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元〇〇と呼ばないで!  作者: じりゅー
元一章 夏休みの終わりの大事件
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元一話 寝ていたら不法侵入された上に性別が変わっていた

別の連載ほったらかして連載を投稿。じりゅーの心は秋の空。

二本同時とか不安しかない。

『貴方のお名前はなんですか?』


 頭に響く声。

 目を開けてみるとカーテンの隙間からうっすらと日の光が漏れていた。

 時計を見ると寝てから一時間ほどしか経っていなかった。何故こんな時間に起きたのだろうか。


宇露うろ基矢もとや…」


 頭に響いた質問に答える。


『基矢さんですか…これからよろしくお願いします。』


 再び眠気が意識を夢の世界に引きずっていく。

 何がよろしくなのかと思う前に二度寝した。







「ん~…」


 まだ眠い。

 寝ぼけ眼を擦りもせずに時計を見ると、既に10時を回っていた。

 親元を離れての一人暮らし生活は今月で4ヵ月目を迎える。慣れてきたが、起こす人がいないというのはまだ少し寂しい。

 こんな時間だ、平日なら大遅刻で即刻学校に電話を入れなければならないが、あと一週間は夏休みが続く。

 バイトも今日のシフトは午後からなのでまだ安心だ。

 昨夜の記憶が断片的に蘇る。

 昨日は宿題をようやっと終わらせ、それに浮かれて日付が変わるまでゲームをして…

 あ~結局あのボス倒せなかったんだよな。カロフレでも食いながら続きでもするか…

 体を起こすと、妙に胸のあたりが重い気がした。

 寝ぼけているだけだろうと思いキッチンへ向かう。

 立った瞬間足に妙な違和感が走ったがそれも無視した。寝ぼけているだけだろう。

 あと、ズボンがずり落ちた気がした。寝ぼけているだけだろう。

 台所の扉を開ける。


「あ、おはようございます!」


 寝ぼけているだけだろう。

 むしろ夢の中だろう。

 もう一度眠れば起きれるのだろうか。


「おはよう…ございます…」


 初対面なのにございますをつけないのはおかしいよなと思い後付け感たっぷりで言う。


「おや、どちらまでいかれるのですか?」


「寝る…」


 と言ってキッチンの扉を閉める。


「せっかくの朝食が冷めてしまいますよー!」


 無視無視、寝ぼけてる寝ぼけてる…

 ベッドに戻りそっと潜り込む。まだぬくい…


「ほら!起きてください!」


 温もりが消えた。

 代わりにエアコンの冷たい風が腕と脚をなでる。ちょっと気持ちいい。

 って、消し忘れてたのか…通りで汗をかいてなかったわけだ。


「早く起きないとお尻ぺんぺんですよ!」


「ガキか…起きるよ…」


 むしろ起きようとしていたところなんだが。

 まあもっと寝ろと言うならそれもいいだろう。バイトに間に合うようにアラームはセットしてるし…

 ………


「いてっ。」


 額にやや強い衝撃が走る。

 どうやらチョップされたらしい。


「ほら、今眠りかけましたよね?本当に」

「止めてくれ。起きてる起きてる。」


 …最近の夢は痛覚もあるのか。

 それに、妙に生々しい。俺の過ぎた想像力の産物なのだろうか。

 いや違う。ちょっと待て。

 段々目が覚めてきて認識、いや、否応なしに自覚させられる異様な状況。

 ここは俺の部屋、それは良い。

 この体の違和感、これはなんだ?

 キッチンに居た謎の金髪美人、あれは誰だ?

 ずり落ちたズボンとパンツ…何故落ちた?

 足元がふらつく。状況の現実感のなさに脳が悲鳴を上げている。

 脚に手を付けようと下を見た時、脚が見えなかった。


 ――何故なら、そこに大きなふくらみがあったからだ。


 とうとう寝ぼけた頭に突飛すぎる状況が処理しきれなくなり、その場に倒れる。

 訳が分からない…







「……ん…?」


 寝ぼけた眼を擦りもせずに時計を見ると、既に11時を回っていた。

 今の夢はなんだったのだろうか。

 ぼんやりと思い出される夢の中の光景。

 体の違和感、謎の美人、ズボン、パンツ…そして妙な生々しさ。あれはなんだったのだろうか。

 ――夢のことなんて考えても仕方ないか…

 そう思い、ベッドから身を起こす。

 …胸のあたりが重い。気のせいだろう。


「朝ごはん、冷めちゃいましたよ?」


 謎の美人、気のせいだろう。


「あ、これどうぞ。」


 ……手鏡型のテレビだろうか。

 テレビ(?)には寝ぼけ眼の銀髪黒目の女の子が移っている。

 銀髪は至るところが跳ね、やや台無しになっているがそれはそれで画になっていなくもない。


「有機ELってやつか…」


 手鏡型超薄型テレビを手に取り呟く。

 それよりもなんか声が高い。裏返ったのだろうか。


「現実から目を背けてはいけません。

 それは鏡です、現実なんです。」


 ………

 テレビに映る少女の顔が青くなっていく。

 後ろにあるカーテンの柄とその揺らめきは俺の後ろのそれとリンクしているように見えてきた。

 手にあるテレビを放り投げ、洗面台に急ぐ。

 ……洗面台に届かない。

 机の椅子を運んできて乗り、大きな鏡を覗く。


 そこには先程の少女が、俺が昨日着ていたパジャマを着て、青い顔をしながら肩で息をしていた。


「……」


 口がパクパクと動く。


「どうですか?現実を見た気分は。」


 ぬっと鏡に現れた謎の美人を見てビクリと肩を跳ね上げる。

 後ろにいる彼女が恐ろしく感じた。ホラーゲームで逃げていた者が突然現れた時と同じような感じだった。


「…………」


「おっと。」


 またふらつき、椅子から転げ落ちそうなところを助けられる。

 助けられたはずだというのに恐怖は抜けなかった。

 むしろ、恐怖の対象から触られていると思うと更に身が縮こまるような気がした。







「あー、その、すみません。

 まさかこんなに怖がられるとは…」


 部屋の隅で震える俺の前にいる謎の美女。

 彼女は頭を掻きながら謝った。


「いい、一体何が起こった?どうしてお前はそこに居る?」


「順を追って説明します。

 ですがその前に…深呼吸でもして落ち着いてください。

 続けてください、すー…はー…すー…」


「はー…」


 少しは落ち着いた。


「では、落ち着いたところで。

 私はとある世界の女神でした。

 つい数日前、世代交代ということで新しい女神に神の業務の引き継ぎが終わったので、自由気ままにチートライフでも送ろうと思ったのですが…」


「ちょっと待て、もう意味が分からない。

 何?お前女神なの?神の業務ってなんだ?あとチートライフについて詳しく。」


 ファンタジーチックな単語を連発してきた。

 寝ぼけパニックな頭には厳しい。


「あーそうですね。

 まず、私は女神リリナスとして世界の管理業務をしてました。

 チートライフは…まあ、残ってる神の力を使ってらくちんな生活をしようと。」


「ふむ、続けて。」


「しかし、私は娯楽にあふれたこの世界を知ってしまったのです。

 特にJKとか言う存在は自由なのだと聞きました。

 その中でも特に評判と言われるこのあたりの高校に通い、JKとやらになってやろうと思ったのですが…」


「ですがですが?」


「近くで一番住みよい、というか高校生生活を謳歌できそうな住まいがこのアパートだったんですよね。」


「……生憎ここは満員だ。」


「ご明察。

 なので、相部屋でもいいからと思って調べたんですよ。

 そしたらJKはおらず、高校生は男子だけ、おまけに女性は主婦ぐらいしかいません。

 これでは夜更かししながらのガールズトークができません。」


「……」


「ではどうするかと考えて、思いついたんですよ。

 高校生の誰かを女性にすれば、ガールズトークも出来るし襲われずに済むと」

「馬鹿者。」


 馬鹿じゃねーのコイツ。

 なんで妥協してもっと他の住処探すとかしなかったんだ。


「ちゃんと気付きましたよ!付け焼刃も無いTS娘にガールズトークが出来るわけないって!」


 そっちじゃねーよ!

 倫理面とかも考えやがれ!


「ただ、神の力で私の戸籍を用意して、ついでに最初からこの部屋に私が居たと大家さんに認識させて。

 後、貴方を女性にして戸籍と周囲を元々女性だったという認識に変えようとしてその途中で神の力が無くなった後だったんですけどね!」


「手遅れじゃねーかあああああああああああああああああああ!!」


 しかも認識の変更途中で終わってるじゃねーか!

 神の力もう無いってことはどうせあれだろ!?認識の変更の続きどころか俺を男に戻すことも出来ねーってことだろ!?


「お、落ち着いてください!女の子が出す声じゃぐぇっ」

「おまえも女の子が出さないような声をださせてやろうかぁぁぁあ!?」


「ちょっ、見た目に反してなんて力を…」


「こんな見た目にしたのはお前だあああああああああああ!!」


 力はなんかそのままだったらしい。

 自称元女神が軽く窒息しかけるまでその胸倉をつかみ続けた。

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