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155 契約内容を解明します


 モーノさんが旅立ち、フラウラの街は少し寂しくなります。

 彼はターリア姫を傷つけた事を気にしているようで、その贖罪の為にも無理な修行をするつもりでした。

 心配ですが、私には何も出来ません。ただ、笑顔で見送る。それだけですよ。


 モーノさんと入れ替わりで待ちに来たのが、二番の転生者であるジルさん。彼は生産チートなので、錬金術師によって船を作ってくれます。

 そして、その船で目指すのは魔王さんのお城! 出来れば、話し合いで解決したいんですけどねー。

 私はエンターテイナー! 人を楽しませるのが私のお仕事ですから!


「これにてショーダウン。皆さん、お付き合いありがとうございました!」


 フラウラの中央広間にて、私は得意の人形劇を披露します。戦いの描写はなく、とにかくハッピーなお話をチョイスしました。

 皆さん、王都が呪われたことで不安になってますからね。クレアス国に敗北した形ですし、当然魔王さんの存在も怖いでしょう。

 亜人の皆さんの風当たりが一層強くなるのが心配です。皆さん仲良くしてほしいんですけどねー。


 目立つ事をしていたので、当然知り合いとも遭遇します。劇が終わった後、拍手をしながら一人の女性が歩いてきました。


「パチパチパチ、こんにちはテトラさん。お仕事ですか?」

「こんにちはー、お仕事というよりボランティアです。エラさんこそ、街を歩いて大丈夫なんですか?」


 ハイリンヒ王子の婚約者、エラ・サンドリオンさんです。

 彼女は国家反逆の疑いがかけられ捕縛命令が出されていました。街中を歩くのは当然危険です。

 ですが、今は王子と商業ギルドが国家運営を行ってますからね。エラさんはその事について話していきます。


「はい。国王様がお亡くなりになり、捕縛命令も解かれましたから。護衛の方もいるので安心です」

「この巨人を討ち取ったアロンソ・キハーノがいる限り! エラ殿下には指一本触れさせませんぞ!」


 またこの人かあ……心配だ……すげー心配だ……

 あの後、モニア姫が逃げ出したのでアロンソさんは草原まで追いかけました。当然トリシュさんの強化魔法が切れますが、ペンタクルさんの空間魔法によって敵は移動します。

 結局、残された彼は周囲をウロウロし、茨の呪いから逃れたようですね。ものすげー悪運でした。

 天然二人がそろうと突っ込み不在で怖いですね。ですが、エラさんは超真面目。どうやら買い物の途中のようでした。


「ハイリンヒ様はお忙しいですし、私も出来ることをしないと……ターリアさんは今も呪いと戦っているのですから」


 戦うことの出来ないエラさんはもどかしいでしょうね。いても立っても居られない気持ちは分かります。

 何よりターリア姫は彼女にとって義理の妹。茨の中で眠り続けているというのは気がきではないでしょう。


「ターリアさん、心配ですね……」

「大丈夫ですよ。彼女は強いです」


 聖国の姫君は悪魔なんかに負けていません。むしろ、その計画を阻止したとも考えられます。


「ベリアル卿は混沌を求めて悪魔契約を行いました。ですが、結果として発動されたのは封印魔法。ターリア姫は状況の悪化を防いだんです!」

「では、なおさら私も頑張らなければ! 一緒に国を守ります!」


 私の言葉を聞き、エラさんも元気が出たようですね。流石に張り切って無茶をされては困りますが、ヘコんでいる彼女は見たくありません。

 また、一緒に話を聞いていたアロンソさんも元気を貰ったようです。主君を失ったのは辛いようですが、それでも彼は騎士として振る舞いました。


「エラ殿下、素晴らしい心掛けですな! 吾輩も守る城は近寄れぬが、解呪を信じて精進を続ける所存!」

「アロンソさんその調子です!」


 バカっぽい会話だなあ……ですがまあ、プラス思考は良いことです!

 いつ王都の封印が解けるかは分かりませんが、フラウラの皆さんには頑張ってほしいですね。

 今、聖国の中心はここです。他の街もここを頼りにするでしょう。

 幸い、商業の方はギルドの存在でフル稼働しています。あとは周辺国が攻めてこないのを祈るだけでした。










 私がいたところで戦力にならないので、ご主人様の家へと戻ります。

 やっぱり、薄暗くて巨大芋虫が群生するこの森は落ち着きますねー。今度はかなりの長旅になると思いますから、今のうちにマイホームを堪能させてもらいますよ。

 すでにご主人様とバアル様は帰っていて、二人とも好き勝手にやっています。ご主人様は人形作りに没頭していますし、バアル様も雨雲を浮かべて魔法の練習をしていました。

 王都が呪われたというのに暢気なものです。まあ、人同士のいざこざなんて神や悪魔には関係ありませんよね。

 まあ、でも……


「ベリアル卿が好き勝手やったのはご主人様が監視を怠ったせいですし、異世界転生者を生んだのはバアル様ですからね。少しは気にしてくださいね?」

「む……」

「うぬ……」


 そもそもの元凶はこの二人ですからね? 直接関係はありませんが、知らんぷりはしないでくださいね?

 まあ、一番悪いのは圧倒的にベリアル卿なんですけども。モーノさんに叩き切られ、彼は契約者のエンフィールド卿と共に姿を消しました。

 力の異世界転生者による一撃です。無傷ってわけでは無さそうですし、当分は動けないと思っていいでしょう。

 ですが、やっぱり動きがないのは不気味です。あれで終わるとはとても思いませんが……

 まあ、考えてても仕方ないので人形劇の備品を作ります。あくまでも私はエンターテイナー、本職を忘れてはいけません。



 しばらくの間、ご主人様から教わったりして人形を作ります。

 指人形を作っていた時と比べて、かなり成長したと思ってますよ。まあ、時々無茶をしますけど基本は人形をいじってますからね。人形が人形を動かすのも皮肉なものですけどー。

 初めは自分の事すら分かりませんでしたが、今は私生んだ張本人であるバアル様がいます。それでも覚醒や本当の名前やら、まだまだ謎は残っていました。


「バアルさまー。本当に流星のコッペリアについて何も知らないんですか? 前の戦いではペンタクルさん……いえ、錫杖のファントムさんが暴走していたみたいですし。正直怖いんですけどー」

「本当にわしは知らん! ベリアルの奴から貰った魂を五つに分け、人型の器に注ぎ込んだ。それ以上でも以下でもないのじゃ」


 ピーター先生……いえ、大天使ミカエル様は言いました。『あの力はお前が元々持っているもの、正しくは今作った』と……

 流星のコッペリアとは理想の自分であり、自分自身を信じた真実の姿。モーノさんは自分の存在を疑っていますし、現状の力に満足もしていた。だから、一人だけ覚醒しなかったんです。

 そして、それらはバアル様の与えた肉体ではなく、魂に刻み込まれていた。やっぱり、私たちの転生前である少女が鍵でしょうね。


「じゃあ、バアル様。私たちの転生前の人ってどんな人でした? 名前も知らないんですけど」

白鳥しらとりいずみという名じゃ。転生前とは言え全くの別人、今となってはその名も意味を成さないじゃろう。ベリアルから聞いた話じゃが、あ奴は天使の声を聞く預言者でのう。所謂、大いなる主に組する者じゃった」


 ああ、転生前から普通じゃなかったんですね。つまり、最初からアークエンジェルさまと知り合いだったのかもしれません。

 ですが、泉さんはベリアル卿と悪魔契約を交わし、その魂を捧げました。結果、魂はバアル様の手に渡ったと……


 待ってください。

 彼女は契約によって魂を捧げ、代わりに何を得たのですか?

 自分の全てを捨ててまで手に入れたかったもの……それは……


「チート……そうか……あの目の紋章は……」


 たぶん、悪魔ベリアルとの契約時に手にしたのが正真正銘のチート。私たちの言う覚醒で間違いありません!

 私たちの目に浮かび上がる紋章。スペード、ダイヤ、ハート、クローバー、そしてスター。これらは悪魔契約の紋章に近いものだったんだ。

 ですが、おかしいですね。ベリアル卿と契約したスピルさんやエンフィールド卿には炎の紋章が刻まれていました。私たちのものとは全く違います。


「ねえ、ご主人様。私たちの目に浮かぶ紋章って悪魔契約に近いですよね。もしかして、転生前である泉さんがベリアル卿と契約して手に入れた力なのかも」

「あれは悪魔の力ではない。私やアスタロトですら解明不能なのだからな。もし、ベリアルとの契約時に手に入ったものならば、奴は道を作っただけという可能性はある」

「道……?」


 つまり、魂を捧げて道を繋げてもらった? 自分の存在を消してまで、何所に行こうというのかね!

 全く理解できませんよ! そうまでしないと入れない場所なんてあるわけないでしょー。そんな場所に心当たりなんて……


 あった。


「あの……ご主人様……神の居住って知ってますか? 時計塔の間、森聖域の間、氷聖堂の間、煉獄牢の間……」

「話には聞いたことはあるが……大いなる主の住まう城に足を踏み入れる者、それはアークエンジェルだけと決まっているのでな。ところでテトラよ。なぜ知っている?」



 あーやべー……

 たぶん泉さん、ベリアル卿と契約して神の居住に侵入したわ……



「あの……なんか夢っぽかったから話しませんでしたけど、たぶん私たち入れる……というより、何度も入ってる……」

「な……なななな何じゃとォォォ!」

「そうか……そうか…………それは大変だだだだだ」


 バアル様とご主人様、めっちゃ動揺してるー! いつも無表情のご主人様が明らかに焦ってるー!

 ごめんなさい! そんなに凄いことだって知らなかったんですー! 物好きな天使様に付きまとわれていると思ってたんですー!

 え……じゃあ私たちの覚醒って……この眼の紋章って……



 チート……

 才能……

 理想の自分……


 人が持つ無限の可能性……

 異世界無双は夢を叶える力……


 それ即ち異世界無双を超えた異世界無双……



 異世界夢想……



「テトラよ。お前たちの眼に刻まれた紋章、それは主の加護ではないだろうか……? お前たちは神の居住にて、彼の者と出会っているのでは……?」


 私たちが……主から加護を……?

 泉さんは元々預言者だった。ベリアル卿との契約によって神の居住へ入る権利を得た。

 何度もアークエンジェルと接触している。彼らは友好的で、私たちをサポートするよう立ち回っている。


 アークエンジェルたちは私たちの覚醒を知っている。彼らは私たちに大きな期待をしている。

 各部屋にて四大属性についての指導を貰っている。ベッドルームにて、私は自分の姿を映した主と接触している。

 異常です。既にまともな境遇ではありません。



 私たちは主に役割を与えられている。



「なんで私たちが……」

「恐らく、そこまではベリアルも知らないだろう。彼にとって、この事態は想定外だと判断できる」


 ベリアル卿はたぶん、主を出し抜いて泉さんを混沌の材料にしようと考えた。ですが、神はその先を行き、私たちに加護を与えたんです。

 ここまでの流れ、全知全能の主にとっては必然なのかも。いえ、過去も未来もない彼にとって、全ては世界の流れそのもの。既に結果は出ているのかもしれません。


 あーもう! 分けわかめです!

 今日は寝る! それでとにかく落ち着きましょう!

 

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