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青き石に寄せて(仮) ~決められた婚約者企画~  作者: 三杉 怜


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10.呪縛―回想―

R15 残虐(流血・殺人)シーンあります

苦手な方ご注意ください


読み飛ばす方、本話はリュスタークのトラウマ回です

トラウマ持ちのりゅうがリンに癒されて惹かれていったんだなぁ、と念頭に置いていただき

次回更新をお待ちくださいm(__)m



―――りゅうがイスファンならリンは好きだよ?


そう言って向けられたラティスハルクの少女のまっすぐな笑顔は、内に怨嗟の塊を飲み込んでいたリュスタークには眩しすぎて、目が(くら)みそうだった―――




リュスタークの初陣は9歳の時だった。

イスファン王国の第三王子として生を受けたリュスタークは、二人の兄たちとかなり年が離れていたこともあり、王子としてはかなり自由に育っていた。文寄りの現王や二人の兄を支えるため軍部に身を置いたのはわずか5歳の時。当時将軍職を拝命していた叔父の影響が強かった。元々の才能ややんちゃな性格が手伝って、リュスタークはどんどんと頭角を現していった。騎士養成学校を4年で卒業し、騎士団に入団する年齢を満たしていなかったリュスタークは、叔父の従士としてラティスハルクとの国境へと従軍した。

当時睨み合いすら形骸化し、大きな危険もないとの判断だった。実際間諜の行き来はあるものの、実際の戦闘行為が行われる事は稀だった。

その何度目かの従軍時。季節は冬。リュスタークは10歳になっていた。

その日は薄曇りの曇天で、イスファン国には珍しく酷く寒い朝だった。

睨み合いはそろそろ1ヶ月に及び、両国共にその時の睨み合いの引き際を探っているところだった。リュスタークは叔父の命により、砦まで書簡を届けるべく厩舎に向かっていた。

がさと揺れた草むらに、風以外の要因を感じ、足を止めたのは幸運だったのか不運だったのか。


「誰だ」


短い誰何の声に応えたのは、鋭く風を切る音と数本の銀線。

バサリと防寒マントの裾を翻し、飛んできたナイフを叩き落とすと、軽く腰を落として佩剣を握った。

気配を探る。

数瞬後、甲高い声と共に草むらから男が飛び出してくる。 切りつけられた剣を受け流し、体勢を崩した相手に横薙ぎに剣を薙ぐ。男はそれを転がるようにして避け、リュスタークはそれへ返す剣で走り込み穿つ。


ガッ


地面に食い込む剣先には、男の衣服と赤いもの。

手ごたえはあった。が、悲鳴もあげぬ男のその傷が、浅かったのか深かったのか、初めての実戦のリュスタークには判断がつかなかった。

分かっていたのは、手を止めれば死ぬのは自分だということだけ。

素早く剣を抜き、転がる男の後を追い二度三度と切り掛かる。


―――怖い


ガッ


男にとっての誤算はリュスタークが身軽すぎたこと。

体勢を立て直す間もなく襲いかかる攻撃が、何故か段々早くなっていた。

それは最初男の皮膚を割いた。そのうち筋に達する。

そして―――


グシュッ


「グヮアアァア!!」


男は仰向けに地面に縫い付けられていた。

リュスタークはここで逃げればよかった。


―――コワイ


例え剣を抜いて逃げたとしてもここはイスファンの陣営内。深手を負った男が逃げれるはずもなかったのだから。走って大声で仲間を呼びさえすればよかったのだ。だが―――

男の視線が変わる。

なんとか逃げて自陣に戻ろうとしていた男は、死を覚悟し、目の前の少年を道連れにしようと決意した。

膨れ上がった殺気、怒り、恨み、憎悪

様々な負の感情のこもった強い視線がリュスタークを捕らえる。


―――コワイ コワイ コワイコワイ コワイ……!!!


無意識に男の剣を持った手を蹴り上げる。

からんと、乾いた音で転がる剣。男の視線が追う。腹部の剣を力一杯抜くリュスターク。剣に向かってずり上がる男。


「うわぁぁぁぁっ!」


降ろされる剣。二度。三度。

何度も何度も降ろされる剣に飛び散る血。

既に男は事切れていた。ギリと睨みつける、怨嗟の双眸を残して…

雪が降る。

イスファンでは珍しい牡丹雪。

はらはら、はらはら… 止まらない剣。

止まらない叫び。


「もういいリューク。よくやった。止めるんだ」


叔父に手を止められ、次いで騎士が男の瞼を閉じた。

ようやく男の視線から解放されたリュースタークは、茫然とした顔を叔父に向ける。


「よくやった、リューク。よくやった」


はらはら はらはら


固まった手は、剣の柄から離れない。


はらはら はらはら


無理矢理剥がされ、ようやく離れた手は真っ赤に染まっていて、その上にも雪は降ってくる。


はらはら はらはら


リュスタークは朱に染まった手を見つめる。滂沱の涙と共に。


はらはら はらはら


降り続けた雪はやがて流れた血も、男の死体をも埋め尽くしたが、リュスタークの手に積もる事はなかった―――



名付けられることすらなかったその時の小競り合いは、イスファン国、ラティスハルク国、戦死者共に、0―――





―――笑って、リン。笑って………僕を………赦して…





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