52話誘拐もどき
今、おれたちは憲兵から必死に逃げている。そもそもの原因がおれにある。
ペンドラゴンに入ってすぐにキリーが服を買いたいと駄々をこね仕方なくある程度貨幣を渡して自由行動にした。キリーも特に不満を言わず夕方に門の前で集合しようと決めて別れた。おれはやることがないので適当に散策していていたら泉で何やら言い争っている男女を見つけた。誰も止めようとしないので止めに入ろうと向かっていたら男が殴りかかろうとしていたのでそいつを持ち上げた。穏便に済ませようとしたがそいつがいきなり魔術を放ってくる。別に魔術を食らってもあの程度の威力なら問題もないが、それに少し腹が立って泉に投げ込んでしまったという経緯である。
「おい!お前ら待て!!」
憲兵が追ってくるのを道をいろいろ曲がるのを憲兵あちも必死に追いかけてくる。
「あー!!もう、しつこいわよ!!さっさと諦めなさいよ!!」
キリーも愚痴をこぼしながら足を動かす。脇道を右に曲がると小さい倉庫が見えてくる。
「あそこに入るわ!」
倉庫を指差してそのまま倉庫に逃げ込む。おれは、窓から少し顔を出して外の状況を見る。どうやら、憲兵たちはおれたちを見失ったのかそれぞれ別の道に別れて走っていく。
「問題ない。逃げきれたようだ。」
その言葉を聞いて大きく息を吐くとおれに近づいてくる。
「あんたね〜どれだけ問題を作れば気が済むのよ!!」
「今回はあちらに非がある。おれは、それに対処したたげだ。」
「あんたの対処って言うのはヒトを泉に投げ込んで変なオブジェを作ることを言うの?」
「それは、結果的にそうなっただけだ。」
坦々と事実を述べるとキリーはあーと叫びながら髪をクシャクシャと掻き回す。
「あっあのー」
赤い髪をした制服を着た男の子が小さく手を挙げる。おれが、一緒に抱えてきた子の1人だ。
「何よ!!てか、君誰!?」
「え!?あなたが運ぶ用このヒトに言ったんですよね!?」
「・・・マジ?」
青ざめた顔をしながらおれに顔を向けるキリーに頷いて肯定する。
「じゃあ、つまりあの憲兵があんなにしつこく追いかけてきたのはこの子たちを連れてきたせい?」
まぁ、はたから見ればヒトを泉に投げ込んだ後近くにいた子供を攫って逃げた誘拐犯のように見えるだろうな。
「・・・どうしよう?」
「おれに、聞かれてもな。」
すでに、あれから時間が経っているし恐らくもう手配されているに違いない。今、表に出て事象を話しても信じてくれないだろう。そうわかるとキリーは両手を地面につけて独り言をブツブツ言うようになった。
「・・・さて。」
そんな、キリーを無視して2人の抱えてきた子供を見る。2人とも似た服を着ていることからどこかの学校の生徒だろうと推測する。
「何で、きさまはあいつらに殴られそうになっていた?」
「えっえ・・・と。」
髪を後ろに束ねた子供がバツ悪そうに顔をして言い淀む何か言いにくいことでもあるのだろうか。
「・・・僕が悪いんです。」
もう1人の男の子が言う。
「お前が?」
「違う!?ステロくんは何も悪くない!!悪いのは全部リーオたちじゃない!!」
どうやら、何かワケありのようだ。
「悪いが聞かせてもらえないか?」
事情を聞くと簡単に教えてくれた。
自分に魔術の才能が無くイジメられていたこと。
母親に迷惑をかけないために黙っていたこと。
その自分を心配してパースさんが来てくれたこと。
その話を聞いておれはある言葉が辿り着く。
「きさまが悪い。」




