53話頼れる者
「何でですか!?」
そう言われるのは予想外だったのだろう。パースと呼ばれていた女の子が怒りを露わにする。
「才能がないヒトは蔑まれなければいけないんですか!!ステロくんだって他教科ではトップの成績をとっているのに、ただ魔術が苦手ということだけで!!」
途中で、パースの前にステロが手を出して止める。
「いいんだ。ありがとうパースさん。」
「でも!!」
他にも何か言いたそうだったが止められたことでしぶしぶ引き下がる。
「何か、勘違いさせてしまったようだな。」
パースが落ちついたところでおれは喋りだす。
「おれが悪いと言ったのは才能がないからという意味ではない。ヒトを頼らなかったことを言っている。」
ステロはよく意味がわからないのだろうか首を傾げている。
「いいか、きさまは誰の助けも借りず耐えるという選択が間違っている。」
「でも、僕は迷惑をかけたくなくて・・・」
やはり、何もわかっていない。
「迷惑をかけたくないということは、助けにならないと諦めているのと同じだ。」
話しても何も解決にならない。意味がないと本心的で思っていてそれを優しい嘘で隠す。
「ちっちが・・・」
「本当にそうか?心のどこかで話しても役に立たないと少しも思わなかったか?」
思い当たることがあるのだろう。ステロは口を閉ざしてしまう。
「誰も役に立たない。言っても無駄だ。だったら自分で何とかしようとでも考えたか?」
ステロは重く口を閉ざしおれの顔を見ようとしない。
「自惚れるなよ。自分の力を。1人の力なんぞたかが知れている。」
「だったら・・・」
小さい声でボソッと呟きやがて大きな声になっていく。
「どうすれば良かったんですか!?」
大粒の涙を出しながら必死の形相でおれに言ってくる。
「・・・おれはいろんな場所を旅してきた。そこでたくさんのヒトにも出会った。その中で1人だけきさまのような奴がいた。」
おれは、言う前に1つの昔話を語る。
「そいつには大切なヒトがいた。自分の命よりも大事だと思うくらいのヒトがだ。」
ステロは黙って聞いておりパースも興味があるのか静かに聞いていた。
「頼れる仲間もいたが仲間は自分の国に帰っており、そいつは自分だけの力で大切なヒトを守ろうとしていた。そいつ自身も守れる力があると思っていたからだ。」
だが、っとおれは話を続ける。
「その大切なヒトは死んでしまった。そいつの力はまったくといいほど役に立たなかった。そいつは後悔しそして、どこかに消えてしまった。」
話し終わると重たい空気があたりを包む。少し辛気くさい話だったからだろう。
「わかったか?1人で全部抱えてこもうとするときさまの大事な物が消えていくぞ。」
「でも・・・僕にそんな仲間が出来るかどうか・・・」
「何を言っているんだ。もう、すでにいるだろう?」
「え?」
コイツ本当にわかっていないのか。おれは、パースを指を指す。
「こんなに、きさまを心配してくれる奴がいるんだ。頼ればいいじゃないか。」
ステロは、パースに涙でいっぱいの顔でパースに向く。
「・・・頼ってもいいのかな?」
そう言うとパースもポロポロと涙を流し始める。
「もちろんだよ!!」
パースはステロを抱きしめた。
「おれもきさまに力を貸そう。あそこでブツブツ言ってる奴もな。」
「・・・うん。ありがとう・・・・」
そして、2人仲良くお互いを抱きしめながら涙を流した。




