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ボクが異世界?で魔王?の嫁?で!  作者: らず&らず
第3章 トランジションステージ
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第75話 窮鶏カナタを噛む!

 ダンジョンの外ではもう四回目の鐘が鳴った頃だろうか?

 奈落の穴の最下層に居るボク達はそれを知るすべが無い……と思ったけど普通にルナがスマホを見ていた。


「さっさとバラして宴会の準備をするで!」

「クエッック!? クエクエ!」

「自分ら今食べて欲しいんか?」

「グケッ! クエー!」

「何言ってるかわからんで?」


 現在部屋の中央で頭を垂れてこちらの様子を窺うコカトリスをどうするか相談中である。

 戦闘準備万全で部屋に入ったのは良いモノの中央に居たのは、白旗を揚げたように羽を振り頭を垂れるコカトリス達だった。


「おかしいな~匂い消したしボクを怖がる理由何て無いよね~?」

「あのねぇ……」


 首を傾げたボクにアヤカが話しかけてきた。


「ダンジョンに入った時から匂いでばれてたのよ? 例えるならトレンチコートを着て手にオモチャを持ったビール腹の中年おじさんが、怪しくないよ? って言いながら近づいてきたようなモノよ!」


 なんと言うヤバイ例え、アヤカの脳内はどうなっているのか心配になる。


「オモチャくれるん? 良い人?」

「ただの変態だよ!!」


 純粋なルナに、何か思考が腐って来ているアヤカ……


 そっと後ろに後ずさろうとしていたコカトリスに鋭い視線を向けて牽制する。


『コカトリスFLY・HIGHクイーンLv666』

『コカトリスFLY・HIGHキングLv666』


 ん? レベルが666で同じだ……偶然?


「二匹ともFLY・HIGHって名前についててレベル666だね、同じレベルって事は同時に生まれたの? 違うか、お互いレベルを確認しあってあげたって事?」

「アヤカが思うに多分種族限界? コカトリスの種は666が限界なんじゃないの? それにしても化け物級のレベルよね……何を食べたらこんなに大きくなるのかしら?」


 種族限界なんてモノが有るのなら長い年月生きても限界がくる? でもアウラは何も言ってなかったし愛姉(あいねえ)も簡易鑑定出来なかったのでレベルは高そう……もしかしてアルファベット持ちはその限界を突破する為に進化してるのかもしれない?

 思えばプテレアも900レベル台だったのに進化してなかった。レベル1000を超えた辺りで進化したのだとすれば……レベルを限界まで上げて何らかの手段を用いれば上限突破してアルファベット持ちになるのかもしれない。


 話し合うボクとアヤカの横でルナとキャロルがコカトリスを弄っている、他のメンバーは壁際に生えているキノコを採取していた。


『エンシェントリュフ』

 凄まじい悪臭とは裏腹に、天国にも昇るほど美味しいと評判のキノコ。

 :薬効UP


 マリヤに頼まれていたキノコだけど……さっきの通路にまで漏れていた臭いの原因らしい。ルナは鼻がバカになったのかコカトリスを弄るのに夢中になっていた。


「取り合えず敵意は無いのかな? 予定通りクイーンはテイムしてキングはバラす?」

「クェ!? クッククェー!」

「クエックエ~」


 クイーンがキングに蹴りを入れるとボクに近寄ってきて頭を地面にこすり付ける、何と言う生存本能。蹴られたキングは口をパクパクとさせ呆然とこちらを見ていた。

 【テイム】を使い従魔に……何度使っても成功しない? 後ろを振り返りアヤカに聞いてみる事にする。


「アヤカー【テイム】が成功しない、前まで一発で出来たんだけど?」

「そもそもテイムって数撃って何ぼだったと思うわよ?」


 考えてみればあのミミックもテイムしておけばよかったかもしれない、動く荷物入れに……


「あれ? 暗い――」

「カナタ! 後ろー後ろー」


 アヤカが何か言って後ろを指指している、キノコ採取をしていた他のメンバーも臨戦態勢に入った?


「キングが真っ赤になったで! カナタ逃げるんやー」

「暴走状態ですわ! クイーンも元から従魔になる気何て無かったみたいですの! 早く通路へー」


 振り向いたボクが見たのは大きく広がったコカトリスの口内で、赤黒い色をしていて気持ちが悪い。

 あ、と言葉を放つ間も無くクイーンに咥えられてカミカミされるボク。


「気持ち悪い! 何この唾液、ヌリョヌリュするよ! もう倒すからね! 大地の精霊よ――」

「「「「「「あっ!」」」」」」


 視界が真っ暗になり、全身をヌリョヌリュするおぞましい感触が這い回る。


 食べられた! そして気持ち悪い……ルナとキャロラインは声の様子から逃げている途中でまだ他のメンバーと合流出来ていない可能性が高い、早く外に出て皆を援護しないと皆とのレベル差が有り過ぎる!


「るなぁぁーーー!!」

「うちは良いからキャロルは逃げるんや!」


 まずい、キャロルの悲鳴と共にルナのくぐもった声が聞こえてきた。鶏のさばき方を思い出す、まずは首を刎ねて木に吊るし……じゃない、お腹を掻っ捌いて外に出よう!


 ん? 頭の上に何か振ってきた。手にとって触ってみるとソレは切りそろえられた鋭い爪の生えた小さな手……間違いなくルナの左手だった。


「八つ裂きにしてヤる!!」


 瞬間思考が停止する――押さえていた魔力を解き放ち見にまとい直すとすぐに出る算段を立てる。外に居る仲間に当たらないように最小限で最大火力を出さないといけない。

 ダイヤの盾を取り出し表面を魔力でコーティングしてコカトリスの腹の中を縦横無尽に飛ばしまくる。

 すぐに外の光りが中に入って来たのでその穴から両手を伸ばし外へと飛び出る。


「ルナ! 皆!? フレイムウォール!」


 飛び出たボクの視界に広がったのは盾を構えてキングの猛攻を耐える皆と、キャロラインに抱えられてその後ろで治療されているルナだった。

 クイーンとキングの間に火の壁を生み出しボクは皆のところへ走り飛び戻る、停止飛行歩行を覚えていて良かった。

 音も無く一息で皆の元へ戻ったボクはルナに治療を追加すると、万が一にと言う事で持たされていたマリヤ試作品回復薬をルナの左手にふりかけた。

 牽制に盾を飛ばし撤退の指示を出す事にする。


「盾は任せて! 皆通路まで後退するよ! キャロライン、ルナをお願い」

「私の足が遅かったから……るなぁぁ!」


 泣きじゃくりルナを抱えたまま動かないキャロライン。


「キャロライン! それくらいなら治るし絶対に死なせない! 撤退だ!」

「グェェェェグエッグ! グゲッ!」


 仰け反り咽を膨らませてメタル化ガスを吐く仕草をしたキングに、ボクは咄嗟に多重結界を張り突風を巻き起こしあわよくばキングごとぶっ飛ばそうとする。


「皆急いで! ストーム追加! まだまだストーム!」

「大地の精霊よ! 我が手に集いて、かの者を戒める鎖となれ! ダブル!」


 メリルが両杖から鎖を出すとキングの足を束縛する、横目で見た感じクイーンは虫の息と言った所だろうか? 動く素振りを見せない。後で何とか回収したいところ……


「こっちは大丈夫です、通路の安全確保は終わりましたよ! 後はカナタだけです」

「アヤカが一瞬隙を作るから大きな風をお願いね!」


 アンナの声に少し気を抜きかける自分自身に活を入れ魔法の準備をする、アヤカは何か魔法を撃つつもりなのか()()を前に向けて詠唱していた。


 右手に見えるのは小さな火種? 左手には小さな氷の結晶が浮かんでいた。注がれる魔力の量が多いのか段々大きくなって行く火種と氷の結晶……イヤな予感がする。少しずつ入り口へと向うボクをキングが邪魔してくる。

 メタル化硬皮の盾も使いキングの猛攻を受け、流し、弾く。レベルが高いだけあってかなりの重い突き攻撃だ。

 視線をアヤカの両手に戻すと人の頭サイズの火の玉と氷の結晶がそれぞれ結界に閉じ込められて、まだかまだかと発射の時を待っていた。

両手をユックリと前に……合唱する様に近づけていくアヤカ!?


「めどろ――「ストーップ!!」何?」


 色々と嫌な予感しかしないアヤカの魔法を止める事が出来た。咄嗟に全員へ全力で張った結界は使用せずにすみそうだ。


「色々マズイ! 新しい魔法使うなら名前は正しく正確にね! あとそれ水蒸気爆発狙ってると思うんだけど氷じゃないから! 水だから!」

「し、知ってたわ! アヤカはちょっと新しい事にチャレンジして見たくなっただけで……」


 話しながらも無事通路まで下がれた。キングはアヤカの持つ魔法を警戒して途中から部屋中央へ下がり、こちらがフリーになったおかげで部屋を分断する結界が張れた。

 アヤカが二つの魔法をゴミでも捨てるかのように部屋の中に放り投げたので、慌てて結界を重ねて保持する。


「何で?」


 何してるのこの人? とでも言いたげなアヤカに厳重に注意を促す事にする。


「クイーンは後で回収するからあまり強力な魔法はダメだよ! こう…首をスパッと落とせるようなの無い?」

「風魔法は苦手、だって風って見えないし…見た目地味だし……」

「じゃあ、メリルと一緒に土の鎖大量に出して捕縛とか?」

「普通の人間は同時に二つの魔法使えたりしないのよ? メリルは【擬似無詠唱】で一つ分の詠唱を誤魔化してるみたいだけど」

「二つ以上もいける、三つ以上出すと鎖が細くなって使い物にならないけど……」


 良い事を聞いた。メリルの発言から精霊魔法の新たな可能性を見出す。


「良い事思いついたかも? ちょっと試すから入り口前から下がっててね~」

「るなぁ? 気が付いたの?」

「うちは大丈夫って言ったで? ちょっと肩貸してや」


 背後でルナが立ち上がる気配がした。


「大地の精霊よ! 我が手に集いて、かの者を戒める鎖となれ! ブレイク!」


 使用する魔力は自然に体から出て行く分に任せて詠唱を完了する、イメージするのは千に分かれた鎖の束だ。


「凄い数の鎖! 一本一本は私の鎖より細いけど、込められている魔力と強度が段違いだわ」

「解説ありがとう! キャロライン、ルナが何かやりたそうだから手伝ってあげて! 正直これ辛いかも、動けない」


 イメージした千の鎖には全然届かなかったけど、一〇〇本くらいはある鎖の束が拡散して部屋の中にいるキングとクイーンを捕縛する、思ったより調整と力加減が難しい…少し気を抜くと鎖が垂れてしまう。


「カナタ…大好きや! 左手の恨み、目に物を見せてやるで!」

「クケッ!? クエ~クエ~」


 ルナの怒りの矛先が左手を奪ったクイーンからとばっちりのキングへと向く、今更媚びてももう遅い…ルナがやらなければボクが【分解】していた。


「まだ未完成やけど…その身で味わうんやな! 【月の魔爪(ルナスペシャル)】!」


 何も無い空間を大きく空ぶったルナの右手から魔力のようなモノが飛んで行くのが見えた。ルナの視線の先を追うとキングが微動だにせず立っていた。


「失敗?」

「これで終いやで?」


 ルナは足元に転がっていた石ころをキングに向って投げつける、投げられた石はキングの側に落ち何も起きない。


「「「「「「???」」」」」」

「今のは距離を測っただけやで!?」


 ルナが焦りキャロラインの肩を叩いて部屋の中央、捕縛されたキングの近くまで近寄るとまた石を投げる……


「石が当たったと思ったらキングの首が取れた!?」


 ルナが我が物顔でこちらを振り返ると、キングの首から噴出した血が噴水のようにその身を濡らしていった。

 血塗られたルナとキャロラインに絶句する皆……


 すぐにキングに近寄りスマホに収納する、クイーンは生きていたので一応【テイム】をかけると一発で成功した。


「クイーンは一応従魔に出来た。でも処遇を決めるのはルナだ。左手の恨みに袋叩きにするなら手を貸すし捕縛もするけど……多分メアリーは飼うって言うと思う、毎日新鮮な卵料理が食べれるようになるしね!」


 治療をしていないクイーンは死にかけていた。ルナは無言でクイーンに近寄ると腹部の傷に手を当て治療を始める。


「クェ? クケックェ?」

「気にするんやないで? うちは卵料理が食べたいだけや……何言ってるか分からんけどな!」


 ルナはそう言うと照れくさそうに笑いキャロラインの元へと歩いていく、まだ涙目のキャロラインに抱きつくと背中を撫でていた。


「ところで……アヤカは逃げた方が良いと思うの」

「どういう事? もう何も脅威なんて残って……!?」

「多分危ない魔法になってると思います……」


 アヤカとメリルの視線の先には隣り合う火種と氷の結晶が結界ごと融合していく様子が……

 氷の結晶が泡立ち体積がどんどん膨らんでいく、結界が内側から膨張していくのが良く分かった。


「戦利品も回収したし撤退!! クイーンはスマホに取り合えず入れるから皆走って!」

「「「「「「サーイエッサー!!」」」」」」




 その日ダンジョン『奈落の穴』最下層付近にてとてつもない地震が起こり攻略中の冒険者達を震え上がらせる、そして通常ルートの最下層広間の壁が崩れ、新たな通路が見つかり冒険者ギルドを震撼させた。

 調査に向ったオルランド達の話しによると、その壁は元々一定の条件で開くようになっていたらしい、壁の溝の一つに魔槍ヴィグが丁度埋まる事を報告していた。まだ溝が複数ある事を考えると『奈落の穴』にはまだ魔剣やら魔弓やらが眠っている可能性が考えられ、翌日からダンジョン『奈落の穴』は前より潜る冒険者の数が鰻登りに増えていった。

 そして弓矢や消耗品を求めてリトルエデン何でも屋(コンビニ)に訪れる客も増える事となった。




 ――∵――∴――∵――∴――∵―― 




 秘密基地に戻ったボク達は獲物の解体作業組みと、事務所前で恒例の宴会をする準備組みに別れた。

 コカトリスFLY・HIGHキングは解体して全部リトルエデンの皆で食べる事にした。理由は通常のコカトリスと違い味も栄養価も段違いに良く、食べれば食べるほど石化に対する耐性がUPしたためだ。


「プテレアにはこのコカトリスFLY・HIGHクイーンの巣を作って欲しいんだけど……やっぱり嫌かな?」

「はい? 主殿、立派なコカトリスですね。地上付近に洞窟タイプの巣を作ってプテレアの森と繋げましょう!」


 あれ~? プテレアの反応が普通すぎる、今まで地下で生存権を争っていた関係には見えない。


「もしや、主殿は私がコカトリスの巣を作る事に難色を示すと思いました?」

「まぁ、その通りだよ? 今まで生存権をかけて地下でバトルしてたんだよね? あぁ!」


 凄い事に気が付いてしまった。コカトリスが何であれほどの成長をしていたのか、理由の一端はもしかしたら……


「プテレアは結構蔓とか食べられてたんだよね?」

「今思えば懐かしい限りです…先ほどの地震でコカトリスの巣側に繋がる通路が封鎖されました。開通工事が終わるまでは罠の部屋にしか行けませんよ?」

「コカトリスはプテレアの蔓を食べて、間接的にボクの魔力を得たから進化したんじゃないの?」

「あっ」

「そうなの……」


 プテレアの間抜けな声と共にキャロラインの凍りつくような声が秘密基地広間に響き渡る。


 キャロラインの目には殺意に近いモノが浮かんでいた。よっぽどルナが怪我をしたのが堪えたのかも知れない……


「うちはもう平気やで?」

「普通だったら! 普通だったら――左手を失ったら冒険者引退ですわ……」


 ルナを後ろから抱き締め涙を見せるキャロライン、治療スキルのおかげで皆迂闊になっていたのかもしれない。

 良く考えてみるとダンジョンの中で片手が無くなったら普通は終わりだ。運良く逃げ帰れてもその後は辛い生活が待っているだろう……


「防具を強化する必要がある、それもなるべく早くに」

「主殿、プテレア繊維ならすぐに用意出来ますよ!」


 プテレアの作り出す繊維は繊細でしなやかで吸水性もバッチリだ……でもそれは防具に向かない、中に装備する服には向いているかもしれないけど、今欲しいのはもっと硬くて強靭な――ダイヤモンドのような繊維……


「アヤカ、カーボンナノチューブとかグラファイトとかフラーレンって聞いた事ある?」

「それくらい鉱石マニアの常識よ! あっ!?」


 アヤカは失敗したと呟きながら『何の事?』と言いなおしていた。ダイヤモンドが作れたのなら作れないはずが無い。明日にでもチャレンジしてみよう!


「取り合えずコカトリスの名前だね! どんな名前にしようか――」

「焼き鳥や!」


 ルナが尻尾フリフリで答える、でもソレは酷いと思います……


「せめて生き物っぽい名前にしようね?」

「チョコ「ダメ!」何で?」


 危な過ぎる、アヤカの発言に割り込み止めると他の候補が出ないか待つ……あまり興味が無いのか皆違う事を始めそうな雰囲気だ。


「クリーム色の大きな鶏で尻尾が蛇っぽい…コッコとか?」

「主殿…普通過ぎませんか?」

「昔飼ってた鶏の名前なんだけどダメ?」

「良いんじゃない? スタンダードな名前で」


 投げやり気味のアヤカの発言に皆が賛同し、名前はコッコに決まった。

 名前が決まると後は住む場所だ。取り合えずスマホに入れっぱなしは可哀相なので外に出してあげたい。


「取り合えずコッコを出せる場所を確保しないとね、体長10Mくらいあるからそれなりの広さが必要だよね? フリーシアンみたいに小さくならないかな?」


 プテレアがマリヤと何か相談している、こちらを見て肯くマリヤ? どうやら話しはついたようだ。


「主殿、マリヤの案でエンシェントリュフの栽培所に巣を作る事になりそうです! もう場所は出来上がっているのでそちらへ出してください」

「いつの間にそんな場所が……」


 プテレアの分体は何体居るのだろうか? ダンジョンに付いて来ていたのと別の分体が町でも目撃されているらしい。


 皆でプテレアの森入り口へと移動する、入り口には立派な緑の小屋に住んでいるフリーシアンが居た。

 前見た時はこんな小屋無かったはず……どう見てもプテレアの擬態化小屋だ。


 こちらに気が付いたフリーシアンは、器用に右前足を額に当て敬礼してくるので何故か皆で敬礼し返す。


「主殿、取り合えずここで一度出してください」

「え? 外から見えたりしない?」

「歩いて中に入れるくらい道を広げますので」

「ふむふむ、ずっと森の中ってわけにもいかないしね、分かったよ」


 スマホを森の前にかざすとコッコを取り出す。ん~?

 どう見てもサイズが普通のコカトリスと同じになっていた。


「なんでやねん……」

「フリーシアンの事も有るので予想してましたけど、これだと卵のサイズが小さく無いですか?」


 アンナのもっともな意見にコッコは何か危機感を覚えたのか、その場で卵を五個産む。


「クケッコ!」

「数で勝負って言ってるで? 多分!」


 ルナが早速卵を抱えてロッズ&マリアン亭の食堂へと走っていった。今日の宴会のメイン食材はコカトリスの肉と卵に決定だね。

 エンシェントリュフは……あの臭いさえなければ食べれるかもしれない? 納豆を夏場に常温で放置していたような凄まじい臭いがするんだよね……


「アヤカが思うに、このサイズならフリーシアンの小屋の反対に小屋追加して森の番人風で良いんじゃない?」

「何かソレ良いね! 実際レベル高いし強いから番人だし、居ないと思うけど侵入者が着たら捕縛して入り口にでも吊るしておいてね!」


 こうして無事にコッコの住む場所も確保出来たので、宴会の準備を皆でする事になった。


 ちなみにダンジョンで拾ってきた銀鉱石――もとい銀の塊は前に貰ったダンジョン核と一緒にプテレアに渡しておいた。何でもボクの魔力を貯めこんで色々するらしい?

 前見たミスリルの説明が魔力を帯びた銀となっていたので、もしかしたらミスリルを作るのかもしれない。

 ダンジョン核の方は使い方は元より価値や加工して良いのかすら分からなかったので、プテレアの判断に任せている。


「もうすぐ五回目の鐘が鳴るのか~。六時間近くダンジョンに潜っていたことになるけど案外楽だったかな?」


 途中で休憩した時間や慎重に通路を歩いた時間が半分くらい占めているのは、ボク達がダンジョン初心者だからだろう。

 ボクの呟きを聞いたキャロラインは引きつった笑みでこちらを見て、思い出したかのようにルナの走って行った食堂へと駆け足で向かって行った。


 この日の宴会は何故か皆緊張した面持ちで会場に現れ、しきりにこちらを気にした様子で宴会が始まった……途中から普通の雰囲気の宴会に戻ったけど。

 小耳に挟んだ噂ではリトルエデンの面子が、隠しBOSSの討伐を成功させたので追加フロアが現れたとかなんとか……何と無く噂の出所は分かったけど追求しないでおく。

 そして積み上げられた酒樽とテーブルを埋め尽くす料理の数に、ボクはお財布を心配してしまう。

 メアリーがちゃんと経費で落としてくれたようで、レイチェルがお金をせびりに来なかったので助かった。

 皆コカトリス料理に舌鼓を打ち、お酒を飲み楽しそうに歌い踊っていた。


 こうして宴会の夜は、酒を酌み交わし浴びる様に飲む陽気な冒険者達の声と、歌い踊る新人冒険者や見習い冒険者の無邪気で可愛い声に満ち溢れ、朝日が昇るまで続くのであった。

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