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元〇〇と呼ばないで!  作者: じりゅー
元最終章 夜明け
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元百八話 相棒より頼れると思ったら裏切られた

 三人に弁解した後、詞亜、リリナ、ジーナ、マヤの四人の紹介をニアーちゃんに行う。

 当然元女神と宇宙人及びそれに作られたコピー人間については言及しない。俺の姿だけでも処理しきれてない…っていうか信じきれてないし。

 後、ニアーちゃんからレイティのじーちゃんに宇宙人のことを知られたくない。滞在中ずっとじーちゃんがジーナと一緒に部屋に閉じこもりかねない。


「ニアーちゃん、何して遊ぶ?」


「おままごとしよ!えっとー、前はもんすたーくれーまーとてんちょうさんでやったんだよね!」


 喧嘩の原因判明。

 マジでやったのそれ?そりゃそのうち本音が出て喧嘩になるよな…


「きょうはひとりのおとこをめぐるおんなたちでやろうよ!あおいひとがそのさいてーおとこやくね!」


「良いよ!やるからには精一杯演じて見せるよ!」


 やべえ、なんか心が痛い。まるで幼女にさいてーと言われた気分だ。

 しかし、俺…じゃない。男役がジーナか。やっぱ信じてられてないんだな。男役だったら胃が潰れてたかもしれないからいいんだけど。

 …しっかし、じょうちゃんしかりニアーちゃんしかりおままごとのチョイスおかしくないかい?

 何?最近の小学生ドロドロの昼ドラでも観てるの?テレビで修羅場とか観ちゃってる系?


「はやくえらびなさいよ!このゆうじゅーふだんおとこ!」


 罵倒から始まるおままごと。俺が言われたわけじゃないのにキツイ。


「お、俺は優柔不断じゃねえ!ちょっと選べないだけだ!」


 うん、最低だな。

 でもなんだろう。今のジーナを見てるとまるで鏡を見ているような錯覚に陥る。ちょっと声高めにしてんのなんでかね?男役なんだから低めにすればいいのに。


「そうよそうよ!いざってなったらまた前みたいに逃げるんでしょ!?」


「そうですよ!分からないとか言ってごまかしてるんじゃないですよ!」


「年下でもチャンスはあるんデスよね!?」


 なんか詞亜もリリナもレイティもノリノリだな。おかげでかなりドロドロな愛憎劇になってらっしゃる。

 俺はなんか参加できないけど。ジーナっていうか架空の男に言われてるはずなのに何故俺の心がえぐられているんだ…


「う、うるさい!

 お前らの好意に気付くのが遅れたことは謝る!でも、俺がどう思ってるかわかんないんだよ!

 中途半端な気持ちでお前らと付き合いたくなんて無いし、そんな気持ちで選ばなかった奴を傷つけたくないんだ!」


 なんか最低男に共感できてきた。涙が出そうだ。胸が苦しい。


「今日こそは逃がさないから!」


「山猫ではありませんが、狙った獲物は逃しません!分かりみに溢れさせてあげます!」


「貴方はロリコンっぽいから私をそういう目で見てるんデスよね!」


 あれ?なんでジーナじゃなくて俺の近くに来てるの?さっきまでジーナの方に行ってたよね?お前らおままごとは?

 あ、追い詰めるの止めてください。後ろ壁なんだけど。ビハインドウォールなんだけど。相棒、背中は任せたぜ状態なんだけど。

 (相棒)のせいで逃げられない。俺を助けたくば回転でもしてみやがれ。


「ちょっと!おとこやくはあおいひとでしょ!」


 ニアーちゃんに言われてようやく本来の対象を思い出したらしい三人は、ハッとしてジーナに向き直る。

 助かったぜニアーちゃん…こんな頼りない相棒よりも頼れる。

 壁より頼れる絶壁幼女ってか?


「…やっぱり、おとこやくそいつにへんこうして。わたしもやる。」


 おおっと、読心術からの裏切りは止めてくれ。ほんの出来心だったんだ。それにまだまだ成長途中だからしょうがないんだよ。確かにアルバムにあった同じ年くらいの頃の俺の写真よりは無いかもしれないけど希望はまだあるんだから。


「にせもとやのばかぁ!」


 今度は心を読んでくれなかったらしい。偽基矢って…

 名無しの最低男(ネームレス)基矢()に進化してしまった。もう俺打つ手ないんだけど。うずくまって耳塞ぐくらいしかできないんだけど。


「なんでカラオケの時察し悪かったのよ!」


「何かにつけて元女神と呼ぶのは止めて下さい!記憶喪失の時にもそう呼びましたよね!?」


「あんまり会えないのなんとかできないんデスか!?遠距離恋愛にも飽きてきたデス!!」


「ぜっぺきとかきぼうはあるとかいわ…おもわないでよ!きにしてるんだよ!?」


 四人の剣幕はもはやごっこ遊びではない。

 確実に本音が混ざっている。というかむき出しだ。

 っていうかさっきも心読んでたのか。ニアーちゃん、もしかしてエスパー?


「あー!なんにもきこえねー!やっべー!きゅーになんちょーになっちゃったー!これで俺もしゅじんこーだー!」


「何訳わかんない事言ってるのよ!」


「その棒読みはわざとですか!?」


「聞こえないフリバレバレデスよ!」


 でしょうね。自分でも惚れ惚れする程の棒読みだった。ちなみに無意識である。


「さっきからむねのはなしばっかりして!」


「してない。してるのニアーちゃんだから。」


「うるさい!じぶんがおっきいからよゆうなの!?

 バーカバーカ!たれちゃえ!」


「あの、ちょっとリアルな事言うの止めてくれません?すっごく傷つくんで…」


 俺の心はトマトのように痛んだ。なんでトマトかは知らない。

 …塩って痛むっけ?さっき盛り塩メンタルとか考えてたけど。


「そーよそーよ!巨乳なんて皆垂れちゃえばいいんだわ!」


 詞亜さんそう言えば貧乳ネタで鴨木さんと意気投合してましたよね。

 その敵意俺に向けるの止めて。俺だって欲しくて持ってるわけじゃ…敵意増すの止めて。あとなんで皆読心術持ってるの?


「しあ…きょうはいっしょにおふろはいろ?」


 詞亜と風呂入って何する気だニアーちゃん。もしかして比べるのか?


「親御さんの許可が降りたらね。」


「はーい!」


 あれ?これもしかしてニアーちゃんも泊まるのか?布団大丈夫かな…いや、お隣さんだし歩いて帰れるか。


「基矢、そろそろ晩御飯だけど…宿題は進んだ?」


 ………ああ、そう言えばさっきまで宿題やってたんだった。懲役二時間の刑忘れてた。


「モア姉。」


「何?」


 首に腕を掛けるモア姉に命乞い(弁解)を試みる。


「許して燻製いあああああああああああああああ!!」


「ヒヤシンスじゃないんですか?」


 ヒヤシンスどっから出てきたんだよ!






 夕食の時間は家族(+α)の団欒を交えて和やかに過ぎていった。

 リリナもジーナもマヤも、ついでに詞亜もすっかりレール家と宇露家に馴染んだようだった。

 良かった良かった…俺の友達のせいで険悪になったら罪悪感で心が吹き飛ぶからな。


「で、基矢。」


「なんだ?」


 俺の母さんと話していたレイティの母親がニヤニヤした顔を向けてきた。嫌な予感がする。


「誰が一番なの?」


 その台詞が出た瞬間。

 凍り付いた空気が俺の周りに集約し、心理的な重みとなって喉を枯らした。

 下手な答えを言えば八つ裂き程度じゃすまない…主に心が。

 とは言え、こういう場でテキトーに選べば誰も幸せになれない。

 俺の友達のせいで険悪になってしまった。心が吹き飛びそう。罪悪感とは別の要因で。


「……それをこの場で答えさせるのって、無粋じゃないか?

 ほら、そう言うのは2人っきりのロマンチックな夜にでも…」


「とんだロマンチストね、そんなこと言ってると一生答えられないよ?」


 その辺は問題無い。多分一生答えないから。

 ただ…もしそれを言えば。


(基矢…)


(分かってますよね…)


(この際はっきりしてほしいデス…)


(もちろんわたしだよね?)


 それを言えば、俺は消し飛ぶ。

 心が、じゃなくて体が。物理的に。

 そう、彼女たちは言っている。視線に言葉を乗せて言っている。サルでもわかる視線言語。


「え、えっと…選べないなー…なんちゃっ…」


 プレッシャーに押しつぶされて言葉が続かなくなる。おどけることも許されない。


「あ、えっと…ノーコメントでお願いします。」


「…悪かったね。」


 憐憫の視線なんか要らないからあの四人なんとかして。

 同情するなら仲裁してくれ!

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