46話復讐
目の前に綺麗な青い髪を束ねた女性が立っていた。彼女が、身につけている鎧はキリーような一般兵がつけるような銅の鎧ではなく、貴族がつける銀の鎧をつけていた。そして、テドレの死体を見て父上と言っていたところを考えると
「テドレの娘か・・・」
前髪が影になって今、どんな表情をしているかわからない。
「・・・お前か。」
小さくではあるが、彼女が喋りだした。その声は、徐々に大きくなる。
「お前が!!殺したのか!!?」
前髪が、大きく揺れ表情がわかるようになる。目が充血していて怒りに燃えている。
「いや、これにはわけが・・・」
キリーが、弁解しようとするのを口を手で塞いで止める。
「あぁ。そうだ、おれが殺した。」
何も弁解もせずに簡単に、おれが殺したことを話す。キリーが驚いた顔で見てくる。
「・・・よくも。よくも、よくも、よくも!!!父上を!!!」
さらに、怒りに満ちた顔になり叫び始める。
「なぜ!!父上を、殺した!!?」
「悪だから殺した。それ以上も以下もない。」
聞かれた質問に簡潔に答える。
「悪・・・だと!?ふざけたことを抜かすな!!父上は、けっして悪事を働くようなヒトではない!!」
確かに、成り代わる前のテレドなら悪事はしなかっただろう。だが、ここで戦をしていたのは魔道具で父親の身体を乗っ取った魔族だ。前のテレド侯爵は関係ない。
「世の中は、きさまだけが知っているのが事実ではない。」
彼女の目から怒りが消えていきその代わり、怒りよりもドス黒い復讐する者の目に変わっていく。
「・・・殺してやる。」
鞘にしまったレイピアを抜き出す。
「殺してやる!!父上のように顔もわからないくらい
ズタズタに引き裂いて殺してやる!!!」
止めようとして前に出た彼女の肩を掴んでやめさせる。
「やめろ。止めなくていい。」
「でも!!それだと、あんたが・・・」
「いいんだ。」
キリーを後ろに下がらせて影からノートゥングを取り構えをとる。
「さぁ、来い。おれを殺してみせろ。目の前にいるのはきさまの父親を殺した男だぞ。」
彼女は、怒声をあげて真っ直ぐに突っ込んでくる。
走りながら、レイピアを持った右腕を後ろに下げ左腕を前に出す。自分の間合いにおれが入る。
「軍式突剣術三式!風塵突如!!」
レイピアに風が集まり、風の槍となって襲いかかる。ノートゥングを盾にしてそれを弾き返し彼女の体制が崩れる。
「軍式突剣術七式!蛇骨突!!」
すぐに、体制を立て直し、新たな技で攻めてくる。レイピアが不規則な動きで生きている蛇のように突く。その攻撃も弾き返す。
「どうした?その程度か?」
おれの、挑発にさらに声を上げる。
「軍式突剣術一式!流れ雨!!」
素早い、4連突きも防ぎきった後、足を払う。彼女は、体制を崩し倒れ込む。息づきは荒く酷く疲れている。
「・・・どうして!!どうして当たらない!!」
涙を流しながら彼女は、地面に拳を何度も叩きつける。
「私の実力は確かなのに!!騎士団長にも勝ったのにどうして!!届かない・・・」
目の前で泣く彼女が、かつての自分の姿を思い出させる。
「きさまの剣術は確かに優れている。魔術の腕も相当な物だ。」
泣いている彼女の答えに厳しく答える。
「だが、きさまの剣術は真っ直ぐすぎる。剣先を見ていれば簡単に予測できるほどに。」
「・・・・・・・」
彼女は、黙っておれの話を聞いていた。
「きさまの言っている団長が誰かは知らないがそいつを倒しただけで余韻に浸っているならそれは、お山の大将だな。」
ギリっと彼女が歯ぎしりをして悔しがる。
「ではな。さらばだ。」
別れの言葉を言って後を立ち去ろうとする。
「・・・・ナタリアだ。」
唐突に喋りだしたので振り返る。
「私の名は、ナタリア・トアレ。お前を殺す名前だ!!覚えておけ!!」
自分の名を言い放ちながらおれを憎しみの顔で睨みつけてくる。
「そうか。ではな、ナタリア。いつか、おれを殺しに来い。」
そう、返事をしておれは『ダークフープ』を使ってその戦場から姿を消す。




