2話騎士は考える
「答えよ。」
騎士は答えを求める。まるで、神が罪人に罪を告白するように。そして、それによって罰を与えるかのように。
「・・・私はリーザと申します私の両親は商人で次の街に行く途中で盗賊に襲われ両親は殺されて私はここに連れてこられました。・・・・その、悪いことはしてません」
ボソボソっとだが少女は話しだした。自分がここまでにいたる経緯を話した。両親の死を再び認めるのはとても辛かったがそれでも話さなければならないと少女は思った。
「ならば、さっさとこの場から失せろ。」
それを聞いた騎士は少女の縄を切ると興味がなくなったかのようにその場を後にしようとする。
「お待ち下さい!!」
しかし、少女は引き止めた。目の前で殺戮を尽くした騎士を。
「・・・何か用か?」
「この度は助けていたただきありがとうございます
おかげで奴隷にならずにすみました」
「・・・・礼などいらん」
「いえ、そういうわけにはいけません。どんな形であれ助けてもらったことに変わりはないのですから」
この時、少女自身も何故引き止めたのか理由はなかった。このお礼という言葉は後からきた言い訳だった。
「しかし私にはあなたに渡すものがありません」
「礼はいらんと言わなかったか?」
「それでは私は自分を許せません・・・ですからお礼と言ってはなんですが私をあなたに差し上げます」
「・・・・・何?」
騎士は最後に聞いた言葉に疑問を持った。彼女は自分を差し出すと言った。それは、自分にどんなことをされても構わないいわば、奴隷になりたくないという願いと矛盾している。
「貴様、その言葉が矛盾しているとわかっているのか?」
「えぇ。しかし、私は両親以外に家族をもっていません。この洞窟から、出てもわたしひとりでは生活できません。奴隷に落ちて死ぬのがオチです。だったらあなたに付いて行ったほうがまだいいと思ったのです。」
少女の理由には理がかなっている。このような世界で身を守る術を知らないものは簡単に死ぬ。ましてや、それが少女となるとさらに無残なことになるかもしれない。しかし、それだけの理由で目の前で殺戮をした者に言う言葉ではないが。
「・・・・正気か?」
「はい、それにあなたにも得になる話だと思いますよ」
「ほう?何故そう思う?」
「私は、完璧とは言い切れませんが少しは商売のやり方は知っています。それは、あなたにはない才能ではないですか?」
「なるほど。しかし、私には商売をする気はないし理由もない。」
「ですが、少しでも安くなるのはいいでしょう?その剣、中々の業物だと見えます。手入れにも費用がかかるのでは?」
「そこのところも問題ない。」
「でもーー」
「いい加減にしろ。貴様の声には心がのっていない。そういう回りくどいのは好かん。貴様の本心を聞かせろ。」
重みがのった言葉に少女は口が止まる。数秒間黙りこみ少女は小さく振るえながら声を発する。
「・・・死にたくない。」
両親が目の前で殺されるところを見た少女はこの世界では簡単に人が死ぬという事実を目の当たりした。それが理解できると今までに感じたことのない恐怖が身体にまとわりついた。両親の死への悲しみよりも自身の死ぬことの恐ろしさが勝っていた。
「あぁ。その一言で素晴らしいくらい純粋で貴様の心が伝わった。だが、それで私に頼ろうとした?ここで残虐の限りを尽くした張本人に?」
「あなたは怖い。今でも気絶しそうで仕方がないです。でも、あなたは強い。だからです。」
言葉はたどたどしかったが騎士には彼女の言いたいことがわかった。
「怖いのを覚悟の上で・・・か、おもしろい。いいだろう。貴様の提案にのってやる。」
「本当ですか!?」
「わかったら、さっさと必要な物を集めろ。すぐに出発するぞ。」
そう言って騎士は洞窟の出口へと足を運ぶ。
「あっあの!!私、リーザって言います!!あなたの名前を聞かせてください。」
「グレ・・・いや、グレンだ。」
こうして、奇妙な2人組がここに誕生した。