城司姉妹の前に躍り出ると、つん、と人差し指で額を突く。

 途端、興奮に沸き立っていた姉妹は膝を着いて倒れた。


「なにしたの?」


「魔法でちょちょっと。大丈夫です。気絶してるだけですし、後遺症は残りませんとも。」


「……」


「信用してくださいよ。

 憂佳さんも憂子さんも、私の大切な友人です。何かあったらそれこそ悔やみきれませんよ。そんなヘマしませんから。」


「それもそうなんだけど…

 それ、私にはしないわよね?」


「詞亜さん次第ですねー、暴走したら眠らせますし。」


「一旦アンタが眠ってみたら…!?」


「私の暴走は収まってますし、ノープロブレムですよ。

 詞亜さんもお気をつけて。容赦はしませんからね。」


「…分かってるわ。」


「あ、リリナが暴走したら私が止めるからね!」


「そのようなことは無いとは思いますが…その時はよろしくお願いします。ジーナさん。」


 あの状態のマナに癒されつつ、自分を最低限律する。

 どちらもしなければならないのが、詞亜と、リリナの辛いところだった。


「はぁー…ねえ、これもう無いの?」


「まだまだありますけど、あんまり飲み過ぎないでくださいね。

 あ、ここでちょっと水でも飲みますか?」


「飲むー!」


 アルコールが回ってきたからか、マナは徐々に幼くなっていくようだった。

 リリナが持ってきた水を一気に飲み干すと、またチョコレートドリンクを手に取る。


「あ、マナ。ちょっと飲み過ぎ。」


「あー! 返してー!」


 それを奪い取る詞亜。もちろん意地悪ではなくマナを気遣ってだ。

 痛む良心は偽の良心、と自分に言い聞かせ、心を鬼にしてマナを抑える。


「お願い、詞亜お姉ちゃん…返して…?」


「ダメ。」


(痛んでる良心は偽物、痛んでる良心は偽物、痛んでる良心は偽物、痛んでる良心は偽物、痛んでる良心は偽物、痛んでる良心は偽物、痛んでる良心は偽物、痛んでる良心は偽物…)


 陥落しそうになる心を必死に支え、手をマナの頭に添える。


「マナ…我慢して。

 これは意地悪したいからじゃなくて、マナの為だから…」


 マナに言い聞かせ、その頭を撫で始める。

 優しい、優しいその手つきに絆され、マナは抵抗を止めて詞亜の膝を借りる。


「……詞亜、わたし、詞亜、大好き…」


「……!!」


 衝撃。

 胸を貫き、全身に走り回るそれは、歓喜か、それとも他の感情か。

 理性にヒビが入る。良心に当てられていた抑制はすぐさまそちらに宛てられた。


「……酔いが醒めたら一発殴ってやりたいですね…覚悟しててください、基矢さん。」


「酔いが醒めた基矢にも、今の基矢にも、それをぶつけるのは理不尽だよ…抑えて、リリナ。」


 その横では黒い感情を抑えるリリナと、それを諫めるジーナが殺伐とした空気を放っている。

 しかし、それをもろともせずに甘く優しい空気を垂れ流しているマナと詞亜には届かなかった。


「でも、わたし…リリナも好き…」


「!?」


 ショック。

 昇天しかけていた心は叩き落され、地に落ちる。

 マナ本人にそのような意図は無かっただろうが、上げて落とすを体現した今のムーブには詞亜も堪えた。対してリリナは。


「基矢さん…!」


 歓喜の涙。

 ジーナはそれを見て、まるでいちゃつくリア充を見るかのような目をしていた。

 当てつけかコラァ、みたいな目である。


「……わたしは、えら…で、よかっ…かな…」


 …マナの瞼が降りる。

 詞亜は自分の膝とクッションを置き換え、荷物をまとめて出て行った。

 リリナもジーナも、何も言えずに見送っていた。


「後悔、してたんでしょうかね。基矢さんは…」


「…さあね。」







「ハッ!?」


 気が付くと、俺はベッドの上に居た。

 頭が痛い。前にあった二日酔いの症状に酷似している。

 二日酔い…昨日酒でも飲んだのか?

 記憶を掘り起こそうとするも、頭痛のせいかよく思い出せない。かろうじて思い出せるのは友チョコパーティーをしたことと俺のプレゼントが空振りに終わったことくらいだ。

 パーティー会場であったはずの俺の部屋はさっぱりその様子を見せず、いつも通りの俺の部屋だ。誰かが片付けてくれたのだろうか。


「……おはよう、ございます…」


 頭を押さえながら部屋を観察していると、ドアからひょこっとリリナが顔を出した。


「…どうしたんだリリナ?」


 どこかバツが悪そうな顔でほぼ事情を察したが、あえて強く問い詰めない。


「えっと…その…すみませんでした。」


「何がだ?」


「…昨日の私のチョコ、実は基矢さんの分だけはお酒が入っていて…それで、泥酔させて甘えてもらおうと思ってました。本当に、ごめんなさい…」


「…正直に言ってくれたから、良いよ。

 昨日は楽しみだったけど…まあ、お前に迷惑かけられるのはいつものことだ。

 たまには俺もお前に助けてもらってたし、まだまだおあいこって感じじゃないけど…許す。

 あ、でも調子に乗ってまた変なイタズラとかはするなよ?」


「……はい!」


 本当に、深く反省しているようだった。それを見ては強く責められない。

 …惚れた弱み、と言うのもあるだろう。いやいやいや、それは無いか。無い無い、うん。酔い残ってんな。


「あ、そうでした!

 出掛ける前に冷蔵庫、見ておいてくださいね! 二日酔いはもうすぐ直ると思うのでもう少し待っててください!」


「ああ…」


 寝ている間か、起きる前かは分からないが二日酔いの処置はしてくれていたらしい。

 なんかだんだん楽になってきた。よし、早く支度するか。


「…基矢さん。」


「…なんだ?」


「その、選んだことに、後悔して…

 …いえ、なんでもないです! 先に食べてますね!」


 そう言うと、リリナは一度部屋に出て、ジーナ、マヤと一緒に全員分の朝食が載った盆を持ってきた。

 その邪魔にならないよう、少し離れた場所で着替えをする。


「……しょうがないことだと思ってるけど、多分、してると思う。」


「…? 何か言いましたか?」


「いや、早く学校に行かなきゃなってさ。」







 出掛ける直前。

 リリナに言われた通り、冷蔵庫を開けてみると4つの箱が置いてあった。

 一つはマヤ、昨日俺たちには渡していなかったからだろう。『遅れてゴメン、ハッピーバレンタイン!』と書かれたメッセージカードが添えられている。

 次はジーナ。昨日は俺だけ食べられなかったからだろう。『マナ用』と書かれたカードと一緒だ。意匠がマヤのカードと同じなので、恐らくマヤに分けてもらったのだろう。

 そして、残りの二つは…


『絶対に諦めないから! 詞亜』


『今までも、これからも、ずっと感謝しつづけます! リリナ』


「……二つも作ってたのかよ、あの二人は。」


 リリナと詞亜のものだ。どちらも本命だ。

 今食べることは出来ないが、帰りにゆっくりいただくことにしよう。


「……じゃあ…」


 メモ帳の一ページを破りとり、メッセージを書き込む。

 その後、野菜室の奥、野菜をかき分け、隠していた箱を手に取って目立つ場所に置き直す。メモを添える事も忘れない。


「…俺も行くか!」


 冷蔵庫を閉じ、戸締りをした後リリナを追いかける。

 冷たい風は、まだ冬の匂いを残していた。





『本命はリリナに。 基矢』






異世界のなんでもありの日常で主人公が男の娘の小説をダラダラ書いていたい。

五作目はそれかな…

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