71話取り引き
「こんなものか・・・」
オークの死体の中心でグレンは立っていた。自分の手の平を閉じたり開いたりしながら自分の姿がどんな風になっているか見てみた。黒い鎧はオークの血に合わさってより醜い色になっている。それは、まるで自分の心の中を写したようで吐き気がした。
「すごいな、アンタ・・・あれだけのオークをやっちまうなんて。神の生まれ変わりか何かか?」
戦士風の男は、グレンに冗談を言いながら近寄ってくる。
「そんな、くだらん冗談を言う暇があるなら早くゴブリンとコボルトを対処して来たらどうだ?」
「おっと、そうだった。すまないが、もう少し力を貸しちゃくれないか?きちんと、お礼はするからよ。」
「最初からそのつもりだ。おれは、自分の仕事は最後までやり遂げる。」
「悪いな。感謝する。・・・さて、先にあのコボルトからだな。けど、俺たち飛んでるあいつらへの対抗手段はないからな。俺たちの仲間の援護を中心として動くか。」
空には、未だに多くのコボルトが空を飛んでいる。戦士風の男の仲間が魔術と弓で対応してるが数が多すぎてあまり、意味をなしていない。
「きさまの仲間も、弓と魔術でチマチマやってもキリがない。ゴブリンの方をやらないといけないしな。それより、もっと効率的な方法がある。これなら、簡単にコボルトを落とせる。」
そう言うと論より証拠とノートゥングを地面に突き立てる
「グォォォォォォ!」
声を出しノートゥングに力を込めてると突き立て箇所からヒビがはいるとグレンは、更に力を込めノートゥングをえぐるように持ち上げる。すると、自身よりふた回りほど土塊が現れた。
グレンは、自身の身体を軸にして遠投投げの方式でその場でくるくる回り。
「ふん!」
野球選手が、ボールを打つようにノートゥングを振るった。ノートゥングに付いていた土塊かノートゥングから離れ、上空にいたコボルトを巻き込んでゴブリンの群れの中に落ちる。激しい風と衝撃でグレン以外の者は目を閉じる。目を開けると巨大なオブジェが完成しておりコボルトとゴブリンの数は半数ほど減っていた。
「あと、2回ほど同じことをやれば終わるか。全員、気おつけろよ。当たってゴブリンとコボルトの死体と区別出来ないようになりたくないならな。」
ゴブリンとコボルトのミンチが出来上がり、自分にも当たりそうになったなどをキリーが喚き散らしグレンがそれを適当にあしらっていると戦士風の男がグレンに近寄ってくる。
「改めてまして、感謝するよ。お前らが来てくれなかったら今頃、餌になっていた。・・・でっ礼の話なんだが・・・今、手元が少なくてな。装備も整えないといけないから、これくらいしか出せない。」
そう言うと、袋を腰から出す。中身は、金貨1枚と銀貨10枚が入っていた。グレンは、その袋を受けてりキリーに渡した。それを見ると戦士風の男は一息つき周りを見渡した。
「しっかし、これは、どういうこった?別々の生態を持つ魔物が群れをなすなんて聞いたことないぞ。」
「それは、簡単なことだ。目を見れば判る。」
グレンは、近くにあったオークの死体の目を開けて戦士風の男に見せる。
「・・・何だこれ?」
オークの目は、真っ赤に充血し白目の部分が赤色になっていた。
「ヴァンパイアに血を吸われた奴に起きる反応だ。」
「嘘だろ・・・オイ。じゃあ、これはヴァンパイアが仕向けたってことになるのか?」
「そういうことになるな。」
(しかし、あの魔物は、統率がとれていなかった。つまり、眷属ではなく暴走状態だったということ。・・・だが、それだったら眷属にして襲わせた方が効率が良いはず。わざわざ、血を吸って暴走状態にする理由がない。・・・・何か他に意図があった?だとしたら何だ?眷属にするのではなく暴走させることに、いったい何のメリットが?・・・)
「どうした?」
「いや、何でもない。」
「そうか?しっかし、困ったな。これが、ヴァンパイアの差し金だとするとまた、襲われたらひとたまりもないな。」
「そうね。一度、キチンと対策を練って備えないと。」
戦士風の男が頭を掻いて考えているも魔術師の女性が同意する。
「待て、ということは、きさまらもヴァンパイアを狩りに来たのか?」
「も?ってことは、あんたらもか?」
「あぁ。」
「なるほどな・・・なぁ、良かったら取り引きしないか?」
「取り引きだと?」
「あんたらとおれらのパーティーでヴァンパイアを狩るんだ。報酬は、おたくらが6割、俺らが4割。どうだ?悪い取り引きじゃないだろ?」
「確かに・・・だが、それだときさまら個人の取り分は少ないがいいのか?」
「おれらが助けてもらうんだ。文句は言えないさ。それに、さっきの分じゃとても感謝が足りないからな。」
「・・・良いだろう。」
「取り引き成立ってわけだ。よろしくな。」
「あぁ。よろしく。」
グレンと戦士風の男はそう言って握手をかわした。




