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元〇〇と呼ばないで!  作者: じりゅー
元最終章 夜明け
109/112

元百九話 謎会話だと思ってたら普通だった

難産急ピッチ竜頭蛇尾

 

「12がつだー!」


「夏だー!」


「海デース!」


 ニアー、ジーナ、レイティのジェットストリーム謎会話を聞きながら車を降りる。南半球(ここ)では常識だけど。

 今日は翌日でクリスマスイブ。この日はレール家、宇露家では毎年海に出かけるのが恒例となっている。

 今回はそれに加えて居候三人と詞亜、ニアーの5人を加えたパーティで海に来たのだ。

 レール家から徒歩20分程。散歩でも行ける距離だが、楽だからという理由でわざわざレール家の車を総動員させてここまで来た。

 徒歩の方が良かったんじゃないかと思わなくもないがあんなあっついコンクリートロードなんて歩きたくないので何にも言わない。なんも言えねえ。


「せっかく海に来たんですし、海に行きましょうよ!」


「…ん?

 来てるだろ。」


 一瞬分からなかったが明らかに日本語がおかしいことに気付いた。こっちの方が謎会話。


「そうじゃなくて、海で泳ごうってことじゃない?」


「ああ、それは分かってる。分かってるけど…なんか日本語が…

 …でも俺、水着なんて買ってないし持ってないぞ。高校の授業にプールは無かったし。」


「気付かなかったんですか?貴方の家にある水着、制服と同じように女性用に変わっていたはずですよ?

 だから持ってはいるはずです。」


「え?そうだったのか?」


 水着なんてチェックしなかったから知らなかった。

 チェックしなくてよかったような気もするけど。


「でも、恐らく一年前の水着ではマナさんの豊満なそれを収めることは出来ないでしょうね…」


 ギン!と鋭い二つの視線が胸に突き刺さる。心臓刺すの止めて死んじゃう。


「…じゃあ、見てても見てなくても一緒だったわけか。」


 ちょっとホッとした。


「で・す・が。」


 おや、わずかな安心が逃げてしまった。


「こんなこともあろうかと買っておいたんですよ!

 これがマナさんのおニューの水着です!(にゅう)だけに!」


 リリナが得意げな顔で掲げたのは勝利のフラッグなどではなく綻び一つ無いまごうことなき新品の水着。

 所謂ビキニという奴である。上下のサイズが超アンバランスだ。紐長え。

 アンバランスな体型を持ってしまったせいか…って何言ってんだ俺。


「遊園地で脱がせた時ブラのサイズを覚えていたのは正解でした!」


「あ、おいちょっと待てバカそんなこと言ったら」

「マナ?」

「リリナ?」


 突如黒いオーラが二つ出現し、俺とリリナに向かう。

 壁より頼れる絶壁幼女助け…あ、海に夢中だ。帰って来てカムバック!


「遊園地で脱がせた?」


「基矢をデスよね?」


「水のジェットコースターでバシャーンしたせいだから!決して愛の営み的ないかがわしい何かじゃないから!」


「な、何言ってるのよバカ!」


「そうデス!そこまで言わなくても良かったんデス!」


 やべぇ、自爆した。

 二つの黒いオーラが霧散し、二つの真っ赤な顔になる。多分俺も似たような顔になっているだろう。


「それよりもマナさん。早くコレ着てくださいよ。私達も一緒に着替えますから。なんなら着替えさせてあげますから。」


「着ねーしいらねーよ!

 だ、大体お前らが着替えてたら入りずらいじゃん…

 それに、俺カナヅチだって知ってるだろ?」


 俺は元々泳げない。

 男時代、夏は友達にプールに誘われても家で一人寂しくゲームしていた物だ。

 去年までも海には入らないで水着に着替えただけだったしな。海に入らない基矢は両家の名物になっていたものだ。

 まあ、レイティや両家の親と一緒にビーチボールしてたから寂しくはなかったけど。


「でも、水着は着てたはずデス。」


「着なくていい。」


「せっかく海に来たんだし、着替えたら?」


「嫌だ。

 っていうか、良いのか詞亜。俺が水着なんて着たらお前…」


「…何よ?

 どこを見て言ってるのよ!私に同情でもしてるつもり!?」


「いや、同情じゃなくて気遣いなんだけど…配慮なんだけど…」


「マナ、そんな気遣い女の子はされたくないんデスよ…」


「だって目に見えてるんだよ!俺が水着に着替えたら、俺の胸を見た詞亜とニアーちゃんがものっそい不機嫌になって俺が萎縮してパラソルの隅で縮こまって動けなくなるのが!

 あと純粋に水着着たくない!そんな恰好できるか!」


「まあまあ、良いじゃないですか。それ多分一時的な奴でしょうし。」


「だから着たくないって言ってるだろ!」


「基矢、良いじゃない水着くらい。」


 ここで意外な人がリリナ達を援護する。

 母さんだ。


「良くねーよ!母さんだって男用の水着なんて着たくないだろ!?」


「それとこれとは別じゃない?」


「嫌悪感は似たようなもんだろ!」


「えー…だって今、基矢女の子だし。娘だし。」


「息子だ!」


「母親より発育が良いなんて…生意気な娘ね。」


 か、母さんまで嫉妬するのか…

 そんなにいいもんじゃないぞコレ。重いし見られるし。


「か、母さん。娘…じゃなくて息子にしていい目じゃないぞ。なんで据わってんの?スタンダッププリーズ!」


「自分の子供のお着替えの手伝いなんて何年ぶりかしら。」


「母上様、御供します。」


「おばさん、私もやる。」


「もちろん、私もデス!」


「お、おいちょっと待って。マジで、ホントに、な?

 え?待って?冗談じゃないんだけど。お願いします。お放しください。自分で着替えますから引っ張らないでください。

 あ、ちょっと更衣室に着くなり脱がせてるの止めて。

 え?放したって?自分で着替えろって?その前に俺の服返して。逃げない逃げない。俺二言言わないから。

 あ、ちょっと待って。そこはダメだから。まだリリナにしか見せてああああああああああ!!」







 …酷い辱めを受けた。

 なんで皆揉むの?もっとおっきくなっちゃうから止めてくんないかな。俺もうこれ以上おっきくなってほしくないんだい。

 やや死んだ目で近くに生えていた木の影から海を眺めているとバッグに入っていたスマホが鳴った。達治だ。


『基矢、そっちはどうだ?夜か?』


「お前…オーストラリアと日本の緯度考えろよ。

 時差ほぼ無いぞ。そっちと同じ真昼間だよ。」


『…分かってるってのそんくらい。ジョークだジョーク。』


「じゃあ今の間を四文字で説明しろ。」


『マジかよ。』


「きっちり四文字だな。」


『で、今何やってるんだ?宿題とかつまんねーこと言うなよ?』


「宿題じゃない…」


『…さっきから思ってたけど、お前、なんかテンション低いな。』


「まあな…」


 散々胸揉まれた上で着たくも無い水着を着せられてテンションを上げられる訳が無い。

 ダダ下がりんぐである。


『…そう言えば波みたいな音してるけど、海にでもいるのか?この寒い時に。』


「バーカ、南半球は夏なんだよ…」


『あ、そう言えばオーストラリアだったなお前…

 …待てよ、海ってことは水着着てるのか?』


 …こういう時だけ勘のいい達治は嫌いだよ。


「…着せられた。」


『え?マジで?

 後で写真撮って送ってくれ!』


「その提案、俺がちょっとでも了承すると思ったか?」


『いや、さっぱり。

 でも、言うだけ言ってみれば何か変わるかもしれないと思ってさ。』


「変わってたまるか。」


『…ん?なんか送られてきたな。

 ……おお!』


「どうした?」


『なんていうか…一部だけダイナマイトだな!』


「あ!?」


 もしやと思い真っ先にリリナを見る。他にこんなことをする奴がいるとは思えない。というか思いたくない。

 スマホを俺に向けて親指を立てていた。


「……あいつ、後で覚えてろよ…二分たっぷり締めてやる。

 達治、今すぐそれ消せ。」


『えぇ~…』


「消せ!」


『…基矢。

 お前はせっかく見つけたエロ画像を知り合いに言われたからって理由で消去出来るのか?』


「しなきゃお前の腕をやってやる!」


『質問に答えろ!』


「質問に答えてないのはお前だ!

 お前の質問の答えだけど、削除するに決まってるだろ!知り合いのエロ画像とか見てて恥ずかしいわ!」


『それが詞亜とかリリナさんのでもか!?』


「あ、当たり前だ馬鹿野郎!」


 何動揺してんだ俺の馬鹿野郎!

 野郎……ハッ!?野郎で合ってんだよ!何言ってんだ俺の馬鹿!!


『じゃ、今から送ってやる。日本に帰ってくるまでに消してるかどうか試すぞ。』


「は!?え!?」


 なんで達治がんなもん持ってるんだ!?

 まさか盗撮!?ついにやらかしちゃったかこのセクハラ野郎!?

 …でも、もし送られてきても俺がその画像持ってるのは達治しか知らないんだよな…


『……冗談に決まってるだろ。そんなの持ってるわけあるか。』


「こ、コイツ…」


 シャレにならない冗談を…


『さて、改めて訊こうか。

 もし俺がさっき2人の画像を送ってたらすぐに消してたか?』


「……」


 ちょっとだけ取っておこうかなーなんて思ってしまったので否定しきれない。

 これが狙いかまんまとはまっちまったよこの野郎。帰ったら達治の写真フォーマットしとこ。


『あ、パソコンにバックアップとか取っておこうかな…』


「…あ、そうか。

 データが残ってても見る人が居なきゃいいんだ…」


『そういうホラーな逆転の発想止めてくれ。殺す気か。』


「いや、ちょっとたてなくすればいいかなって。そうすれば見る気も無くなるんじゃないかなって。」


『どこを!?どっちも止めてくれ!なあ頼』


 ぶちっと電話を切る。

 消してなかったら一生たてなくしてやる。覚悟しとけ。

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