50話イジメ
はぁ、最悪だ。また、リーオに呼び出しを受けてしまった。あの一件以来、リーオは、取り巻きを集めて僕をイジメの対象にしてきた。殴られたり、ご飯を買わせたり、机をボロボロにしたり、それは酷いものだ。クラスメイトや教師も僕から距離を置いて出来るだけ関わらないようにしてる。わかってはいたけど実際に体験すると中々辛い。そして、今日も公園に呼ばれている。正直、行きたくない。当たり前だ。誰が好きでイジメを受けるために行かなくちゃ行けないんだ。でも、行かなければならない。父は僕が幼いころに病気で亡くなり母さんが1人で育ててくれた。もし、ここで反発したら母さんの職場に圧力が来るかも知れない。それだけは、避けたかった。
「ステロくん。」
廊下をトボトボ歩いていると後ろから声をかけられる。振り向くと肩まで伸びた金髪を後ろで編んだ女子生徒が歩いて来ていた。
「僕に何か用?パースさん。」
クリニ・パース。僕とリーオのクラスメイトで成績は僕の次に良く、魔術ではクラスで首席を取りクラスをまとめる学級委員長だ。
「また、リーオに呼び出し受けているんでしょ?」
心配そうな顔をして僕を見る。彼女だけが唯一、リーオに正面から敵対するヒトだった。
「大丈夫だよ。きっと買い出しとかだろうから。」
「大丈夫って・・・ステロくん。あんな奴の言うことなんか聞いちゃだめよ。聞くと調子乗って何するかわかったものじゃないわ。」
きっと本心から僕を心配してくれているのだろう。素直に嬉しいと思う。けど、だからと言って自分の所為で母さんを困らせたくないんだ。
「ありがとう。気をつけるよ。」
僕は、パースさんにお礼を言って後にする。パースさんが何か言いかけていたが早歩きで廊下を歩いたためよく、聞き取れなかった。
呼び出しの時間まで、余り時間がない。僕は、駆け足で道を急ぐ。学園から公園は少し離れている。結局、時間には遅れて公園に着いた。公園は、所々植物が植えられている。おそらく、ペンドラゴンで植物があるのは公園ぐらいだろう。中央には小さい泉があり涼しい風が吹いている。その前でリーオ含めて5人ほどが集まっていた。
「遅えぞクソステロ!!」
出会い頭に思いっきり殴られた。頬が切れたのか口の中が鉄の味を感じる。
「・・・ごめん。」
とりあえず、これ以上殴られないように謝って機嫌をとる。リーオは舌打ちをしながら泉の方を指を指す。
「俺の小銭が泉に落ちてよ。お前、ちょっと拾ってこいよ。」
それが、今日呼び出した理由なのであろう。僕は、特に不満を言わず泉に足を入れようとした時にリーオに止められる。
「バカかお前?制服が汚れちまうだろ。服を脱いで入れよ。」
ニヤニヤと取り巻きたちも笑い僕を見る。
「それは・・・ちょっと・・・」
こんな、昼間の公園で服を脱ぐのはいろいろとマズイ。人通りも多いとは言えないけどそれなりにはいる。
「いいから、行けよ!!もう一発殴られたいか!?」
「行った方がいいぞ〜ステロ〜」
「大丈夫だって裸になっても俺たちが隠してやるよ。」
これ以上は、抵抗が出来ない。しても殴られて無理矢理脱がされるだけだろう。なら、いっそ自分で脱いだ方がマシだ。僕は、渋々ブレザーのボタンに手をかける。しかし、それは横から出た手で邪魔される。見るとさっき学園で別れたパースさんだった。パースさんは僕の顔を見て頷くとリーオたちを睨みつける。
「あんたたち!!こんなことして恥ずかしくないの!!」
「何だよー?俺は、ただステロに小銭を拾って貰おうとしただけだぜ?」
「だったら、何でステロくんが服を脱ごうとするのよ!!」
「知らねー脱ぎたかったんじゃねーの?」
リーオがそう言うと違いねぇと取り巻きたちが笑い出す。パースさんは怒りで身体が震えていた。
「あんたたちはとても惨めね。」
「・・・何だと?もう一度言ってみろやゴラ!!」
「だってそうじゃない!!親の権力使って好き放題して自分より弱いヒトしか威張れない!!あんたたちなんてただの弱虫じゃない!!」
パースさんの言葉を聞いて今度はリーオの身体が震える。その顔は、怒りに満たされていた。
「てめぇ、女だからって調子乗ってんじゃねぇぞ!!」
リーオが拳を振り上げてパースさんを殴ろうとする。咄嗟に僕はパースさんの前に出てこれから来る痛みに耐える準備をする。しかし、いつまでたってもその痛みは来ない。恐る恐る見てみるとリーオの身体は宙に浮いていた。いや、違う。後ろに全身黒い甲冑で覆われた大男がリーオを片手で持ち上げていたのだ。それにしても片手で持ち上げるって一体どれだけの力があるのだろうか。




