15話ハナの願い
「グレンさん・・・お願いがあるの」
ポイズンイーグルの襲来から、2日後の晩
ハナに話しかけられた。2人は、すでに眠っている。
「何だ?」
「再生魔法を、教えて欲しいの」
どうやら、魔法を教えて欲しいらしい。
「ダメだ。」
「そこをお願い!何でもするから!」
頭を地面につけてお願いしてくる。
「・・・何故、教えてほしいんだ?」
「私には、弟がいるの。私のせいで、一生寝たきりなの。弟の身体を、元に戻す手段を探すために冒険者になった。お願い!弟の身体を戻すために、再生魔法を教えて!教えてください!!」
さっきよりも、深く地面に擦りつけてお願いしてくる。よほど、弟が、大切なのだろう。その気持ちは、よくわかる。
「その気持ちは、よくわかった。」
「だったら!」
「だが、答えは、否だ。」
ハナの顔が、絶望に変わった。
「弟のことを、想うなら、尚更止めといた方がいい。」
「そんな!?どうして!!」
「きさまは、魔法を甘く見過ぎだ。」
「・・・え?」
「何故、『魔法』が失われ『魔術』が生まれたのか。何故だかわかるか?」
「・・・それは」
「代償を、恐れたからだ。」
「・・・代償?」
「魔術が魔力を使うように、魔法も魔力を使う。そこは同じだ。だが、魔術に比べ、魔法は、使う魔力が、圧倒的に違いすぎた。魔力が、足りないと、魔法は、それを補なおうとする。そして、代償で『何か』を失う。ヒトは、それを恐れるあまりヒトは、魔法を封印し、劣化版である魔術を生みだした。
「・・・・・・」
ハナは、黙って耳を傾けている。
「魔術は、唯の術式。だが、魔法は、『世界の理』を変える。」
「世界の理・・・」
おれは、話を続ける。
「考えてみろ。失った物は、普通は返ってこない。回復魔術でも無理だ。魔法は、そんなありえないことでさえやってのける。そんな代物だ。」
おれは、ハナの顔を見る。
「今の、きさまでは必ず『何か』を失う。そんなことを、姉がしても弟は喜ばんだろう。」
「・・・グレンさんも、何かを失ったの?」
ハナが、伺うように見て言う。
「・・・あぁ。1度だけ大切なものを失ったことがある。2度とあんな思いはしたくない。・・・さぁさっさと寝ろ。明日も、いつ魔物に襲われるかわからんからな。」
「・・・うん。おやすみ」
そう言って、2人が寝ている場所に歩いていく。
おれは、焚火の火を見続けた。




