44話変貌
もう、何回目か忘れるほど地面に身体をぶつける。
「ぐお!」
「すごいな、ここまで蹴られて平気とは。」
拍手を、しながら近づいてくるのテレドを斬りつけるが簡単に避けられ逆に腹を蹴られて地面に転がる。
「が!?」
受け身をとることが出来ずに全身に鈍い痛みがくる。
痛みに耐えながらノートゥングを支えにして何とか立ち上がる。
「だがいい加減、諦めたらどうだね?君と我の実力の差は歴然だ。」
「悪いが、おれは1度決めたことは守る性格でね。」
受け応えしながらテレドについて考える。
(どういうことだ?明らかに、ヒトの身体能力を逸脱している。)
反射神経、脚力どれも、ヒトでは絶対、不可能である領域まで奴は入っている。
「何か、魔道具でもった使っているとでも考えていくらかね?」
頭の中で、考えていたことがあたり驚愕する。
「残念だが、我はあいつとは違って魔道具を使っておらんよ。」
あいつとは、おそらくパナウェイでエリアに成り代わっていた魔族のことだろう。
「しかし、残念だ。もう少し強敵と想像していたがこんなにも弱かったとは。」
弱い。その言葉が重い石のようにのしかかる。
『あいつ』が魔王と戦っている時、そして、あいつが命を落とした時。おれは、1番近くにいながら何もすることが出来なかった。それが、悔しかった。
圧倒的な力が欲しい。全てを守れるような『あいつ』と並んでいられるような力を欲した。
『力をやろう、お前が望むような力。理不尽さえ握り潰すことが出来る力を。』
その言葉に誘われて手を出し絶望した。
おれは、手元に落ちていたノートゥングを拾う。
「・・・何をしている?」
テレドが、おれの行動に警戒する。おれは、ノートゥングをテレドに向けるのではなく自身に向け、自分の胸に突き刺す。キリーが何やら、叫んでいるが痛みで
聞き取れない。
「・・・魂を少しくれてやる。だから、その分『力』をよこせ。」
『あぁ、いいだろう。望みのままに。」
消えていく、意識の中かすかに答える声が聞こえた。
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「いきなり、自殺とは気でも狂ったか。」
目の前で、起きたことに我は失望していた。久々に強い敵と出会えたというのにその敵が、自殺してしまうとは思っていなかった。
「まぁ。いいだろう。・・・さて、今のうちに1人消しておくか。」
あの、黒騎士を連れてきた女の方へ向かう。女は、腰を抜かしたのか動いていなかった。すぐに、女の元まで辿りつき剣を上げる。
「安心しろ、楽に殺してやる。」
剣を振り下ろそうとした時、尋常ではない魔力を感知する。急いで、感知した方へ向くと自殺した黒騎士が立っていた。
「バカな!!お前は、さっき死んでいたはず!!」
それだけではなかった。黒騎士の身体が変貌してきたのだ。
身体は、一回り大きくなり、背中からは黒いドラゴンのような翼が生え、尻尾も生え、ドラゴン似た兜もまるで本物のドラゴンに近くなっていた。武器の形状も変わっていた。あの黒い大剣も刃がノコギリのような
形に変わり血管が張り巡らせているような赤い線が通っていた。気がつくと身体に鳥肌が立っていた。
「姿が、変わったことには驚いたが見た目が変わったところで・・・」
恐怖を隠すように声を出して剣を構える。
「実力は歴然の差だ!」
素早い動きで一気に黒騎士のところまで駆ける。黒騎士はまるで動けない。そのまま振り下ろす。
しかし、その攻撃が当たることはなかった。黒騎士は片手で、剣を掴んでいたからだ。
「な!?」
掴まれたことにも驚き距離を取るため剣を抜こうとするが黒騎士の手はまったく動かない。
黒騎士は、大剣を地面に刺してゆっくりと腕を上げ
次の瞬間、頰に激痛がはしり、我は吹っ飛んでいた。




