73話差別
グレンらと夕焼けの黒猫のメンバーたちは、そこから特に魔物に襲われることもなく順調に進み夕方ころには村にたどり着いた。村の周りは高い木の柵で囲まれて厳重に守られている。
「すまない!おれら冒険者なんだが開けてくれないか?」
ジョンは、門の中にむかって叫ぶと重い木の柵があがり村の中へと入る。村の中は、活気に満ちており商人らしき人が声を上げて自分の商品を売っていた。
「ヴァンパイアに襲われている村にしては随分、活気なのね。」
「それは今、冒険者が集まってるからさ。人が集まるからそれを知った行商人が来てるんだ。」
キリーの疑問にゴンドンが答える。
人が集まれば金が集まる。その金を求めて商人は次々と来る。
「ふん。ヴァンパイアが現れたことによって豊かになる・・・か。それなのに、討伐とは何とも可笑しな話だ。」
「例え、それでも自分たちの村の中から死者が出たからだと思いますよ。知り合いが殺されるのは誰だって嫌ですから。」
グレンの言葉に
「とりあえず、ギルドに行くぞ。」
ジョンの言うことに従い一行はギルドへと向かう。
ギルドにたどり着き中に入ると多くの冒険者で溢れていた。一行は迷わず受付のカウンターに向かい列に並ぶ。数分過ぎた頃にこちらまで回ってきた。
「本日はどのようなご用件でしょう?」
「ヴァンパイアの討伐依頼を受けたいんだが?」
ジョンはギルドカードを受付に見せて言う。
「はい。承諾しました。夕焼けの黒猫の一行ですね?しかし、5人組と登録されていますが・・・?」
受付の女性は明らかに7人いることに疑問を抱く。
「あぁ、2人は臨時でパーティを組むことにしたんだ問題ないよな?」
「はい。では、そちらのお二方のカードを提示してください。」
「いや、持ってない旅人だ。」
カードの提示を求める受付の女性をグレンは旅人と言い断る。
旅人とグレンが言った瞬間。周りにいた冒険者が大声をあげて笑い出した。
「奴隷もどきがきてんじゃねぇよ!」
1人の冒険者が言った一言によってさらに、笑いが響きわたる。
「こいつ!」
「待て、ジョン!!」
怒ったジョンが、その冒険者に近づかおうてしたところをゴンドンがジョンの肩に手をかけてとめる。
「離せ、ゴンドン!!」
「いいから、落ち着け!」
ゴンドンにとめられ少しずつ落ち着きを取り戻し何事も起きないように思われた。
「おい。」
「あぁ?なん・・・だぁとむさ!?」
グレンは、悪口を言った冒険者の頭を掴み床に押しつける。冒険者の頭は床を突き抜けぐったりと身体が倒れる。
「てめぇ!!」
仲間の冒険者が腰に掛けた剣を抜く前に剣の柄頭に手をかけて阻止する。
「ぐぇ!!」
相手いる左手で冒険者の首を持ち上に放り投げる。冒険者は綺麗な半円を描いて床に倒れる。辺りは静寂になった。グレンは、床に倒れている男の襟首を掴み高くあげる。
「ひぃ!」
「貴様は、オレに負けた。旅人と貶したオレに負けたのだ。なら、旅人に負ける貴様は何だ?」
相手の冒険者にもう戦意はなかったあるのは純粋な恐怖。
「まだ、冒険者と誇るか?笑わせるな。貴様は冒険者の名を着飾った虫だ。」
グレンは、冒険者から手を離す。冒険者の身体は、重力に沿い尻から床に着く。張ってその場から逃げようする冒険者に影から取り出したノートゥングを冒険者の目前に突き刺す。
「オレは、弱者が悪いとは言わん。人によって才能という壁が存在するからな。・・・だが、己の分をわきまえず身分で人を差別する奴をオレは許さん。それは悪だ。」
グレンはノートゥングを高く上げる。冒険者はそれを見ても逃げようとはしなかった。いや、できなかった恐怖のあまり身体が動かないのだ。冒険者の男は周りを見て助けを求める。しかし、誰も彼を見ようとしなかった。
「さぁ、死ぬ前に一言残せ。」
「嫌だ!!死にたくない!!頼む!助けてくれ!」
「謝罪の1つも出ないか。とことんクズらしい。」
グレンは、ノートゥングを振り下ろす。




